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時を越えた宿命〜第4話〜その7〜
Gum [Mail]
12/4(Wed) 23:44

 その日の夕刻、パイオニア2のフィオナの自室。

 フィオナ、クレイ、ラルフ、ウィル、レオン、シンシア、シヴァンが集まり
ラッピ−の話したことをみんなで考えていた。

 「シヴァン、なんだったんだ?いったいあいつ等は何を言ってたんだ?」

 「う〜ん・・・・。とにかく、言われたままの事を全部話すね。」

 シヴァンは、とにかく、言われたまま覚えてることを順番に話して行った。
そしてこの言葉は、自分は知らないけど何故か分かったこと、そして自分のことを『森の娘』と言ってることを強調して話した。

 「森の娘・・・・か。そうだろうな。シヴァン、みんな。この場を借りて、シヴァンが赤ん坊の頃のことを話そうか。」
 
 誰も何も言わない中、レオンは口を開いた。しかし、自分の言葉を聞いて自分で訂正する。

 「いや、それはまずいか。シヴァンの過去なのだから、シヴァンだけに別のとこで話して、それから皆に話すか・・・。」

 「うううん。お兄ちゃん、ここで良いよ。みんなシヴァンの大切なお友達だから。」

 「そうか。なら、はなそう。それは俺が・・・・・。」



 レオンが育ったステールン家は、レオンが4歳になるまでは子供はレオン一人であった。
そして4歳になってしばらくたって、妹のシンシアが生まれたのである。

 そして12歳になったある日・・・・・・。

 「レオン・・・。話がある。夕食の後私の部屋に来なさい。」

 夕食時レオンに話し掛けるこの人物こそ、ステールン家の当主、レオンの父のシュタインバッハだった。

 食事の後、レオンは父親の部屋に入った。普段は呼ばれないものが勝手に入ると酷くキツク叱られる部屋だった。

 「父上、入ります。」

 「うむ。」

 「何か御用でしょうか?」

 「うむ・・・・。お前は我がステールン家の次期当主だ。そのお前だけには言っておくが
 わしは、明日から何日かかけて『魔の森』に行って来なければならない。
 そして、その目的は、新たに我が家に赤子を迎え入れる為だ。
 本来赤子とはどのようにして産まれてくるかは、既に習っているとは思う。
 だが、本来の方法ではなく、養子縁組と言われる方法もある。
 この方法により、ある家の赤子を我がステールン家の子として迎え入れることになったのだ。
 そして、ここから先は他言無用の話となるのだが、お前は他言せぬと約束できるか?」

 いつも厳しい父だが、この時の父の表情はこれまで見た事が無い程厳しいものだった。

 「勿論です。このレオン、シンフォーニュートの名に於いて誓いましょう。決して他言はいたしません。」

 それを聞き、シュタインバッハは重々しく口を開く。

 「よろしい。それでは、話を続けよう。私は明日から『魔の森』に出向く。
 何故なら、『魔の森』とは先代から付き合いのあるエルフのいる、エルフの一族が住む土地だからだ。
 森には彼らが彼らを守る為の特別な魔法がかかっている。
 だからエルフや、彼らに呼ばれたもの以外にはその魔法が働き普通の森が、魔の森となるのだ。」

 レオンはエルフのことは噂程度に知っているだけであったが
まさか国の中でも有数の魔境の『魔の森』に住んでいるとは知らなかった。 

 「そして、先ごろその先代から付き合いのあるエルフから一通の手紙が来たのだ。先代から数えれば、実に70年振りにな。
 その手紙に書かれた内容によると、そのエルフの村に双子の赤子が生まれたそうだ。
 しかし、エルフの村では双子は『忌み子』と言って、嫌われているそうだ。
 それで、その双子のうちの片方を我が家で引き取ってはくれないかと言われたのだ。」

 レオンはとんでもない秘密を聞いてしまい、くらくらしそうだった。しかし父の話は全然終わる気配は無く、気を取りなおした。

 「わしは、国王様とその周辺のごく一部の方達と密かに話し合いをして
 その赤子を我が家で引き受けるのが妥当だと言う勅命をお受けしたのだ。
 そのため、明日から何日かかるか分からぬが、『魔の森』のエルフの村に出向き、その赤子を引き取って来なければならない。
 そして、ここからが、お前にたみたいことなのだが、その赤子をお前の命にかけても守ってもらいたいのだ。
 お前は強い。たった12歳であるのに、もう騎士団の中隊長だ。
 お前の強さはわが国はじまって以来のことだと国王様は仰られておったぞ。
 そのお前に頼みたいのだ。
 どうか、この頼みを父シュタインバッハの名と、聖王国シンフォニュートの名に於いて聞いてはくれぬか。」

 


 「父はその後に言ったものを含めて3度念を押して頼みを聞いてくれと言った。・・・・そして、私はそれを受けたのだ。」

 レオンはここで一息ついた。

 「しかし・・・・なんか古風だよなあ?何とかの名に於いてとか、名前に誓っても意味無いじゃないか?」

 ラルフは訝る。レオンの時代の風習と言うものであり、今の時代には馴染みの無いものであるから
その疑問はレオンにとってももっともだと思った。
  
 「仕方ないのだよ。その時の我々の時代はそう言う風潮だったのだ。
 自分自身の命をかけた大切な頼み、あるいはそれに匹敵する大事な頼みをしたい時に
 そう言う揺らぎの無い絶対的な力を持つもに対して誓うのは、ある意味神聖な約束事としていたのだ。
 だから、神の御名に於いて交わされた約束が果たされない時は、神の御名に於いて処罰されることもあったからな。」

 「なるほど。」

 レオン、シンシア、シヴァンを除く4人はこの3人が既にデータ保管庫の隅しか記憶されていないような古い時代に生きていたもの達
だと言うのを改めて認識したのであった。

 レオンの話は続けられる。



 翌日シュタインバッハは出かけて行った。
普段からシュタインバッハは色々な国や場所に出掛けている為、父が不在の時はレオンが家長として行動をするのだ。
そしてシュタインバッハの行動は秘密のものであり、ステールン家のものは本人を除いて行動内容その他目的などに付いては
知るものはいないはずであった。

 そう、今回を除いては・・・・。

 レオンは今回に限ってだが、父の行動を知ってしまっているため気が気ではなかった。
 
 『いったいどんな赤ん坊がやってくるのだろうか?
 エルフの村から来るのだから、その赤ん坊もエルフ?
 父の動きを知りたがる悪人が自分に聞きに来るのではないか?
 もし、自分が守れなかったら、責任というものをどう取ればいいのだろうか?』
 
 次々と悪い考えが出てきてはレオンに、父の行動を誰かに喋らせようとする。
しかし、レオンは誰にも言わなかった。

 シュタインバッハが小さな赤子を抱いてステールン家に戻ってきたのはそれから12日たってからだった。

 シュタインバッハは帰ってくるなりステールン家の者を使用人や家政婦など全ての者を集め、小さな赤子を紹介する。

 「今回、養子縁組ではあるが、新しく我が家の一員となった女の子の赤ん坊だ。名前は決まっている。シヴァンだ。
 なお、どの家から来たかは言えない。そう言う約束のもと来た子だからな。ではみんな、よろしく頼んだぞ。」

 そう言うとシュタインバッハは、何か言いたげなレオンの視線を受け、軽くウィンクするのだった。
それは、夜になったら、自分の部屋に来いと言う合図だ。

 「父上。あの赤ん坊が、私の新しい妹と言うことですか?」

 「ああ、そうだ。妹のシヴァンだ。あの子がエルフの村から来たと言うのはこの家ではお前と私しか知らん。
 そして、これからもな。私と誓ったあのこと、覚えているよな?」

 「勿論です。父上との誓いがあるからだけではありません。私の妹だからでもあります。
 我が命、全身全霊を持って、これからあの子を、シヴァンを守ると誓います。」

 「うむ・・・頼むぞ・・・。」

 


 「こうして、シヴァンは私の妹として育ってきたのだ。
 そして、ここが肝心なのだが、シヴァンはエルフだ。
 エルフは外見上ニューマンによく似ているが、決してニューマンではない。
 我々の時代でも、エルフは『森の人』と呼ばれていた。
 恐らく、シヴァンが聞いた、ラッピー達が話していた言葉は『エルフ語』だろう。」

 シヴァンがステールン家に来るまでの経緯はレオンによって明かされた。
更に、レオンが言葉を続ける。この言葉は、そこにいた7人に衝撃を十分に与えるものだった。

 「父との約束だからではないが、私はシヴァンをこれからも守る。
 そして、この守ると言う言葉には、今日は別の意味も加わった。
 そう、一人の女性として一生かけて守るものと言う意味が・・・・その・・・加わったのだ。」

 途中、言いづらそうだったが、言いきったレオン。

 「お・・・おにいちゃん?」

 シヴァンはレオンの言葉に、昼間言われた言葉を合わせ、自分の思いが十分伝わったと言うことで、つい泣き出してしまった。

 そんなシヴァンの様子を複雑な思いで見るフィオナ、ほんとに良かったねと言う感じで泣いてるシヴァンを相手するウィル。
そのそばにいるクレイ。まだ意味を把握しかねているラルフ。兄と妹を祝福するシンシア。

 7者7様の夜が更けて行く。



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