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アルシャード小説「力の違い」 第九話 「破壊の始まり」
アルフリート [Mail]
8/9(Tue) 2:07
 奈落

 全世界の脅威とされている、世界を破壊しようとする意思。
 その存在、行動理念、目的は未だ確認されておらず、彼らは大規模な破壊活動を行うために、手段を選ばない。彼らに倫理は存在しない。
 分かっている事は、彼らは強大である事。
 彼らは経緯はどうあれ、破壊活動を行う事。
 彼らは、どこにでもいる事。


そこでは視覚は役に立たない。全ての物は虚ろに歪み、そこに存在しない様に見える。下手をすると瞼を閉じてもいないのに視界は暗くなるかと思うと、眩しいぐらいに明るくなり目が痛くなる。

そこでは聴覚も役に立たない。耳元で囁かれたかと思うとすぐに囁きは騒音に変わり、風音、打音、金属音、鼓動、足音、呼吸音、全てがあやふやに現れては消える。

同様に嗅覚と触覚、味覚も役に立たない。ここは一時として同じ香りは無く、肌を多数の虫が這いずり回られるような感覚に襲われては、次の瞬間、滂沱に伏するような孤独に身を焼かれるからだ。


誰一人としてここでは確かではあり得ない。

強靭なエゴを持つ者達でなければ。
己と言う存在を凝固し、固定し、凍結した存在でなければ。

それが『奈落』という存在の中で生き続ける者達の絶対条件なのだ。

奈落という全てを虚無に墜としいれようとする存在の中で、四人は焚火を囲み、談笑していた。
会話は緩やかに一つ一つを確認しながら進む。

世界破壊の会話が……。



鎧に身を包んだ『騎士』が顔が見えない程目深にフードを被った『賢者』に問
い掛けた。
「そう言えば何か彼らに仕掛けるそうだな?」
「その通り、なに、本業への影響は皆無だ」
『戦士』が賢者を疑った。
「本当かよ?奴等は意外と利口だぜ、俺らの計画が察知されるかもしれないぜ?」
賢者は戦士の疑念に動じない。
「大丈夫、大丈夫だよ。何故なら今回の仕事はただの整理整頓でね」
『少女』の声が賢者の意を汲む。
「いらないモノは捨てちゃう、ということだよね?」
「そうとも、我々が『使いやすい』ようにするわけだ、失敗する事は少ないよ。傍目にはただ忙しく動いているだけだからね」
 二人の言葉に戦士が一瞬だけ表現に難色を示したが、
「ま、上手くやってくれれば問題ねーか」
「うむ、上手くやるから問題は無いとも、それでは失礼」
 ローブの裾を翻し、賢者はここから退室しようとした。だが、それを止める者がいた。
「待て」
それは騎士だった。
「何かな?」
 騎士は一言だけ、単純な一言だけで賢者を問うた。
「腹積もりを聞きたい」
 騎士の言った言葉を賢者は思考の中で反芻して、言葉を練る。
「フム……つまり今回私がやろうとしているのは私にとってなんであるかということかね?」
「その通りだ、目的以外の狙いを知りたいね」
 賢者と騎士の視線が、少しの間交錯する。
 騎士の剣呑な視線を受け流そうとする賢者。
 彼は口の端に苦笑を浮かべると、視線を騎士の視線からずらす。
「なるほどな、確かにそれも重要だ。我らは目的のために生きているのではなく、役割のために生きているわけでもなく、計画のために生きているわけではない。自分のために生きているのだからな」
 賢者は部屋の出口に闊歩しながら言葉を紡ぐ。舞台から退場するための一動作のようにその動作はよどみなく、遅滞も無い。
「では、あえて言おうか。今度の事件は私にとって……」
 背中越しに振り向き、フードの下にかろうじて見える口の端に冷笑を浮かべ、賢者は断言した。

「……余興だ」



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