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- 3DAYS - KAZUMA [7/26(Thr) 10:40]
その壱 - KAZUMA [7/26(Thr) 10:41]
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その七 - KAZUMA [7/26(Thr) 10:46]
あとがき - KAZUMA [7/26(Thr) 10:47]
Re:あとがき - GAS [7/30(Mon) 21:18]
あったかいですね - 守護者 [8/10(Fri) 12:29]



その四
KAZUMA [HomePage] [Mail]
7/26(Thr) 10:44
 初めて少女に会った時、初めて恋をした。
 生意気かもしれないが、初恋はあの時だった。
 一年に一回、自分の前にだけ現れる少女。
 少女に会える日が近づくと、そわそわしだす。
 何も知らない大人たちは、クリスマスが近づいて喜んでいるのだと勘違いして笑っていた。
 二人だけが知っている秘密の場所、秘密の約束。
 どこにでもある小さな公園、二つしかないブランコ。
 一年に一回だけ二人だけの秘密の場所になる。
 少女と待ち合わせた日からちょうど三日目、いつものブランコの横。
「またらいねん、またこのばしょで、またおなじひ、またおなじじかんに。」
 二人で一緒に唱える秘密の呪文。
 お互いの手のひらを合わせ、見つめあう。
 少女は目の前で手を振りながら消えていく。
 幼い良も手を振りかえす。
 すごく悲しいのに、にっこり笑える。
 だって、来年になればまた会えるから。
 これからもずっと会えるから。
 初めて会ってから何回目かの年。
 二人はもう十歳になっていた。
 いつものように呪文を唱える。
 いつものように手のひらを合わせ、見つめあって。
「また来年、またこの場所で、また同じ日、また同じ時間に。」
 そーっと、そーっと、ゆっくりと、どちらからともなく、お互いに近づいていた。
 呪文を唱えながら、二人の顔はゆっくりと近づいていく。
 呪文が終わった。
 二人の顔はまだ近づいていく。
 そーっと、そーっと、二人の唇が触れ合った。
 触れたのは一瞬だった。
 また、そーっと、そーっと、離れる。
 二人とも真っ赤になって、お互いの顔を見ることができなかった。
 やがて、少女が言った。
「もう帰らなきゃ。」
 良がうなずく。
「またね。」
 少女は恥ずかしそうに良の顔を見ながらゆっくりと手を振って、消えていった。
 あの日、二人は遊び友達から少し違ったものになった。
 これからもずっと二人の仲は続いていくと思っていた。
 その日が最後になるなんて夢にも思わなかった。
 次の年の約束の日、良は約束の場所に行くことができなかった。
 泣いた。
 泣いたってどうにもならないことは分かっていたけれど、涙が止まらなかった。
 約束を破った、約束を守れなかった。
 悲しさと、口惜しさと、どうすることもできない自分への怒りで良は泣いた。
 良には見えた。
 ブランコのそばでずっと自分を待っている少女の姿が。
 明日も、あさっても、少女は待っている。
 現れることのない自分を。
 半年前、父の転勤で引っ越しが決まった時、一瞬目の前が真っ暗になった。
 東京から長崎へ、いったいどのくらい離れてしまうのか見当もつかなかった。
 絶対に行きたくないと言って、ごねても所詮子供のわがまま。
 少女からこんなに離れた場所に来てしまった。
 泣いて、泣いて、泣いた。
 時間よ止まれと何度祈ったろう。
 しかし、とうとうその日が来てしまったのだ、約束の日が。
 何とか少女に会おうとして駅まで行ったのだ。だが、お金もないし、どう行けばいいのかも分からなかった。
 三日間、良は一人で泣いていた。
 親の前では涙は見せなかった。
 理由を聞かれたくなかったから。
 誰のせいでもないことは分かっていたから。
 だが、約束を守れなかったことだけは事実だった。
 次の年もやはり泣いた。しかし、去年ほど悲しくはなかった。
 中学に入って、卒業して。
 高校に入って、卒業して。
 次第に、良は少女のことを忘れていった。
 大学の受験に失敗した時、予備校に通うため東京に行くと言った良に家族は反対した。
 良は自分でも思っていないこと、東京の予備校の方が勉強が進んでいるだとかどうだとか、を力説して何とか家族を説得した。良自身、何でそんなに東京に行きたいのかよく分からなかったのだが。
 今住んでいる土地が好きだったし、別に遊びにもそんなに興味はなかった。東京は昔住んでいた土地だということ以外何も覚えていなかった。
 なのに、どうしてもここに戻ってこなくてはならない気がした。



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