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時を越えた宿命〜第4話〜その1〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:37

     PSOオリジナル小説「時を越えた宿命」
     《第4話:衝撃の森〜前編》

何かの景色が形を結び、気がついたときには森のはずれにいた。先に来ていたフィオナ達は待っていた。

「どうだい?初めてトランスポ−タ−でラグオルに来た感想は。アタシ等の割り当てはあっちの木の辺りから向こうだから。
最初は境界線の近くをお互いサポ−トしながら行こうか。」

「うわ〜。全く普通じゃないですか。あんな爆発があったなんて、とても思えませんね。」

 シンシアの言う通り、森は静かなものだった。森への道は何本も伸びているが
よく見ると計画どうりにきちんと開発されているのが良く分かる。

 森の中のあちこちに、うまく森とマッチするように建物があった。
既に居留してるパイオニア1の人達が住んでいるはずの建物である。
その建物も爆発の影響を受けず、無事であった。

「じゃあ、建物もお互いに手分けして捜していこう。まだ生き残っている人達がいるかもしれない。
 この道のこっち側がアタシ達だ。そっちはレオン達に任せる。」

レオン達は1番手前にある家に近づいていった。
近くから見る限り、建物はしっかりとしていた。
レオンにはあの光の爆発が人間を取り込む為だけのものであるから
それ以外のものが無事なのはわかっていた。そして既に、人がだれ一人すらいないであろうことも・・・。

「それではこれからこの建物を調べる。シヴァンは俺と一緒に内部を。
 シンシアは途中まで俺とシヴァンと一緒だが、途中で裏庭の探索に行ってくれ。」
 
 ここまで言うとレオンは2人の顔のそばまで顔を寄せ、声をひそめる。

 「くれぐれも魔法は使うなよ。この世界ではテクニックを使うこと。
 余程のことがあったら、その時はもちろん魔法を使って構わない。」
 
 ここまで言うとレオンは、もとの態勢に戻り、声の大きさも戻した。

 「何が潜んでるか分からないから、注意するように。何かあった場合は無理せず、俺のとこまで来ること。」

建物の入口からその中に入っていく。扉は『マスターキー』と呼ばれるものを使って開けていく。

 『マスターキー』とはハンタ−ズギルドから渡されたカードキーの1種で
割り当てられている範囲内の全ての家の扉のキーパターンのデータが入っている。

 それにより正面の扉を開ける。まず、リビングと思われる部屋に入っていった。

そこには机がありその上に飲み物が飲みかけでおいてあった。
部屋の反対側には大きな窓があった。
窓からはラグオルの森の風景が見える。
本星では滅多に見れない緑がそこには溢れている。

 レオンは机の上の飲み物が入ったコップに触る。
コップは既に冷たくなっていた。そこはそのままにし、次の部屋に入る。

次の部屋は簡単なキッチンがついているダイニングであった。もちろん、だれもいない。
フリ−ザ−には電源が入っていた。中には食べ物が少し残っている。そのまま次の部屋へ。

その次の部屋はベッドル−ムであった。部屋の端の小さなテ−ブルの上に端末がおいてある。
レオンは、シヴァンに続きの部屋の捜索、シンシアに裏庭の探索を任せ、端末を操作してみた。

まず、パイオニア1の中枢にアクセスしてみる。・・・・・アクセスできない。
仕方がないので、ロ−カル寄りにアクセスしてみた。すると・・・・あの爆発の瞬間までは色々なログが残っているのが確認できた。
しかしその後は全くログが無かった。

 その間、シヴァンは残りの部屋に探索に行く。シンシアは裏庭に調査に行く為に、裏口に廻った。

「レオンお兄ちゃん、だれもいないよ〜?・・・・キャア!!」

 物置の扉を開けて、中を覗き込んだシヴァンはペンキの様な、どろどろした液体が入った缶をひっくり返してしまう。
その拍子に頭にかぶっていた帽子は横に飛んで、汚れるのは免れていた。
その液体を、頭からかぶってしまいシヴァンは全身どろどろになった。レオンは端末の電源を落とし、シヴァンの側へ急いだ。

「う〜。気持ち悪いよ〜。せっかくのこの格好もドロドロ・・・・。」

シヴァンお気に入りの フォニュエ−ル用のポンポンが付いた帽子を拾い、レオンはシヴァンを見る。
数日前に支給されたばかりの白いシヴァンのハンターズスーツ、フォニュエール用はドロドロに汚れている。

「しょうがないな。ここでシャワ−を借りよう。ついでにランドリ−もな。」
レスをつける


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時を越えた宿命〜第4話〜その2〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:39
 そのことを通信機でフィオナに伝える。もちろん、人がいないということでオッケ−が出た。
もちろん、このことはフィオナ達との間のみのことで他言無用である。

 レオンはシヴァンの服を脱がす。ドロドロの液体はシヴァンのインナーも汚していた。
レオンは先に入れたシヴァンのハンタ−ズの服と共に、それもランドリ−に入れていく。

裸になったシヴァンは、シャワ−室に入っていった。レオンも、急いで裸になる。

レオンは、シャワ−を操作し、シヴァンの輝くほどの金髪と白い体を洗っていく。
ドロドロの液体は完全に洗い流された。

 シヴァンを洗い終わったレオンはついでに自分の体にまとわりついた汗を流す。

シヴァンは、この時先に脱衣所に来ていた。ランドリーを覗くと既にハンターズスーツなど全てが中で乾いている。
そして、シヴァンは服を着ていった。

 レオンが汗を流し終わって、脱衣所に来る。
レオンはアイテムパックからタオルを出し、からだの水分をふき取った。
そして服を着ていく。

 レオンは服を着終わった後に、シヴァンに一声かけようとシヴァンの方を向いた時・・・・。

 

 シヴァンはレオンが自分を見つめてくれたときそれまで我慢していた感情が爆発し、ついレオンに抱きついてしまった。

 それを驚くレオン。シヴァンの口から思いがけない言葉が出る。その声は震えていた。

「レオンお兄ちゃん。シヴァンのこと嫌い?」

「え・・・・・い...いや。そんなことある分けないだろう?」

レオンは、一瞬、何を聞かれているのか判断できなかった。

「本当?ホントニほんと?じゃあ、シヴァンのこと、好き?」

「ああ・・・好きだよ。シヴァン。大好きだ。シンシアもお前も、大事な妹だからな。もちろん、大好きだよ。」

どこでだれが聞いているか分からない。ついレオンは本音とは違う言葉を口にする。
それを聞いてシヴァンは不満げに言葉を続ける。

「違うの。シヴァンのことだけ、好き?妹としてじゃなくて、一人の女の子として、好き?
 シヴァン、お兄ちゃんのこと、好きなの。とっても好きなの。お兄ちゃんだからじゃなくて、えっと・・・・・。えっと・・・・。」

シヴァンの顔が真っ赤になっていく。それでも言葉を続ける。よっぽど、今まで我慢していたのだろう。

 「あ・・・・・いや・・・・・・その・・・・・。昔から、薄々、お前が俺のこと好きだってことは気が付いていたけど
 そこまで好きでいてくれたのはさすがに分からなかった。」

「うん。好きなの。レオンお兄ちゃんのことすごく好きなの。昨日ウィルちゃんに聞いたら、黙ってないでちゃんと言えって。
 好きになったのが、お兄ちゃんでも血が繋がってないからいいんだって。シヴァンには訳わかんないけど・・・。
 シヴァン、ずっとずっと我慢してたんだけど、それはいけないんだって。だから・・・。だから・・・・。」

涙で、顔をクシャクシャにしながらさらに抱きついてくるシヴァン。レオンは、そんなシヴァンのことを強く抱きしめた。

レオンは、泣きじゃくるしヴァンを強く抱きしめながら、ある一つの決心をした。それは、子供のときに決心したことと関係している。

「わかったよ。ちゃんと言うよ。シヴァン・・・・・よく聞いてくれ。実は俺もシヴァンのこと、ずっと前から好きだったんだ。
 お前が、どんどん可愛くなっていくの見ててな。・・・・・ご免な。
 今までシヴァンが俺のことを好きでいることに気がついていても、それに答えてあげられなくて。
 俺は兄だから、お前を好きになっていはいけない、そう思ってきたんだ。だが、違うよな。
 ・・・・・・それが、そんなにもお前を苦しめてたんだな。今、気がついたんだ。すまん。すまない。
 シヴァン。そして、好きだよ。大好きだ。シヴァン。心からそう思っている。」

「レオン・・・お兄ちゃん・・・・。」

しばらくシャワ−の脱衣所で抱き合う二人。突然、泣いていたと思ったシヴァンが、くしゃみをしてしまう。

「クシュン!!」

「ハハハ。ちゃんとからだ、拭いたか?とにかく、急いで出ようか。」


シンシアは一人裏庭にある倉庫の中を調査していた。十分な広さをとって作られた倉庫は色々なものが入っていた。
テラフォーミング用の道具など、大小様々な物だ。

やはり人の気配はしない。物陰に何か潜んでいるかもしれない。注意しながら時間をかけて倉庫の中を調査し終わった。
シンシアが建物の中に入ると、レオンとシヴァンがシャワ−を浴び終わったとこだった。
床の上に広がった液体を掃除し、レオン達は外へ出た。




 レオン達は隣の建物へ向かう。しかしその時、前方の木々の間から訓練で見慣れた生物が何体か姿を現した。
コ−ドネ−ム『ブ−マ』で呼ばれる原生生物だ。赤っぽい茶色の体毛に覆われた体をしている。


訓練で見慣れてるとはいえ、その姿は立体映像とは違う。

 『ブーマ』は土竜を大きくしたような姿をしている。
その手には、カギ爪のように細い刃が何本も出ている。
背の高さは、レオンの肩ほどまでだが、胴体の肉付きがいい。
人間より一回り大きいのだ。

 ブ−マ達は手を天に掲げ、叫び声をあげる。その口の中に無数に並んだ鋭い牙。
その牙にかかれば、人間などすぐに真っ二つであろう。シヴァンは思わず一歩下がった。

しかし、ただ脅えてるシヴァンではない。一歩下がりながらも、シフタ、デバンドのテクニックをレオン達にかける。
シフタは攻撃力アップの補助テクニック。デバンドは防御力アップの補助テクニックだ。

シンシアは、ブ−マ達にバ−タのテクニックを放つ。バ−タのテクニックは直線的な軌跡を描く氷系の初級テクニックだ。
その軌跡上にいた数匹のブ−マが冷気により後ずさる。

レオンはすかさず、剣を振い、まだ前進してくるブ−マに暫撃を繰り出す。

レオンは、以前に使っていた剣と鎧を持ったまま、この時代に飛んできたのだ。
鎧は、この時代では使えないため処分してしまったが、その剣は「ドラゴンスレイヤー」としてギルドに登録してある。
実際にはこのラグオルで見つかる『ドラゴンスレイヤー』とは違うのだが、登録は済ましてしまったのだ。
この剣は、この時代特有のフォトンを纏ってはいない。しかし、切れ味は勝るとも劣らないものだった。

レオンに斬り付けられたブ−マは、こともなげに手の先の無数の細い刃で受け止めた。
レオンは受け止められた勢いを利用し、一歩下がる。そこに別のブ−マが切りつけていた。
そのブ−マの腕は空を切る。5対1である。

その脇にいたブ−マは手を振り上げ、手の先の無数の細い刃でレオンに切りつける。レオンはシ−ルドで刃を受け止める。
ブーマの力は強く、レオンの体が少しあとずさる。
レオンはブーマの手を受け止めた勢いを利用し、体ごと回転して剣をその胴に叩きつける。

「グオ〜〜〜!!」

断末魔をあげながら、地に伏したブ−マ。

「やっと一匹か。」

やっとと言っているが、この一匹と応対したのはわずか1、2秒のことだ。

レオンが顔を上げたとき、2匹目のブ−マが切りかかってきた。一歩下がり、体勢が乱れたところを叩き斬る。

他の二人からの援護がなかったが、その二人もただ遊んでいるわけではなかった。



シンシアは、全くダメ−ジを受けていないブ−マの内の1匹と戦っていた。

ゾンデを放ち、ブ−マの攻撃を交わす。それを数回くり返すうちに倒すことができた。

ゾンデとは、雷撃系の初級に位置するテクニックであり、相手の方向に向いていなくても使用が可能である。
途中に障害物があっても射程距離内であれば使用も可能である。



シヴァンも頑張っていた。ブ−マの隙を突き手にしたケインで殴っている。
ブ−マが近寄ってくると、シヴァンはフォイエを放つ。それを繰り返すうちに倒すことができた。

ケインとは、フォ−スが装備できる小さな杖の中でもっとも基本的なものであり、戦闘には向いていない。
また、初期装備であるため登録したらギルドからもらえるのだ。




 みんなが善戦したおかげで、5匹のブ−マは割と早く倒すことができた。
その時、ブーマが倒れた辺りに幾つかのアイテムが落ちていた。

3人が初めての戦闘を終えたころ、通信機からはフィオナの声が聞こえてきた。

「レオン、シンシア、シヴァン。大丈夫か?何か、原生生物が狂暴化してる気がするよ。いきなり襲ってきたしな。
 そっちは3人で大丈夫か?こっちは、なんとか無事だったぞ。」

「何とかなってます。今日のノルマのとこまで、調査を続けてみたいですから。頑張りますよ。」

「そうか。お互い頑張ろうな。ああ、そうそう。モンスターを倒した辺りにアイテムが落ちていたろう?
 その落ちたアイテムは拾って構わないはずだ。
 恐らくはパイオニア1の一般人か軍人が使っていたもの、あるいはパイオニア2のハンターズの物かもしれないが
 当人はそのアイテムを持っていたモンスターに倒されているはずで所有権がなくなっているからな。」

次の建物も先ほどの建物と全く同じだった。生きてる人は一人もいない。
レスをつける


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時を越えた宿命〜第4話〜その3〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:40

 フィオナ達は、レオン達と分かれたあと建物に、2人づつに分かれて調査をしていった。
フィオナと、ウィル。ラルフとクレイと言う組合せだった。

目にとまった建物に入る。部屋を調べながら、二人は会話を続ける。
廊下を歩きながら、部屋の内部を探索しながら、二人の会話は続く。

「クレイよ〜。お前、いつの間にあんな子と仲良くなったんだ?」

「お前さんが親父さんに呼ばれてて、しばらくいなかったときだよ。」

「全く。こっちは大変だったんだぜ?うるさい親父と口論になっちまうしさ。」

「ハハハ、こっちもいろいろあったけどな。」

「ふ〜〜〜ん。・・・・・・・・あ、クレイ、教官から聞いたけどさ。
 お前、昔、裏社会じゃ有名だったんだって?
 何でも、裏社会にその人ありって言う程の顔役だったって言うじゃないか」

クレイは一瞬とぼけようかと思ったが、正直に話すことにした。

「別に黙っていたわけじゃないさ。聞かれなかったから答えなかっただけだ。」

「それで、強いわけだな。一言くらい言って欲しかったね。パ−トナ−なんだから。」

「いや、俺がそれを言うことでお前に迷惑が及ぶのが嫌だったんだ。・・・・・すまんな。
 もし、怒ってるなら殴るなり何なりこの場でしてくれ。」

 調査中の家の中でどっかりと座り込むクレイ。

「いや、怒ってないって・・・・・。」

「そうか。ならいい。」

「いや、色々気を使ってもらって、ありがとう。」

一通り建物の中を見ると、外に出た。建物の前に出ると、木陰からブ−マが出てきた。

「3匹だ。2匹引き受ける。残りは任すぞ。」

言うや否やクレイは消えた。ラルフの方には1匹が寄ってきた。すでに道の向こうでは、クレイが残りの2匹を引き付けていた。

「全く。無茶する奴だぜ。」

ラルフは渾身の一撃でソ−ドを降り下ろす。ブ−マは手を振り上げ、それを受け止めようとしたが、ラルフはそのまま押し切る。
ブ−マは手から真っ二つになった。

「ヒュ〜。ラルフもやるじゃん。」

クレイはわざとゆっくりと動いていたが、ラルフがブ−マを倒したので本来の動きに戻る。
ブ−マは、クレイの動きの緩急の差が大きいため、クレイの姿を見失っていた。
ブ−マがクレイの姿を見つけたときには、既にそのブ−マの首が胴から離れていた。
残った一匹は、すれ違い様に手にしたダガ−で首筋を斬る。
そのブーマも大量の血を流しながら、断末魔の悲鳴を上げ地に伏した。

「クレイ、実は強いじゃん。」

「お前もな。」

お互いの力を確認し、パ−トナ−として絆を強くする二人だった。



フィオナとウィルは、クレイ達が入って行った建物の隣の建物に入っていた。

「何でだれもいないかねえ。」

「そうですねえ。」

ウィルは、フィオナにひっついて進んでいる。怖いのだろう。フィオナはクレイから裏事情をすでに聞いていた。
そこで、フィオナにはあるひとつ思いついたことがあった。ただ、それを何処で実行するか。それが気がかりであった。

建物中はあらかた調べ終わった。庭に出て、倉庫を調べる。広い倉庫の中には、やっぱり人の気配はなかった。

「いないですねえ。」

 「いないねえ。」

この建物の敷地内には、ぽつんと一つだけ、離れのようになってる比較的小さい建物があった。

その小さな建物に入る。そこは、立派なバスル−ムだった。

そのバスルームの中は、今の時代には、めったに見ないようなものだった。
シャワ−だけじゃなく、お湯を貯めて中に浸かれるようにもなっている。
二人とも、倉庫を調べたために埃だらけだった。

 フィオナは本来は禁止されている行為だが、構わず脱衣所に入っていく。

「ウィルちゃん。ついでに埃、おとしちまおうか。」

「え・・・・?はい?」


二人は服を脱ぎ始める。フィオナはウィルのからだのあるところを見る。

『やっぱり、あるな・・・・・。』

それは、ウィルが創られた培養装置を示す個人識別証だった。それこそ、フィオナが調べておきたいと思ったものだ。

「ウィルちゃん。その痣、どうしたの?」

突然、フィオナに聞かれて、ウィルはビクッと体をこわ張らす。

 「え?なんのことですか?」

 ウィルはとぼけたが、フィオナには通用しない。

 「とぼけなくても良いよ。私のここ。・・・・見てみな。」

 そう言い、フィオナはある場所を指差す。

フィオナのからだの ウィルの識別証がプリントされているとこと全く同じところに
ウィルのものと、あまり変わらない形の識別証があった。

「え?フィオナさん・・・・・・これって、いったい・・・・・」

「私も、あんたと同じって事さ。あんたの事は、クレイから聞いている。
 私の事もクレイは知ってる。だから、クレイはあんたの事を教えてくれた。」

「あの・・・・・・。」

 ある一言を聞きたかったウィルであったが、それはやめた。

 「ん?なんだい?」

 「いえ・・・・。誰か一人でも生きてると良いですね。」

 ウィルは別の一言でごまかした。

 「ああ、そうだな。一人くらい生きててくれれば、何があったか分かるかもしれないのにな。」

 フィオナは、ウィルの言葉の誤魔化しには気が付いてなかったが、何か変だなとは思っていた。
 
 二人がシャワ−を浴び、湯船にゆっくり浸かり終わり、服を着終えたときに、通信機がなる。
レオンから、シャワ−を浴びていいかというものだった。もちろんフィオナが断るわけがなかった。

 一緒にお風呂に入ったことによってか、フィオナとウィルは仲良くなった。


 二人が外の道に出たとき、ちょうどラルフとクレイが戦っているときだった。

 「ラルフさんもクレイさんも、強いですね。」

 「アンタにとってはクレイが強いのが嬉しいんだろ?」

 「え・・・・・そんな・・・。」

ウィルが耳まで真っ赤にしながら、口ごもる。
そんなウィルを暖かい眼差しで見ていたフィオナだが、まだそこらじゅうに敵の気配を感じた。

 「あいつ等ばっかりに戦わせてちゃあ、いられないね。ウィル、いくよ。」

 「はい。」

クレイとラルフが3匹倒し終わったとき、フィオナとウィルが近づいてきた。

4人が合流したとき、コ−ドネ−ム『ゴブ−マ』が周りに8匹出現する。

ゴブ−マとは、ブ−マ系の原生生物の中では中級に位置する生物である。
体毛は黄色で、ブ−マでは苦手としていた炎系テクニックではあまりダメ−ジを与えられない。
手の先の細い刃が、少しだが鋭く長く、そして太くなっている。また、鼻先から角が出ているのが特徴である。
ゴブ−マは、ゾンデ系のテクニックを苦手としている。勿論、皆知っていることだ。

フィオナは、自分の好きな武器である『グングニル』・・・パルチザン系の武器では上級に位置する・・・・を構え、4匹を引き付けた。
クレイは、ウィルと一緒に2匹を受け持つ。残った2匹は、ラルフが受け持った。

フィオナは長い獲物の特性を上手く使った。4匹をまとめ、そこを一気に薙ぎ払う。一瞬にして『ゴブーマ』4匹が倒れる。

ウィルは、覚えたてのゾンデで一匹黒焦げにする。
クレイはすばやさを活かしてすれ違いざまに首を切って一匹仕留めた。

ラルフは2匹と向かい合う。一歩下がり、2匹が一瞬顔を合わせるようにする。顔を合わせた瞬間、2匹は一瞬止まる。
そこをすかさず、ソードで横に薙ぎ払った。2匹のうち1匹仕留めることができた。
だが、ソ−ドの勢いが落ちたせいか、もう1匹には致命傷には至らなかった。
ソ−ドの勢いに振り回され、ラルフは体勢が崩れた。ゴブ−マが、手を振り上げる。

「やべ!!しくじった。」

ラルフは懸命に、体勢を立て直したが、ゴブ−マの方が一瞬早かった。

ズガガ!!

ラルフは左手で盾を出したが、、ゴブ−マの攻撃は激しく、吹き飛ばされた。
ウィルが近寄って来て、吹き飛ばれたラルフにレスタをかける。そのゴブーマのとどめはクレイがさした。

「くそ、油断したぜ。」

 調子がいいと自負していたラルフが悔しがる。

 「まあまあだったな、ラルフ。最後のは油断じゃない。
 お前が、その武器を使い慣れてないだけだ。もっと修行しろよ。」

フィオナは、珍しく褒めた。しかし、その表情は厳しかった。

「よし、次に行こう。」
レスをつける


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時を越えた宿命〜第4話〜その4〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:41

 レオン達は次々に建物を調査していった。建物の密集地は調査が終わった。
森の中に作られた道を進み、次のポイントへと進む。

 道を進んでいくと、少し開けたとこに出た。道が枝分かれしている。

 手元にあるエリアマップによると、右のほうを行くといいらしい。
左のほうは、森の奥に開けたところに続いてるようだ。シヴァンがチラッとそっちを見た時だった。

 「あれ?」

 シヴァンは、左手の方の道の木々の間に誰か居たような気がした。黒い服を纏った誰かだ。

 「どうした?シヴァン?」

 レオンに、今見たもののことを説明する。

 「誰か生きてる人が居るのかもしれない。ちょっと行ってみよう。」

 慎重に歩を進める3人。何処から何が襲ってきてもいいように、レオンは身構えながら先頭を歩いていく。

 すると程なく、広場のようになった空き地に出た。辺りには誰も居なかった。

 「気のせいだったのかな?」

 しばらくその周辺も探したが、人はおろかブーマなどの敵すら居なかった。

 「また今度ゆっくり探そう。今日はノルマをこなさないといけないからな。」

 3人は足早に立ち去っていった。

 


 後に残った広場には、ただ風だけが吹いていた・・・・・。
しかし、次の瞬間、黒い服を纏った小柄な人影が木の影に現れた。その視線は今立ち去った3人の方に向けられている。

 「いた・・・・。確かに・・・・・・。間違いない。やっと見つけた・・・・。やっと・・・・。」

 そう呟いた瞬間、その人影は消えていた。







 レオン達は元来た道を引き返し、改めて正規のルートで次のポイントに向かう。

 少し広い広場に出た。ここは少し高台のようになっている。
家々は、その広場と木々の間にやはりマッチするように建っている。

 「ここには敵はいないようだ・・・・?あ?」

 皆が敵が居ないと思ったのも束の間、頭上から巨大な植物とそれを運んできた飛行生物が現れた。
『モネスト』と『モスマント』だった。

 『モネスト』とは食虫植物であり、本体から発する臭いのようなもので飛行生物を惑わし自分のために働かせる。
移動、防御、敵対行動。全ては、感覚を惑わされた飛行生物が行うのだ。そうして操られた敵を『モスマント』と呼んでいる。

 モネストを運んできたモスマント達が一旦モネストの中に入る。そして、攻撃担当のモスマントと交代するのだ。
次の瞬間おびただしい数のモスマントが出てきた。既に攻撃態勢に入ってるもの、空高くからこちらの様子を伺っているもの。
そして、モネストの中で攻撃準備をするもの。

 「これは数が多いな。シンシア、シヴァンは空高くに居る敵に単体テクニックを!
 残りの、低空飛行して襲ってくるのは私が倒す。よし、いくぞ!」

 シンシアとシヴァンはそれぞれ、後ろを取られないように、広場に面した家を背に
空高く飛んでいるモスマントに向けてゾンデを放つ。

 レオンは、シンシアやシヴァン、更には自分に向けて襲ってくるモスマントを次々を斬り倒していった。
モスマントは数が多いが、単体自体はそう強くは無い。

 しばらく戦っていると、モネストからはもう何も出てこなかった。

 「よし、残ったモネストを倒そう。」

 こうして、このポイントにおける各家々の探索も、無事に済ますことができたレオン達。
生活していた跡はあるものの、やはり誰一人として生きている人物は居なかった。
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時を越えた宿命〜第4話〜その5〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:42

 フィオナ達は、3匹の『バーベラスウルフ』と、それに率いられた9匹の『サベージウルフ』に囲まれていた。
このウルフ達は1匹の『バーベラスウルフ』と3匹の『サベージウルフ』が1組みとなり4匹が群れとして生活しているのだ。
そして、ウルフと自分がお互いに正面を向いてる時はじりじりと後ろを取るように動くが
一旦後ろを向くと一気に飛びかかってきて、爪の斬撃や牙による噛み付きで攻撃してくる。
しかも、その攻撃を見事な連携プレイで行う為、油断はできない。

 「参ったね。あたしとしたことが油断してたよ。」

 フィオナの言う油断とは、ウィルの存在だった。
フィオナだけ、あるいはラルフ、クレイまでならともかく
全く訓練すらしたことの無い、しかも打たれ弱いフォースのウィルがいるのだ。

 もし、12匹に一斉に襲われでもすれば、ウィルはおろか、クレイやラルフですら
ムーンアトマイザーを使っての蘇生ができるか心配である。

 もっとも、フィオナが攻撃された所でたいした傷にはならないだろうが。

 「よし、ラルフ。あたしと一緒に囮になるよ。クレイ、その隙にウィルをつれて一時避難しろ。」

 言うや否や、フィオナは2組のウルフ達を引きつれ、クレイの動き出した方向と反対方向に逃げていく。
その後を8匹のウルフが追い掛け、フィオナに飛びかかる。

 残りの4匹は逃げ出したクレイとウィルに向けて襲いかかった。

 「ぐぅ・・・・!」

 ウィルに向けて飛びかかって来た2匹のウルフの攻撃を身を呈してクレイが受けた。
残りの2匹も、タイミングよく飛びかかってくる。

 『ただ避けるだけなら簡単だが・・・。体力が持つかどうか・・・・。』

 クレイは、とにかくウィルを抱え込み残りの攻撃も受けようとふんばった。

 しかし、残りの2匹は飛びかかってこなかった。

          パン・・・パンパンパン・・・!!  

 乾いた銃声が辺りに木霊する。 

 「ラルフか?」
 
 クレイが後ろを見ると、ソードでは無く、ハンドガンを持ったラルフがいた。

 「参ったね。このハンドガン、性能良過ぎだ。」

 「何だその銃?見掛けは普通の『ハンドガン』だが?特別な性能があるのか?」

 「ああ、親父が俺にハンターズに入った記念にくれたんだ。ここに降りてくる前に、シティの店の親父に鑑定させたら
 森周辺の敵なら、つまりレーダ反応で「Native」の敵なら、従来の攻撃力の50%増しで攻撃できると言ってたな。」

 そう言いながら、3人はフィオナの方を見た。クレイの傷は既にウィルがレスタで治している。

 フィオナの槍さばきは見事だった。

 普通は攻撃を避ける時は、盾を使うか体ごと避けるしかないのだが
フィオナは槍の穂先のフォトン部分を翳し、ウルフに警戒心を呼び起こさせ攻撃をさせなくしたりしていた。
また、ウルフの攻撃も槍の穂先でいなしたりと、つい見入ってしまうほどのものだった。

 「こら!そっちの3人!!危険が無いなら、こいつ等倒せ!!あたしが倒しても意味無いだろう?
 特にウィル!!あんたが止めを指せば、効率良く鍛えられるぞ!」

 そう言われてすばやく動いたのはクレイだった。ラルフとクレイでウルフ8匹を引き付け、避け、翻弄する。
そして、死なない程度に傷をつけ、ウィルのテクニックで止めをさせるようにした。

 「よし、次のポイントで今日の予定範囲は終わりだ。クレイ、ラルフ、ウィル!頑張ろう!!」
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時を越えた宿命〜第4話〜その6〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:43

 レオン達3人は、森の道がくねくねと続く中を歩いていた。そして、少しだけ開けたところに出る。
今日の探索予定の最終ポイントだ。
この広場の向こうに、家々が木々の間に隠れるように、そして木々にマッチするよう建てられている。

 「良し、もうすぐ終わりだ、気を抜くことなく行くぞ!」 

 レオンはいつも慎重だ。レオンの潜在能力はすこぶる高い。もし本気を出せば、フィオナとも互角な戦いが出きるだろう。
しかし、それでもなお慎重に行動する。それは、守るものが存在する証だった。

  「ん?敵か?」

 レオンはあるものの気配を察知し、そちらを振り返る。

 そこにいたのは大きな鳥のような生き物だった。そう、コードネーム『ラグ・ラッピ−』で呼ばれる可愛い生き物だった。
しかし、その外見とは裏腹に、敵と思ったものには一斉に全体重を乗せた鋭いくちばしの攻撃をするのだ。

 今、レオン達は十数匹のラッピ−と相対していた。しかし、ラッピー達は攻撃してこなかった。

 『おかしいな、データでは敵と思ったものにはすぐに敵対行動をするというのだが。』

 レオン達はいつラッピ−が襲ってきても言いように身構えた。

 しかし、ラッピー達は動かなかった。あらかじめ相談でもしていたかのようにキチンと整列をしている。

 良く見ると14,5匹いるラッピ−の中で、1匹だけ青いものがいる。レオンはすぐにデータを思い出した。

 『ラッピ−の種族の中で青いものは『アル・ラッピー』と呼ばれるレア種類である。
 また、青い固体は他の黄色い固体よりはるかに強い能力を有する。』

 そうこうするうちに、青いラッピ−が近寄ってきた。
しかも、いつでも剣を抜けるよう身構えているレオンの方ではなく、そのすぐ脇でケインを構えているシヴァンの方にだ。

 「ピーピッピッピーーー!!」

 レオンとシンシアにはラッピ−は普通の鳥の様に鳴いてる様にも思えたし、またそうでない様にも思えた。
時々緩急がついている鳴き方は、なにか話し言葉の様に聞こえたが、その意味はわからなかった。

 しかし・・・・・・・。
 
 シヴァンの耳には、ラッピー達の鳴き声は覚えたはずが無いのに何故か理解出来てしまう言葉で話をしている様に聞こえている。 

 それは現在のパイオニア2で使われている言葉に直すとこのようなものであった。

 「お初にお目にかかるッピ。私はこの周辺の全てのラッピ−を束ねるものだっピ。あなたは森の娘だっピね?
 全てのラッピ−を代表してお願いがあるッピ。」

 そう言うと青いラッピ−は頭を下げる。それに合わせてそこにいた黄色いラッピ−もシヴァンの方に向き、整然とお辞儀をした。
 
 「この森は突然変わってしまったっピ。
 ある時まではこの周辺全ての生き物達と、それまで暮らしていた人間達は全く普通に暮らしていたっピ。
 その生き物達の名前を、このごろこの辺りを歩いてる人間達が口にする言葉で言えば
 『ブーマ』『ゴブーマ』『ジゴブーマ』『バーペラスウルフ』『サベージウルフ』
 『モネスト』『モスマント』『ヒルデベア』だっピ。
 とにかく、この森にいた生き物とラッピー達と人間達は仲良く暮らしていたっピ。
 でも、ある時を境にいきなり変わってしまったっピ。
 暮らしてた人間達の気配も消えてしまったっピ。
 森の生き物達もみんなみんな狂ってしまったっピ。
 ラッピー達が狂ってないのを見て襲ってくるッピ。」

 「ピ〜〜!!」

 黄色いラッピー達も、さぞ怖そうに頭を両側の羽の陰に隠して泣き出す。

 「でも、ラッピー達には、何故皆が狂ったのかわからないっピ。
 それに、ラッピー達が何で狂わないのかもわからないっピ。
 そこで、森の娘のあなたにお願いがあるッピ。
 原因を突き止めて、森を元に戻してほしいッピ。
 これができるのは森の人達だけだといわれてるっピ。
 その代わりに、ラッピー達は、あなたとそのお仲間は襲ったりしないっピ。
 ラッピー達も狂った振りをしないと、今まで仲が良かった森の生き物達に殺されちゃうっピ。
 だから、最近良く会う人間達は襲ってるっピ。
 でも、森の娘は襲えないだっピ。ラッピー達は森の人の仲間だからだっピ。」

 ここで青いラッピ−は一息ついた。 

 「長くなったけど、お願いするだっピ!それじゃあ、みんな、しっかり挨拶するだっピ!」

 そう言うと、青いラッピ−は脇にどく。そうすると黄色いラッピ−達は1匹1匹シヴァンの前まで来ると丁寧にお辞儀をして
青いラッピ−の後ろに整列する。そして、全員(全匹?)が挨拶を終わると整然と立ち去っていってしまった。

 後に残ったのは、事の成り行きを見守って唖然としているレオン、シンシアと
言われたことがあまりにも大きなことだったので意味がわかりかねていたシヴァンであった。

 とにかく訳がわからなかったので、通信機でフィオナに事と次第を話す。そこで出た答えは、とにかく探索を終わらせ
今夜、皆で話し合おうと言うものであった。
 
 残りの家々を探索をしても、やはり生き残った人達はいなかった
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時を越えた宿命〜第4話〜その7〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:44

 その日の夕刻、パイオニア2のフィオナの自室。

 フィオナ、クレイ、ラルフ、ウィル、レオン、シンシア、シヴァンが集まり
ラッピ−の話したことをみんなで考えていた。

 「シヴァン、なんだったんだ?いったいあいつ等は何を言ってたんだ?」

 「う〜ん・・・・。とにかく、言われたままの事を全部話すね。」

 シヴァンは、とにかく、言われたまま覚えてることを順番に話して行った。
そしてこの言葉は、自分は知らないけど何故か分かったこと、そして自分のことを『森の娘』と言ってることを強調して話した。

 「森の娘・・・・か。そうだろうな。シヴァン、みんな。この場を借りて、シヴァンが赤ん坊の頃のことを話そうか。」
 
 誰も何も言わない中、レオンは口を開いた。しかし、自分の言葉を聞いて自分で訂正する。

 「いや、それはまずいか。シヴァンの過去なのだから、シヴァンだけに別のとこで話して、それから皆に話すか・・・。」

 「うううん。お兄ちゃん、ここで良いよ。みんなシヴァンの大切なお友達だから。」

 「そうか。なら、はなそう。それは俺が・・・・・。」



 レオンが育ったステールン家は、レオンが4歳になるまでは子供はレオン一人であった。
そして4歳になってしばらくたって、妹のシンシアが生まれたのである。

 そして12歳になったある日・・・・・・。

 「レオン・・・。話がある。夕食の後私の部屋に来なさい。」

 夕食時レオンに話し掛けるこの人物こそ、ステールン家の当主、レオンの父のシュタインバッハだった。

 食事の後、レオンは父親の部屋に入った。普段は呼ばれないものが勝手に入ると酷くキツク叱られる部屋だった。

 「父上、入ります。」

 「うむ。」

 「何か御用でしょうか?」

 「うむ・・・・。お前は我がステールン家の次期当主だ。そのお前だけには言っておくが
 わしは、明日から何日かかけて『魔の森』に行って来なければならない。
 そして、その目的は、新たに我が家に赤子を迎え入れる為だ。
 本来赤子とはどのようにして産まれてくるかは、既に習っているとは思う。
 だが、本来の方法ではなく、養子縁組と言われる方法もある。
 この方法により、ある家の赤子を我がステールン家の子として迎え入れることになったのだ。
 そして、ここから先は他言無用の話となるのだが、お前は他言せぬと約束できるか?」

 いつも厳しい父だが、この時の父の表情はこれまで見た事が無い程厳しいものだった。

 「勿論です。このレオン、シンフォーニュートの名に於いて誓いましょう。決して他言はいたしません。」

 それを聞き、シュタインバッハは重々しく口を開く。

 「よろしい。それでは、話を続けよう。私は明日から『魔の森』に出向く。
 何故なら、『魔の森』とは先代から付き合いのあるエルフのいる、エルフの一族が住む土地だからだ。
 森には彼らが彼らを守る為の特別な魔法がかかっている。
 だからエルフや、彼らに呼ばれたもの以外にはその魔法が働き普通の森が、魔の森となるのだ。」

 レオンはエルフのことは噂程度に知っているだけであったが
まさか国の中でも有数の魔境の『魔の森』に住んでいるとは知らなかった。 

 「そして、先ごろその先代から付き合いのあるエルフから一通の手紙が来たのだ。先代から数えれば、実に70年振りにな。
 その手紙に書かれた内容によると、そのエルフの村に双子の赤子が生まれたそうだ。
 しかし、エルフの村では双子は『忌み子』と言って、嫌われているそうだ。
 それで、その双子のうちの片方を我が家で引き取ってはくれないかと言われたのだ。」

 レオンはとんでもない秘密を聞いてしまい、くらくらしそうだった。しかし父の話は全然終わる気配は無く、気を取りなおした。

 「わしは、国王様とその周辺のごく一部の方達と密かに話し合いをして
 その赤子を我が家で引き受けるのが妥当だと言う勅命をお受けしたのだ。
 そのため、明日から何日かかるか分からぬが、『魔の森』のエルフの村に出向き、その赤子を引き取って来なければならない。
 そして、ここからが、お前にたみたいことなのだが、その赤子をお前の命にかけても守ってもらいたいのだ。
 お前は強い。たった12歳であるのに、もう騎士団の中隊長だ。
 お前の強さはわが国はじまって以来のことだと国王様は仰られておったぞ。
 そのお前に頼みたいのだ。
 どうか、この頼みを父シュタインバッハの名と、聖王国シンフォニュートの名に於いて聞いてはくれぬか。」

 


 「父はその後に言ったものを含めて3度念を押して頼みを聞いてくれと言った。・・・・そして、私はそれを受けたのだ。」

 レオンはここで一息ついた。

 「しかし・・・・なんか古風だよなあ?何とかの名に於いてとか、名前に誓っても意味無いじゃないか?」

 ラルフは訝る。レオンの時代の風習と言うものであり、今の時代には馴染みの無いものであるから
その疑問はレオンにとってももっともだと思った。
  
 「仕方ないのだよ。その時の我々の時代はそう言う風潮だったのだ。
 自分自身の命をかけた大切な頼み、あるいはそれに匹敵する大事な頼みをしたい時に
 そう言う揺らぎの無い絶対的な力を持つもに対して誓うのは、ある意味神聖な約束事としていたのだ。
 だから、神の御名に於いて交わされた約束が果たされない時は、神の御名に於いて処罰されることもあったからな。」

 「なるほど。」

 レオン、シンシア、シヴァンを除く4人はこの3人が既にデータ保管庫の隅しか記憶されていないような古い時代に生きていたもの達
だと言うのを改めて認識したのであった。

 レオンの話は続けられる。



 翌日シュタインバッハは出かけて行った。
普段からシュタインバッハは色々な国や場所に出掛けている為、父が不在の時はレオンが家長として行動をするのだ。
そしてシュタインバッハの行動は秘密のものであり、ステールン家のものは本人を除いて行動内容その他目的などに付いては
知るものはいないはずであった。

 そう、今回を除いては・・・・。

 レオンは今回に限ってだが、父の行動を知ってしまっているため気が気ではなかった。
 
 『いったいどんな赤ん坊がやってくるのだろうか?
 エルフの村から来るのだから、その赤ん坊もエルフ?
 父の動きを知りたがる悪人が自分に聞きに来るのではないか?
 もし、自分が守れなかったら、責任というものをどう取ればいいのだろうか?』
 
 次々と悪い考えが出てきてはレオンに、父の行動を誰かに喋らせようとする。
しかし、レオンは誰にも言わなかった。

 シュタインバッハが小さな赤子を抱いてステールン家に戻ってきたのはそれから12日たってからだった。

 シュタインバッハは帰ってくるなりステールン家の者を使用人や家政婦など全ての者を集め、小さな赤子を紹介する。

 「今回、養子縁組ではあるが、新しく我が家の一員となった女の子の赤ん坊だ。名前は決まっている。シヴァンだ。
 なお、どの家から来たかは言えない。そう言う約束のもと来た子だからな。ではみんな、よろしく頼んだぞ。」

 そう言うとシュタインバッハは、何か言いたげなレオンの視線を受け、軽くウィンクするのだった。
それは、夜になったら、自分の部屋に来いと言う合図だ。

 「父上。あの赤ん坊が、私の新しい妹と言うことですか?」

 「ああ、そうだ。妹のシヴァンだ。あの子がエルフの村から来たと言うのはこの家ではお前と私しか知らん。
 そして、これからもな。私と誓ったあのこと、覚えているよな?」

 「勿論です。父上との誓いがあるからだけではありません。私の妹だからでもあります。
 我が命、全身全霊を持って、これからあの子を、シヴァンを守ると誓います。」

 「うむ・・・頼むぞ・・・。」

 


 「こうして、シヴァンは私の妹として育ってきたのだ。
 そして、ここが肝心なのだが、シヴァンはエルフだ。
 エルフは外見上ニューマンによく似ているが、決してニューマンではない。
 我々の時代でも、エルフは『森の人』と呼ばれていた。
 恐らく、シヴァンが聞いた、ラッピー達が話していた言葉は『エルフ語』だろう。」

 シヴァンがステールン家に来るまでの経緯はレオンによって明かされた。
更に、レオンが言葉を続ける。この言葉は、そこにいた7人に衝撃を十分に与えるものだった。

 「父との約束だからではないが、私はシヴァンをこれからも守る。
 そして、この守ると言う言葉には、今日は別の意味も加わった。
 そう、一人の女性として一生かけて守るものと言う意味が・・・・その・・・加わったのだ。」

 途中、言いづらそうだったが、言いきったレオン。

 「お・・・おにいちゃん?」

 シヴァンはレオンの言葉に、昼間言われた言葉を合わせ、自分の思いが十分伝わったと言うことで、つい泣き出してしまった。

 そんなシヴァンの様子を複雑な思いで見るフィオナ、ほんとに良かったねと言う感じで泣いてるシヴァンを相手するウィル。
そのそばにいるクレイ。まだ意味を把握しかねているラルフ。兄と妹を祝福するシンシア。

 7者7様の夜が更けて行く。
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時を越えた宿命〜第4話〜その8〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:46
 翌日、五体満足なハンターズに対して通達があった。

 『昨日の捜索により、何人かのハンターズが負傷し、ギルドそばのメディカルセンターに収容されている。
 その範囲を今日捜索できるものに割り振る。
 基本的に、昨日の続きを探索してもらうわけだが、少し広い範囲になるだろう。
 軍も独自の割り当てで、各部署の軍人が捜索しているが軍人と接触しても余計な行動は取らない様に。
 お互い不干渉と言うことで今回のことも話はついている。
 なお、捜索時期は期限を限定していないので、諸君の力に合わせた捜索で構わない。それでは諸君の健闘を祈る。』

 フィオナは皆を集め、今日全日、シンディーとクラインに昨日あった事を報告するために、自由時間にすると言うことを決めた。
もっともレオン、フィオナは、クライン、シンディーと話をするため自由ではないが、それも午前中で終わるだろう。

 
 この突然の休日は、皆思い思いに過ごしていた。

 クレイとウィルは一緒に生活品を買いに行った。
いまどき、オンラインでありとあらゆる物を買うことが出きるのだが、商品を陳列して物を売ってる店もまだまだ健在だった。
二人はそういう店のうち何件かを見て周り、ある店に入っていった。
そして、ここ数日の食べ物や飲み物を買っていく。

 その買い物が終わり、店内を廻っている時、あるフロアーの端までやって来た。
 
 「クレイさ〜ん。ちょっとトイレ行ってきますから、待っててくださいね。」
 
 ウィルはクレイに耳打ちすると駆けて行った。

 クレイはウィルと別れたその辺をぶらぶら歩いて待っていた。するとクレイはちょっとした広さを持つバーを見つけたのだ。
バーの表に出ている看板から察すると、こんな朝の早い時間でもまだやっている様だった。

 『BAR ♪お姫たま♪』

 表の入り口のドアがガラス製で中が覗けた。ガラスから中を除いてみる。客は一人もいない様だった。

 「あら・・・・・さっきのお連れサンは彼女かしら?可愛い子ね。」

 いきなり後ろから声をかけられてクレイは戦慄した。クレイが振り向くと
そこには、一人の女性がいた。
 
 その女性は背が高く、体はすらっとしていて、長い緑の髪を頭上で束にし残りは背中に流している、細面で綺麗な顔立ちをしている。

 「ああ・・・・ありがとう。ところで・・・あんたは?」

 「私は、このバーのオーナーよ。お店はここだけじゃないけど、今日はこのお店を見に来たの。今度飲みに来て下さいな。」

 「ああ・・・・ひまがあればな・・・。」

 バーのオーナーと自称している女性と話をしているクレイだったが、緊張は隠せなかった。
目の前の女性は自分に気配を気取らせずに背後に回れたのだ。

 『何物だ?この女?』

 会話をそつ無くこなしながら、クレイは相手に気が付かれないように、相手を細かく観察した。
しかし、怪しいそぶりもその他も一切なさそうだった。そして、目の前の女性に対する警戒心が薄れた時
クレイの心にはある心配が出てきた。

 『そう言えば、ウィルは遅いな・・・・・。』

 クレイの内心の心配を察知したのか、女性はポツリと言葉を漏らす。

 「さっきの子遅いわね。」

 クレイは既に動き出していた。インフォメーションを見て女子トイレへと向かう。

 女子トイレの前まで来た時、中から何か人が争っているような音が聞こえてきた。
クレイは女子トイレであるのも構わず入っていった。

 「いや!!はなして!!」

 「いいかげんにおとなしくしなって!手荒なまねはしちゃいけない決まりなんだから!」

 トイレの中にいたのはウィルと、黒と白の塗装をされた、腕に大きな装甲を付けている
レイキャシール(女性アンドロイドのレンジャー)だった。レイキャシールは、ウィルを連れていこうとしているのか
とにかく大人しくさせるのに精一杯でクレイが入ってきたことには気が付かなかった。

 「あ、クレイさん!助けて!!」

 「ちっ!!あんた、あたしの邪魔したら、死ぬよ?」

 「お前さんこそ、俺の彼女をどうしようってんだ?」

 「あたしはね、あたしの仕事としてこの子をつれて来いって言われてるのよ。
 あんたの彼女だか知らないけど、こっちは仕事なんだから。」

 「そっちの仕事なんか知ったことか。俺の彼女は俺が守るんだよ。」

 「そっちがその気なら仕方ないわね。邪魔は片付けるのがあたしの仕事。あんたに恨みは無いが、死んでもらうよ。」

 レイキャシールはそう言うと、足に仕込まれていたハンドガンを取り出した。そして、即座にクレイを狙い打つ。

  プシュ・・・プシュプシュ!!

 サイレンサー付きのハンドガンらしく、音はしない。おそらく『サプレストガン』だろう。
トイレとしては広すぎるほどの面積を取って贅沢に作られている女子トイレが幸いし、クレイは建造物を利用しフォトン弾を避ける。
レイキャシールが放ったフォトン弾がトイレ内の建造物を壊すが、そこにはクレイはいない。

 「何?人間が避けれるはず無いじゃない!この距離よ?」

 レイキャシールはクレイの過去を知らない。その時点で彼女の敗北は決定していた。

 レイキャシールが毒づいているその時、背後に廻ったクレイが
手にした灰色の短剣でレイキャシールの背中側にある、レーダー装置を無効化させた。

 「え?え?」

 いきなりレーダーが効かなくなりシステムエラーを起こし、慌てるレイキャシール。

 クレイがレイキャシールの両方の首の外側に短剣を当ててすごむ。

 「ここでバラシテやろうか?アンドロイドの部品は裏で高く売れるんだぜ?誰に頼まれた?言え!」

 「くう・・・・。あたしの負けね。」

 クレイの質問には答えず、レイキャシールは腕の装甲をはずし、クレイに投げつける。
クレイがその装甲を避けた時に、レイキャシールは横に転がった。転がった先には外に面している小さな窓があった。

   ガシャン・・・。

 ガラスの砕ける音がしてレイキャシールは外に逃げた。クレイは本気で逃がさない様にはしてなかったので逃走は許した。

 「ウィル。大丈夫か?」

 「うん。丁度襲われた時にクレイさんが来てくれたの。ホントに怖かったよ〜。」

 クレイはウィルと一緒に女子トイレを出た。

 その先には一人の女性がいる。先ほどの緑髪の女性だ。
女性はにっこりと笑いながらクレイに向かって話し掛けてきた。

 「大変だったわね。でも、そっちの子が無事で良かったわ。あなたが置いていった荷物はうちのお店においてあるわよ?」

 「ありがとう。じゃあ、荷物を受け取りに行くとするか。」

 女性は店までクレイ達を先導するかのようにゆっくり歩いた。クレイ達も後についていく。

 その女性は店のドアをオートに切りかえると、ドアを開き中に入って行く。
クレイ達も女性の後に続いて店に入っていく。

 相変わらず、店内には客はいない様だった。ウィルはクレイの腰に手を廻し、しがみついてくる。
見た感じ普通のバーだ。店の奥にはカウンターもある。カウンターの奥にはバーテンがいた。

 「ここは普通のバーよ。あなた達に危険は無いわ。特にクレイさん。あなたにはね。」

 そう言いながら、4人掛けのゆったりした席の片方にクレイとウィルを座らせる。女性は反対側の椅子に座った。 

 「さっきのことといい、俺の名前を知ってることといい、あんた、何物だ?」

 「さっきも言ったじゃない?私はこのバーの・・・他にもお店はあるけど、オーナーよ。」
 
 バーテンがクレイとウィルに飲み物を持ってきた。飲み物を見た瞬間クレイはじっと飲み物を見た。
それを女性が気が付いたのか、クレイににっこり微笑みながら言う。

 「毒なんか入ってないわよ。もっとも、クレイさんには分かると思うけど。」

 確かにクレイの感覚によると、二人に出された飲み物には毒物は入っていなかった。クレイとウィルは女性の勧めるまま飲んだ。
コップ1杯分ではあるが、美味しかった。

 「いずれ私の正体が分かる時が来るわ。その時にまた会いましょう。」

 奥からバーテンがクレイとウィルの買い物の荷物を持ってきた。

 「それじゃあね、クレイさん。クレイさんの彼女さん。」

 オーナと言う女性に見送られながら、クレイ達は家に戻った。
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時を越えた宿命〜第4話〜その9〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:49

 バーお姫たまの中、店の奥ではバーテンとオーナーの女性が話をしている。 

 「さっきのあの若者が、あのクレイ・・・ですか。」

 バーテンがオーナーに問い掛ける。

 「そうね。私も気が付いたのは、走り去るとこを見たときかしら。それに一緒にいた女の子は
 間違いなく『例の組織』から逃げた子だわ。それより『祭りちゃん』は無事に逃げれたかしら?」

 「ハイ。先ほど特務員が暗号を送ってきました。レーダを修理してから、B−3ポイントの店に戻るそうです。
 先ほどの戦闘を収めた内臓カメラの分析結果は数日後にボスの・・・いえ、オーナのもとに届くそうです。」

 「いよいよ・・・・『クレイ』から目が離せなくなってきたわね。その周りにいる人達からもだけど・・・・。」

 「大丈夫です。『例の力を解放しないクレイ』にならば気が付かれること無いほどのレベルの者達が見張っていますから。」

 「でも、油断しちゃ駄目よ?段々と・・・そう、ゆっくりとだけど昔のクレイに戻っている気がするのよ。
 いずれ、過去の全盛期の力を取り戻すかもしれないわ。」

 「わかっております。それでは私は・・・。」

 「ありがとうね。またくるわ。」

 そういうと、オーナーの女性は店を出ていった。その手には1枚のディスクが在った。


 
 ラルフは父親からの呼び出しに、父親が経営している会社の社長室に向かっていた。
 
 ラルフの父親はローディエンス商会という、ハンターズや軍に納める武器から
日常品に至るまでありとあらゆる物を扱う巨大商社を経営していた。
その巨大商社は本星やパイオニア2に於いては最大の力を持っていた。
そして、自分の勧めていたハンターズに息子がなったことにより、このごろは事のほか上機嫌であった。

 「オウ、来たかラルフ。捜索の方も順調だそうじゃないか。今日もお前に合うような武器が入ったんでな。
 特別に、こっちに持ってこさせたんだ。どうだ?」

 「そんな用事かよ?今日は1日オフなんだぜ?ゆっくりしたかったよ。」

 「そんなとは何だ。この武器を見てみろ?ソードの上級剣『ギガッシュ』だ。
 鑑定はまだ済ませてないそうだが、それくらいはお前がやればいい。今日は、これをプレゼントしよう。
 お前が頑張れば頑張るほど、俺は武器を供給すると言うことしかできないが、俺も頑張って協力するからな。」

 「オ・・・・オウ。サンキュウ!」

 父のやさしさが身にしみるラルフ。 ギガッシュを自分のアイテムパックに詰めると、社長室を後にした。

 ラルフが、シティまで戻ってきたときに、その大剣を店で鑑定させてみた。
その結果、そのギガッシュは小型端末のレーダーで『A.BEAST』とでる敵ならば
攻撃力に+60%の属性が付いているものであった。

 「親父、こんなの何処で手に入れて来るんだよ?」

 思わず呟くラルフであった。



 シンシアとシヴァンは家で、色々話をしていた。特にシヴァンはシンシアが別行動していた時のことを話していた。
レオンに告白したこと、それをレオンが受けてくれたこと。今まで自分が思っていたレオンに対する気持ち。

 「シヴァンは血が繋がってないものね。お兄様と結婚できるわ。私は、血が繋がってるからしたくても出来ないけど。」
 
 「でも、シンシアお姉ちゃんにとって、レオンお兄ちゃんはお兄ちゃんだって事もちゃんとわかってるからね。」

 「えらいえらい。」

 「さあ。お兄様が帰ってくる前に、色々片付けちゃいましょう。」

 「うん!」

 相変わらず、仲のいい姉妹の二人。仲良く家事をこなしていった。
 
 



 クレイとウィルは家に帰ってきた。買い物は全てフリーザーにキチンとしまった。
時間を見ると、まだフィオナ達の報告会が終わってないので、さっきのバーのことを報告に行った。




 クレイ達がフィオナの家に着いた時、話はほとんど終わり、4人はくつろいでいた。

 「ン?どうした?クレイ?」

 フィオナが真っ先に問い掛ける。

 「いえ、姉御、さっきあったんですがね・・・・。」

 クレイ達もソファに座り、先ほどあった事件とバーのオーナーだと言う女性のことを話した。

 話の途中ではあったが、シンディーが何か思いついた様に話し出す。 

 「ああ、クライン、もしかしたら、あの人じゃない?」

 「ああ、緑の歌姫、サムス嬢か。」 

 「もしかして、あの、裏組織を率いてるボスのこと?」

 「あら、フィオナも知ってるの?」 

 「ああ、あたしのことも知ってたからね、あのお姉さん。前に声かけられたもん。
 『あら、あなた、小さいのに頑張るわね〜。お姉さんと一緒に世の中を良くするために、その頑張る力を貸して下さらないかしら?』
 だってさ。」 

 クレイとウィルはそんな三人を怪訝そうに見つめた。

 「ああ、クレイ、ウィル、済まない。じつはな・・・・。」

 そう言って、クラインは先ほどの緑の髪の女性について話し始めた。手には、小型端末を持っていた。

 「本名サムス・アラン。年齢は不明。『チームタークス』と言う組織を率いる女ボスだ。
 何件ものバーを情報収集と仲間集めそれに仲間を育てる場所に使っているな。
 恐らく、クレイとウィルが行ったのもそう言うバーの一種だろう。
 彼等組織は世の中の平和の為に、悪の組織、特にニューマン生成組織や人体改造組織を、まあ、言うなれば
 非人道組織を潰す為に活動をしている。
 構成人員の数は詳しくは分からんが、レベル的には下はハンターズになり立てから
 上はフィオナを越えるくらいの手練までいる。まあ、噂では200人とも300人ともいわれているが、実際は分からん。
 ハンターズに登録をしていない者も多く、実態を把握するのは無理と言えるだろう。
 恐らく、ボスのサムスしか把握してないんじゃないかな。
 勿論ハンターズだけじゃなく一般市民、金持ち、評議員等も構成員にいるという話もある。
 後、他の人道的行動をとる組織とも裏で連携してるとも言われている。
 まあ、裏の組織と言っても、正義を理念に行動する数少ない組織だな。
 おかげで、悪の組織・・・・・・もっともこっちが普通の裏組織で、いっぱいあるのだが・・・・に
 ボスのサムス・アランは散々つけ狙われているといわれている。
 それでも今まで生きてきているのだから、本人もかなりの使い手だろう。」

 クラインの長い説明の後、クレイがクラインに質問する。

 「なあ、クラインさん、何であの組織のことそんなに知ってるんだ?」

 クレイは不思議だった。裏組織と言うことは、その組織に関する情報は全く外に漏れるはずは無かった。 
それを評議員とはいえ、赤の他人にこんなにも情報を掴まれてしまうものだろうか。

 「ふむ・・・。それを言うと、ここにいる人みんなに、あることをしてもらわなければいけないんだが?
 それでもいいのかな?」

 「危険で無いなら、構わんが?」

 そう言うのはレオンだ。

 「あたしも、今の聞いて大体分かったけど、構わないよ。」
 
 と、フィオナ。

 「わたしは勿論構わないわ。と言うより、私は数に入らないわね。」

 これはシンディー。

 「あ・・・クレイさんが、それをするなら、私も・・・・・。」

 ウィルが小さな声でおずおずと言う。

 「ち・・・・しかたねえな。クラインさん、言ってください。」  

 クレイは、しぶしぶ賛同する。
 
 それを聞いてクラインは勿体付けて、話し出した。 

 「じゃあ・・・コホン・・・。私と、シンディーも、その・・・・・・・・実はタークスの一員なのだよ。
 これを言うと、その場にいる人には入ってもらわなければならない。そう言う決まりでね。」

 「やっぱり・・・。」

 フィオナは憮然とする。

 「次のエリアの探索が終わったら、また1日休日にしてくれないか?新人にはボス直々に説明があるからな。」

 「じゃあ、ラルフとシンシア、シヴァンもそのタークスとやらの一員にしちまうか。」

 フィオナが楽しそうに話す。

 「そうね。その方が良いわね。みんなが入った方が、動きが取り易いわ。」

 「それじゃ、そう手配しておくよ。皆、今日はいい情報をありがとう。特に、レオン君からの報告は貴重だ。」

 こうして、6人で行っていた報告会も終わった。

 時刻は既に昼を越え、午後の休みの時間になっていた。

こうして、初めてラグオルに降りて、最初のエリアを探索した一行は翌日の戦闘に備えて、各家に戻り、英気を養うことになったのである。


    (PSOオリジナル小説『時を越えた宿命』第4話「衝撃の森〜前編」完)
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時を越えた宿命〜第4話〜後書き〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:53

物語の4話目(話的には3つ目)で主人公の3人も探索を始めました。
副主人公の4人も探索を開始し、これでやっと物語も進み始めました。

それと共に、パイオニア2内を暗躍する組織の影も見え始め
それに対抗するタークス(らしきもの)も姿を現し始めます。

相変わらず、文が長く、読むのはつまらないかもしれませんが
精一杯書いてますので、読んで見て下さいませ。
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Tree BBS by The Room