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知られざる抗争 #4
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12/19(Thr) 23:23
知られざる抗争

#4
 遺跡にて


 考えてみれば、ラグオルと言う惑星は実におかしな星だった。太陽型惑星との距離、重力、大気の濃度、惑星の大きさ。
 どれをとっても、本星コーラルと変わらない、正に人類が住まうための理想的な環境を持っていた。だが、それだけ環境が整っているのならば、何らかの知的生命体が住み着いていても、おかしくはないはずだった。

 まだ、知的生命体が発生するには時間の掛かる原始の惑星と言う事も考えられたが、調査によって明らかになった惑星の推定年齢は、決してそれほどに若いものではなかった。

 そうであるのに、ラグオルには極めて原始的な生物が住まうのみであり、人間レベルの、あるいは、いずれそれに達するであろう生命体の存在が、七年の歳月をもってしても確認されなかったのだ。
 当然、知的生命体が存在する証である、オブジェクトや遺跡も発見されなかった。

 これは確実に、この惑星に知的生命体が存在しないといっていい。
 しかしである。最近の調査によって、この惑星の地下深くに巨大な、それもコーラルよりも高度な文明の残した遺跡が発見されたのだ。
 これは果たして何を意味するのか。仮にこの星にかつて先住民が存在しており、そしてどこかで滅亡したとして、これほどの文明を持っていながら、地表にその痕跡がまったく見受けられないと言うのはおかしい。

 では、コーラルと同じように、別の星からの移住民がいたのか。これも、否である。
 なぜなら、これだけ環境の整った地上で、わざわざ地下にのみ文明を築くと言う事は考え難いからだ。よく、映画等では地底人などが描かれたりするが、実際はエネルギー源の極めて少ない地下で、高度な生命体が生息する事など有り得ない。

 つまり、この現状はまったくもって判別不可能なのであった。
 だが、謎を解くための鍵が無いわけでもない。事実、この遺跡には、地表に棲息する原始動物は全く異なる、明らかな敵意をもってこちらに襲いかかる、亜生命体の存在が確認されたからだ。

 なお、遺跡内からパイオニア1軍の装備の残骸が発見された為、一説では、行方不明になった彼らは、これに壊滅させられたのではないかと言われているのだが、真相は定かではない。








「総督府じゃ、なにやら調査に必死のようだけど、私が必要なのは例のフォトンだけ。見つけるものを見つけたら、さっさとずらかるわよ」

 機械的な造りの割に、実に静かな遺跡の通路を、キャロル達は歩いていた。
 パイオニア1がこの遺跡の情報を陰徳し、これにまつわる事の一切をパイオニア2に伝えなかったため、現在同軍はこの遺跡の解明に奔走している。

 だが、彼女に必要なのは、真相ではなく新種フォトンだ。パイオニア2中の研究機関が政府に協力を申し出ていたが、キャロルはそんな事になど、つき合うつもりは毛頭なかった。

「例のフォトンは、この遺跡の最深部と言われている、B3フロアで発見されています。キャロルさん、私が言うのも何ですが、政府も完全にここを掌握している訳ではありません。
 十分に気を付けて、少しでも危険だと判断したら、リューカーで脱出して下さい」

 と、キットがキャロルに釘を差す。

「あら、怖けづいたの? 恐いんなら今すぐに帰っても良いのよ。私としては、その方がありがたいし」

 キャロルが毒づく。彼女は、なんとかして邪魔者――この場合はキット――を追い返したいようだった。

 ややあって、どこからか侵入者を嗅ぎつけた、遺跡の亜生命体が多数現れる。彼らは真っ直ぐな敵意を持って、キャロル達に襲いかかってくる。

「博士、キットサン。お話をシテイル場合ではアリマセン。敵が迫ってイマス」
「解っているわ、イングラム。さあ、一緒に戦いましょう……」
「あの、私も居るんですけど」
「あなたは勝手になさい」

 敵は、D型亜生命体と呼称される、通称ディメニアンと言うやつだ。動きは至極単純だが、そのフォトンのブレード状になった腕から繰り出される攻撃は、高い破壊力を持っていた。
 このメンバーの中で、最も戦闘能力の高いイングラムは、まずその厄介な攻撃力を封じるため、殿として撹乱に出た。敵の周りを走り、注意を引きつつ片手の小銃を放つ。

「サア、掛かってコイ!」

 見事にイングラムの挑発に乗ったディメニアンは、後方のキャロルとキットの事は忘れたかの様に、イングラムに向かって一直線に迫っていく。
 そこに、キャロルのテクニックが襲いかかった。

「黒焦げにしてあげるわ。ギゾンデ!」

 イングラムに注意を引かれていたディメニアン等に、強力な雷のテクニックが次々とヒットしていく。ディメニアンは雷撃に弱いらしく、今の攻撃で一気に速力を失った。

「もらった!」

 そこへすかさず、キットが持ち前の素早さを活かし、踊る様にダガーを敵に斬り付けて行く。弱ったディメニアンは、この一撃に耐え切れずに倒れて行く。斬り付けられた場所から、紫色の体液がしたたる。

「片付いたわね」

 キャロルが言う。実際に、この戦闘に掛かった時間はごく数分に過ぎない。この調子ならば、B3フロアも目と鼻の先であろう。
 だが、そんなキャロルの思考に気が付いたのか、キットが警告をだす。

「ええ。でも、こいつらは遺跡の中では雑魚に過ぎませんし」

 だが、そんな彼女の言葉は、キャロルの耳には届いていないらしい。キャロルはくるりと前に向き直り、

「……行くわよ」

 と言った。あるいは、キット対するあてつけかもしれない。イングラムがそれに従う。

「ハイ、博士」
「ま、待ってくださいよ!」

 遺跡での一ラウンドめを終えた彼らは、さらに奥深くへと潜って行く。このまま行けば、確かに目的はすぐにでも達成できそうだ。
 だが、それを監視する目があった。

「フン、チョロチョロとうろつきやがる……ま、折りを見て消すか」

 奇妙な文字が刻まれた刀芯の周りに、青白く輝くフォトンをまとった剣を持った青年がつぶやく。その下には、無惨にも破壊されつくしたD型亜生命体の骸が、おびただしい数、転がっている。
 その目は、明らかに狩りをする時の猛禽類のそれに酷似していた。



 この時、未だキャロル達は、危険な存在が自分達を監視している事に、気がついていなかった。




続く



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