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- アルシャード小説「力の違い」 第一話 「語りの始まり」 - アルフリート [8/3(Wed) 23:55]
アルシャード小説「力の違い」 第二話 「光の始まり」 - アルフリート [8/3(Wed) 23:57]
アルシャード小説「力の違い」 第三話 「騎士の始まり」 - アルフリート [8/4(Thr) 0:00]
アルシャード小説「力の違い」 第四話 「黒刃の始まり」 - アルフリート [8/5(Fri) 0:19]
アルシャード小説「力の違い」 第五話 「任務の始まり」 - アルフリート [8/5(Fri) 0:22]
アルシャード小説「力の違い」 第六話 「仕事の始まり」 - アルフリート [8/5(Fri) 0:24]
アルシャード小説「力の違い」 第七話 「疾走の始まり」 - アルフリート [8/5(Fri) 0:33]
アルシャード小説「力の違い」 第八話 「特務の始まり」 - アルフリート [8/5(Fri) 0:36]
アルシャード小説「力の違い」 第九話 「破壊の始まり」 - アルフリート [8/9(Tue) 2:07]
アルシャード小説「力の違い」 第十話 「悪の始まり」 - アルフリート [6/3(Sun) 8:37]
アルシャード小説「力の違い」 第十一話 「特攻前夜」 - アルフリート [6/3(Sun) 8:45]
アルシャード小説「力の違い」 第十二話 「クィーン&ポーン」 - アルフリート [6/10(Sun) 16:39]



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アルシャード小説「力の違い」 第一話 「語りの始まり」
アルフリート [Mail]
8/3(Wed) 23:55
 星霜の彼方よりも遠い世界、されど隣人よりも近い世界。
 大いなる世界の大樹、ユグドラシルの一葉、『ミッドガルド』にてこの物語は展開する。
 かの世界にはかつてたくさんの神々がいた。
 だが、全ては機械神デウス・エクス・マキナが起こした大戦「ラグナロク」にてその身を打ち砕かれ、神々の欠片は地上に落ち、光り輝く欠片は宝石となった。
 その欠片を手に入れ、神々の意思を受け継いだミッドガルドの住民がいる。種族を問わず、運命に導かれるままに……。
 神々の欠片はシャードと呼ばれ、それを受け継いだものは神にの力を得る。
 彼らはその力に導かれるように波乱に満ちた人生を送る。その試練が神にいたる唯一の道だと、シャードが語るように。
 いくつもの試練が襲う苦難の人生を送る者、故に彼らはクエスターと呼ばれた。
 全ての種族を記せば紙面が尽きるので割愛させていただく、だが、このミッドガルドには多数の種族がおり、彼はその多数の種族の一人だ。

 かつて地上にて高度な文明を築き、神すらも創った不老の巨人族、古代種族『アルフ』。
 アルフのクエスター、金髪碧眼の痩身の青年。
 5000年を生き延び、額にある古代装置「レリクス」の操作装置「レセプター」の色ははぐれを表す無色。だが、彼の記憶は知っている、自分が倒すべき相手だけは。

 この物語は世界を蝕む虚無「奈落」の天敵、『光子の騎士』アルフリートの冒険の一つである。
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アルシャード小説「力の違い」 第二話 「光の始まり」
アルフリート [Mail]
8/3(Wed) 23:57
 レーザーソード

 古代種族アルフの超技術「レリクス」の一つ。80cmほどの高温の光を、長剣状に射出し続ける近接戦闘用兵器。
 金属棒から射出される高温の光の刃は、如何なる装甲も紙のように裁断する。


 風が荒野を流れている。草木の生えぬ堅い地面の上を砂を巻いて疾駆する。
 風は撫でる。岩を、砂を、日光から逃げるように生きているか細い生命を。
 この荒野に無音の場は無い。だが、生命の無い音が弱く、寂寥の思いを我々に想起させるのは、我々が生命ゆえの想いなのだろうか?

風がまたやってきた。
だが、今度の風はこの荒野への乱入者が巻き起こした力ある風だった。
風は走るのを止め、己の体を地面に降ろし、二本の足を使って地面に立つ。
空を飛行していたのは金髪碧眼の青年だった。白を基調としたゆったりとした服。青年が常人と違う証は彼の額にあった。まるでお伽話に出てくる魔法使いのようなこの青年は、ぞんざいな動きで荒野のひとかどの巨岩に近付くと腰から古めかしい金属棒を取り出した。金属棒に金属特有の光沢は既に無い。当然だ、これとは五千年の付き合いになるのだから。
金属棒は主の意思を感じ、己の役目をただ果たす。
金属棒から空気を灼いて光の刃が飛び出した。その光に古さ
も新しさも無い。光剣は変わりなき光を放ち、光剣は青年の右手によって軽やかに空を舞い、光剣は空気を焼き、巨岩すらも焼いて音も無く両断する。
 数万年振りの動作に巨岩は反応すら億劫というように鈍い音をたて、地面に落ちてしばし転がるとまた不動の物となった。
巨岩を両断した光剣の刃を納め、青年は巨岩の下を見る。そこには奇妙な事に一枚のコインがあった。
十数人がかりでも動かせないような巨岩の下にどのようにしてコインを置いたのだろうか?
しかし、青年は全て分かった顔でこう言った。
「シェルリィめ、毎回毎回良く隠し場所を考えるものだな……」
呆れたような口調で言った青年はコインを拾いあげると、その表面を少し撫でる。意味は無い。どうせ『賦与』されただけの普通のコインだ。対象がしばらく触れていれば『作動』するはずだ。
 案の定、しばらくいじっているとそのコインが映像を空中に投影した。映し出されたのは年の頃十歳ぐらいの少女。だが、そのあまりにも深い智惠を目に宿したこの少女を、外見通りの年齢として扱うには少しためらわれた。
その正体を知っているのか、青年はその少女の言う事を素直に聞く。まあ、しょせんこの映像は『録画』であって、『通信』では無い。文句や問い合わせは後々会った時にでも言わせて貰おう。
 少女は青年に向けて話し始めた。
「久しぶりじゃの、アルフリート」
 いささか時代がかった言い方だが、付き合いは腐りきって分解物が何も無くなって水になるほどの腐れ縁なのでもはや言う言葉も無し。

「今回の事件じゃが、お前さんのやった数々の行いの結果に絡んだ事件での。まあ、早い話が後始末じゃ」

 数々の行い――――青年、アルフリートは様々な事件を思い浮かべた。
 街を占拠していた真帝国軍を撤退させたあの事件だろうか?
 真帝国絡みの昆虫人間ターマイトの巣で暴れた事件だろうか?
そう言えば、先月は真帝国の基地を三個ほど潰したな?奈落にとり憑かれて、真帝国を滅ぼさん勢いでレリクス艦隊を操った事もあるがあれは私のせいではないからノーカウントだろう?

「先日お前さんが破壊の限りを尽くしてくれた真帝国艦隊の整備基地に奈落の気配を感知しての」

 待て、それは私の意思でやったんではないからノーカウントだと明言するぞ。まあ、奈落を退治するのがいい加減ライフワークと言うか、まあ、人生の目標の一つになっているので問題は無い。とは思うがやはり同じ事を毎度毎度毎度やるのはルーチンワークというか、飽きたと言う話になるわけだが…………。

「早速じゃが、この真帝国基地を強襲して奈落を退治せよ。手段と人員に関しては好きに使え、以上」

 こちらが断らないと分かっているからシェルリィの話の内容も端的で面白みも無い。まあ、それがアルフリートがシェルリィに対して築いた信用であり、信頼だ。無論、断る気は無い。
 どうしたものかと思う。だが、自分という者が何者かとそれなりに定義出来る者にとって、この思いはいまさらだ。
 だから、彼は遂行する――――

「さて」
アルフリートはコインを弾いた。
弾かれたコインは重力と与えられた力の狭間を軽やかに舞い、
「ならば果たさん。私らしい私の義務を」
 コインは彼が前進するために、『退路』の象徴として光剣に斬られ、蒸散する。

――――奈落の大敵、光子の騎士アルフリートは己の使命のために再度空を舞った。
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アルシャード小説「力の違い」 第三話 「騎士の始まり」
アルフリート [Mail]
8/4(Thr) 0:00
アルフリートの人生を語る上では古代種族アルフの種族特性を理解する必要がある。

 アルフは巨人族とも言われる。彼らは総じて背が高く色が白い。レセプターと呼ばれる遺跡兵器レリクスを操る宝石を額に付けていおり、数々の肉体処置を施されているため不老であり、長命である。アルフリートはかれこれ五千年も生きているのはレリクス兵器の有用性と不老のお陰である。
アルフが古代種族と名称されるのは、既にかの種族はミッドガルドからウートガルドと呼ばれる世界に移民してしまったからである。今や彼らの存在は彼らがかつてこの世界で栄華を誇っていた残滓を見るか、彼らの隠れ里 霊峰ミョルニルに行く事でしか証明出来ない。

では、何故アルフリートはミッドガルドに居るのであろう?

アルフがミッドガルドに居る理由は二つ挙げられる。
一つはウートガルドからの観察者。ミョルニルにいるアルフはウートガルドからなんらかの命を受けていると言われている。
もう、一つは『はぐれ』である。アルフ達にとって許されがたい大罪を犯したアルフは記憶を消されて追放される。
アルフリートもつい最近までは記憶を失っていた。

 彼の罪状とは全てのレリクスの情報を記憶したレリクス『ウルド』の作成である。彼はかつてウルドを作り出した罪深いアルフの一人として処罰されようとしていた。だが、奇しくも神々の大戦『ラグナロク』が勃発。彼はウルドをデウス・エクス・マキナの軍勢より守るために刑の執行を保留。アルフリートは必死の防衛戦を強いられた。だが、彼を生かそうとした妻 エリシアは自分の体を封印プログラムのコアとする事でウルドを誰にも手出しの不可能な時空の狭間に封印する。
 エリシアは封印時に彼と約束した。「世界を護って……アルフリート」と――――。
 記憶を失った後でも、その約束だけは覚えており、彼はミッドガルドを守り続けた。
だが、全てのレリクスの情報を記憶したレリクス『ウルド』が時空の壁すらも越えて奈落の侵略を受け、ウルドを封印、管理していたは、かつての守護者に救援を求めた。
かくして、彼の記憶は覚醒し、ウルドの管理権を自らに奪取。エリシアの代わりに奈落の侵蝕を受けて暴走した彼は全世界に向けて宣戦布告。
全てのレリクスを記録してあるウルドの特性を最大限に活用し、数々のレリクスを復活。レリクスの艦隊とも言うべき大軍勢を率いて侵攻を開始した。
真帝国軍は全戦力を持ってこれに相対するも圧倒的な技術差を持つアルフリートの軍勢に押され、ミッドガルドはアルフリートによって崩壊しようとしていた。
だが、そこに6人の勇者がアルフリートの元に辿り着き、全世界とアルフリートとエリシアを救うという奇跡を成した。
かくして、彼の記憶は蘇り、現在に至る。

そして、世界は新たな闇の胎動が始まっていた――――。
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アルシャード小説「力の違い」 第四話 「黒刃の始まり」
アルフリート [Mail]
8/5(Fri) 0:19

 アウトレイジ

 二m超過の大剣。騎馬ごと人を叩き斬るために作られた大剣は威力もさる事ながら、それを扱いこなせる筋力を持つ者は少ない。


 広い。
目の前に広がる耕地はただ広い。作物を植えて、管理し、収穫するためだけの土地が視界の全てにある。
人が作った人造の広大さの中にその男はいた。男は麦わら帽子に黒ガラスの丸眼鏡をつけ、鍬を振り上げて畑を耕していた。
シャツが倍の重さになるほどの汗をかきつつ農作業をする男に、昼食をとるために道を歩いていた農夫が声をかけた。
「シェルバさー、もうすぐ昼飯だべー、一緒に食うかー!?」
シェルバと呼ばれた男は顔をあげて、汗を拭いた。
「ああ、いただくよー!ここを耕したらすぐ行くから先に食っててくれー!」
そう言って彼は作業を続けるために、また鍬を上げた。
そんな仕事熱心な彼を見て、農夫は口々に言った。「シェルバさは相変わらず良く働くべさ」「あの荒野、あっちゅーまに開拓しちまったのもシェルバさのおかげだべ」「おめー、シェルバさ婿にもらったらどうよ?」「やだべ、おとっつぁん!」

そんな農夫達の声を聞き、男は広大な大地の中で作業に没頭する。
陽光は彼の体にただ柔らかく降り注ぎ、風は彼の体の熱を優しく冷す。
鍬の一振り一振りに体に心地良いほどの負荷がかかり、男は思う。
「ああ、幸せだ……」
また、一つ。今度は今までより強く風が吹いた。
「……だけど、この幸せ。長く続いた試しが無いんだよなあ?」
 その言葉はその通りだった。
「良く分かってるではないか」
風を伴い金髪の青年は、宙より地に降りた。
長年の既知だ。今さらこの登場の仕方にさほど驚かない男は、溜め息のように力弱く霧散しそうな気配で答えた。
「なあ、アルフ……いつも俺は思うんだ。どうして、俺らは戦わないといけないんだ?」
 問い掛けられた友人はその期待に応えた。口から流れたのは世紀を超えて生き長らえた事による経験則。
「それは問題の立て方からすでに間違いだ、ラウド・シェルバ」
「いきなり間違いとくるか……」
さすがに口調が腰砕けになる。単刀直入に物を言う人間であるとは知っていたが、友に自分の疑問の存在その物をいきなり否定されたのはさすがに予想できなかった。
アルフリートは苦笑を浮かべたラウドに立板に水と話す。
「そうとも、闘争とは交渉手段の一つに過ぎない。そして、『彼ら』の要求は単純だ。『この世を我々に明け渡せ』。払う代価は暴力による交渉相手。それが彼らがこの世に捧げる生け贄というわけだ。最初から言語を使用する気は彼らには無い」
ラウドは右手を振った。その言葉を追い払うために。
 ラウドもアルフリートの言う『彼ら』と何度も戦ってきた。
 だから、アルフリートの言う事は良く分かる。
 ――――『奈落』。
 彼らに理由は無い。その侵略策謀暴力悦楽疑念殺戮、全てに理由は無く、この世の全てに牙をかけ、この世の全ての和を解き、この世の全てを破壊する。
 その行為に理由は無い。少なくとも――世界と自分を全て破壊し、ただ全てを虚無とするだけの存在の正当性など――ラウドには思い付かない。
 だが、彼らはいつもどこかにいる。世界のどこかで全てを破壊出来る機を窺っている。
「だから、その疑問は私には足踏みにしか見えないな」
「やっちゃあいけない事か?」
「いいや、足踏みするべきだ。……特に人間は」
ラウドは表情を動かす。「意外」、と。
「そんな顔をするな。貴様を少しは分かっているつもりだ。戦いの力と技は勇者の『それ』を持ち、されど心は常に臆病者という真性の天の邪鬼の扱いなど……慣れたものだよ?」
「言ってくれるなあ、……やる気無くすぜ?」
「良いとも、貴様が参加しない分だけ私の使命の達成率は下がる。下がると言う事は私がしくじるかもしれないという事だ。……日常の平穏を求める者に問おうか?大破壊の可能性を看過する事は果たして平穏かな?」
 ラウドは足下の土を蹴り、立ち上がる。
「あーあー、仕方ねえなあ。やっぱ偽善は居心地ワリィ」
 そう言って自分を否定するラウドの顔は、どこか晴れやかで本来の彼の顔に近かった。
 ラウドは拳をアルフリートに突き出して、こう言った
「自分の偽善ごと奈落をぶっ飛ばすとするか?」
「分かってくれてなによりだ」
 ラウドは渋面の顔をさらにひねり、こう付け加えた。
「あと半日待ってくれるか?一応ここの人にはお世話になりっぱなしなのよ」
「農作業は楽しいか?」
ラウドは頬を掻きながら言った。
「ナスの収穫がアツい。試しと思って何種類か輪作始めたら……」
 ラウドは林のように視界を埋める――背の高いトウモロコシとトマトが西側に主に占領しているだけかもしれない――野菜畑を鍬で指した。が、両手を広げてもまだ余りある広さの畑がラウドの鍬の向こうに広がっていたことにアルフリートは半分感嘆半分呆れる。
「何種類ではなく数十種類じゃあないのか?」
「俺もここまでハマるとはなあ?」
 自分でも得体の知れない何かを言葉で表現するのは難しい。
アルフリートにも聞かれて答えるのが難しい事はあるし、ラウドにとってのそれは畑仕事になりつつあるようだった。
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アルシャード小説「力の違い」 第五話 「任務の始まり」
アルフリート [Mail]
8/5(Fri) 0:22
 魔導プログラム

 マナ集積理論の発見により開発された霊素計算機「セフィロト」の計算能力を利用して数々の超常現象を引き起こす呪式プログラムの名称。炎、冷気、雷、光。起こされる奇跡は古の魔法に負けじと劣らず。

 制服の女性がリノリウムの床を靴音高く歩いている。
 歩きではあるがその音の間隔は狭く、音は強めで急いている。
 制服は真帝国軍将校の制服。急いではいるものの最小限の動きで歩いているため乱れの無い制服の左腕にある腕章には銀の十字の紋章。
 制服の女性は金の髪を乱しながら廊下を闊歩し、腕時計の時刻を一目。

 制限時間はあと8秒、間に合え、間に合え!

 心の中で叫び、体は服務規程を遵守。叫びもしなければ、走りもしない。
 制限時間あと2秒で最高の自制心で強打しそうな扉を優しくノック。
「サディエス・アーりマン少尉、ただいま出頭しました」
 扉の向こうから落ち着いた男の声がする。
「入りたまえ」
 荒くなった息を飲み込み、サディエスは扉を開け、音を立てないように注意して閉める。
中にいるのはオールバックの茶髪の男性。胸の徽章は大佐の位を表し、腕の腕章には銀の十字。
――――ここは皇帝親衛隊『銀十字軍』本部。
目の前にいるのは銀十字軍隊長、ヴィルヘルム・グーデリアン大佐だ。
 時は金なり。彼はサディエスに対して簡潔に、そして速やかに任務の話を始めた。
「早速だが任務の話だ、アーリマン少尉」
「はっ!」
サディエスは直立不動で敬礼した。

世の中にはままならない事が存在する。いくら努力しようとも、いくら取り繕うともどうにもならない事がある。
例えば――

「サディエス・アーリマン少尉。本日この時刻をもってディアマンド級戦艦建造基地第42特別守備隊隊長を命ずる」
ヴィルヘルムのその一言にサディエスは目の前が真っ暗になった。


どういう事か説明が欲しい。私はヘマをやっていないはず、どーしてなのだろう!?……ああ、胃が痛い。
パッと見すると、なかなか良い任務のように素人の皆様は思えるでしょうけど、実は違うんです。この特別守備隊というものは『その建造基地の守備』を任されますが、

任務期間が戦艦の完成まで続くんです!

ディアマンド級戦艦は完成に5年を要するため……、
5年間閑職に追いやられるのと同義!というか、これは立派な左遷!?
ああ、さようなら。グラズヘイムの華麗な日々。うう、きっと私は建造基地の整備長にずーっといじめられる運命なのね?うう、……泣きたい。
だが、任務は任務。サディエス・アーリマン少尉は軍人として潔く、目的地に速やかに移動した。左遷の場所にも優等生らしいサクサク移動してしまう自分に少し自己嫌悪してしまうのであった。
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アルシャード小説「力の違い」 第六話 「仕事の始まり」
アルフリート [Mail]
8/5(Fri) 0:24

 じーしーだぶるえっくす―けいたいがたキャノン

ゼネラルマテリアルという てんじょうてんげゆいがどくそんてきに スバラシー ところがつくった ながいてっぽう。
ワルいヤンキーもこれでゲキイチだ、イエー!


 ゼネラルマテリアル社はミッドガルドで一、ニを争う輸送会社である。その業務は多岐に渡り、無謀とも思われる取引を星の数ほど成立させてきた剛腕を持つ。
 それはゼネラルマテリアル社が選り抜きの有能な人員に対してどこよりも公平な信賞必罰を用いているからである。有能な者こそ相応しい報酬と名誉を。それがゼネラルマテリアル社である。
 そのゼネラルマテリアル社の社員の中でも最も有能であり、外向的に、策謀的に、武力的に自社の商取引を単独で成立させる特殊工作員がいる。ゼネラルマテリアルの社員は彼らの事を尊敬と畏怖を込め、『エージェント』と呼ぶ。
 有給休暇無き、文字通りの企業戦士は、今日もその一流の腕を振るう!





 ……はず。










 積層都市バルトロマイ ゼネラルマテリアルインダストリィ
     バルトロマイ支社     二十三階三十八号室

その部屋のエントロピー係数はただただ増大していた。書類で作った紙飛行機という名前のゴミがそこら中に領土侵犯しているからだ。
その紙飛行機作りに興じている白シャツ黒ズボン黒髪の男は今もデスクの上足を放り出して楽しげにこう言った。
「ぶぅ〜ん♪」
また飛行機が部屋の中を旅立った。結果は開いたドアに阻まれ、墜落。
だが、彼にとって重要なのは墜落よりもドアを開けた人間だった。彼は床に散らばった紙屑達を一瞥して、一言。
「相変わらず『仕事』に精が出るね、ヨーテ君」
「ウォン部長ー!?」
紙飛行機を作っていた男――名をヨーテという――は自分が散らかした部屋のゴミを分身が見えるハイピッチで片付けた。
「部長!今日は何の御用でやがりますか、コンチキショー」
「……ヨーテ君、相変わらず言葉がファジーだね」
ゼネラルマテリアル社の昼行灯部長ことパトリック・ウォンはヨーテの上司だ。一見すると窓際一直線の人格だけが良い庶務二課置物部長だが、それは彼の有能さを隠す仮面に過ぎない。
「部長、ファジーなんてとんでもない。こう見えても最近淑女の皆様にメガヒット『薔薇の花咲く場所で今日もイッとく!?』の作者はオレなんですよ!」
仕事の上司の前で副業自慢するのはどうかと思うウォンであった。
あ、よく見たら書類と一緒に原稿用紙も紙飛行機の材料に……。
「まあ、副業は仕事に支障を出さない程度にね?それでは、今日もし――――」
 グータラ社員のヨーテは両手でポーズを取ると、ウォンのセリフに割り込んだ。
「し、『獅子舞い』ですか!?」
それはマーライオンのポーズ――――と、ウォンは心の中でツッコミを入れた。

ちなみにこの世界の名はミッドガルドである。この世界の住民は青い星の事情なぞ知るよしもない。

 ウォンは部下のお茶目を朗らかに笑ってやり過ごすと、
「今日のし――――」
「し、『シーラカンス』は太古のロマンでドキがムネムネしませんか!?」

しつこいようだが、この世界の名はミッドガルドである。この世界の住民は青い星の事情なぞ知るよしもない。知ってるはず無いんだってば!

 二回ともはぐらかされたウォンはこれ以上ない朗らかさでこんな事を言った。
「ヨーテ君……北の大地の風はとても寒いって知ってるかい?」
「やあ、勤労意欲充填率120%です、部長――」
 ウォンは朗らかな笑みを安堵の笑みに変えてヨーテに話した。
「やる気になってくれて嬉しいねえ。今回のお仕事はそんな君になら簡単だよ、ヨーテ君」
「ハッハッハ、任務達成率一億%、コードネーム『00ワンダフル』なヨーテ君ならどんなガールもワンコロだぜ?」
それを言うならイチコロだと言いたかったがやる気になっているヨーテに水を注す気は無いウォン。彼は速やかにヨーテに向かって書類封筒を突き付けて、
「ささ、これが仕事の内容を記した書類だ。早速確認してくれないかい?」
ヨーテは気取りハンサム五割増の顔で、優雅に書類を受け取った。ウォンはどこぞのコメディ役者のようだと思った。
すると――――
「ヨ―――テ――――!今度こそ一緒に仕事するんだからねー!」
「ヤベッ!」
ヨーテは廊下から響いてきた少女の声にとっさに反応。中に引いて開けられる扉にイスを当ててつっかえ棒にした。
呆れ顔でウォンが言った。
「ミカ君は相変わらず苦手なのかい?」
「あと、五年経ってナイスバディになったら考えますよ。あ、そうそう部長」
「うわわ、何するんだヨーテ君!?」
急ぎで荷物をまとめたヨーテは、ウォンの右手を素早くロープの片方で縛ると窓に向かってスキップランラン助走し、
「あちょー」
気の抜けた掛け声で窓を蹴破る。
ここは二十三階。
つまり、窓を蹴破って外に飛び出すとヨーテは落下すると言う事であり、
「ヨヨヨヨーテくぅ〜〜〜ん!?」
ウォンがヨーテの体重のかかったロープに引き摺られる羽目になる。
「部長、いってきま〜〜す」
何とか窓際でとどまったウォンは、階下から聞こえてくるヨーテの脳天気な挨拶に殺意すら覚え、やっと体重がロープから抜けた事にようやく一心地付いた。
そして、部屋のドアが開けられた。ドアの蝶番だけを破壊すると言う細かい荒技を敢行したミカが飛び込んできた。
「あ!もう逃げられたか〜〜」
悔しがるミカに苦笑したウォンは何気なくロープを手繰り寄せた。予想通り、ロープの先には紙切れが付いており、

『まだまだ甘いなメンチ君、フハハハー』

読んだミカが悔しがった。
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アルシャード小説「力の違い」 第七話 「疾走の始まり」
アルフリート [Mail]
8/5(Fri) 0:33
パンツァーI

真帝国陸軍が制式採用しているカバラ式自動二輪車の事。
高速機動型であるIは真帝国陸軍の最強兵器の一つである。そのパンツァーIに跨がり、高速機動から騎乗槍での突撃を行う機甲槍兵――パンツァーリッターは地上戦での花形であり、才能と人格と実力を兼備えたエリートの証でもある。


 バーツ・ギアーズは真帝国軍から脱走した精悍なパンツァーリッターである。
バーツにとって、真帝国軍を脱走したのはそれなりに昔の事であった。金の髪の間から時々見える十字の傷の古さが、彼の戦歴を物語る。
その栄光は時間と言う名の埃の中に埋もれ、取り出すのが少々難しい。
だが、真帝国の前線から脱走して彼が行き着いたのは、パンツァー傭兵部隊『雪豹隊』である。彼はそこで武勲を立て、今は隊長を務めている。仲間には彼と同じ真帝国軍のやり方に疑問を持った脱走兵がいる。彼らは部外者であった自分を差別せず、その実力を正当に評価して頼りにしてくれる。また、戦友が出来たのを彼は嬉しく思い、バーツはその期待に応えたいと思っている。
そして、応えるために、薄紫色の瞳に力を込め、命を賭けて突撃しようと思う時もある。

そう、例えば……。

バーツの実力を持ってしても抗えぬモンスター―最悪な事に雪豹隊の宿泊地を縄張りにしていた――ロック鳥が奇襲してきた時は――――。




「総員退避!」
バーツが声を張り上げた。だが、周囲はすでに戦場のそれとなっている。声は別の怒鳴り声に紛れ、悲鳴と叫び声に汚辱されて消失する。
ロック鳥とは体長20を超える鳥だ。その威容は生物というより、もはや巨大な質量を持った山のそれだ。隊員達は休息時に不意を突かれた事もあって、その大きさに畏怖して足をすくめ、次々にロック鳥の大岩ほどもある嘴に摘まれていく。
マズい……。
バーツは即座に腹を決める。
ロック鳥の畏怖に勝る物。
それは突撃と言う名の希望の追及。
「コォ――――リングッッッッ!」
バーツの叫びは戦場を確かに駆け抜けた。音声認識機構がその叫びを自分の主人と断定。

その叫びが確かであるならば、鋼鉄の黒馬は如何なる場所でも現れる!

宿泊地のテントがロック鳥の羽ばたきに乱れ飛ぶのをかいくぐり、バーツだけのチューンがなされた愛機が、主人の元へと疾走する!
バーツは己の元へ来たパンツァーIに騎乗するとポップアップ機構を展開。エンジンとフレームを損傷から守る前輪のすぐ後ろ、前面装甲部がサイドにスライド。四本の伸縮式ランスがそこに収納されており、バーツはその一つを左手で取り出すとトリガーを引いた。
すぐに伸縮式ランスが金属が高鳴る音と共に、長さ2mの本来の長さを取り戻し、突撃の準備は完了。
だから、バーツは全力でアクセルを捻る。
カバラ式エンジンのマナがシリンダーの中で炸裂し、無軌道な力がギアに巻き上げられ、全ての力の行き先は後輪へと伝わり、暴走という名の抗議が前輪を浮かし主を己から引き剥がす事で始まろうとしていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
だが、バーツは前輪に体重をかけ、己の膂力で暴れ回ろうとするパンツァーを抑え込み、暴走は全て疾走のための力となる。
瞬間移動のようなロケットダッシュでパンツァーは前に征く。
「おお、バーツ隊長――!」
 バーツが単独で突撃するのを見た隊員が喜びと期待の喜声をあげた。

 ――その声に応えるぞ、パンツァー!

狙いはロック鳥の頭部。屋根の舞い上がったテントの支柱を足場に、バーツは宙を飛ぶ。
左手に構えたランスの切っ先をロック鳥の右頭部に引っ掛けるように突撃!
「当たれッッ!」
だが、バーツは忘れている。
ロック鳥は巨大な『鳥類』なのだ。
つまり、奴は巨体であると同時に、
――鳥類と同等の敏捷性を持っている!

羽ばたきの一つでロック鳥の巨体が空に浮いた。
「!!」
バーツは予想外の巨体の動きに虚を突かれ、ランスはただ空気を突き刺すだけ。
自分の前をただ泳ぎ飛ぶ矮小な生物に気を惹かれたロック鳥は上に向かって羽ばたきを一つ。
慣性でまだ空にいるバーツに向かって容赦の無い足の一撃を入れようとした。

だが、それを光が押し止めた。
天上遥か彼方より撃ちこまれた光の柱と言うべきレーザーがロック鳥の羽根を撃ち抜いたのだ!
バーツまであと1mと離れていない位置で足の一撃は通り過ぎ、撃たれて体勢を崩したロック鳥は耳を掻きむしるかのような轟音と共に転倒。
そして、倒れたロック鳥に追撃が走る。刃渡り3mは超えそうな巨大な鉄塊を振り上げた男が、黒鉄の爆布とも言える無慈悲の斬撃でロック鳥の首を叩き斬った――――!
 男の背後にロック鳥の巨大な頭部が落ちる。斬撃を放った男は得物の重さを感じさせない軽やかな着地。
男はあれほどの剛技を放ったにもかかわらず、息一つ切らしていない静かな声でバーツに問うた。
「知っているか、バーツ」
バーツはその声の主を知っていた。
「お前は――――」
「ニワトリをシメる時は躊躇無く一発で首を切る。中途半端に生きているとマズくなる成分が出るらしい。ま、あれは大味過ぎて不味そうだが」
大剣の男、ラウドはバーツの驚きを楽しむかのように、シニカルに笑いながら好き勝手に話していた。
すると、だ。バーツの後ろからまた見知った声がかけられた。
「災難だったな。だが、私には僥倖だ。何しろ、責任ある身のお前を猫のように借りていくわけにはいかんからな。それ相応の代価が必要になる」
 金髪の古代種族アルフの男、アルフリートだ。さっきのレーザーから察するに、彼自慢の攻撃衛星『魔弾の射手(フライシュッヘ)』の衛星軌道からのピンポイントレーザー射撃なのだろう。
相変わらずマイペースに自分にトラブルを運びこむ二人組に、バーツは呆れ顔でこう言った。
「で、また世界の危機とやらか?」

二人は口を揃えてこう言った。

『そうとも!』
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アルシャード小説「力の違い」 第八話 「特務の始まり」
アルフリート [Mail]
8/5(Fri) 0:36
 エイリアス

 真帝国聖務枢機卿達の手により作られた複製技術を指す。その技術の適応範囲は広く、塵芥から人間まで、無機質有機質を問わない。この技術により、真帝国は優れた業績をあげた人間のエイリアスを作りだそうとするも、未だ生成されるエイリアスには個体差が多く、まだエイリアスは多くの問題点を抱えている。



サディエスは飛空挺の運行の遅れと『栄転先』の上司と護衛してくれる人間が予定より遅れている事に腹を立てていた。
何せ、かれこれ一時間の遅れである。乗り物は遅れてしまうのが世の常ではあるが、時間を守るべき人間が遅れるのは几帳面なサディエスとして我慢出来る所では無い。
――これは嫌味の一つでも言うべきか?
まあ、上司には止めておこう。軍隊は縦の関係には厳しいのだ。上が言った事は赤でも黒でもジンクホワイトでも白と言ったら白なのだ。
「れ、レイズだとぉぉぉぉぉぉ!?何を賭けると言うのだ、お前はーー!」
「ジールとウォン部長の命を賭ける。二人は俺の友人と上司、つまり……俺自身も同然ていうか、お前の物は俺の物――――!」
「何だってーーー!!??」
何やら近くでやっている賭けポーカーが五月蠅い。店員は彼らを注意しないのだろうか。
 規律も守れぬ不詳の上司と護衛に待たされ、回りを省みぬ騒音公害に憤慨していたサディエスが不思議な格好をした少女に声を掛けられたのは
「失礼、貴方がサディエス・アーリマンさんですか?」
サディエスは目の前に現れた茶髪の少女を見て唖然とした。

 ――何?この趣味性の高い風体をしたメイドは――――?

小柄でスマートな肢体に可愛くマッチした黒いミニスカートのメイド服に猫の耳とリボンを付けた尻尾、有り体に言うと猫耳メイドであった。
サディエスは恐れながらも一応銀十字軍の風下の末席にいる軍人である。こんなグラズヘイムの繁華街にいそうな可愛らしい人間に声をかけられる言われは無い。
だが、サディエスの優秀な頭脳は一つの事実を思い出した。
真帝国の中でも皇帝に次ぐ実力を持つとされる聖務枢機卿アルフレッドが所有する隠密部隊『黒十字』。表向きはアルフレッドの使用人とされているが、その実態は帝国中の有能な人間をクローンニングして鍛えあげた存在――『エイリアス』――の部隊とされている。
つまり、彼女がその黒十字の人間だとすれば自分の『護衛』につくのも納得だ。聖務枢機卿アルフレッドは今度のディアマンド級戦艦の建造に一枚噛んでおきたいのだろう。真帝国の利権闘争の一部、ここに垣間見れたり。
だが、上下関係はしっかりしておかねばならない。自分は『上司』だ。『上司』は舐められたら終わりなのだ。
サディエスは少女を見下ろすように顔を斜に構えると、きつい口調で少女に話し始めた。
「そうよ、私がサディエス・アーリマン少尉よ」
「ルクス・クラウです、よろしく〜〜」
「どうして遅れたの、ルクス?」
サディエスの不躾な物言いにはそれなりの理由がある。会話のイニシアティブを握るため、速攻でルクスを追及する構えを取ったのだ。初対面の人間にいきなり名前を呼ばれた事にムッとしながらもルクスは答えた。
「税関の人が私の身分証明書を全然信じてくれなくて……私の身分を証明してくれる人に連絡を取るまで一時間近くかかったんです」
「でもね、良く考えて見なさい。貴女の様な『可愛らしい』容姿の方に軍人と言われて一々素直に信じてたら、税関はやってけないわ。今後は軍人と言うより、家政婦と言った方が税関の人も素直に通してくれるわよ」
どこか何かが腑に落ちない表情をしていたが、サディエスのもっとも意見にルクスは渋々と頷いた。
――これでよし。
人間関係は最初の第一印象でほとんど決まる。だから、先制攻撃を行ってこちらの言い分を最初にしっかり通す事は『部下』を有効に使う上で必要である。
まあ、あまりやり過ぎると人間関係に軋みを生むので多用はオススメしない。
「今度から気をつけてね。これから長く付き合うんだから貴女とは上手く付き合いたいわ。だって貴女は私の『部下』なんですものね」
 サディエスは爽やかな笑みを浮かべて握手をするために、芝居掛かった動作で右手を前に出した。決まった、完璧だ。サディエスは、キツい事を言うがそれなりに部下の事を気遣う『サディエス・アーリマン上司』の誕生を確信した。
すると、だ。
ルクスが何か合点が言ったように左手の掌を右手の拳でポン、と叩いた。
 そして、サディエスの差し出した右手の上に、革に包まれた軽い財布のような物を置いた。
サディエスはそのルクスの置いた物を怪訝な表情で見た。
真帝国軍の紋章が刻まれたそれは身分証明書であり、そこにはこう書かれていた。

『ルクス・クラウ
        認識番号12003548C
              階級 少佐待遇』

サディエスはまず深呼吸を二回、義眼の調子をチェック。乱視遠視近視は無い。色彩感覚も正常だ。そして、自分のセフィロトを取り出してその身分証明書をチェック。二十四に渡る複製防止の証明印を確認。間違いなくこれは正規の身分証明書だ。張られた写真も目の前の少女の容貌と一致している。

これを三十秒とかからずやったところがサディエスの優秀なところだが、そんな物で今までの無礼が帳消しになるわけでもなく、サディエスが自分がこれからどんな激しく陰湿な叱責に襲われるかを想像しながら、その身を恐怖で震わせていた。
 ――せ、せめて護衛の奴が遅刻しなかったらこんな恥ずかしい失態しなかったのに……。

 賭けポーカーをしていたテーブルが、異常な盛り上がりとともに終焉に向かったのはその時だった。
「……コォ―……」
「こ、この人!立ったまま気絶してるぅ――――!」
「こ、コイツ!ブタのカードにあそこまで――――!?」
「……恐ろしい相手だったぜ、奴はゼネラルマテリアル社を一人で壊滅させようとしてたんだ……」
そう言いながら賭けの取り分を総ざらいしていた黒髪にサングラスの軽薄そうな男は、ルクスとサディエスを見つけるとこれまた雲よりも軽い口調でこちらに声をかけた。
「やあ、お嬢さん方二人ちょっと遅れちゃってメンゴメンゴ♪お兄様はゼネラルマテリアル社の護衛のヨーテ。遅れた代わりにこのヨーテお兄様がしっかり守ってやるからなー」
そう言ってヨーテは二人に向けて親指を立ててサムズアップした。
ちなまにヨーテはサディエスが来る前からあそこで賭けポーカーをしていたのである。

サディエスの堪忍袋が、灼熱の憎悪に焼き切れた。

「お前、とっとと声かけろや、ヴァガ――――――――――――――!!」


かくして、役者は登場す……おっと!

敵役がまだだった。
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アルシャード小説「力の違い」 第九話 「破壊の始まり」
アルフリート [Mail]
8/9(Tue) 2:07
 奈落

 全世界の脅威とされている、世界を破壊しようとする意思。
 その存在、行動理念、目的は未だ確認されておらず、彼らは大規模な破壊活動を行うために、手段を選ばない。彼らに倫理は存在しない。
 分かっている事は、彼らは強大である事。
 彼らは経緯はどうあれ、破壊活動を行う事。
 彼らは、どこにでもいる事。


そこでは視覚は役に立たない。全ての物は虚ろに歪み、そこに存在しない様に見える。下手をすると瞼を閉じてもいないのに視界は暗くなるかと思うと、眩しいぐらいに明るくなり目が痛くなる。

そこでは聴覚も役に立たない。耳元で囁かれたかと思うとすぐに囁きは騒音に変わり、風音、打音、金属音、鼓動、足音、呼吸音、全てがあやふやに現れては消える。

同様に嗅覚と触覚、味覚も役に立たない。ここは一時として同じ香りは無く、肌を多数の虫が這いずり回られるような感覚に襲われては、次の瞬間、滂沱に伏するような孤独に身を焼かれるからだ。


誰一人としてここでは確かではあり得ない。

強靭なエゴを持つ者達でなければ。
己と言う存在を凝固し、固定し、凍結した存在でなければ。

それが『奈落』という存在の中で生き続ける者達の絶対条件なのだ。

奈落という全てを虚無に墜としいれようとする存在の中で、四人は焚火を囲み、談笑していた。
会話は緩やかに一つ一つを確認しながら進む。

世界破壊の会話が……。



鎧に身を包んだ『騎士』が顔が見えない程目深にフードを被った『賢者』に問
い掛けた。
「そう言えば何か彼らに仕掛けるそうだな?」
「その通り、なに、本業への影響は皆無だ」
『戦士』が賢者を疑った。
「本当かよ?奴等は意外と利口だぜ、俺らの計画が察知されるかもしれないぜ?」
賢者は戦士の疑念に動じない。
「大丈夫、大丈夫だよ。何故なら今回の仕事はただの整理整頓でね」
『少女』の声が賢者の意を汲む。
「いらないモノは捨てちゃう、ということだよね?」
「そうとも、我々が『使いやすい』ようにするわけだ、失敗する事は少ないよ。傍目にはただ忙しく動いているだけだからね」
 二人の言葉に戦士が一瞬だけ表現に難色を示したが、
「ま、上手くやってくれれば問題ねーか」
「うむ、上手くやるから問題は無いとも、それでは失礼」
 ローブの裾を翻し、賢者はここから退室しようとした。だが、それを止める者がいた。
「待て」
それは騎士だった。
「何かな?」
 騎士は一言だけ、単純な一言だけで賢者を問うた。
「腹積もりを聞きたい」
 騎士の言った言葉を賢者は思考の中で反芻して、言葉を練る。
「フム……つまり今回私がやろうとしているのは私にとってなんであるかということかね?」
「その通りだ、目的以外の狙いを知りたいね」
 賢者と騎士の視線が、少しの間交錯する。
 騎士の剣呑な視線を受け流そうとする賢者。
 彼は口の端に苦笑を浮かべると、視線を騎士の視線からずらす。
「なるほどな、確かにそれも重要だ。我らは目的のために生きているのではなく、役割のために生きているわけでもなく、計画のために生きているわけではない。自分のために生きているのだからな」
 賢者は部屋の出口に闊歩しながら言葉を紡ぐ。舞台から退場するための一動作のようにその動作はよどみなく、遅滞も無い。
「では、あえて言おうか。今度の事件は私にとって……」
 背中越しに振り向き、フードの下にかろうじて見える口の端に冷笑を浮かべ、賢者は断言した。

「……余興だ」
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アルシャード小説「力の違い」 第十話 「悪の始まり」
アルフリート [Mail]
6/3(Sun) 8:37
「銀十字軍少佐ルクス・クラウ、銀十字軍少尉サディエス・アーリマン両名、現時刻を持って到着致しました」
 どう見ても使用人にしか見えない少女が、天眼鏡を掛けた女軍人とG=M社の者を引き従えてこちらに挨拶した。
 その少女――ルクス・クラウは有名人だ。真帝国皇帝に次ぐ実力者アルフレッド枢機卿の懐刀の一つ。
 彼女が所属を黒十字と言わないのは親衛隊である銀十字軍と共同作戦を取るに至ってアルフレッドの方が引いたのだろう。
 私は彼女に紹介するために自分と後ろにいる彼に手を振った。
「彼が真帝国空軍少尉メントス・アメンポス、私は真帝国空軍大佐ルークス・シュラーグ。長旅御苦労、クラウ少佐。数々の武勲は噂に聞いているよ。貴方がここに居るならば、反乱軍も手出しはしまい」
「光栄です」
 彼女は照れを隠すように敬礼をした。こういう時に図々しく笑顔を浮かべられるのは本当に女の特権だ。
「この真帝国軍の明日を握る基地の防衛任務。粉骨砕身滅私奉公の気概にて頑張ります」
 そんな気はさらさら無いだろうに彼女は微笑む。白々しい。
 クラウ少佐との話もそこそこに、私は彼女の部下に声を掛けた。
「アーリマン少尉、建造現場の紹介を明日にしたい。今日はゆっくり休んで長旅の疲れを取ってくれ」
「はっ、了解です」
「そこのゼネラルの者も長旅ご苦労だった。ウォン殿にはよろしくと……」
「ウォン部長のヴァガー―――!!」
 ヴァガー……ヴァガー………ガー…………。
 護衛の男の発作的な雄叫びは山の見える広い空間に溶けていった。
 先ほど彼の専属契約についてアメンポス少尉がいくらか話したのだが、その時も何故か絶叫された。昨今の失業率の高さから見れば五年間の護衛の専属契約とは大変魅力的である。いわゆる『嬉しい悲鳴』という奴だろう。だが、それにしてもこの男の言葉の選択はおかしい。『若者達の言葉の乱れ』という奴だろうか?

 まあ、そんな彼の絶叫など関係無く事は進む。
 今回のディアマンド級戦艦建造にはかつての大罪者アルフリートとの戦いで撃沈されたディアマンド級戦艦を回収し、それを骨格として再利用する。すでにかつてのディアマンド級第六番艦は回収、動力炉と飛行機関は搭載した。
 私は艦橋部へと続く廊下を長々と歩きながら、その事を彼女達に説明した。
「しかし、動力炉と飛行機関はもう搭載されていると言う事は、予定より結構早く建造出来そうですね」
「アーリマン少尉。実は動力炉の搭載などより、兵装や装甲の搭載の方がずっと時間がかかってね」
護衛の男はまた発作的に叫んだ。「ジールなんてメカの角に足の小指ぶつけて器用に死んじまえー!」もはや、何がなんだか分からない。

 大脳の働きを大幅に増幅する電脳カバラの改良型がその内開発されるそうなので、彼の道徳心に欠けた大脳もそちらに換装し直した方が良いだろう。

 そんな絶叫をBGMにしながらクラウ少佐が私に質問をした。
「大佐、こちらに反乱軍が現れるとおっしゃられてましたが、こちらの警備はどのようなものなのでしょう?」
 後で警備部に聞けば良い事を、この女はわざわざ私に質問してきた。
 中途半端に答えるのもポリシーに反する、私に出来る限り答えてやる。
「貴方達は空路を使ったから分かりにくかったでしょうが、ここは山岳に囲まれていて陸路はたった一つです。その陸路も山を登る山道なので守るに易し、攻めるに難し。防衛には理想的です。ですが、用心に越した事は無い。念には念を入れて、要所には検問を二つ置きました。アメンポス君、アーリマン少尉のセフィロトに周辺の地図と警備の配置、そして、リストを」
「厳重な警備ですね」
「それほどディアマンド級戦艦の建造は真帝国の要と言う事です。貴方方にはこの建造基地の護衛と内偵をお願いします」
「内偵……ですか」
 アーリマン少尉が訝しげな顔で私を見た。
 私は心の中で溜め息をついた。こんな当たり前の常識を教えてやる事が必要か?
「そんな大袈裟な話ではありません。健全な組織は外に常に目を向け、自己を厳しく管理する事で成り立つのです。その為の努力を怠らぬ事が、私の義務です」
「ハ、申し訳ございません」
 心にも無い謝辞を述べるアーリマン少尉。
 なら、始めから疑問など持つな。


 かくして、ルクス少佐等にこの基地における任務を与えた後、私は予定通り毎日の仕事に取り掛かった。


 ……ああ、そうだ。私の自己紹介を忘れていた。
 私の名前はルークス・シュラーグ。名前には偽りは無い。
 だが、本当にここを指揮していた真帝国軍空軍大佐はすでに塵と化しているはずだ。私が彼を殺し、真帝国軍のデータに干渉。彼の肩書きを乗っ取ったのだから。

 だから、私の本当の肩書きはこうだ。

 奈落の使徒、ルークス・シュラーグ。
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アルシャード小説「力の違い」 第十一話 「特攻前夜」
アルフリート [Mail]
6/3(Sun) 8:45
 基地は天然の要塞にして、それらに人の手を十分に加えたものだ。

 まず、ウィンカスターから東方へ80Kmの距離。
 ウィンカスター空軍の支援が得られやすく、彼らも最大限の注意を払っているため、敵に制空権を把握され辛い。
 さらに陸の要衝として基地の周りには山脈が連なり、一つしかない道に二つの検問が待ち受ける。

 つまり、攻めたら最後、脱出はとても難しい地形なのだ。

 アルフリート、ラウド、バーツの三人はそのような基地に潜入しなければならなくなった。

 ここは基地から20Km離れた森。
 焚き火を使い、ラウドが携帯食に自分の畑で採れた野菜と一緒に調理していた。
 そんな一時の休みに、アルフリートは事の発端を話した。
「初めはウィンカスターフォーチュンサービスで託宣された予言だった。時が近づくとともに内容が具体的になってな。預言者のエリシアが完璧な時間と場所を指定した」
「それが明日の正午?」
 バーツが調理に集中しているラウドを尻目に聞いた。
「ああ」
 アルフリートは忌々しく、その事実を強調する口調で喋った。




「明日の正午にウィンカスターは召喚された邪神によって完全に滅亡する」
「邪神召喚!?」
「具体的な方法は分からないが条件は整いつつある、星霜の位置、召喚に必要とされるエネルギー、そして、地の利」
「な、何かあるのか、あそこには?」
 アルフリートは覚えの悪い生徒を見る教師の目をした。
「……仕方ないか。貴様は衛星を所持していないしな」
「衛星で何が見えたんだよ?」
 アルフリートはこれまた忌々しいものを言う表情で言った。
「アースメギン河の流れを変えた奈落の末枝がここに来ている。相応しき贄を捧げ、異界の門さえ開いてしまえば奈落の汚濁の障気を纏って召喚は可能だ」
 アルフリートの苦渋満ちた顔の意味はバーツには痛いほど分かる。
 現在、ミッドガルドは大地を直接奈落で蝕まれ、昏い不毛の異境にされた土地がある。
 それは何十年も、いや、何百年以上も前からあることだ。
 しかし、未だにそれらを浄化する策は無い。
 大地を蝕む奈落とは、古代人アルフの叡知を持ってしても奈落に敗北し続けた証でもある。
 忌々しいのも当然だ。

 それらの事実を知った上でバーツは呟いた。
「……勝算はあるのか、アルフリート?」

「それは聞いちゃだめだ、バーツ。どうせ、この無茶苦茶な若じいちゃんには勝算なんて御立派なもんいつだってねえだろ?」
 調理を終えたラウドが何かを悟った顔で告げた。取り出した器に大量の野菜炒めを乗せる。
「やってみないと分からない。戦いなんてやらないのが一番なんだが、このじいちゃんの戦いはやらなきゃいけない戦いばかりだ。そういう戦いの前はな」
 大量に炒められた野菜炒めが器の上で食欲をそそる光沢を放っていた。
「食うに限る。うちの畑で取れた野菜だ。ウマいぞ」
 試しに箸をつけてみたバーツは歴戦の戦士の意外な才能に驚いた。
「お、コレ美味いな」
「食え食え。山ほど持ってきたからな」
「トマトを切って炒めるという発想が真帝国にはねえからなあ。ケチャップならあるんだが」
「火を通すと悪くねえだろ?コイツは隣ん家のばあちゃんから習ったんだ」
「今度雪豹隊にも料理してきてくれ。辺境仕事が多くでまともな野菜が食えねえ」
「おお、任せとけ」

 などと話しているとだ。ラウドはアルフリートがまるで箸を動かしていないことに気がついた。
「どうしたアルフ。ウチの野菜は美味いぞ?」
 アルフリートはラウドの言葉に寂しげな笑みを浮かべて答えた。
「フ、この身を戦闘用にシフトする際に消火器系のほとんどは切除されてな。完全栄養食か、エネルギー供給でしか栄養は摂取できん。私は気にせず食べてくれ」
「何だ? 食わず嫌いはいけないぞ。食って力を付けろ、アルフ」
 グイッと突き出される食器。
 どうやら話が難しくて理解出来なかったらしい。
「いや……だから、食わず嫌いでも何でもなくて……」
 ググイッと突き出される食器。
「最初はみんなそう言うな。安心しろ、うちの人参は甘いぞ」
「……いや、だから……」
「あんまり、グダグダ言ってると無理矢理食わすぜ?」
 グググイッと突き出される食器。もはやアルフリートの顔に食器が突きつけられている。
「ふ……」
「ふ?」



「フライシュッへ――――!」

 古代人アルフの所有する攻撃衛星のレリクスによる誤差一ミリと生じないピンポイントレーザー射撃が食器を野菜炒めごと完全消滅させた。

 いきなり取っ組み合いのケンカを始める二人。ラウドの放つ拳のスピードはなんら手加減の様子もなく、アルフリートは容赦なく急所を狙っている。

「ああ、ウチの野菜が――! てめえ、食べ物は粗末にしちゃいけませんってお父さんに習わなかったか――!」
「そんなもんアルフは習わんわ――!上等だ、進化を止めてアウストラロピテクスと同等とも言われる貴様の脳みそに似つかわしいように、その顔面も整形してくれる!」

 いつものケンカを始めた二人を肴に食後の水を楽しんでいたバーツはしみじみとこう思った。

『……この二人。本当に変わらんなあ』

 ちなみに結果がダブルKOとなった時点でバーツはパンツァーから救急箱を取り出した。慣れたものである。
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アルシャード小説「力の違い」 第十二話 「クィーン&ポーン」
アルフリート [Mail]
6/10(Sun) 16:39
 真帝国特務隠密部隊『ロクサーヌ』は五人の精鋭からなる特務部隊である。それぞれにチェスの駒のような役割付けがなされており、『クィーン』の役割を持つ赤い髪のエイリアス、ルシュナ=アークはなんで遊撃にして強襲を行える最強の駒である自分がこんな辺境の地にわざわざやってこなければならないのか、よく分からない。
 ディアマンド級戦艦建造基地より10マイルも離れたフォースリップ基地の警備なんて横にいる奴に任せておけばいいのだ。

「なあ、『グレイス』」
 ルシュナのエイリアス部隊戦闘服の異様さにも見劣りしない、ミラーシェードに真帝国教会の戦闘用神官服(神官に戦闘とは何とも物騒な世の中ではあるが、神官と言えども愛を語るだけが全てではない)を着た寡黙な男は呼びかけたルシュナにただ振り返るだけだった。

「あたしらなんでこんな所で検問の手伝いなんてしなきゃいけないんだ?」
「それがデウス・エクス・マキナ様の思し召しだからです」
「……じゃあ、次の質問だ。ここに何がくるかお前は知っているか?」
「何が来ようとも、それはデウス・エクス・マキナ様の思し召しです。歓迎こそすれ、詮索なんて私の信仰を損なうだけです」
「……お前気楽だな?」
「デウス・エクス・マキナ様最高の使徒ですから」
 こんな調子でミラーシェードを光らせながら、ルシュナの気分を悪くしてくれる『ポーン』グレイスは真帝国特務隠密部隊「ロクサーヌ」の一員である。
 『ポーン』であるからにはコンセプトは分かっている。

 自分の持つ任務に一切の疑問を持たずに精密に、正確に任務をこなす完全機械化兵士。

 で、出来たのが『グレイス』だ。

 確かに全てを帝国神教の神、デウス・エクス・マキナの所為にすれば疑問など持たない。だが、こんな風に身内に対してのコミュニケーションを皆無とする兵士なんて場をギスギスさせるだけで何ら有望な事は無い。

「あーあー! なんでこんな奴と一緒に組んじまったかなあ!」
「それがデウス・エクス・マキナ様の試練だからです、ルシュナ」
「許してください、神様。もうちょっとマシな神の使途を作ってください、マジデ!」
「それは見過ごせませんね。デウス・エクス・マキナ様の意思を疑うのは真帝国人として恥ずべき行為です。悔い改めなさい」
「うるせえ、大体だな。こんな基地から遠い辺鄙な場所にあたし達のような歩兵を配備するんじゃなくて、5マイル先にいるゼイガード基地のハイデッガーをこっちに持って来るべきだろ? っっったく! 意味わかんねーなあ、まったく!」
 やけっぱちな女の声と敬虔な信徒の声がどこかちぐはぐに基地に響く。
 ひとしきり喋って落ち着いたルシュナは、再度検問に目をやるとそこにはルシュナの興味を引く人間がそこにいたのだ。
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