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アルシャード小説「力の違い」 第二話 「光の始まり」
アルフリート [Mail]
8/3(Wed) 23:57
 レーザーソード

 古代種族アルフの超技術「レリクス」の一つ。80cmほどの高温の光を、長剣状に射出し続ける近接戦闘用兵器。
 金属棒から射出される高温の光の刃は、如何なる装甲も紙のように裁断する。


 風が荒野を流れている。草木の生えぬ堅い地面の上を砂を巻いて疾駆する。
 風は撫でる。岩を、砂を、日光から逃げるように生きているか細い生命を。
 この荒野に無音の場は無い。だが、生命の無い音が弱く、寂寥の思いを我々に想起させるのは、我々が生命ゆえの想いなのだろうか?

風がまたやってきた。
だが、今度の風はこの荒野への乱入者が巻き起こした力ある風だった。
風は走るのを止め、己の体を地面に降ろし、二本の足を使って地面に立つ。
空を飛行していたのは金髪碧眼の青年だった。白を基調としたゆったりとした服。青年が常人と違う証は彼の額にあった。まるでお伽話に出てくる魔法使いのようなこの青年は、ぞんざいな動きで荒野のひとかどの巨岩に近付くと腰から古めかしい金属棒を取り出した。金属棒に金属特有の光沢は既に無い。当然だ、これとは五千年の付き合いになるのだから。
金属棒は主の意思を感じ、己の役目をただ果たす。
金属棒から空気を灼いて光の刃が飛び出した。その光に古さ
も新しさも無い。光剣は変わりなき光を放ち、光剣は青年の右手によって軽やかに空を舞い、光剣は空気を焼き、巨岩すらも焼いて音も無く両断する。
 数万年振りの動作に巨岩は反応すら億劫というように鈍い音をたて、地面に落ちてしばし転がるとまた不動の物となった。
巨岩を両断した光剣の刃を納め、青年は巨岩の下を見る。そこには奇妙な事に一枚のコインがあった。
十数人がかりでも動かせないような巨岩の下にどのようにしてコインを置いたのだろうか?
しかし、青年は全て分かった顔でこう言った。
「シェルリィめ、毎回毎回良く隠し場所を考えるものだな……」
呆れたような口調で言った青年はコインを拾いあげると、その表面を少し撫でる。意味は無い。どうせ『賦与』されただけの普通のコインだ。対象がしばらく触れていれば『作動』するはずだ。
 案の定、しばらくいじっているとそのコインが映像を空中に投影した。映し出されたのは年の頃十歳ぐらいの少女。だが、そのあまりにも深い智惠を目に宿したこの少女を、外見通りの年齢として扱うには少しためらわれた。
その正体を知っているのか、青年はその少女の言う事を素直に聞く。まあ、しょせんこの映像は『録画』であって、『通信』では無い。文句や問い合わせは後々会った時にでも言わせて貰おう。
 少女は青年に向けて話し始めた。
「久しぶりじゃの、アルフリート」
 いささか時代がかった言い方だが、付き合いは腐りきって分解物が何も無くなって水になるほどの腐れ縁なのでもはや言う言葉も無し。

「今回の事件じゃが、お前さんのやった数々の行いの結果に絡んだ事件での。まあ、早い話が後始末じゃ」

 数々の行い――――青年、アルフリートは様々な事件を思い浮かべた。
 街を占拠していた真帝国軍を撤退させたあの事件だろうか?
 真帝国絡みの昆虫人間ターマイトの巣で暴れた事件だろうか?
そう言えば、先月は真帝国の基地を三個ほど潰したな?奈落にとり憑かれて、真帝国を滅ぼさん勢いでレリクス艦隊を操った事もあるがあれは私のせいではないからノーカウントだろう?

「先日お前さんが破壊の限りを尽くしてくれた真帝国艦隊の整備基地に奈落の気配を感知しての」

 待て、それは私の意思でやったんではないからノーカウントだと明言するぞ。まあ、奈落を退治するのがいい加減ライフワークと言うか、まあ、人生の目標の一つになっているので問題は無い。とは思うがやはり同じ事を毎度毎度毎度やるのはルーチンワークというか、飽きたと言う話になるわけだが…………。

「早速じゃが、この真帝国基地を強襲して奈落を退治せよ。手段と人員に関しては好きに使え、以上」

 こちらが断らないと分かっているからシェルリィの話の内容も端的で面白みも無い。まあ、それがアルフリートがシェルリィに対して築いた信用であり、信頼だ。無論、断る気は無い。
 どうしたものかと思う。だが、自分という者が何者かとそれなりに定義出来る者にとって、この思いはいまさらだ。
 だから、彼は遂行する――――

「さて」
アルフリートはコインを弾いた。
弾かれたコインは重力と与えられた力の狭間を軽やかに舞い、
「ならば果たさん。私らしい私の義務を」
 コインは彼が前進するために、『退路』の象徴として光剣に斬られ、蒸散する。

――――奈落の大敵、光子の騎士アルフリートは己の使命のために再度空を舞った。



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