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時を越えた宿命〜第4話〜その9〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:49

 バーお姫たまの中、店の奥ではバーテンとオーナーの女性が話をしている。 

 「さっきのあの若者が、あのクレイ・・・ですか。」

 バーテンがオーナーに問い掛ける。

 「そうね。私も気が付いたのは、走り去るとこを見たときかしら。それに一緒にいた女の子は
 間違いなく『例の組織』から逃げた子だわ。それより『祭りちゃん』は無事に逃げれたかしら?」

 「ハイ。先ほど特務員が暗号を送ってきました。レーダを修理してから、B−3ポイントの店に戻るそうです。
 先ほどの戦闘を収めた内臓カメラの分析結果は数日後にボスの・・・いえ、オーナのもとに届くそうです。」

 「いよいよ・・・・『クレイ』から目が離せなくなってきたわね。その周りにいる人達からもだけど・・・・。」

 「大丈夫です。『例の力を解放しないクレイ』にならば気が付かれること無いほどのレベルの者達が見張っていますから。」

 「でも、油断しちゃ駄目よ?段々と・・・そう、ゆっくりとだけど昔のクレイに戻っている気がするのよ。
 いずれ、過去の全盛期の力を取り戻すかもしれないわ。」

 「わかっております。それでは私は・・・。」

 「ありがとうね。またくるわ。」

 そういうと、オーナーの女性は店を出ていった。その手には1枚のディスクが在った。


 
 ラルフは父親からの呼び出しに、父親が経営している会社の社長室に向かっていた。
 
 ラルフの父親はローディエンス商会という、ハンターズや軍に納める武器から
日常品に至るまでありとあらゆる物を扱う巨大商社を経営していた。
その巨大商社は本星やパイオニア2に於いては最大の力を持っていた。
そして、自分の勧めていたハンターズに息子がなったことにより、このごろは事のほか上機嫌であった。

 「オウ、来たかラルフ。捜索の方も順調だそうじゃないか。今日もお前に合うような武器が入ったんでな。
 特別に、こっちに持ってこさせたんだ。どうだ?」

 「そんな用事かよ?今日は1日オフなんだぜ?ゆっくりしたかったよ。」

 「そんなとは何だ。この武器を見てみろ?ソードの上級剣『ギガッシュ』だ。
 鑑定はまだ済ませてないそうだが、それくらいはお前がやればいい。今日は、これをプレゼントしよう。
 お前が頑張れば頑張るほど、俺は武器を供給すると言うことしかできないが、俺も頑張って協力するからな。」

 「オ・・・・オウ。サンキュウ!」

 父のやさしさが身にしみるラルフ。 ギガッシュを自分のアイテムパックに詰めると、社長室を後にした。

 ラルフが、シティまで戻ってきたときに、その大剣を店で鑑定させてみた。
その結果、そのギガッシュは小型端末のレーダーで『A.BEAST』とでる敵ならば
攻撃力に+60%の属性が付いているものであった。

 「親父、こんなの何処で手に入れて来るんだよ?」

 思わず呟くラルフであった。



 シンシアとシヴァンは家で、色々話をしていた。特にシヴァンはシンシアが別行動していた時のことを話していた。
レオンに告白したこと、それをレオンが受けてくれたこと。今まで自分が思っていたレオンに対する気持ち。

 「シヴァンは血が繋がってないものね。お兄様と結婚できるわ。私は、血が繋がってるからしたくても出来ないけど。」
 
 「でも、シンシアお姉ちゃんにとって、レオンお兄ちゃんはお兄ちゃんだって事もちゃんとわかってるからね。」

 「えらいえらい。」

 「さあ。お兄様が帰ってくる前に、色々片付けちゃいましょう。」

 「うん!」

 相変わらず、仲のいい姉妹の二人。仲良く家事をこなしていった。
 
 



 クレイとウィルは家に帰ってきた。買い物は全てフリーザーにキチンとしまった。
時間を見ると、まだフィオナ達の報告会が終わってないので、さっきのバーのことを報告に行った。




 クレイ達がフィオナの家に着いた時、話はほとんど終わり、4人はくつろいでいた。

 「ン?どうした?クレイ?」

 フィオナが真っ先に問い掛ける。

 「いえ、姉御、さっきあったんですがね・・・・。」

 クレイ達もソファに座り、先ほどあった事件とバーのオーナーだと言う女性のことを話した。

 話の途中ではあったが、シンディーが何か思いついた様に話し出す。 

 「ああ、クライン、もしかしたら、あの人じゃない?」

 「ああ、緑の歌姫、サムス嬢か。」 

 「もしかして、あの、裏組織を率いてるボスのこと?」

 「あら、フィオナも知ってるの?」 

 「ああ、あたしのことも知ってたからね、あのお姉さん。前に声かけられたもん。
 『あら、あなた、小さいのに頑張るわね〜。お姉さんと一緒に世の中を良くするために、その頑張る力を貸して下さらないかしら?』
 だってさ。」 

 クレイとウィルはそんな三人を怪訝そうに見つめた。

 「ああ、クレイ、ウィル、済まない。じつはな・・・・。」

 そう言って、クラインは先ほどの緑の髪の女性について話し始めた。手には、小型端末を持っていた。

 「本名サムス・アラン。年齢は不明。『チームタークス』と言う組織を率いる女ボスだ。
 何件ものバーを情報収集と仲間集めそれに仲間を育てる場所に使っているな。
 恐らく、クレイとウィルが行ったのもそう言うバーの一種だろう。
 彼等組織は世の中の平和の為に、悪の組織、特にニューマン生成組織や人体改造組織を、まあ、言うなれば
 非人道組織を潰す為に活動をしている。
 構成人員の数は詳しくは分からんが、レベル的には下はハンターズになり立てから
 上はフィオナを越えるくらいの手練までいる。まあ、噂では200人とも300人ともいわれているが、実際は分からん。
 ハンターズに登録をしていない者も多く、実態を把握するのは無理と言えるだろう。
 恐らく、ボスのサムスしか把握してないんじゃないかな。
 勿論ハンターズだけじゃなく一般市民、金持ち、評議員等も構成員にいるという話もある。
 後、他の人道的行動をとる組織とも裏で連携してるとも言われている。
 まあ、裏の組織と言っても、正義を理念に行動する数少ない組織だな。
 おかげで、悪の組織・・・・・・もっともこっちが普通の裏組織で、いっぱいあるのだが・・・・に
 ボスのサムス・アランは散々つけ狙われているといわれている。
 それでも今まで生きてきているのだから、本人もかなりの使い手だろう。」

 クラインの長い説明の後、クレイがクラインに質問する。

 「なあ、クラインさん、何であの組織のことそんなに知ってるんだ?」

 クレイは不思議だった。裏組織と言うことは、その組織に関する情報は全く外に漏れるはずは無かった。 
それを評議員とはいえ、赤の他人にこんなにも情報を掴まれてしまうものだろうか。

 「ふむ・・・。それを言うと、ここにいる人みんなに、あることをしてもらわなければいけないんだが?
 それでもいいのかな?」

 「危険で無いなら、構わんが?」

 そう言うのはレオンだ。

 「あたしも、今の聞いて大体分かったけど、構わないよ。」
 
 と、フィオナ。

 「わたしは勿論構わないわ。と言うより、私は数に入らないわね。」

 これはシンディー。

 「あ・・・クレイさんが、それをするなら、私も・・・・・。」

 ウィルが小さな声でおずおずと言う。

 「ち・・・・しかたねえな。クラインさん、言ってください。」  

 クレイは、しぶしぶ賛同する。
 
 それを聞いてクラインは勿体付けて、話し出した。 

 「じゃあ・・・コホン・・・。私と、シンディーも、その・・・・・・・・実はタークスの一員なのだよ。
 これを言うと、その場にいる人には入ってもらわなければならない。そう言う決まりでね。」

 「やっぱり・・・。」

 フィオナは憮然とする。

 「次のエリアの探索が終わったら、また1日休日にしてくれないか?新人にはボス直々に説明があるからな。」

 「じゃあ、ラルフとシンシア、シヴァンもそのタークスとやらの一員にしちまうか。」

 フィオナが楽しそうに話す。

 「そうね。その方が良いわね。みんなが入った方が、動きが取り易いわ。」

 「それじゃ、そう手配しておくよ。皆、今日はいい情報をありがとう。特に、レオン君からの報告は貴重だ。」

 こうして、6人で行っていた報告会も終わった。

 時刻は既に昼を越え、午後の休みの時間になっていた。

こうして、初めてラグオルに降りて、最初のエリアを探索した一行は翌日の戦闘に備えて、各家に戻り、英気を養うことになったのである。


    (PSOオリジナル小説『時を越えた宿命』第4話「衝撃の森〜前編」完)



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