Turks Novels BBS
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- PIONEER1 HUNTERS - IXY [12/4(Wed) 16:54]
story1 闇の胎動1 - IXY [12/4(Wed) 16:55]
投稿者削除 - ---- [12/31(Tue) 21:29]
story1 闇の胎動2 - IXY [12/31(Tue) 21:30]
story1 闇の胎動3 - IXY [1/14(Tue) 1:14]
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story1 闇の胎動5 - IXY [2/4(Tue) 16:53]
story1 闇の胎動6 - IXY [3/20(Thr) 13:30]
story1 闇の胎動7 - IXY [3/20(Thr) 13:31]
story1 闇の胎動8 - IXY [3/25(Tue) 17:03]



story1 闇の胎動5
IXY [Mail]
2/4(Tue) 16:53
 「ああ〜!もう!しつこいっ!!」
 メイは何体目とも知れない警備ロボット〈ギルチック〉をクロススケアで両断すると、叫びだした。
 「叫んでる暇があるなら応戦しろ!」
 目の前に迫ってきたギルチックに、L&Kコンバットの銃弾を浴びせながらレイカーは叫び返す。
 (まずいな、ただの暴走じゃないのか?アレが出てくる前になんとかしたいが・・・。)
 地上への通路はすでに塞がれていたため、レイカー達は別の脱出ルートへの移動を余儀なくされていた。
 フロアを移動しながら、次々と襲い掛かるギルチックを撃退していくが、その度に出現するギルチックの数は増し、攻撃も激しい物となっていく。
 レイカー達は、自身の身を守るために、ギルチックを破壊していくが、そのことにより、より多くのギルチックを呼び込むという悪循環に陥っていた。
 本来ならば、警備ロボットの暴走事故が発生した場合、人員や施設への被害を防ぐために、暴走したロボットへのエネルギ
ー供給が止められる事となっており、また、その際には、自衛手段として暴走ロボットの破壊も認められている。
 だが、ギルチックの出現は止むことなく続いている。
 これは、坑道の警備システムがレイカー達を外敵として認識していることを示していた。
(やはり、システム自体の暴走なのか?だが、何故だ?)
 レイカーはDとの会話を思い出していた。
 大型コンピュータ「ボル=オプト」への、何者かのハッキングによる暴走事故。
 最高ランクのセキュリティシステムを搭載した「ボル=オプト」にハッキングすることですら不可能に近い。
 更に、「ボル=オプト」は、「カル=ス」「オル=ガ」の同規模の大型コンピュータと、互いに監視、補完し合う事で、システムの誤動作を防いでいるはずであった。
 レイカーには、ここまで厳重なセキュリティが働いている「ボル=オプト」に、これほどの暴走を引き起こすことの出来る者がいるとは思えなかった。
 だが、現実として、ギルチックの攻撃が止まない以上、なんらかのトラブルが発生していることは明確だった。
 「レイカー!後っ!」
 アリアの言葉に我に帰ると、レイカーの後方に新たに三体のギルチックが出現してきた。
 「ちぃっ!」
 レイカーは、すぐ傍まで迫っていていたギルチックを後回し蹴りで蹴り飛ばすと、インパクトの瞬間に足先に意識を集中し、ギゾンデを放つ。
 蹴りとギゾンデの衝撃を受けたギルチックは、頭部を吹き飛ばされ、そのまま他の二体を巻き込みながら倒れ、爆発した。
 「やるぅ〜。大昔の怪しげなカンフー映画みたいじゃん。」
 「茶化すな。新手が来る前に行くぞ!」
 「解ってるって。え〜と、次はこっちの通路。」
 メイは多用途端末に表示されている地図を確認すると、通路に駆け込むと、レイカー等もそれに続く。
 「このまま真っ直ぐ行って、次の角を左!その先に搬入用のエレベーターがあるから、そこから地上に出れるよ!・・・ああ!?」
 先行してT字路に向かったメイが、T字路に入ったところで、声を上げる。
 「どうした?」
 「あ、あれ・・・。」
 メイに続いて、レイカーが通路に飛び込むと、突き当たりに次のフロアへ続く扉があったのだが、その前にレーザーフェンスが設置されており、通行できないようになっていた。
 「何よこれ〜?地図にはこんなの書いてないじゃん!」
 現在位置を地図と照合しながらメイが愚痴る。
 「仕方ない、別のルートを探すぞ。」
 レイカーが来た道を引き返そうとした時、突然電光が走り、床を打った。
 レイカーは、反射的に後方に飛び退き、電撃の発生源を探すと、天井近くを飛行する小型のロボットを発見する。
 「カナディンかっ!」
 レイカーはすかさずブレイバスを抜き放つと、立て続けに三発の銃弾をカナディンに浴びせる。
 再び電撃を放とうと、エネルギーのチャージを始めたところに攻撃を受け、カナディンは四散する。
 「くそっ!追いついて来やがった。」
 「レイカー!こっちも!」
 通路の先からは、新たに三機のカナディンと、数体のギルチックがレイカー達の方へと向かってきていた。
 そして、反対側の通路もまた、多数のギルチックによって塞がれていた。
 (挟まれたかっ!まずいな・・・。)
 レイカー達は完全に退路を塞がれていた。
 強行突破を考えたが、この狭い通路で挟み撃ちに遭っている状況では、それは自殺行為と言える。
 「う〜ん・・・あっ!そうだ!」
 レイカーが現在の状況を打破する策を模索していると、それまでレーザーフェンスの前で、思案に耽っていたメイがクロススケアを構え、徐にレーザー発生装置に斬りつけた。
 「なっ!?」
 メイの突飛な行動には慣れていたつもりだったが、今回ばかりはレイカーの予想を遥かに上回り、理解の範疇を超えていた。
 「ほぉ〜ら、これで通れる・・・よ?」
 レーザーフェンスが消滅し、メイが扉をくぐった瞬間、通路の非常灯が灯り、けたたましく警報が鳴り響いた。
 「あ・・れ?なんで?」
 「馬鹿っ!ンなことすりゃ、セキュリティが働くに決まってるだろうが!」
 「まあ、開いたからいいじゃん。」
 悪びれる様子も無く、メイは先行して奥へと進んでいく。
 その場に留まっても仕方がないので、レイカーもそれに続いた。
 (本格的にセキュリティが働き始めたな。この分だと、エレベーターが動くかどうか、微妙なところだな。それに・・・警戒レベルSってとこか・・・。戦闘レベルだな。そろそろヤツが出てくるか・・・。)
 「待て!止まれ、メイ!」
 大部屋の中央あたりまで進んだところで、Dがメイを制止した。
 「ほえ?・・!」
 突然声を掛けられ、足を止めたメイだったが、すぐに何かを察しその場から飛び退いた。
 次の瞬間、天井からフォトンの刃を振るいながら大きな影が下り立った。
 「ちいっ!やっぱり出やがったか。」
 レイカーが下り立った影−シノワビート−に銃弾を浴びせようとするが、シノワビートは軽快なフットワークで銃弾をかわしつつ間合いを離していく。
 「逃がすかっての!」
 間合いを取ろうとするシノワビートに対し、メイは一気に間合いを詰めていく。
 「待てっ!深追いするな!そいつは・・・。」
 レイカーが更に追いすがるメイを制止しようとするが、シノワビートが胸の前で手を組み、肩が光った瞬間、メイは五体のシノワビートに囲まれていた。
 「うわわっ!分身したっ!?」
 シノワビートの持つ特殊能力の一つである。
 フォトン粒子を散布し、そこに幻影を投影することであたかも五体に分身したかのように見せる。
 だが、幻影といっても、フォトン粒子で形成されており、刃部にフォトンを凝縮することで、実体と変わらない攻撃力を持っている。
 その五体のシノワビートが一斉にメイに飛び掛る。
 「こんのぉ!ラゾンデぇぇぇぇ!!」
 シノワビートが動き出したタイミングを計って、メイは自らを中心に電撃の渦を生み出した。
 普段の行動こそ子供じみており、ふざけた印象を与えるメイであったが、戦闘に関してはプロのハンターであり、瞬時の判断力は一流のものである。
 電撃を受けたシノワビートはフォトンの結合を解かれ霧散し、本体もまた、高圧の電撃のショックにより動きを止めた。
 「いっただきぃ!」
 一瞬の隙を逃さず、メイのクロススケアが一閃し、胸に十字の傷を受けたシノワビートはその場に崩れる。
 「ふう、あっぶなぁ・・・でもまあ、シノワビートくらいあたしにかかればこんなもんね。」
 いつも通りの軽口を叩きながら、メイがレイカー達の方を振り返る。
 「ま、あと二、三体は余裕、余裕。」
 だが、メイの背後に新たに影が降り立つと、余裕の表情が引きつったものに変わる。
 メイは慌ててその場を離れながら振り返ると、三体のシノワビートが斬りかかってきた。
 「ち、ちょっとぉ、マジで出ることないじゃん!」
 「あの、馬鹿!」
 レイカーは援護の為に、ファイナルインパクトを構えるが、それよりも早く飛び出したDによって制される。
 「メイ!伏せろ!」
 Dの声に反応したメイが飛び込むようにその場に伏せると、その頭上を大剣がかすめていく。
 高純度のフォトンが結晶化し、クリスタルのような輝きを放つ大剣は、その一撃でシノワビートの装甲を切り裂き、文字通り真っ二つにする。
 「さんきゅっ。やっぱヒューキャストはパワーが違うねぇ。」
 メイは立ち上がってDの肩を叩く。
 (・・・やはり、軍製のフロウウェンか・・・。)
 レイカーはDの持つ大剣の威力を目の当たりにし、抱いていた疑問を確信とした。
 Dの持つ大剣は「フロウウェンの大剣」と呼ばれるものである。
 前陸軍司令、故ヒースクリフ・フロウウェンが使用していた大剣と同じモデルの物であり、多くのハンターや軍人が愛用している。
 そして、Dの左腕には、同様に結晶化したフォトンが輝く楯が装着されていた。
 「フロウウェンの大剣」は、その人気の高さから兵器メーカーにより、様々なレプリカモデルが開発されている。
 それらのレプリカは技術の進歩と共に、より高純度のフォトンを結晶化することで高威力となり、一時は軍でも使用されていた。
 だが、フォトン結晶化の際のコスト上昇により、官給品としては高価なものとなってしまい、軍の予算では補えなくなっていった。
 そこで軍が目をつけたのが、当時注目されていた「高純度フォトンの同調による破壊力の増大効果」俗に言う「セット効果」であった。
 同じ波長を持つ高純度のフォトンを同調させることで、その威力を倍化する。
 その技術の確立により、軍は低コストで高威力のフォトン兵器の開発に成功したのである。
 また、この技術は、軍で使用される様々な兵器に応用されたが、民間の兵器メーカーには技術情報が公開されることが無かった為、「セット効果」を持つ武器は軍所有の兵器だけとなっている。
 稀に不心得者による横流し品が市場に出回ることがあるが、やはり一般のハンターには入手困難なものである。
 (Dの性格からして、横流し品に金を出すとは思えんしな。となると、軍に?だが・・・。)
 一つの疑問が解決することで、また新たな疑問が発生していた。
 だが、レイカーはその疑問を払拭するための思考を止めざるを得なかった。
 レイカー達が通ってきた通路から、ギルチックが姿を現したのである。
 「急げ、大群が来る前に逃げるぞ!」
 レイカーの号令で、皆一斉にエレベーターに向かった。
 だが、エレベーターへ続く扉に近づくと、また新たに何者かが転送されてきた。
 「何だ?あれは・・・。」
 それは、レイカーには見覚えの無い物であった。
 巨大な機械ではあったが、これまでの警備ロボットのような歩行機能を有している様でもなく、外観からは武器らしきものも見当たらない。
 レイカーは、その様子を見て一応の警戒はしたものの、シノワビートほどの脅威では無いと判断し、進むことにした。
 だが、Dはレイカー達とは違う反応を見せていた。
 「ギャランゾだと!?馬鹿なっ!戻れ!あいつは・・・。」
 Dの言葉と同時に、ギャランゾと呼ばれた機械の表面の装甲が開き、筒状の物体が発射された。
 「な?ミサイル!?」
 予期もしなかった攻撃に、完全に不意を突かれたレイカー達は慌てて転進し、ミサイルの追撃から逃れようとする。
 「伏せろ!」
 Dが機雷を投げつけると、機雷の爆発に巻き込まれたミサイルが誘爆した。
 「きゃあ。」
 直撃は免れたものの、爆風に煽られメイとアリアはその場に倒れこんだ。
 「大丈夫か?くそっ、何だありゃ?」
 「ギャランゾ・・・軍が開発した拠点防衛用の自律型自走砲台だ。」
 「何で、そんなものがこんなとこにあるのよ〜。ここって只の坑道でしょぉ?」
 「・・・・・・『ここ』だからこそかもしれんな・・・。」
 「見て!あっちも!」
 Dの呟きはアリアに声により掻き消され、レイカー達の耳には入らなかった。
 通路に続く扉から続々とギルチックが進入してきていたが、その後にもう一体のギャランゾが転送されてきた。
 「まずいぞ、ここじゃミサイルを防ぎ切れん。メイ、他に通路は無いのか!?」
 レイカーがメイに確認するが、再びシノワビートがメイの目の前に降り立った。
 「うわっ!またっ!?レイカーお願い!」
 メイはレイカーの端末に坑道の地図データを転送し、シノワビートの対処にあたった。
 レイカーは端末を操作し、坑道の地図をディスプレイに投影させ、現在位置を確認する。
 現在レイカー達のいるフロアは、搬入用エレベーターに続く資材の一時保管庫として使用されていたものらしかった。
 そして、このフロアの出入り口は、レイカー達が入ってきた扉とエレベーターへと続く扉、そしてもう一つ扉があることが表示されている。
 だが、その扉はロックされていることを示す赤色で表示され、また、扉の向こう側は地図には記されていない。
 (行き先不明の扉か・・・。だが、他に選択肢は無い・・か。)
 「皆!こっちだ!」
 レイカーは地図を閉じると、地図に示された扉に向かって走り出した。
 扉は地図で示されたとおり、ロックされており、解除用のカードスロットとテンキーが備え付けられている。
 レイカーは端末からコードを引き出すと、カードスロットに差し込んだ。
 「どうするの?」
 追いついてきたアリアが声を掛ける。
 「ロックを解除する。どこに繋がっているか解らんが、このまま死ぬよりはましだ。」
 そう言って、端末を操作しデコーダーを起動する。
 ディスプレイには数字の羅列が表示され、ロック解除用のコードを解析していく。
 「早く〜こっちも、限界近い〜。」
 メイが珍しく泣き言を言う。
 シノワビートだけならば、メイの実力があれば問題ないのだが、ギャランゾからの砲撃と、四方八方から飛び交うギルチックのレーザーをかわしながらの戦闘に苦戦していた。
 「待て、もう少し・・・・・・よし!来た!」
 ディスプレイに表示される数字が一列に並び停止するのと同時に、扉のランプが赤から緑へ変わり、ロックが解除された。
 「メイ!D!」
 レイカーはファイナルインパクトで援護しつつメイ達を誘導する。
 メイとDが扉をくぐると自らも飛び込み、内側のパネルを操作し、扉をロックした。
 扉の先は、やや広めの会議室ほどの大きさの部屋で、奥には二十段ほどの下り階段と、最奥にほぼ壁一面を占める扉だけがある。
 レイカーは敵の襲撃に備えて警戒するが、新たにギルチックやシノワビートらが転送されてくる気配は無い。
 「ふう・・・ここまでは追ってこないようだな。」
 「ふあぁぁぁ、やっと休める〜。もう、一年分戦ったような気がする・・・。」
 メイはその場にへたり込む。
 「ゆっくり休みたい所だが、奴らが扉を破ってこないとも限らん。今のうちに地上へ戻るぞ。」
 レイカーが床にテレパイプを設置し、座標をハンターズギルドの転送ルームに合わせると、空間に歪曲が発生し光の輪が現れる。
 「んじゃ、お先に〜。」
 光が発生すると同時にメイが輪の中に飛び込んだ。
 「あれ?転送されないよ。」
 本来ならば、光の輪に飛び込んだ時点でメイの肉体はフォトンに変換され、セントラルドーム内のハンターズギルドの転送ルームに転送されるはずであるが、メイはフォトン変換が行われることもなく、その場に留まっている。
 「不良品なんじゃないの〜?」
 「そんなことは無いはずだが・・・。」
 念のために、レイカーはもう一つテレパイプを設置する。
 だが、先ほどと同様に光の輪は形成されるが、転送が行われない。
 「どういうことだ?アリアたのむ。」
 「ええ。」
 アリアが精神を集中し、リューカーによる転送を試みる。
 「駄目・・・転送されないわ。」
 何度かテレパイプを設置し直し、座標を変えるなどをしてみるが、転送が行われることは無かった。
 「これは・・・転送システム自体が死んでいるのか?」
 「そんなっ!それじゃあ帰れないじゃん!。」
 地上に通じる道は、全て坑道の警備ロボットに塞がれているため、徒歩による帰還は不可能に近い。
 その上、転送システムが使用できないことで、レイカー達は地上へ戻る手段を失ったことになる。
 (部屋の外は、相変わらずやつらが陣取っているか・・・となると、残る道は・・・。)
 レイカーは部屋の外の状況をレーダーで確認すると、部屋の奥の扉に向かって歩き出した。
 「開けられるの?」
 肩越しにメイが問いかける。
 「解らん。だが、他に方法は無い。まあ、これが地上に繋がっているという保証もないがな。」
 そう言って、レイカーは扉の横に備え付けられたパネルを操作する。
 「セキュリティレベル・・・SSだと?なんでそんな物が・・・。」
 「SSって、国家機密レベルのセキュリティじゃなかったっ?」
 「ああ・・・。駄目だ、こいつじゃこのセキュリティは突破できない。」
 レイカーはパネルに接続していたコードを引き抜き、左腕の端末に収納した。
 「出口が無い以上、システムが回復するのを待つしかないか・・・。」
 「いや、待ってはいられんようだ。」
 Dは階段を下りながら後方の扉を指差す。
 レイカーが耳を澄ますと、扉の向こうから何かを削るような音と、爆音が僅かに響いてきていた。
 「奴らは扉を破る気だ。」
 「マジ〜?どうすんの?」
 全ての退路を断たれたレイカー達に残された選択肢は少ない。
 「そうだな・・・奴らと俺達、どっちが先に全滅するか・・・だな。」
 「やっぱり・・・。」
 メイは深く溜息をつくが、すぐに気を取り直したようにクロススケアを構える。
 「だったら、あいつらさっさと全滅させて地上に帰ろっ!」
 メイは、いつも通りに振舞っているように見えたが、微かに肩を震わせており、表情も硬い。
 彼我の戦力差は明らかであり、その結末は容易に想像できた。
 そして、より大きな爆音と共に、扉が歪みだした。
 レイカーはファイナルインパクトを構え、アリアもまた、雷杖「インドラ」を取り出す。
 が、只一人、Dは扉の前に立ち、パネルを見据えていた。
 「D?どうした?」
 「・・・・・・止むを得ないか・・・。宿命いや・・・宿業というやつか・・・。」
 そう言って、パネルに手を掛けた。
 「D!?」
 『ID照合完了。ぱすこーどヲ入力シテ下サイ。』
 『ぱすこーど承認。せきゅりてぃれべる1解除。』
 パネルから、現在の作業状況を知らせる音声が流れる。
 Dは手早くパネルを操作し、次々とセキュリティを解除していく。
 セキュリティ解除を示すように、扉に灯っていた赤いランプが緑へと変化していく。
 (D・・・お前・・・何者なんだ?)
 そして、全てのセキュリティを解除し終え、Dは手を止めた。
 『全セキュリティの解除を確認。最終確認用ぱすわーどヲ音声入力シテ下サイ。』
 「・・・我、深淵より出でし者。」
 『ぱすわーど承認。げーとヲ開放シマス。』
 扉のランプが全て緑へと変わり、重い音と共に扉が開き出した。
 「開いた・・・。」
 呆けたようにDの作業を見ていたメイが呟く。
 そして、再び爆音と共に階上の扉が大きく歪む。
 「奴らが扉を突破する前にゲートを閉じる。急げ。」
 Dが促すと、レイカー達は開きかけの扉から奥へと飛び込んでいった。
 Dもそれに続き、扉の裏側のパネルを操作し、再び扉を閉じた。
 「このゲートの厚さは1m近くある。通常のフォトン兵器やギャランゾのミサイル程度で破られることはないだろう。」
 レイカー達は皆、Dを見つめていたが、誰一人言葉を発することが出来なかった。
 得体の知れない人物だとは思ってはいたが、国家機密レベルのセキュリティを解除したという事実が、より一層その正体を不透明なものにしていた。
 「ま、まあ、これで助かったってことだよね?」
 なんとかメイが口を開くが、やや声が上ずっている。
 「そうだな。ここを奥に進むと、採掘作業員の詰所がある。使われなくなって久しいが、暫く休む分には事足りるだろう。」
 そう言ってDは奥の通路を指差した。
 通路は扉と同様かなり広くなっているようだったが、薄暗く奥の様子は伺えない。
 そして、少しずつ傾斜しており、より地下へと続いていた。
 「んじゃ、ちゃっちゃとそこまで行って休もっ!」
 メイを筆頭に、アリア、Dもそれに続いた。
 (国家機密で守られた坑道跡・・・何があるっていうんだ?)
 レイカーはいつになく不安感に襲われていた。
 ここまでの出来事、そしてD。
 今までとは違う何かがラグオルで起きようとしている。
 だが、状況を分析し、情報を整理しようとすると、靄がかかったかの様に、思考がまとまらない。
 (疲れている・・・のか?・・・そうだな、あれこれ考えても仕方ないか。)
 そして、レイカーはメイ達の後を追って、通路を進んでいった。



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