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- 時を越えた宿命〜第5話〜その01〜 - Gum [1/4(Sat) 12:36]
時を越えた宿命〜第5話〜その02〜 - Gum [1/4(Sat) 12:38]
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時を越えた宿命〜第5話〜その01〜
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1/4(Sat) 12:36
     PSOオリジナル小説「時を越えた宿命」
     《第5話:衝撃の森〜後編》



 ここは評議員と一般人が面会するウェイティングルームの一室。 

 既に昨日のうちにハンターズギルドから届いている割り振り表から
フィオナ達の班とレオン達の班はそれぞれの担当エリアを確かめる。

 「一昨日までのエリアを便宜上エリア1、今日の分をエリア2としよう。
 ギルドの情報によるとエリア2の終わりにセントラルドーム内に行けるトランスポーターがあるということだ。」

 フィオナ、レオンは各々自分たちのパーティーに説明していく。
レオンはシンシア、シヴァンに、次の様に告げる。

 「そういえば、あるポイントを捜索したハンターズ達の報告によると
 このパイオニア2の総督の娘、あの有名な『レッドリングリコ』のメッセージパックが見つかったそうだな。
 その者達が言うにはその者たちの担当エリア内に転々としていたそうだ。
 我々が全員セントラルドームまでたどり着いた時点で
 そのポイントの担当のものでなくてもメッセージパックを見に行ってもいいらしい。
 まあ見に行か無くとも、その内容はデータとしてギルド内に記録されている様だがな。
 いつでも閲覧は可能らしい。暇なときにでも見ると良いかもしれない。」

 そこに、クラインが入ってきた。クラインは皆が揃っているのを見て口を開いた。

 「何人かのハンターズが戦闘不能になったおかげで、君達の担当エリアも広くなった。
 今度のエリアはあの爆発の爆心地・・・・・つまりセントラルドームにどんどん近づいて行くことになる。
 気をつけてな。」

 クラインはそう言うと、皆を送り出す。

 「それじゃ行ってきます。」

 そう行って、7人の冒険者が部屋を出ていった。クラインは見送る。

 


 「あの人達がそうなのね・・・・。」

 その声にクラインが振り向くと、 部屋の奥に続く別の部屋に居たであろう女性が2人クラインのそばに来た。
一人はシンディー、もう一人は長い緑色の髪が印象的な女性だった。

 「来てたのか・・・・サムス。」

 「ええ・・・・。あの人達とクラインが知り合いで居たことは、大変な幸運ね。
 あの7人は既に、いくつもの組織から狙われているわ。
 私は前からあの7人のうちの何人かに目をつけていたけど、まさか全員がクラインと知り合いとは思わなかったわ。」

 「ああ、まさかあいつらがサムスから知らされていた者達とは思わなかったからな。」

 「結果的に、7人ともあなた達評議員と私達の管轄下になったからには、もう大丈夫よ。」

 「そうだな。まあ『例の3人』はかなり強いからいざとなっても大丈夫だろう。」

 「ええ。でも私は7人全員に幸せになってもらいたいわ。本来、人は皆幸せになる権利を持っているものよ。
 私利私欲の為にそれを奪う権利は誰も持っていないわ。私はそんな人達を絶対に許せないのよ。」

 クラインは普段見せないサムスの一面が一瞬だが現れたことに背中が凍りつく様だった。
それほどの殺気がサムスから発されていたのだ。
もっともそれはほんの一瞬で、すぐにいつものサムス・アランに戻っていたのであるが。

 「それじゃ、また来るわね。クライン。今度は私にもあの人達を紹介してくださらない?」

 「ああ、勿論だ。」

 「うふふ・・・・。」

 うす笑いを残してサムスの気配は消えた。クラインは複雑な思いで自室に戻る。

 『やっぱりあの噂は本当なのだな。サムス自身も相当のレベルだというあの噂。あながち間違いでもあるまい。』
レスをつける


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時を越えた宿命〜第5話〜その02〜
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1/4(Sat) 12:38

  地表ではレオン、フィオナの班に別れ探索が続いていた。今日のラグオルは雨だった。

 「雨の日に探索とはついてないね。」

 フィオナは毒付く。 
 
 「そうですね。・・・・・あ、姉御、広域レーダーを見てて分かったんですが
 その分今日はハンターズの姿が少ないですよ。」

 「まあ、こんな雨の日には来たくもなくなるだろうさ。
 あたし等は昨日休んだからね。その分遅れてるから進まないといけない。さあ、いくよ。」




 レオンの班では何事も無く探索が進められていた。

 レオンたちは先日登録されたばかりで、ハンターズギルドの登録レベルは未だに5か6くらいである。
しかし、実は潜在能力・・・と言うか隠している能力のおかげで実際の強さは、遥かに上である。
それでもレオン達はクラインに注意されたように実際のレベル5か6の様に振舞っていた。

 一昨日の様に色々な敵が出てくるが、既に対処法は把握している。そのような敵に遅れを取るはずが無かった。
しかし、敵には負けなくても、散在する家々に人影が全く無いのには閉口した。

 「本当に普通に生活してて、ある瞬間に人だけが居なくなったような感じだな。」

 レオンの率直な意見はこうだった。
  
 今日探索するエリア・・・・エリア2と便宜上呼ぶことにしているエリア・・・のほとんどが一昨日と同じようであった。
違うとすれば、ラッピ−と呼ばれる生物たちが自分達の姿を見ると一目散に逃げていくことだった。

 レーダーマップによると次の大きな広場を越えると
セントラルドームの正面入り口のそばまでトランスポーターで飛べるのが分かった。

 


 その大きな広場に来た時である。

 突然頭上から、物凄く大きな生物が10匹ほど群れをなして現れた。
コードネーム『ヒルデベア』で呼ばれる本星にいたゴリラのような生き物である。

 先日のラッピ−達とは違い、この10匹の動きはばらばらであった。
広場の向こうのほうへ行き、そこにいるサベージウルフを殴りつけるもの。
広場の横の方にある木々を殴り倒しているもの。

 10匹のヒルデベアの動きは様々であった。

 レオンはそのうちの数匹の間に飛び込むと大剣を振るう。
これが効を奏し、一気に7,8匹を引きつけることに成功した。

 しかし、残りの1匹がシヴァンに目をつけたようだ。
シヴァンもいち早く、バータ系のテクニックのうち中級に位置する『ギバータ』を唱え、ヒルデベアに向けて冷気を放つ。

 しかし冷気が発動するより先に一瞬早く、ヒルデベアの大きなこぶしがシヴァンを襲う。

 「きゃあ!!」

 シヴァンは軽く数メーター吹っ飛び、岩壁に背中をしたたかに打ちつけた。

 「う・・・・。」

 体を岩にぶつけた衝撃をもろに受け、シヴァンはまともに動くことができなかった。
しかもその一瞬、息も吸えずにシヴァンは意識を失いかけた。

 シヴァンを吹き飛ばしたヒルデベアが、シヴァンに近づいてきた。
動かないシヴァンを見つめ、にんまりと笑った様だ。

 そして腕を振り上げると、こぶしを動かないシヴァンに叩きつける・・・。

    ガキン・・・・・・。

 鈍い音がしたかと思うと、ヒルデベアのこぶしの下に、大剣を構えてこぶしを止めた男が居た。

 レオンである。そのそばにはシンシアがいて、シヴァンにレスタをかける。

 残りの9匹も、レオンたちの周りを取り囲んだ。
今すぐにでも一斉に襲ってくるかもしれない。そんな緊迫した時が双方の対峙を促す。
 
 その一瞬、レオンは傍らに倒れるシヴァンの方を見る。
レスタのおかげで岩壁で擦ったり、打撲した外傷は消えた様だ。
もちろん、シンシアも無事だ。一瞬安堵するが、すぐに緊張感を取り戻す。

 「この・・・・狂った獣が!!」

 レオンの体から凄まじい闘気が涌き出る。
ヒルデベアはそれを見て少したじろぐ。その瞬間に、レオンは呪文を唱えていた。

 『大気の聖霊に命ず。汝らの氷持て、敵を切り刻む刃と為せ。』 

 呪文の効力が形を為し、レオンの持つ大剣に氷の力が宿る。
今回は、レオンは探索中に、一抹の不安と幾ばくかの怒りを覚えていたせいで
魔法力を制御せずに魔法剣を使った。
そのせいか、今までに見たこともないほどの魔法力が剣に注がれていった。
余剰力となった氷の魔法力は、レオンの周囲に極低温の嵐を吹き起こしている。

 「お兄様!駄目!!」

 シンシアの止めるのも聞かずに、レオンは禁止されている魔法剣を放った。 
氷の力が宿った大剣を大地に突き立てる。

 「終奥義!氷裂斬撃陣!!(ブリザードスラッシャー!!)」

 レオンを中心に、強烈な激低温の渦が沸き起こり、続いて、大きな氷がいくつも現れた。
その巨大な氷はレオンの周りを円周上に廻り、そのまま広がっていく。
その氷に触れたヒルデベアたちは、あるものは凍り付き、あるものは無残に切り刻まれた。
この時代のテクニックで言うなら、ラバータ(氷系のテクニックの中で上級テクニック)が近いであろうか。

 10数秒後、辺りに残ったのは10匹のヒルデベアの無惨な死体だけであった。
魔法力を制御せずに魔法剣を使用した為であろう。肩で息をしている。

 「はあ・・・はあ・・・・はっ!!」 

 レオンはやっと我に帰った。

 「シヴァンは無事か?」

 「はい。お兄様。気を失ってるだけですわ。」

 「そうか。よかった。」

 そう言うと、レオンはシヴァンを軽々と抱き上げ、先に進んでいった。シンシアがそれに続く。
3人は広場の奥に設置されているトランスポーターでセントラルドームの正面入り口付近にワープアウトした。




  3人の姿が消えた後、物陰で気配を殺していた人影が現れた。その人影はかなり大きかった。
手にはなにか紫色の細長い棒のような物を持っていた。

 「ふむ・・・。奇妙な剣を使うものだな。ん?ああ。あの者達か・・・。わが組織が目をつけているのは。
 しかし、それにしても私としてはあの男と戦いたいものだ。売り払うには余りに惜しい・・・。
 いや・・・。組織の命には従う。いままでも、そしてこれからも・・・・な。ああ、これから帰還する。
 顔は覚えたからな。」

 通信機の向こうの人間と話をしつつ、一人言も言っている。その人影は通信機を切り、もう一度3人が消えた方を向いた。
その時、体の陰になっていた、手に持つ棒の先からの部分が見えた。

 それは細長い棒の先に、長い赤紫色の刃がまるで三日月のごとく延びていた。

 「いつか必ず互いの全力を持って戦いたいと思うぞ。」

 そう言うと、その人影はゆっくりとパイオニア2へのテレポーターのあるほうへ帰っていく。
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時を越えた宿命〜第5話〜その03〜
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1/4(Sat) 12:39
  フィオナ達は、既にセントラルドームの正面入り口の裏に面するところに居た。
セントラルドーム周辺は、高台の上に作られている。この高台をぐるっと廻れば、セントラルドームの周りを廻れるという訳だ。
もっとも、一周するのに、かなりの距離を擁するが。 

 「この淵をぐるっと廻れば、正面入り口にたどり着く。もう今のあたし達じゃ、この周辺の敵は大丈夫だな。
 皆キチンとレベルアップしたし。一番弱いウィルも、レベルもう5だっけ?」

 「8です・・・。」

 「ああ、そうだったね。ごめんごめん。」

 「あ、姉御。あそこに居るのレオンさんたちじゃないですか?」

 「お、ほんとだ。合流しようか。」

 

 レオンはフィオナ達と合流した後、自分の過失により、クラインに禁止されている魔法剣を使ってしまったことを話した。

 「そうか、それはまずいかもしれないな。一応クラインさんに連絡しよう。」 

 7人はちょっとした広場の端っこに陣取り、通信機でクラインを呼び出した。

 「やあ、みんな捜索は順当に行ってるみたいだね。背後にセントラルドームが見えるよ。」

 「ええ、捜索は順調でしたけど、ちょっと問題が。実は・・・・・。」

 レオンは事と次第を話す。

 「う−む。しかし、周りにハンターズはいなかったのだろう?それならば心配することは無い。
 私が禁止と言ったのは他のハンターズに要らぬ詮索をされない様にとのことだからな。」

 別に、何か特別な理由があり禁止されていたわけではないと知り、レオンは安心した。
しかし、それだからと行って、魔法剣をいくらでも使って良いと言うわけではない。 

 「わかりました。では、これからセントラルドーム内に行きます。正面入口がしまってる様ですが、トランスポーターがあるので
 中にはちゃんと入れるようです。」

 「じゃあ、頑張って。何かあったら、また教えて欲しい。」

 通信中、話をしていないクレイなどは、自分達の脇をいくつものハンターズのパーティーが、トランスポーターを使って
セントラルドーム内に入って行くのを見ていた。

 「それじゃあいこうか。」

 レオン達はまた2つのパーティーに分かれ、トランスポーターに順番に乗った。
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時を越えた宿命〜第5話〜その04〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:40

  セントラルドーム内は・・・・凄惨を極めていた。

 入るなりまず目に付いたのは、中がめちゃくちゃに破壊された状態であることだった。
いくつものフロア−の床は既にほとんど無く、そこにあったであろう機材などは壁際にうずたかく積まれていた。

 そして、次に目に付いたのは、あちこちに倒れているハンターズの面々である。
何十・・・いや何百と言うハンターズ達が辺りに転がっていた。

 最後に目に入ったのは、大きさは10数メートルにも達しようかと言うドラゴンであった。

 ドラゴンは、今ドーム内に入ったレオン達2つのパーティーと正反対の方に位置し、そこにいるハンターズと戦っている。
戦っているハンターズはドラゴンに軽くあしらわれ、打ち倒されてしまった。

 「よし、みんないくよ!」

 フィオナはグングニルを構えドラゴンに突進しようとしたが、それをレオンが止めた。

 「待ってくれ。仮にもドラゴンなら、俺が何とかできるかもしれない。」

 そう言うとドラゴンのそばに歩いていく。そして『ドラゴンロアー(ドラゴン語)』と言う特殊な言葉で語り掛けた。
フィオナは密かに、以前シンディーに貰っていた万能翻訳機の携帯型のものを取り出した。

 《どうした?何を暴れているのだ?》

 レオンの姿を見ると、ドラゴンはびっくりした様に体を振るわせ、炎の咆哮を上げる。
 
 が、次の瞬間、今まで凶暴そのものの行動を取っていたドラゴンが大人しくなった。
そしてレオンの問いに、同じくドラゴン語で返してきた。

 《ああ!あなたは、もしかしてレオン様ではありませんか?》

 《確かにレオンだが?お前と会った事は無いが、何故俺を知っている?》

 《ああ、やっぱり・・・。私の祖父が、あなたの乗る飛竜でした。覚えておりませんか?》

 《うむ。確かにそうだが、それは3400年も昔だと言う話だな。》

 《やはりレオン様ですね。なんと嬉しいことでしょうか。祖父から、あなたの話は色々聞いております。
 その頃より3400年たっていようと、我々ドラゴン族は最低でも5000年ほどの寿命がありますから。
 その時と、私の今住む星が違いますが父の代にこの星に移り住みましたから。方法は秘密ですけどね。》

 《そうか。私も聞きたい事があるのだが、良いかな?》

 《なんでしょうか?》

 《この有様は何かな?ここは以前人々が住まうところだったはずだが?》

 《それが・・・・ある時以来・・・・時々なのですが・・・
 何物かの意識が私の意識に進入してきて、私を酷くいらだたせるのです。
 そして、イライラが最高になった時・・・自分が自分で無くなり
 その者の意識によると思いますが、気が付くとこうなっていたのです。
 そして、それ以来私はここから出られなくなりました。
 更に、これも、私の意思の下でではないのですが、ここに来る人間達に何故か襲いかかってしまうのです。
 もし出来ることなら、ここから出て人間をおそうことのない山奥にでも戻りたい・・・・。》

 ドラゴンは、ドームの中ではあるが、ある方向を悲しそうに見上げた。 

 《そうか・・・それならば、その方法を探そう。我々はパイオニア2という、この星のそばに浮いている宇宙船にいる。
 そこで、お前の処遇を考えてもらうとしよう。それまでは、お前は頑張ってその侵入者に対抗するのだ。
 これ以上、罪無き者を襲ってはいかん。》

 ドラゴンは軽くうなずいた。

 そして、踵を返そうとしたレオン。

 だが、ドラゴンの様子が次第におかしくなっていくので注意深く
また廻りの人には何があっても良い様に戦いの準備をする様ジェスチャーをしながら、様子を見た。
 
 《わかり・・・ました・・・・。それでは・・・レオン・・・・様・・・・・も・・。うううう・・・。》

 《どうした!?》 

 《うう・・・。また・・・・。レオン様・・・お逃げ下さい・・・私が・・・私で・・・・無くなって・・・・・し・・まう・・・。》
 
 《頑張れ!負けるな!ドラゴンは全ての生き物の王だぞ!》

 ドラゴンは苦しそうに、体を捩らせ暴れ出す。
この時、何人かのハンターが下敷きになったりしたが、それはレオン達は気がつかなかった。 

 《無理・・・みたい・・・・です・・・。こ・・・この・・・まま・・・では、わ・・私でない・・・私が・・・・皆様を殺して・・・・しまう・・・・。》
 
 《何物だ?お前を操るのは、何物なんだ?》

 《うがあ、あ・・・。分かりません・・・。逃げ・・・・ないの・・・ならば・・・・レオン様・・・・・。最後のお願いです・・・・・。
 私を・・・・私を・・・コロシ・・・・・・・・・・・がああああアアアアア!!!!》


 ドラゴンは体を起こし首を天に高く翳し、その口から炎を噴出す。

 《ふははははは!また来おったか!!小賢しい人間ごときが!》

 《お・・・おまえは!?》

 《死に逝くお前達には関係あるまい!死ね!!》

 そう言うとドラゴンはレオンのほうへ炎を吐く。レオン一人にかなり長い間炎を浴びせ続ける。
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時を越えた宿命〜第5話〜その05〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:41

 「レオン!」

 「お兄様!」

 「大丈夫だ!」

 レオンの両手の先から、かなり大きく分厚い氷の盾が出現し、ドラゴンの炎をさえぎっていた。 

 「お前が、こいつを操っている諸悪の根源だな。消えるがよい!」

 レオンが大剣を一閃する直前、ドラゴンはふわりと宙を飛んだ。

 《わははははは!人間ごときが我を倒せるものか!》
 
 今度はドラゴンは、空中から炎の塊をいくつも放射状に噴出した。

 レオン達はひとかたまりになった。レオンは急ぎ補助の魔法で空中に、炎を打ち消す盾を作る。
瞬間の後、レオンの補助魔法が功を奏し、炎は空中で消えた。

 《小賢しい術を使いおるわ!》

 ドラゴンは地上に降りてくると、今度は固まっている7人に向かって体当たり攻撃をしてきた。
これは単に、ドラゴンが狙った相手に対して歩いていくだけなのだが
その歩行中の足に当たれば、もちろん大怪我をすることになる。

 7人はバラバラになって避けた。

 《誰から殺してくれようか・・・・・。》

 さっきまでの清い心のドラゴンが、今は邪悪な心を持つドラゴンへと変貌を遂げている。

 レオンは心が痛んだ。

 レオンは小さい頃からドラゴンと一緒に遊んでいたのだ。
ドラゴン族に快く迎えられたあの時。一緒に空を初めて飛んだあの時。

 『その、誇り高くもやさしいドラゴンに、こんなことをさせるとは・・・・・・。』
 
 レオンの心にふつふつと怒りの心が湧き上がる。
魔法力は、先ほどのヒルデベアとの戦いで使い果たしていたはずであったが
それでも、強力な魔法を生み出す力は残っていた。

 『我に従う聖霊達よ!彼のものを縛る戒めとなれ!!』

 レオンの大剣に物の動きを司る聖霊の力が宿る。大剣は紫色の怪しい光を帯びた。

 「秘奥義!捕縛、封鎖剣!(バインドスラッシュ!)」

 物の動きを司る聖霊力の秘められた大剣が、大地に突き立てられる。
魔法の力が効を為し、急速に地を伝いドラゴンを覆う。

 今回はレオンは剣から手を離せない。離してしまえば術が消えてしまう為だ。 

 「よし、ドラゴンの動きは止まった、行くよ!クレイ、ラルフ!
 そっちのシヴァンもシンシアも、ありったけの魔法・・・・いや、テクニックを放つんだ!」

 「このドラゴンに効くのは氷系の・・・・テクニックだけだ。」

 レオンは魔法力を練り、剣へと送りながらそう叫んだ。

 そう言われて、ラルフ、クレイ、フィオナは武器でドラゴンを切り刻み
ウィルはバータで、シンシアはギバータで、シヴァンはバータで攻撃していく。

 《ガアアアア!!!小賢しい!!》

 ドラゴンはレオンの捕縛を解くと、空中高く舞いあがった。

 《お前達を舐めていた様だ。我が全力の攻撃をその身を持って食らうがいい。》

 ドラゴンはそういうと錐もみ飛行から、土の中にダイブした。
その瞬間地面の下の溶岩が吹きあがる。

 《ふはははははは!何処から襲われるかわかるまい!溶岩の餌食となって死ぬが良い!》

 ドラゴンは土の中からレオン達に体当たりをしようと、レオン達に襲いかかる。 
何回も何回も執拗な体当たり攻撃が繰り返される。

 皆必死に避ける。何回か誰かがその突進攻撃に当たった様だが、すぐにレスタの嵐が起こり、体力も傷口も元に戻る。
そのうち、さすがの火竜であっても溶岩の熱さに耐えれないのか、土の中から出てきた。

 地面に着地した火竜はフラフラであった。

 「よし!今がチャンスだ。みんな行くぞ!」

 レオンはそういうと、皆に再び、武器とテクニックによる攻撃を促した。
そう言いながらレオンは、今度は自身の魔法力で氷の魔法力を生み出した。
それに続き、精神を司る魔法力も練り込んだ。
今回は剣を媒介とせずに、直接、魔法力をドラゴンにたたき込むのだ。

 『我が氷の力よ、精神の力と組み合わさり、敵を捕縛し、氷の力により、苦しめる氷の網となれ!』
 『我が精神を司る力よ、氷の力と組み合わさり、敵を捕縛し、氷の力により苦しめる氷の網となれ!』

 「フリーズ・バインド・ワイヤー!!」

 レオンは、普通なら数人がかりで行う合体魔法を一人で生み出した。魔力が形を変え、効力を為す。  
ドラゴンの足元から、巨大な氷の網が現れ、それが急速にドラゴンの体を覆い
さしものドラゴンの力でも抜け出すことができないようであった。

 動けなくなったドラゴンを相手にするのは、フィオナ、クレイ、ラルフにとっては訓練よりも簡単なことであった。

 ウィル、シンシア、シヴァンの3人のフォースは、氷のテクニックを駆使してドラゴンの体力を削っていく。

 レオンが執拗に禁止されている魔法を繰り返しているのは、自分を知るドラゴンへのせめてもの礼の為であった。
魔法を放つたびに、もう、死でしか自分が救われないこを知っているドラゴンへの思いを込める。

 操られつつも、レオンの魔法を自身に浴びるたびに、徐々に自分を取り戻していくはずであった。
レオンは魔法力を練り、ドラゴンへ送りつつ涙を流していた。

 《グウウ!もう、力が持たない・・・・くそう・・・・後少しであったものを・・・・!》

 そう言うと、ドラゴンは最後の力を振り絞って体の戒めを解こうとするが、抜け出すことはできなかった。
そして、ついにドラゴンの巨体な体が地響きと共にくず折れる。

 もうもうたる砂嵐が、辺りに舞う。

 


 しばらくの時が過ぎた後・・・・・・
セントラルドーム内は静寂に包まれた。
 

 もうドラゴンは動きだすことはなかった。

 7人がドラゴンに駆け寄ると、もう、ドラゴンの意識はない様に思われた。

 しかし、その時、ドラゴンが最後の力を使ったのか
7人全員の頭に、まるで魔法のテレパシーの様にドラゴンの最後の声が響いた。
もちろん、全員その言葉は理解できた。ドラゴンの言葉は途切れ途切れであった。

 『ありがとう・・・・レオン様・・・・。そして、そのお仲間達・・・。これで、私は、もう人間を襲うことも無く
 意識を脅かされて生活することも無いでしょう。』

 ドラゴンは首を何とか動かして、レオンをその光の消えかかった目の視界の中に持っていく。 
レオンはドラゴンの傍に寄って行き、ひざまずく。

 『レオン様のことは、もし祖父に会えたら、伝えておきます。
 祖父の言う通り、とてつもなく強く、そして、とても優しい方であったと・・・・・・。
 レオン様の魔法を浴びるたびに、レオン様のお気持ちが、私に伝わってきました。
 そのおかげで、狂ったドラゴンとして最後を遂げずに済みました。』
 
 ドラゴンの目は光を失いつつあった。 

 『ありがとうございます・・・・・。レオン様・・・・。さいごに、じぶんにもど・・・・・・れて・・・・・。
 それでは・・・・・・皆様・・・・お別れです・・・・・・。これからの・・・・戦いは・・・・ますます・・・・・・
 苛烈さを・・・・・・増す・・でしょう・・・・・。
 でも・・・・あなたがた・・・・・・・・・な・・・・・・ら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 それきり、ドラゴンはなにも言わず、ぴくりとも動かなかった。

 レオンはドラゴンの目を見たが、その目は再び光を取り戻すことは無かった。

 


 しばらく誰も、なにも言えなかった。
シンシア、シヴァン、ウィルは静かに泣いていた。

 フィオナも、悲しい思いに沈んでいた。・・・・・が、辺りに転がるハンターズ達が目に入った。

 「怪我した人達や、倒された人達を救わなくちゃ。みんな、手伝って!」

 皆の助け合いもあって、セントラルドーム内にいた全てのハンターズを救うことが出来たのであった。
レスをつける


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時を越えた宿命〜第5話〜その06〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:43

 翌日・・・・。

 前にクレイが見た『バー♪お姫たま♪』に、冒険者7人とクライン、シンディー
それとオーナーのサムスと、バーテンのクルツと言う男の合わせて11人がいた。


 「それでは自己紹介するわね。私はチーム「タークス」のボスのサムス・アランよ。
 タークスはね、正義を貫く為に、悪いことをする人達を倒す使命を帯びているの。
 例えば私利私欲の為にニューマンを作っている人達や・・・・・。」

 ここでウィルがピクっと反応する。クレイがウィルの体を寄せて、安心する様に促す。

 「研究の為と言いながら、やっぱり人を売り飛ばす為に変な改造をする人達とか・・・・。」

 ところが、ここでは逆にクレイがぎゅっと拳を結ぶ。

 「そんな悪い人達が集まる組織・・・世間では裏組織と呼んでるけど・・・・
 その組織に対抗する為に私が腕利きの人達を集めて作ったのがこの『チームタークス』よ。
 タークスにはハンターズは勿論、ハンターズに登録していない人達もいっぱいいるわね。
 後、私達の行動に賛同する一般のお金持ちの人達も、タークスに投資してくれてるのよ。」
 
 そこまで言うとサムスは好物のお茶を飲み始める。
 
 「ふう・・・。お茶が美味しいわね・・・・。」 
 
 お茶を飲み終わったサムスは、次の話題に移った。

 「これから皆さんに、ちゃんと紹介しておかないといけない人がいるわ。
 『祭りちゃん』。でてきてくれるかしら?」

 そう言って店の奥を見る。そこには白と黒に塗装されたレイキャシールがいる。
この前に腕に着けていた大きな装甲は、今回はつけていなかった。

 クレイの反応は早かった・・・・が。それよりも早かったのはサムスであった。

 クレイが跳躍し腰につけている灰色の短剣を取り出そうとした時
サムスは空中でクレイの後ろからその手を押さえて、その真下のソファーに座らせた。

 「クレイちゃん・・・私の紹介が終わってないのに戦いなんかしちゃ駄目よ?」

 相変わらずの笑顔のまま、サムスはもと座っていた椅子に座る。
 
 「そう、前にクレイちゃんとウィルちゃんを襲ったのは、この『祭りちゃん』よ。
 私が特別にお願いして騒ぎを起こしてもらったのよ。
 何の為かというと・・・・んー。難しいわね。一言で言えば、『本人達の為』かしら。
 ちょっと言いにくいんだけど、あなた達7人は色々な裏の組織に狙われてるの。
 それを意識してなかったから、ちゃんと用心しなきゃって思って、お願いしたのよ。」

 ここまで言うと、その「祭」と言われたレイキャシールはサムスの隣に座る。

 「改めて紹介するわ。タークスの中でも、今一番頑張ってくれている人達のうちの一人が、この『祭りちゃん』よ。
 こっちにいる髭のおじさんは『クルツ』というバーテンさんね。
 表の顔はバーテンさんだけど、裏の顔は情報収集兼分析担当主任サンなのよ。」

 祭りもクルツも改めて、7人にお辞儀をする。

 

 ここまで来てクラインが今回の報告会をしようと言った。

 そして、レオンは全てを話す。そしてその次はフィオナが話した。
クラインが毎度変わり映えしない報告に、頭を痛めた。

 「そうか・・・・。相変わらず、生きてる人はいなかったのか。セントラルドーム内部も破壊されているとはな。」
 
 しかしサムスは、ドラゴンの報告に対しては、こう言った。

 「そのドラゴンさん、死んじゃったのは悲しいと思うけど、恐らく最期はとても幸せだったと思うわ。
 だっておじいさんからいつも聞いていたレオン・・・あなたに会えたからよ。
 そして、聞いていたとうり、苦しんでいる自分の境遇を正してくれた・・・。
 これが幸せじゃなくて何かしら。」

 サムスの言うのはみなを悲しみから少し救った様だ。

 「こう言う悲しいことをなくす為に、私達は戦っているの。あなた達もぜひ力を貸して欲しいわ。」
 
レスをつける


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時を越えた宿命〜第5話〜その07〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:44

 バーから戻ってきた7人は残りの時間は自由時間となってたが、余り外出する気が無かった。

 ラルフとクレイはラルフの部屋で話をしていた。

 「なんか大変なことになってきたな。」

 「ああ・・・。まさかレオンがドラゴンと話ができるとはね。」

 「まあ、レオンは昔から時間を飛んできたからだろう?その時に覚えてたかもしれないから不思議はないな。
 それより、あのレオンの魔法の威力だよ。強いなんてモンじゃない。ありゃあ反則だ。」 

 「クラインさんが使うなって言うの分かる気がするよ。現代のテクニックじゃ、あそこまで出来ないしね。」  

 「それはそうと、あのドラゴン、何物かに操られてるといってたな。
 ドラゴンって、非常に精神力が高くてそうそう操れるものじゃないって、レオンが言ってたじゃないか。」

 「ああ、そうだな。それに教官も色々いってたよな。」 

 「姉御も、翻訳機使ってたおかげで話の筋が分かってたそうだな。」

 「何物だろうな?」

 いつもと違う様子のラルフを訝しげに見るクレイ。
 
 「何が?」

 「ドラゴンを操れるほどの奴って。」

 「俺には想像できないよ。」 

 「もしそいつと戦わないといけないとしたら、倒せるかな?」

 「何が言いたいんだ?」

 クレイはラルフににじり寄る。ラルフは次々と暗い思いに取りつかれているようだ。
クレイは励まそうとしていたが、自分も色々なことを経験した為か言葉が思いつかなかった。 

 「いや、ドラゴンさ・・・・俺達よりも力のあるハンターズ・・・・皆、倒されてたろ?」 

 「ああ・・・でも、皆入院が必要だけど、死んだ奴はいないって言うじゃん。」
 
 「俺達も、レオンがいなかったら、ああなってたかな?」

 「・・・・・・・・・・・・・。あ〜〜〜〜〜〜!!もう!!お前、どうして、そう、ありもしないこと考えるんだ?
 レオンは今俺達の味方じゃないか?変なこと考えるなよ。」
 
 クレイを何とか励まそうとする。
 
 「俺達が苦労して皆運んだおかげだろ?誰も死んでいないのは。
 それにさ、かなり後からセントラルドームについた奴等の話じゃ
 セントラルドームの中には何もいなくて、壁の一部に大きな亀裂が走っていて
 何か奥にいく為の通路みたいなものがあったって話だぜ?」

 「じゃあ、そこも探索するんだろうな。俺、この先戦えるかな・・・。」

 「ほんっっっとに!!お前最近元気ないな。シヴァンちゃんに振られて以来ずっとだぞ?
 また、ターゲットを姉御に戻したらどうだ?」

 「それとこれとは話が別だろう?それに、教官は多分クラインさんが・・・・。」

 「何言ってんだよ。またアタックすれば良いだろう?それが、お前の取り柄じゃんか。」

 「まあ、何にしても、なんか今日は疲れが取れないよ。精神的にもきつかったし。」

 「ああ、じゃあ、今日はゆっくり休みな。」

 「お前は何するんだ?」

 「ちょっと調べるものがあってな。」

 かみ合わない会話を終了し、クレイはラルフの部屋を出ていった。


 

 フィオナは、ウィルと一緒に自分の部屋に帰ってきた。

 「あの・・・・フィオナさん・・・・。」

 「なんだい?」

 「前に、ラグオルでお風呂に入った時のことなんですけど・・・。」

 「ああ、あれがどうしたの?」

 「私が初めて意識を持った時に、そばにいた男の人が『お前は逃げた女の代わりに作り出されたんだ。』
 って、言われたんです。もしかして・・・・・。」

 「ああ、あたしがあそこを出たのはもう10年以上も前さ。それも、まだ本星にいる頃にね。
 だから、あんたが言われたのは、あたしのことじゃない。」

 「そうですか・・・・。」

 「質問て言うから何かと思ったら、そんなことだったのか。」

 「そんなことだなんて・・・。」

 「いや、そんなモンだよ。あんたは今はここにいる。連れに来る奴等がいても、守ってもらってるじゃないか。
 だから、今は気にしないほうがいい。それに、これは誰にも言ってないあたしの予感なんだけど
 そんなのとは比べようもないほどのことが、これから起こるような気がするんだ。
 狂った獣達、ドラゴン。何物かが、操ってるとしか思えなかったよね?
 だから、ラグオルに降りたら、そんなどうでもいいようなことより、自分の命を長らえることを考えた方がいい。」

 「はい・・・。」

 ウィルはまだ何か気がかりであった様だが
フィオナの言う『何か怖いこと』が気になりだしたのか、より複雑な表情をしてしまった。
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時を越えた宿命〜第5話〜その08〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:45

 レオンとシンシア、シヴァンは特別に普通のハンターズ用の部屋を2つ繋げた感じの大きな部屋を使っていた。
各々一人用の部屋が3つと共有スペースがある、特別な作りをしていた。

 「お兄ちゃん、あのドラゴンさん・・・可哀想だったね・・・。」

 シヴァンは、全ての会話の記録(フィオナの携帯型の翻訳機に記録が残っていた)を知った後、ずっと黙ったままだった。
今はじめて口を開いたのだ。

 「ああ。しかし、あの火竜が飛竜であったクラウス・・・わたしの乗ってたドラゴンの名前だが・・・・・の孫だったとはな。
 クラウス・・・わたしがいきなり居なくなって、悲しんだろうな・・・・。」

 レオンの思いは昔に戻る・・・・・・。  


 

 レオンが8歳になる頃、父のシュタインバッハはレオンをある草原に連れ出した。

 そこは王都の北西に位置する広い広い草原地帯で、更に北西の方に高い山々がそびえている場所であった。
ところどころに、森と呼べる規模の木々の密集する場所もある。

 「父上〜〜。何処まで行くのですか〜〜?」

 自分より遥かに先にどんどん行ってしまっている父の背中に向け、レオンは思いっきり大声を張り上げていった。
しかし、シュタインバッハはレオンの声が聞こえているのかいないのか、更に先に行ってしまった。

 そのうち、レオンは父の姿を見失っていた。

 レオンは父の行ったであろう方向に向かいしばらく歩いていた。
そうするうちに、辺りの景色は、うっそうとする森に変わってきた。 

 ギャ・・・ギャ・・・・・

 何の鳥の鳴き声だろうか。森の上のほうに聞こえている。レオンは不安になってきた。

 朝にここの草原地帯に来たはずなのに、まるで夜になってしまったかのように辺りは暗かった。
ここら辺の木々は背が物凄く高く葉の茂りも良いので、昼であっても地面の辺りは真っ暗なのだ。
その為、夜行性の獣が徘徊する危険な森なのだが、そこまでレオンは知らなかった。

 レオンはそのまま、森の中を道のようなものを辿っていった。 
辺りには危険な獣の気配するものの、それらが襲ってくることはなかった。
 

 1,2時間ほど歩いただろうか。突如、森が途切れ岩がごろごろと転がる山際に来ていた。
 
 崖のようになっている所から下を見ると、4,5ミード(1ミードはおよそ1メートル)ほど下に窪地が見えた。

 窪地の真ん中は何かの巣になっているようだった。

 レオンは動物が大好きだった。そのせいか、思わず巣の方に歩き出していた。
しかし、その途中でその歩みが止まる。

 ある獣の気配がする。それも1,2匹と言う数ではなかった。

 そのとたん、巣のほうに向け、何頭もの獣の姿が飛び出してきた。

 その獣は、森の中を素早く駆けぬけ獲物をしとめる
『森のハンター』の異名を持つ『ジャングルタイガー』であった。
『ジャングルタイガー』は『セイバートゥースタイガー』の一種で、鋭く長い牙を持つのが特徴である。

 その獣が7,8匹で何物かの巣を襲っているのだ。

 レオンはどうしようか迷った。

 まだ魔法の力も発現していない。剣の腕が立つとはいえ、子供の自分一人である。

 そうするうちに、巣の方から何かの鳴き声が聞こえてきた。
それは、レオンが今までに勉強した言語の中の一つの言葉の響きがあった。

 《お前等、来るな〜。俺を襲うと、とうちゃんとかあちゃんが帰ってきて、お前等を襲って食っちゃうぞ!》 

 それは、今までに習った言語の一つ『ドラゴンロアー』というものであった。

 『と言うことは、襲われてるのはドラゴン?まさか・・・・。ドラゴンはあらゆる動物・生き物のうちの王様じゃないのか?』

 《ぎゃあ・・・・!!》

 ドラゴンの悲痛な叫びを聞いたレオンはもう迷っていなかった。  
崖の上からジャンプすると、巣の傍でのた打ち回ってるドラゴンに向けて駆けて行く。

 そこにいたドラゴンは、まだ小さな子供であった。人間に直すと丁度レオンと同じ位の歳だろうか。
そのドラゴンの子供は2匹のジャングルタイガーに牙を立てられていた。

 そのドラゴンの奥の巣の中側には、うずくまっている別の小さなドラゴンがいた。

 レオンはドラゴンに牙をたてているジャングルタイガー2頭を手に持つ大剣で薙ぎ払い
更に襲おうとしている別の4,5頭に剣を向け威嚇する。

 《お、お前・・・・・・誰?俺達を助けてくれるの?》

 ドラゴンの子供は声をかけてくるが、レオンは答えている暇がなかった。

 1対8の闘いである。

 最初に襲ってきたジャングルタイガーはレオンの大剣の一振りで軽く真っ二つになった。

 次に襲って来たのは2匹であった。レオンは落ち着いて片方を倒したが、もう片方の牙が肩をかする。

 「ぐ・・・!。」

 肩の痛みに耐えながら、大剣を構えなおす。

 残りの5匹は、一斉にレオンに向け襲ってきた。
剣で2匹は追い払ったが、残りの3匹にやられてしまった。

 レオンは3匹の内1匹に倒され、残りの2匹に右肩と左腕に牙を立てられてしまったのだ。 

 「ぐぅあ・・・・!!!」

 残りの4匹も、にじり寄ってくる。

 レオンは両半身に走る激痛の為に次第に意思が遠くなっていった。

 意識がなくなる間際、レオンは巨大ななにかが飛んでくる羽音を聞いた。
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時を越えた宿命〜第5話〜その09〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:48

 それから数時間後のことである。

 レオンは洞窟の中のような場所に置いてあるベッドの上で意識を取り戻した。

 「おい、お前。目を覚ましたのか?」

 たどたどしくはあったが、自分たちシンフォニュート王国の言葉で声をかけられ、レオンはその声の主を探した。

 すると、その部屋の向こうに、さっきの戦いで襲われていたドラゴンがいた。
ジャングルタイガーに襲われたであろう箇所を見ると傷口はまだ痛々しかったが
さっき見たときに比べほとんど無い物と同じくらい小さかった。

 その隣には、そのドラゴンより一回り小さなドラゴンもいた。

 「ありがとうな。妹がいたから、俺、お前を助けれなかった。
 もうすぐ、とうちゃん達が帰って来るから、お前、もう少しここにいろ。」

 その隣にいたドラゴンも、レオンに向けて挨拶した。このドラゴンはドラゴン語で話し掛けてきた。

 《ありがとう。お兄ちゃんと私の二人とも体調が悪かったので、森のハンター達が私達も襲ってきたの。》
 
 レオンもドラゴン語で二人に返した。
 
 《いや。無事だったなら良い。 僕は騎士だから、弱いものを助けるのが努めだからね。》

 そう言う会話をしていると、そのうちニ匹の大きなドラゴンが入ってきた。
そのうちの片方は着地するなり、レオンのほうに寄ってきて、一気にまくし立てた。

 《君がレオン君ね。今日のドラゴン族の代表全てが集まる会議に
 唯一招いた人間二人のうちの一人がいなくてさっきまで大騒ぎだったのよ?
 みんなで草原を探したら、あなたがジャングルタイガーにやられてたの。
 びっくりしたわ。でも、命までは、取られてなかったようなのでここに連れてきたの。
 ここはその会議が開かれる建物の中にある、控えの間よ。
 いくつもの控えの間があるから、ここにいても問題は無いわ。ゆっくり傷を治すのね。》
 
 もう片方のドラゴンも話し出す。 

 《そうだな。おまえは人間だが我がドラゴン族の仲間を助けてくれた。
 まあ、そのことが無くても、お前は今日から仲間になったのだがな。
 最初は、俺は気に入らなかったのだよ。人間が嫌いだからな。
 しかし、今日から、考えを改めるとしよう。
 そう・・・・。お前は今日から、我等がドラゴン族の真の仲間だ。》 

 《あなた・・・・そんなこと勝手に言っても良いんですか?》

 《ああ・・・前からドラゴン族の王、バハムラス様より直々の通達があったからな。
 だが、俺は気に入らなかったんだ。しかしレオンを見てると、人間も捨てたものじゃないと思う様になれる気がするよ。》

 そう話をしていると更にもう一匹、金色に輝く大きな竜が入ってきた。話す言葉はもちろんドラゴン語である。 

 《お主が、レオンか・・・・。話は、このクラウスより聞いておる。クラウスの息子達を助けてくれて礼を言わねばなるまい。  
 今夜、お主らの歓迎の宴を開くので、お主にも出てもらえないかのう?体はまだ痛むかも知れぬが・・・。
 いや、クラウスの息子達が助けられなくても、もともとお主達のための歓迎の宴は催すつもりじゃった。》
 
 そう言うと金竜は、レオンのほうに顔を寄せた。

 《今夜の宴には各地より来た、各ドラゴンの種族の代表も来ておるからの。
 お主が今後、何処に行っても、そこにいるドラゴンはお主に協力をするじゃろう。
 ・・・おっと、詳しいことは、今夜の宴でのう。それでは、今夜また会おうぞ。》

 そう言うと金竜は何処かに飛んでいってしまった。

 《レオン君、私達ドラゴン族の全てを治める王様の、バハムラス様に気に入られるとは凄いわね。
 ああ見えて、気難しい方なのよ?》

 二匹のドラゴンのうち少しだけ小さなドラゴンが話し掛けてきた。
そして、それを止めるもう1匹のドラゴン。

 《おいおい、フェイリア。そういえば、まだ自己紹介もしてないだろう?すまぬな。レオン君。
 私は、飛竜族を治めるクラウス。こっちにいるのが妻のフェイリアだ。
 あっちにいるのが息子のラグスと娘のシリンだ。さっきいらっしゃった大きな金竜が、我等が王のバハムラス様。
 さあ・・・夕食の宴まではまだ暇がある。少しまた眠って、傷を治しなさい。お前達、レオン殿に挨拶をしたら部屋に戻るぞ?》

 そう言うと、1匹1匹がレオンに挨拶をして、皆どこかへ飛び去ってしまった。 

 一人になったレオンは、傷の痛みもあったが何故か眠くなってきたので横になった。

 レオンは眠りにつく前に、自分がこれほどドラゴンたちに気に入られるようなことを
・・・・・そう、一体何をしてきたか考えていたが、答えは見つけ出せなかった。
考えているうちに、レオンは自然に眠りについていた。
 

 しばらく眠ったあと、レオンは係りのものに起こされ夜の宴に出た。

 係りのものに案内されながら、レオンは回りをよく見た。

 控えの間は、洞窟の中のような天然のものであったが、この通路は人の手によってキチンと作られている。

 まるで、城の通路の様である。 

 宴の会場は、たくさんの人でいっぱいだった。ここもキチンと作られていた。王宮の食堂の様である。

 ふと・・・・レオンはまだ、自分が寝ぼけているのだと思った。

 「レオン。そこにいたのか、こっちへきなさい。」

 父のシュタインバッハだった。手を大きく振りレオンを呼ぶ。

 「父上、ドラゴン族の会議のその後に催されると言う宴ではないのですか?ドラゴンの姿がまったく見当たらないのですが?」

 「確かにこれはその宴だ。だが、よく考えてみよ。あの大きな体のドラゴンたちが何百と集まれる場所があると思うのか?」

 「・・・・。」

 「だから彼らは会議の時、そしてその後もしばらくは人の姿をしているんだよ。・・・ほら。」

 シュタインバッハが指を指すその方には、小さな子供達が走りまわっていた。年の頃はレオンと同じくらい。
そのうちの一人は、包帯を巻いて、大きな布でいたる所を覆っていた。包帯の様にも見える。

 その包帯を巻いた子供がレオンに気づいて近寄ってきた。その後ろを小さな女の子がついてくる。

 「お前、治ったんだな。俺ももうすぐ治るぞ。・・・ん?何ポカンとしてるんだ?俺達の姿がおかしいのか?」

 その男の子はシンフォニュートの言葉で話し掛けてきた。しかし、レオンはなにも言い返せなかった。 
その様子を見てシュタインバッハはレオンに更に言葉をかける。

 「分かったか?レオン。あっちに、ほら・・・・それぞれのドラゴン族の長がいらっしゃる。クラウス殿もおられるぞ?」

 レオンが見た方にあったのは、普通の王宮での光景と代わらなかった。

 恐らく真ん中にいる豪華な椅子に座る豪奢な金色の服を着ているのが王のバハムラスだろう。

 その回りの机に、自分の種族を示す色の服を着た各種族の代表がいる。

 クラウスは飛竜を表す緑色の服を着ていた。
レオンのそばにいた子供はレオンが自分達のことを見ていないのに気がつくと
つまらなそうにしていた。

 「じゃあな、レオン。また遊びにこいよ?行くぞ、シリン。」

 「またね〜。」

 そう言うとラグスは妹のシリンを連れていってしまった。

 不思議な思いを抱いたまま、レオンは宴に参加していた。
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時を越えた宿命〜第5話〜その10〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:49

 そうして・・・・・・・宴は最高潮に達する。

 その時、バハムラスが立ちあがり声を張った。

 「みなに言うことがある。今日から、我々ドラゴン族の仲間になる一人の人間の若者がおる。
 シンフォニュート王国の若き騎士。レオン・ステールンである。」

 そう言うと、レオンはバハムラスに呼ばれる。

 各ドラゴン族の代表が集まる宴の中、レオンは、一段高い場所へと案内された。

 レオンが壇上から皆を見まわすと様々な年齢の人達がいた。
男性、女性、老人、子供。

 『この全員がドラゴン?信じられないな。』

 「先ほど、クラウス殿の息子と娘を身を呈して助けた勇気ある少年である。
 しかし、それが無くても我々は彼を我々の仲間に受け入れたじゃろう。
 それは彼の祖先に関係しているのであるが、それをこの場で言う必要は無かろう。
 ゴホン・・・・。それでは、改めて緒卿に告げる。
 彼が戦場で戦う時に、彼の手助けをしようと言うものが現れた。
 それは・・・・・飛竜のクラウス殿である。」

 そう言うとクラウスは、レオンの傍に来る。

 「レオン君。先ほどは失礼した。
 今バハムラス様が仰られた様に、さっき息子達を助けてくれなくとも
 今日の宴で君がドラゴン族の仲間になること、そしてわたしが君を助けることを
 皆の前で発表するのが決まっていたのだ。
 そう・・・もともと・・・っと。それはまた今度な。」

 そこまで言うと、クラウスは一歩下がった。
そこに、バハムラスがやってきて、レオンの肩に手を添える。 

 「さあ・・・これから、我々の仲間となった少年を、みなで祝おうではないか。」

 レオンは場内からわれんばかりの拍手で迎えられた。






 翌日・・・・レオンはドラゴンの姿に戻ったクラウスの上に乗っていた。

 その脇を三匹のドラゴンが一緒に飛ぶ。

 「どうだい?レオン君。空を飛んだことはあるかい?これからも立派な騎士を目指して頑張ってくれ。
 そうすれば、君は立派な竜騎士となるのだよ。
 だが、滅多に私達のように、気の合う騎士と竜はいないのだよ。
 それが、人間世界では、ドラゴンをなだめるのは難しいとされてる所以だな。
 まさに、人間とドラゴン、それぞれの神の思し召しだな。」

 レオンは産まれて始めて空を飛んだ。その飛翔感は何物にも代え難かった。

 それから足繁く、レオンはクラウスの元を訪れた。

 その度に、空を飛ぶことができた。

 それからレオンは騎士として更に腕に磨きをかけ、幾度もの戦争でクラウスと共に竜騎士として活躍していく。

 レオンの名が『蒼天騎士』として有名になるのに、そう時間はかからなかった。


 
 
   
 レオンはしばし感傷に浸っていた。・・・・ふと気がつくと、シンシア、シヴァンも悲しそうな顔をしているのが見えた。
レオンは2人を元気つけるためにも、気を引き締めなおした。 

 「今回、全てのハンターズが倒れてたから、幸い魔法のことが、奇跡的に周りに知られることなかったが
 これからは気をつけよう。我々は他の時代から来たのだと言うことも隠さねばならん。
 サムスと言う女が言ってた様に、いくつもの組織とやらが我々を狙っているなら、十分気をつけねばならんからな。」

 
 こうして、森の探索が終わった翌日の夜は更けていった。
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時を越えた宿命〜第5話〜その11〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 12:50
 その夜遅く、シヴァンは何かに呼ばれたのか突然目を覚ました。

 「なんだろう?なんか懐かしい声に呼ばれているみたい・・・・。」

 シヴァンは戦闘用の服に着替え、ケインを持ち、部屋を出る。
部屋を出て共有スペースにつく。皆寝ている様だ。
そっと表の扉を出て、シヴァン用のカードキーを使い鍵をかけなおす。

 街は皆寝静まっている様だった。

 レオン達はハンターズであったが、その住居は居住区の中でも比較的閑静なところにあった。
その静かな街から歓楽街のある商業区の方へ歩いていく。
次第に、昼の町中のような喧騒の中を歩いていくシヴァン。

 そして、商業区の一角にあるハンターズギルドの建物に入っていった。
ハンターズに登録してあるシヴァンは難無く入れた。ギルドは24時間営業なのだ。

 ハンターズギルド内は静かだった。職員の姿はなく、応対用のソリッドヴィジョンが幾つも並んでいる。
その幾つもが客が居ないせいで自動的に電源が落ちており、静かであった。

 シヴァンは上の階に進み、その奥のハンターズしか入れない区画へと入っていく。
更にその奥に、地表へのテレポーターがあるのだ。

 地表へのテレポーターは入り口を軍の兵士が見守っている。
こんな夜中に地表に降りるのが珍しいのだろうか、
また、年若いシヴァンが一人で地表に降りようと言うのが不思議なのか
警護の軍人はシヴァンのことを怪訝に見ていたが
軍とハンターズの間には相互不干渉の取り決めがなされている為に
何も言われることはなかった。

 地表に降りた後、空を見上げると月が綺麗だった。満月だ。
そして、シヴァンは周りを見まわす。一番最初に降りたのと同じ場所だった。

 『こっちだったよね・・・』

 最初の日、黒い人影を見たほうに進んでいく。

 しばらく進んでいくと、綺麗な歌声が聞こえてきた。
歌声は風に乗って聞こえてきているようで、ここで聞いていても綺麗なものだった。
その歌声を頼りに進んでいくと、この前に見た広場みたいなところに出た。


 歌声は更にその奥から聞こえていた。

 広場の奥の木々の間に、人一人すら通れないくらい狭い道のようなものがあった。
その程度では、前に見たときに発見はできないのも無理はなかった。

 そこを何とか通って、シヴァんは奥まで出た。

 木の陰から、さらに奥を見るとそこは広い広場みたいな所であった。

 周りは完全に木々に囲まれている為に、また開発区画から外れている為に
レーダーやマップの圏外の場所であった。

 そこの広場はたくさんのラッピ−が居た。ほとんどが黄色いものだったが、中には青いのも居た。
そして、ラッピーの何重もの輪の中に一人の少女が座っていた。

 歌を歌っていたのはこの少女なのだ。

 シヴァンは目を疑った。その少女はどう見ても、自分であった。
しかし、シヴァンは真っ白なハンターズの衣装を着ているのに対し、その少女は真っ黒な衣装だった。
頭の上のぽんぽんの付いた帽子は、シヴァンは白色でピンクのぽんぽんに対し、その少女は黒で青いぽんぽんだった。

 一つの歌が終わると、その少女はラッピー一匹一匹を見まわしてまた歌を歌い始めた。

 ラッピーもみな大人しく聞いていた。歌の旋律に沿って、体ををゆっくりと右に左に揺らしていた。 



 ふと、シヴァンの気配に気がついたのか、歌を歌っていた少女はシヴァンの方を見て歌を止めた。
それにつられて何十、いや何百というラッピ−もいっせいにこっちを向く。

 「あなた、こんな夜中に、どうしたの?・・・・・え?・・・・・私?私は・・・・・・気晴らしかな?」 

 何も答えず、ただじっと少女を見つめるシヴァン。
少女はまるで自分が何してると問われたと思ったのか、取って付けたような答えを言った。

しばらくして、シヴァンは答える。

 「私は・・・誰かに呼ばれたような気がして・・・・。その気配をたどってたら・・・・・。」

 「ここに来たのね。」

 首を縦に振るシヴァン。

 「ここにいらっしゃい。一緒に歌を歌いましょう。」

 そう言うと、人が一人通れるくらいの隙間が、ラッピ−とラッピ−の間に出来た。
 
 少女が座っている丸太の上に腰掛ける。そして、少女と同じく、シヴァンも帽子を取った。
傍から見たら、どっちがどっちか分からないだろう。

 シヴァンは周りを見まわした。綺麗な花がさいていた。
ラグオルの森の探索は2日位したが、このような綺麗な花を見たことは無かった。 

 そして少女はまた歌を歌い始めた。

 それは離れ離れになった家族を思い、残された子が父を母をそして姉を思う歌であった。 

 聞いてるシヴァンには少女が泣きながら歌ってる様にも見えた。
シヴァンもその歌に込められた感情に触れ、自然に涙が出てきた。 
  

 しばらくその少女が歌うのを聞いていたが、心地よい風が吹いているためか何故かシヴァンは眠くなってきた。

 眠りに落ちる直前に少女が囁く様に、シヴァンに言っていた。
眠りに落ちかけてるシヴァンには聞こえていたかは定かではない。

 「会いに来てくれてありがとう。今日はこのままお別れね。・・・・・・・・お姉ちゃん。」
 
 少女の歌を子守唄にシヴァンは深い眠りに落ちていく。



     (PSOオリジナル小説『時を越えた宿命』第5話「衝撃の森〜後編」完)
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時を越えた宿命〜第5話〜後書き〜
Gum [Mail]
1/4(Sat) 13:06

今回は森のエリア2の探索です。
もちろん、森エリアのボスとも戦います。

ネタバレになりますが、ドラゴンと戦っている時に
「この場面では本来なら、どんな会話が為されているのかな?」とか
「ここでいきなりこう動くのはやっぱりおかしいな、何かあるんだろうな」とか色々考えていて
それに設定等を付け加えて、ああなったわけです。

余り上手くもって行けなかったことが後悔の念に絶えません。

話の方は、探索開始とあって
主人公たち7人はまだまだ無事ですが、
これから先、パイオニア2内での組織同士の戦いも始まります。
その時には裏組織の連中は主人公たち7人をたびたび狙ってきます。

それをどう切りぬけていくか
また、タークスの中で7人はどのように戦っていくか
それも平行して出てきますので
楽しんでいただければ、幸いです。

なお、ここから先の話に
タークスの幾人かの方が出てきますが

「これは俺じゃねぇ。」

とか

「全然違うぞゴルァ!」

みたいなことはできるだけ避けてください。

なお、勝手に出すことはなるべく避けますが

「俺、何も聞いてねえのに出てるぞ!」

等と言う情報は、なるべく頂けるとありがたいです。

それから、誤字、脱字、言い回しの不備などは
メールで受け付けておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは第6話の後書きで会いましょう。
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