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アルシャード小説「力の違い」 第三話 「騎士の始まり」 - アルフリート [8/4(Thr) 0:00]
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アルシャード小説「力の違い」 第八話 「特務の始まり」 - アルフリート [8/5(Fri) 0:36]
アルシャード小説「力の違い」 第九話 「破壊の始まり」 - アルフリート [8/9(Tue) 2:07]
アルシャード小説「力の違い」 第十話 「悪の始まり」 - アルフリート [6/3(Sun) 8:37]
アルシャード小説「力の違い」 第十一話 「特攻前夜」 - アルフリート [6/3(Sun) 8:45]
アルシャード小説「力の違い」 第十二話 「クィーン&ポーン」 - アルフリート [6/10(Sun) 16:39]



アルシャード小説「力の違い」 第十話 「悪の始まり」
アルフリート [Mail]
6/3(Sun) 8:37
「銀十字軍少佐ルクス・クラウ、銀十字軍少尉サディエス・アーリマン両名、現時刻を持って到着致しました」
 どう見ても使用人にしか見えない少女が、天眼鏡を掛けた女軍人とG=M社の者を引き従えてこちらに挨拶した。
 その少女――ルクス・クラウは有名人だ。真帝国皇帝に次ぐ実力者アルフレッド枢機卿の懐刀の一つ。
 彼女が所属を黒十字と言わないのは親衛隊である銀十字軍と共同作戦を取るに至ってアルフレッドの方が引いたのだろう。
 私は彼女に紹介するために自分と後ろにいる彼に手を振った。
「彼が真帝国空軍少尉メントス・アメンポス、私は真帝国空軍大佐ルークス・シュラーグ。長旅御苦労、クラウ少佐。数々の武勲は噂に聞いているよ。貴方がここに居るならば、反乱軍も手出しはしまい」
「光栄です」
 彼女は照れを隠すように敬礼をした。こういう時に図々しく笑顔を浮かべられるのは本当に女の特権だ。
「この真帝国軍の明日を握る基地の防衛任務。粉骨砕身滅私奉公の気概にて頑張ります」
 そんな気はさらさら無いだろうに彼女は微笑む。白々しい。
 クラウ少佐との話もそこそこに、私は彼女の部下に声を掛けた。
「アーリマン少尉、建造現場の紹介を明日にしたい。今日はゆっくり休んで長旅の疲れを取ってくれ」
「はっ、了解です」
「そこのゼネラルの者も長旅ご苦労だった。ウォン殿にはよろしくと……」
「ウォン部長のヴァガー―――!!」
 ヴァガー……ヴァガー………ガー…………。
 護衛の男の発作的な雄叫びは山の見える広い空間に溶けていった。
 先ほど彼の専属契約についてアメンポス少尉がいくらか話したのだが、その時も何故か絶叫された。昨今の失業率の高さから見れば五年間の護衛の専属契約とは大変魅力的である。いわゆる『嬉しい悲鳴』という奴だろう。だが、それにしてもこの男の言葉の選択はおかしい。『若者達の言葉の乱れ』という奴だろうか?

 まあ、そんな彼の絶叫など関係無く事は進む。
 今回のディアマンド級戦艦建造にはかつての大罪者アルフリートとの戦いで撃沈されたディアマンド級戦艦を回収し、それを骨格として再利用する。すでにかつてのディアマンド級第六番艦は回収、動力炉と飛行機関は搭載した。
 私は艦橋部へと続く廊下を長々と歩きながら、その事を彼女達に説明した。
「しかし、動力炉と飛行機関はもう搭載されていると言う事は、予定より結構早く建造出来そうですね」
「アーリマン少尉。実は動力炉の搭載などより、兵装や装甲の搭載の方がずっと時間がかかってね」
護衛の男はまた発作的に叫んだ。「ジールなんてメカの角に足の小指ぶつけて器用に死んじまえー!」もはや、何がなんだか分からない。

 大脳の働きを大幅に増幅する電脳カバラの改良型がその内開発されるそうなので、彼の道徳心に欠けた大脳もそちらに換装し直した方が良いだろう。

 そんな絶叫をBGMにしながらクラウ少佐が私に質問をした。
「大佐、こちらに反乱軍が現れるとおっしゃられてましたが、こちらの警備はどのようなものなのでしょう?」
 後で警備部に聞けば良い事を、この女はわざわざ私に質問してきた。
 中途半端に答えるのもポリシーに反する、私に出来る限り答えてやる。
「貴方達は空路を使ったから分かりにくかったでしょうが、ここは山岳に囲まれていて陸路はたった一つです。その陸路も山を登る山道なので守るに易し、攻めるに難し。防衛には理想的です。ですが、用心に越した事は無い。念には念を入れて、要所には検問を二つ置きました。アメンポス君、アーリマン少尉のセフィロトに周辺の地図と警備の配置、そして、リストを」
「厳重な警備ですね」
「それほどディアマンド級戦艦の建造は真帝国の要と言う事です。貴方方にはこの建造基地の護衛と内偵をお願いします」
「内偵……ですか」
 アーリマン少尉が訝しげな顔で私を見た。
 私は心の中で溜め息をついた。こんな当たり前の常識を教えてやる事が必要か?
「そんな大袈裟な話ではありません。健全な組織は外に常に目を向け、自己を厳しく管理する事で成り立つのです。その為の努力を怠らぬ事が、私の義務です」
「ハ、申し訳ございません」
 心にも無い謝辞を述べるアーリマン少尉。
 なら、始めから疑問など持つな。


 かくして、ルクス少佐等にこの基地における任務を与えた後、私は予定通り毎日の仕事に取り掛かった。


 ……ああ、そうだ。私の自己紹介を忘れていた。
 私の名前はルークス・シュラーグ。名前には偽りは無い。
 だが、本当にここを指揮していた真帝国軍空軍大佐はすでに塵と化しているはずだ。私が彼を殺し、真帝国軍のデータに干渉。彼の肩書きを乗っ取ったのだから。

 だから、私の本当の肩書きはこうだ。

 奈落の使徒、ルークス・シュラーグ。



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