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マリーの果実を我が店に 14 - サムス・アラン [10/20(Sat) 16:07]
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マリーの果実を我が店に 14
サムス・アラン [Mail]
10/20(Sat) 16:07

食堂の料理はなかなかのものだった。
普段は少々高めだた、全てティーノが払ってくれるおかげで、何の
問題もない。・・・ただ、機嫌をとるのに約一時間かかったが・・。

ザン・・・ザザーン・・・

15時。リクオは船の甲板で海を眺めていた。

「何一人でカッコつけてんのよ。」

ミントが二人分のティーカップを持ってよってくる。

「・・・ん、」

一度視線をミントに注ぐリクオだが、再び海の方へとうつし
かえる。

「俺には、一人でくつろぎたくなる時ってーのがあるんだよ。」
「私もあるわ。」

ミントはリクオにティーカップを渡す。中身は上質のティーだ。
さっきの食堂で頼んだものであろうか。

「ただ、今は一人でいたい気分じゃないんだけどね。」

そして、リクオによりそうミント。

「リクオって、人・・・殺した事ある?」

ミントのいつになく暗い表情を見て、気難しくなる。

「・・・まあ、そういう仕事もあるからな・・。」
「シビアな世界よね。」

それが当たり前というのは解りきっているはずだが、どこと
なく認めたくない事実を知ってしまったと言った表情である。
ミントは海を遠く眺め

「あたしのお父さんってさ、ひどく手癖の悪い奴でさ・・・」

ミントは憂鬱そうな顔でうつむく。

「何かあるたびに殴られてたんだ、・・・スープをこぼしたとか、
 掃除をしなかったとか。」
「子供は親を選べないもんな。」

リクオはミントの頭をなでる。ミントは

「ついには・・・耐えられなくなって・・・殺しちゃったんだ・・
 この剣で・・。」

まるで悪戯した事を投げやりに白状する子供のようだ。

「・・・それで家出しちゃって・・・さ、今回のこの仕事が初めて
 になるの。」
「ふーん。」

ミントは背中の剣を一瞥し、

「・・・怖いんだ・・・親を殺しちゃったら・・一度人を殺しちゃ   ったら・・・もう何人殺しても、同じだって・・・。人を殺す事
 に、何のためらいも感じなくなっちゃったんだ・・。そんな自分
 が怖くて・・。」

人の心の中では、一度人を殺せば、二人殺そうが三人殺そうが、大
して違いは無くなるのであろうか。人を一人殺せば、そこで「人殺
し」のレッテルが貼られる。一度それを張られれば、どんなに罪を
償おうとしても、一生消えることはないであろう。人殺しの十字架
を一生背負い、生きてゆく事になる。そのかわり、逆に何人人を殺
しても、「人殺しのレッテル」が変わる事はない。

ミントはけだるそうにリクオにもたれ、

「まさか初仕事でいきなりリクオと一緒に冒険できるなんて思わな
 くてさ・・・」

たしかに、リクオの名を明かす前の彼女は、どことなく他人を警戒
してる風にみえら。

「リクオの事は、昔から聞いていた。・・・世界を自由に回って悪
 い奴らから財宝を盗み、貧しい人に分け与えるってさ。」

リクオは苦笑し

「財宝はたしかに盗みはしたが、人に分け与えてやるほど、お人よ
 しじゃないぜ。」
「わかってるわよ。」

そんなミントの顔は、どこか幼い。

「でも、憧れてた。自由に世界を回って、自分の腕で好きな仕事で
 名声をあげて食べていく事が出来るブラック・キャッツに。」
「師匠から聞いた事がある。」

リクオは、ミントが持ってきてくれたティーをすすり。

「この世界に入ってくる女は、たいてい昔に死ぬほどつらい思いを
 経験した奴らばかりだと。あんたみたいに、とある事がきっかけ
 でこの世界に入りざるをえなくなった女、家から一歩も外に出し
 てもらえず、外の世界に憧れ、ろくな知識ももたずに家を出て、
 道しるべを失い、途方にくれるお嬢様。この世界の奥底まで理解
 しつくし、それでもこの世界に入りたがる奴は、きっと幼少期、
 残酷な体験をしてきたに違いない・・てね。」

リクオは気持ちよくあくびをして

「安心できる場所・・、そんな場所があるなら、俺だってこんな
 事はやっちゃいないさ・・。」

リクオは海をながめ、無表情に一言つぶやく。

「・・・俺も、早く楽になりたいよ・・。」

リクオに安心できる場所場所などない。リクオが行き続ければ
行き続けるほど、誰かが必ず不幸になる。誰かの幸せを奪い続
けなければ、生きていく事が出来ない。彼のように死にたくても
死ねず、誰かを不幸にし、人々にいみ嫌われ、そのたびに心に
深い傷をうけながら、それでも「幸せ」の二文字・・・・ただ、
それだけを夢みて、自分の安心できる場所を求め、死ぬまでさ
まよい続ける・・・。

・・・楽になれない迷子達。

誰も助けてくれないこの世界、そのまま死にゆく者も珍しく等
、決してない。

リクオはミントの頭を胸元に抱き寄せ、

「俺は貧しいあんあみたいな不幸な人間に、手を貸したくなるんだ、
 ミント。」
「そうやって、他の女にも手を貸してきたのね。」
「・・・え・・そ・・それは・・」

あせるリクオ。そんなリクオに悪戯っぽい笑みを浮かべ、

「・・・心臓の動きが急にはげしくなったなー。」

気がつけば、ミントはリクオの胸に耳をぴたっとくっつけている。

「・・・・でも・・・サ。」

ミントも海を気持ちよさそうに眺め

「はじめて呼んでくれたね・・・ミントって。」

雲ひとつない青空を、海猫が気持ちよさそうに飛んでいる。



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