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アルシャード小説「力の違い」 第十二話 「クィーン&ポーン」 - アルフリート [6/10(Sun) 16:39]



アルシャード小説「力の違い」 第十二話 「クィーン&ポーン」
アルフリート [Mail]
6/10(Sun) 16:39
 真帝国特務隠密部隊『ロクサーヌ』は五人の精鋭からなる特務部隊である。それぞれにチェスの駒のような役割付けがなされており、『クィーン』の役割を持つ赤い髪のエイリアス、ルシュナ=アークはなんで遊撃にして強襲を行える最強の駒である自分がこんな辺境の地にわざわざやってこなければならないのか、よく分からない。
 ディアマンド級戦艦建造基地より10マイルも離れたフォースリップ基地の警備なんて横にいる奴に任せておけばいいのだ。

「なあ、『グレイス』」
 ルシュナのエイリアス部隊戦闘服の異様さにも見劣りしない、ミラーシェードに真帝国教会の戦闘用神官服(神官に戦闘とは何とも物騒な世の中ではあるが、神官と言えども愛を語るだけが全てではない)を着た寡黙な男は呼びかけたルシュナにただ振り返るだけだった。

「あたしらなんでこんな所で検問の手伝いなんてしなきゃいけないんだ?」
「それがデウス・エクス・マキナ様の思し召しだからです」
「……じゃあ、次の質問だ。ここに何がくるかお前は知っているか?」
「何が来ようとも、それはデウス・エクス・マキナ様の思し召しです。歓迎こそすれ、詮索なんて私の信仰を損なうだけです」
「……お前気楽だな?」
「デウス・エクス・マキナ様最高の使徒ですから」
 こんな調子でミラーシェードを光らせながら、ルシュナの気分を悪くしてくれる『ポーン』グレイスは真帝国特務隠密部隊「ロクサーヌ」の一員である。
 『ポーン』であるからにはコンセプトは分かっている。

 自分の持つ任務に一切の疑問を持たずに精密に、正確に任務をこなす完全機械化兵士。

 で、出来たのが『グレイス』だ。

 確かに全てを帝国神教の神、デウス・エクス・マキナの所為にすれば疑問など持たない。だが、こんな風に身内に対してのコミュニケーションを皆無とする兵士なんて場をギスギスさせるだけで何ら有望な事は無い。

「あーあー! なんでこんな奴と一緒に組んじまったかなあ!」
「それがデウス・エクス・マキナ様の試練だからです、ルシュナ」
「許してください、神様。もうちょっとマシな神の使途を作ってください、マジデ!」
「それは見過ごせませんね。デウス・エクス・マキナ様の意思を疑うのは真帝国人として恥ずべき行為です。悔い改めなさい」
「うるせえ、大体だな。こんな基地から遠い辺鄙な場所にあたし達のような歩兵を配備するんじゃなくて、5マイル先にいるゼイガード基地のハイデッガーをこっちに持って来るべきだろ? っっったく! 意味わかんねーなあ、まったく!」
 やけっぱちな女の声と敬虔な信徒の声がどこかちぐはぐに基地に響く。
 ひとしきり喋って落ち着いたルシュナは、再度検問に目をやるとそこにはルシュナの興味を引く人間がそこにいたのだ。



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