Turks Novels BBS
〜小説投稿掲示板〜


[新規投稿] [ツリー表示] [親記事一覧] [最新の記事を表示] [ログ検索] [ヘルプ] [ホームページへ戻る]


- PIONEER1 HUNTERS - IXY [12/4(Wed) 16:54]
story1 闇の胎動1 - IXY [12/4(Wed) 16:55]
投稿者削除 - ---- [12/31(Tue) 21:29]
story1 闇の胎動2 - IXY [12/31(Tue) 21:30]
story1 闇の胎動3 - IXY [1/14(Tue) 1:14]
story1 闇の胎動4 - IXY [1/14(Tue) 18:08]
story1 闇の胎動5 - IXY [2/4(Tue) 16:53]
story1 闇の胎動6 - IXY [3/20(Thr) 13:30]
story1 闇の胎動7 - IXY [3/20(Thr) 13:31]
story1 闇の胎動8 - IXY [3/25(Tue) 17:03]



story1 闇の胎動7
IXY [Mail]
3/20(Thr) 13:31
 「くそっ!駄目だ!D、そっちはどうだ?」
 「いや、有線、無線共に通信は断絶している。地上と連絡を取るのは無理のようだな。」
 「そう・・・か。」
 レイカーとDは、詰所の制御室で地上との連絡を取ろうとしていたが、制御室の設備は全て正常に稼動しているものの、全ての通信回線が断絶状態にあり、一切の連絡手段を取れない状況にあった。
 レイカーは、椅子に腰を落とし、背凭れに身を預け天井を仰いだ。
 (これで、地上との連絡手段は完全に無くなった訳だ。暫くは、ここに閉じ込められるってことか・・・。)
 警備システムの暴走に始まり、テレパイプシステムの停止、通信の断絶。
 レイカーは、これらの事故について、原因を推測していくが、明確な答えは出て来ない。
 そして、レイカーにはより大きな一つの疑問があった。
 「なあ、D。あんた一体何者だ?ここは何だ?あんたは何を知っていて、何を隠している?」
 坑道で一度発した疑問を、再度投げかける。
 先刻は、メイの介入もありかわされてしまったが、今度ばかりは納得のいく回答が得られるまで引き下がるつもりは無かった。
 Dは暫く押し黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
 「そうだな・・・。お前には話しておいた方がいいか・・・。」
 それは、暗にメイやアリアには聞かせない、あるいは聞かせることが出来ないという意味を含んでいた。
 「俺の考えている通りのことが起きているならば、おそらく地上−セントラルドームは、壊滅的な打撃を受けている。最悪の場合、地上の人間の全滅も有り得る。」
 「な・・・。」
 レイカーは絶句するしかなかった。
 地上で何らかの事故が発生しているとは思っていたが、そこまで深刻な状態だとは思ってもいなかった。
 「これを見ろ。」
 Dが携帯端末を操作し、制御室の端末へデータを転送すると、正面のモニターに映像が映し出される。
 「これは、俺が記録した坑道内の映像だ。」
 モニターには二つの映像が映し出されており、一方には通常のカメラで移された映像が、もう一方には何やらサーモグラフィにも似た、映像が映し出されている。
 「これは?」
 「フォトンセンサーだ。空間中のフォトンを視覚的に観測する為のものだ。」
 画面をよく見ると、確かに坑道の照明や作業ロボットの動力部など、フォトンエネルギーを帯びている箇所が明るく表示されている。
 「ここだ。センサーの方を見ていろ。」
 それは、先刻の地震の直前の映像だった。
 画面には、ギルチックにIDデータを転送している、レイカーが映し出されており、直後画面が乱れ始める。
 暫く振動に耐えるレイカー達を移していたカメラが、ふいに何も無い壁を映す。
 何の変哲も無い映像であったが、フォトンセンサーには大きな変化が表れていた。
 「これは!?」
 画面下部が明るくなったかと思うと、吹き上げるようにフォトンエネルギーが上昇し画面の半分近くを埋め尽くした。
 「地下から、高出力のフォトンエネルギーが噴き出した。エネルギー波形、量共に計測不能だが、おそらく、戦艦の主砲並、あるいはそれ以上の出力があったと思われる。そして場所は、俺達がいた所から南東へ400m・・・。セントラルドームの直下だ。」
 「こいつが・・・ドームを直撃した・・・のか?」
 Dの言っていることが確かならば、セントラルドームは戦艦の砲撃を受けたも同然であった。
 Dがパネルを操作すると、再び場面が移り、警備ロボットとの戦闘中の場面が映し出される。
 レイカー達に襲い掛かってきていたギルチックは、いづれも異常なまでに高濃度のフォトンが全身に満ちていた。
 ギルチックのみではなく、坑道全体も異常フォトンが充満している。
 そして、それらは皆、地下から噴き出したフォトンと同様にエネルギー波形が計測不能となっている。
 「センサーで計測出来ないフォトン・・・か。一体、なんなんだこいつは・・・。」
 「見ての通り、正体不明の謎のフォトンさ。だが・・・。」
 Dは再びパネルを操作すると、データベースからフォトンエネルギーに関するデータを呼び出した。
 様々な兵器から家庭品に至るまで、フォトンが使用されているあらゆる物のデータが次々と表示され、そのうちの一つのデータが、坑道で観測されたフォトンと波形が一致した。
 「やはり・・・な。」
 「どういうことだ?何故ここにあのフォトンのデータがある?」
 「ここは、一時期軍の管理の下で遺跡の調査をしていた。データはその時に観測した物だ。もっとも、実際に見るまで、データが残っているとは思ってなかったがな。」
 「軍・・・だと?」
 レイカーの台詞に、思い出したかのようにDはレイカーに向き直る。
 「そういえば、まだ最初の質問に答えてなかったな。俺の本当の名は、ローグ・クルウェル。元陸軍中尉だ。ヒースクリフ・フロウウェン司令麾下特殊戦闘部隊所属のな。」
 「陸軍司令直下部隊・・・軍の中でもエリート中のエリート部隊じゃないか。軍関係者とは思っていたが・・・。そんな奴がなんで、名前まで変えてハンターズなんかやっているんだ?」
 「訳ありでな、軍に居るわけにはいかなくなった。そうだな、そいつに犯罪者リスト〈ブラックリスト〉は入れてあるか?」
 そう言って、Dはレイカーの携帯端末を指差す。
 「ああ・・・俺は賞金稼ぎ〈バウンティハンター〉じゃないから、あまり使うことはないんだがな。」
 「賞金稼ぎ用のシークレットコード『0s8ie9wns2』でアクセス。そいつで、俺の名を検索してみろ。」
 レイカーは言われるとおりに、ブラックリストで「ローグ・クルウェエル」の名を検索する。
 「あった・・・これは!?」
 端末には、「ローグ・クルウェル」の名と顔写真が表示されるが、そこに映し出された顔は、20代半ばほどのヒューマンの男性のものだった。
 「それが、俺の本来の姿だ。こいつはただ記憶を移しただけの器でしかない。」
 Dは自分の頭を人差し指で軽く突く。
 アンドロイドの電脳への記憶移植、もしくは脳移植技術そのものは、確立されてから長い年月を経ている。
 だが、元々重病患者の延命措置として研究されたこの技術は、犯罪者による利用が急増したこと、独裁を生む危険性を指摘されたことから、現在は違法行為となっている。
 また、記憶の移植の際には、専用の施設と高度な技術を要するため、法を犯してまで移植を行うことは稀であった。
 (そこまでして、身を隠さなければならなかったのか?一体何を・・・。)
 画面をスクロールさせ、端末に表示される情報にレイカーは驚愕する。
 「ダ、SS〈ダブルエス〉級犯罪者・・・それに、賞金7500万メセタだと・・・?」
 「また、賞金が上がったか・・・。よっぽど俺を捕まえたいらしいな。」
 目の前の人間に自分が賞金首として多額の賞金が掛けられている事実を知られたにも関わらず、Dは平然と言いのける。
 そして、レイカーを驚愕させたのは、その賞金の額だけではなかった。
 国家反逆、重要施設への不法侵入及び破壊活動、機密情報漏洩、暴行致傷及び致死、殺人。
 列挙される重大犯罪の数々に思わず閉口する。
 「これ・・・本当なのか?」
 「そうだな・・・そこに書かれていることは概ね事実だ。」
 自身にかけられている容疑を否定するでもなく、また、異常犯罪者の様に犯行を誇らしげに語る訳でもなく、淡々と話すDに、レイカーは呆れるしかなかった。
 「どうした?俺を捕まえでもするか?」
 唖然とした表情で自分を見るレイカーにDが問いかける。
 「・・・いや、手配書の内容だけをみるなら、よくあるテロリストの手配書の様だが・・・どうも腑に落ちない点が多くてな。」
 「ふむ・・・。」
 「まず、これだけのことをしでかしている割には、具体的な犯行内容の説明が無い。それに、通常これだけの重大犯罪に関する情報は、一般報道も行われているはずだが、俺の記憶にある限りでは、それがされていない。つまり、この事件に関しては、バウンティハンターによって秘密裏に処理されなければならない理由があるということだ。」
 レイカーは端末を操作し、手配書の履歴を検索する。
 「賞金の額も異常だ。初回の手配書では500万メセタだった賞金が、この数ヶ月で15倍になっている。たった一人のテロリストを捕らえるにしては大仰過ぎる。巨額の賞金をかけてでも早急にあんたを捕らえる必要がある。更には一般に、いや、シークレットリストで手配していることから、まっとうな賞金稼ぎにも知られる事も無くな。金の為に何でもやるような、犯罪者紛いのハンター向けのリストだろう?要するに裏があるってことさ。」
 「成る程。だが、それはお前の推測にすぎないだろう?もしかしたら、俺は本当に凶悪犯かもしれん。」
 「まあ、その時はその時さ。俺はハンターとしてのあんたを信用している。あとは俺のハンターズとしての勘ってところか。あんたが追われている理由、それは、今ここで起きている、そしてかつてここで起きた事にも関係があるんじゃないか?」
 レイカーは自分の推論を確認するようにDに視線を送る。
 Dもまた、その視線を受け止め、暫くの沈黙の後に組んでいた腕を崩した。
 「大した洞察力だな・・・。そうだ、今このラグオルで起きている事態は、全てこの地下に埋もれた遺跡に起因している。レイカー、お前はパイオニア計画、そして、このラグオルについてどれ位知っている。」
 「どれ位って、人口増加と度重なる戦乱で荒廃し、人類の生存が困難になった本星から環境の良い星へと移住する計画がパイオニア計画だろ。そして、第1次移民船団パイオニア1が発見したのがこのラグオル。だろ。」
 レイカーは、自分の言っていることがDが求めている答では無いことは十分に承知していたが、正直に言って、パイオニア計画について、一般人以上の情報は持っていなかった。
 「確かにそうだ。表向きはな。パイオニア計画は全てある存在によって仕組まれたものだ。」
 「ある・・存在?」
 「このラグオルは、パイオニア1が発見したものではない。政府の連中は、計画が発足する以前からこの星を知っていた。そして、ある物がこの星にあることを突き止め、偽りの移住計画をでっち上げ、このラグオルにパイオニア1を向かわせたのさ。」
 「そんな・・・何故、ラグオルの存在を隠す必要があるんだ!?こんな大規模な移住計画まで立ち上げてまで何を・・・。まさか・・・今、起きている事も政府の連中が絡んでいるのか?」
 レイカーの言葉にDはゆっくりと首を横に振る。
 「いや・・・確かに、政府がパイオニア計画を隠れ蓑に、ラグオルで別の計画を進めていたが、奴らはただ餌に釣られただけに過ぎない。全ての事件を仕組んだ奴は別にいる。そいつの存在はあまりにも危険であり、そして、それ故に政府はそいつを求めた。」
 「何なんだ、そいつは一体・・・。」
 「政府を、いや、全ての人類を手玉に取り、そして、このラグオルで我々を待ち構えていた者、それは・・・。」
 Dが言いかけた時、ドアが開きアリアが部屋に入ってきた。
 「あの、お茶入れたんだけど・・・。」
 レイカーとDの只ならぬ雰囲気に、ばつが悪そうにアリアが言った。
 「あ、ああ、貰おうかな。」
 レイカーは、アリアの持っているトレイからティーカップを取った。
 「Dもどう?」
 アリアがDのもとへ行くが、Dは手で制した。
 「いや、悪いが俺は、飲食物でエネルギーを摂取する機能を備えていないんでな。」
 そう言って、Dは部屋を出て行く。
 仕方が無いのでアリアは椅子に腰掛け、もう一方の茶をすすった。
 「ねえ・・二人で何を話していたの?なんだか深刻そうだったけど・・・。」
 アリアの質問にどう答えていいか迷ったが、暫く考えてレイカーは口を開いた。
 「まあ、これからどうするかってな。地上とも交信できなかったし、それでちょっとな・・・。」
 アリアは納得していないといった顔をしていたが、レイカーにはこれ以上のことは言えなかった。
 Dの話した内容は、アリアに話すにはあまりにも重すぎるし、何よりレイカー自身が詳しい情報を聞いているわけではないからだ。
 気が付けば、ティーカップは空になっていた。
 レイカーはトレイにカップを置き、立ち上がった。
 「俺も部屋に戻る。アリアも少し休んでおけよ。」
 採掘作業員の宿舎として使われていた部屋で、レイカー達は休むこととしていた。
 レイカーが部屋に戻ると、Dはすでにアンドロイド用の調整ベッドに入っていた。
 特にすることも無いので、レイカーはベッドに横になった。
 (一体、ここで何が起きている。政府は何をやろうとしていたんだ・・・。)
 ベッドに横になると、すぐに眠気が襲ってきた。
 (疲れて・・・いる・・・・・のか?)
 思考する間も無く、レイカーの意識は深い闇の中へと沈んでいった。



この記事にレスをつける時は、下のフォームに書きこんでください。
お名前
URL
メール
※SPAM対策のため、メールアドレスは入力しないようお願いします。
題名
メッセージ
パスワード
このツリーを一番上に持っていく

下のボックスにパスワードを入力すると、記事の修正及び削除が出来ます。
パスワード

Tree BBS by The Room