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マリーの果実を我が店に 13
サムス・アラン [Mail]
10/17(Wed) 0:35

旅船ディートバ、旅行気分ではしゃぐ女達や、別に珍しくもないと
いった顔の貴族達、あるいはどう考えても、乗る船を間違ってるだ
ろうと言いたくなるような酒くさい女等、今日も様々な客を乗せ、
旅船ディートバは広大なる海を渡る。

「そーら、客が押しよせてくるよーっじゃんじゃん作りなーっ!!」

旅船ディートバの食堂、「聖なるまこっちゃん」。食堂を仕切るお
姉ちゃん(といっても、もうそろそろおばさんに手が届く)は、今
日も元気に料理に、指示に、そしてげんこつに専念していた。

そんな食堂の中、リクオ達もそこにはいた。

「どんな物があるかなー。」

と、メニューを見るリクオ。

「俺が食えそうな物はあるか?」

と、ミケ。やはり人間と猫族では、味覚に違いがあるのだろうか。

「なんかこの船の名物ぅぅぅ!!・・・・・・てゆーような物無
いの?」

とティーノに問うミント。

「えーと・・・たしかディートバの名物と言いますとぉ・・・」
「ふん、この店の名物など知らんが、このチーズガルフォードは
 中々の物なのだぞ。」
「そーそ、海の幸を生かしたチーズガル・・・ええっっ!?」

ティーノの言葉にわって入ってきたのは、隣のテーブルで食事を
していた女だ。席を総立ちする一同。

「・・・・ふん?・・・なんなのだ、私がここでメシを食って
 いては変か?」
「・・・い・・いやあ、あっはっは」

とりあえず笑ってごまかすリクオ。
緑色に輝く、長く後ろで束ねられた黒い髪、隣の椅子に立てかけて
ある大きな槍。そう、つい昨夜山中で遭遇したあの女だ。

「き・・奇遇だなぁ・・こんな所で会えるたーよぉ。」

ガチガチに総毛立つミケ、何とか口調だけは冷静を整えようとする。
女は少し妙な感じで四人を見るが・・・

「旅は楽しんでいるのか?」
「ええ・・・それなりにね・・。」

楽しんでいた・・。その女と顔をあわせるまでは・・・。
ミントはリクオから離れようとしない。

「そ・・そーいや、まだ名前聞いてなかったな。」

とりあえず何か話そうと、名前を聞いてみる。

「私か?・・・カリカだ。」
「そ・・そうか。」

名前を知っているのといないのとでは、やはり印象が違ってくる。
当然のようにカリカも

「そういう貴様はなんという?」
「え?」
「名だ。」
「あ・・ああ、リクオってんだ。」
「ほぉ・・?」

カリカは少し首をかしげ

「もしかして貴様か?ブラックキャッツ、リクオ・ディツァーと
 言うのは。」

リクオの背筋に冷たいものがはしる。ミントも少し心配そうに

「リ・・リクオを知ってるの・・?」
「ふん・・、名前ぐらいはな。」

それを聞いてほっとする一同。命を狙ってるわけではなさそうだ。

「・・・・・なあ、貴様ら・・・。」

カリカの言葉に、びくんっと反応する四人。

「なんかさっきから、私の事をいやに警戒してないか・・?」
「え?・・き・・気のせいさ、なあミケ。」
「あ・・ああ、こ、この俺がなんでお前みたいな小娘をいちいち
 気にせにゃならんのだ。」

ミケの言葉に、カリカはもっともだといった感じに

「ふん、それもそうなのだな。気のせいか・・・。」

特に気にする風でもなく、食後のティーを楽しむ。

「時にそこの女。」

と、ティーノをさすカリカ。

「な・・何ですの・・?」

背筋がびくんっと反り返る。

「お前の名前を聞きたい。」
「え・・?」

ティーノの額から一気に血の気がひく。

「え・・えーと・・」

あからさまに動揺するティーノに隣のミケがすかさず

「こいつぁビル・ゴールドバーグってんだ。」
「ぶっっ!?」

これにはびっくりするティーノ。

「そんなにカチカチすんなよ、ゴールドバーグはあがりしょうで
 ねぇ。」

やれやれとため息をつくリクオ。

「ちょ、ちょっと・・あぐぅ!」

文句をいおうとするゴールドバーグ、もとい、ティーノの足を思
いっきり踏みつけるミント。

「ちょっとゴールドバーグぅ、そんなに興奮することないじゃな
 い、ちょっと強そうな名前だからっていきがんじゃないわよ。
 ごめんねえ、箱入りのお嬢様で、中々他人と話をする機会がな
 くて。」
「ふん、変わった名なのだな。」

ティーノに興味をなくし、ティーを飲み干す。

「船にいる間よろしくな。」

席を立ち、槍を背負いその場を去るカリカ。一同はカリカが食堂
から姿を消すのを確認する。

「・・・ひどいですのぉーーーーっっっっ!!!」

ビル・ゴールドバーグ・・・・もとい、ティーノを落ち着かせる
のに、かなり時間がかかりそうだ。

「・・・お客様。」

ティーノを抑えるのに必死で、店員に声をかけられるまで、時間
が流れていくのに気づかなかった一同。

「・・・何?」

何か様?と、言わんばかりに目をぱちくりさせるミント。店員は
少し困り果てた顔で

「・・・ご注文・・・何になさいます・・?」



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