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Silent of Pioneer2 III
ダイア
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11/10(Sun) 20:02
三番手は太陽の使者(違)、ダイアでっす! それじゃ、行くよん。
Silent of Pioneer2
#3 少女と暗殺者
「ハアッ、ハアッ……!」
全てを覆い尽くす暗闇の中に、ひとりの男が走る足音と、荒い呼吸が聞こえる。
暗くてその表情を読み取る事は出来なかったが、息づかいから彼が恐怖している、と言う事が伺えた。
男はしばらく何者かから、逃げる様にして走っていたが、やがて体力が尽きたのか、歩調をゆるめてしまう。
男はものすごい汗をかいている。死に物狂いで走った事もあるだろうが、この尋常でない量の汗はそれだけが原因ではなかろう。
「ここまで、逃げれば、ハアッ……大丈、夫っ、だろう……」
やはり男は何者かから逃げていたようだが、うまく撒けたのか、近くにあった壁に背をもたれかける。
だが、男が安心できたのはその時だけだった。上げた目に、信じられない映像が写る。
「ヒ……!」
「逃げると……恐怖する時間が長引くだけよ」
男の目に写った者は、彼が今まさに撒いた思った相手だった。その姿は死神に見える。
男をずっとつけてきたらしい、女の冷たい声が彼を絶望の淵に追い込む。そして追い詰めた獲物に、女はゆっくりと近づいて行く。
男は恐怖のあまりに、これ以上下がり様も無い壁に、何度も背中を打ちつける。やがて、その目は暗闇に鈍く物体を捉える。
「た、助け――」
銃声。彼は最後に命乞いをした様だが、その言葉が最後まで続けられる事はなかった。フォトンの弾丸に頭部を撃ち抜かれた男は、全身の制御を失い、その場に音もなく崩れ落ちる。
そして相手の絶命を確認した女は、何事も無かったかの様にその場を立ち去ったのだった。
「邪魔するぜ〜〜〜♪」
「あらん、いらっしゃーい」
「にゃーん。今日もオレンジジュースを頼むぜ〜」
「はいなぁ……でも、さがらちゃん。あなた毎日来ているけど、そんなにウチのジュースを気に入ってくれたのかしら?」
さがらと言う少女は、あの日ここを訪れてからと言うもの、毎日の様にこの酒場に通っていたのだった。当人が言うには、ここのオレンジジュースが痛く気に入ったらしいが、サムスとしてはどうも府に落ちなかった。
まさかとは思うが、仮にも自分は秘密組織タークスのボスである。この娘が、自分の命を狙う刺客である可能性も無くはないのだ。
だが、さがらはサムスのそんな考えなど気づく風も無く、陽気な口調で彼女との会話とオレンジジュースを楽しんでいる。
そんなさがらを見て、サムスは自分の考えを打ち消した。普段ならば、こんな甘い判断はしないはずなのだが、なぜかこの娘だけは信じられるような気持ちになってしまうのだ。
サムスはそんな自分に気づき、ふと自嘲気味な笑顔をつくった。しかし、これもさがらには見えていないようだった。
やがて、パイオニア2の人工的な夜も更けてきた。パイオニア2は、移民船として乗員の精神的負担を最低限に抑えるために、可能な限り母星と同じ環境を再現できる様に設計されていた。
だがこのシステムは、船としての性能を制限してしまう上、維持もとてつもない費用と労力を要するため、一部からは建造計画の時から反対が出ていたのだったが、時のタイレル総督が強引に推し進めたのだった。
「さがらちゃん、今日はもう夜も遅いわ。そろそろお帰りなさいな」
「わかったぜ〜」
だが、それだけ母星と似た環境を構築しても、やはり完全ではなかった。まず時間感覚が狂い、今では子供でも夜中に起きている事がざらにあったりするのだ。
もっとも、それでも別計画の居住環境をほとんど無視した、航行能力優先のものより、遥かにましだったのだが。
ややあって、帰り支度を整えたさがらが、元気な挨拶を残して去って行った。サムスはその後ろ姿を見つめながらため息をついた。
だが、休む間もなく入れ替わりに今度は小太りの中年の男が店に入ってきた。
「ヨォ〜サムスちゃあん! 今日も綺麗だねぇ、結婚してくれー!」
「あらいらっしゃいな。ほめてくれるのは歓迎だけど、最後のは遠慮するわん」
中年の男は既に酔っているらしく、酒臭い息を吐きながらカウンター前の席に座った。男はそのまましばらくうとうとしていた様だが、はたと何か気づいたらしく、服のポケットをごそごそやった。
サムスがそれを、やや構えた姿勢で見ていると、やがてポケットから小型の光ディスクを取り出した。男はそれを指でつまんだまま、ずいとサムスの顔の前に差し出す。
「これサムスちゃんに上げるよ〜……ウィック」
「あらー、何かしら?」
「人気のユニット、「ザ・ふじおスターズ」の新曲だよ。俺ぁ、これのファンでねぇ」
「んー、よく解んないけど、もらっとくわねー」
サムスはそんなユニットは知らないし、別に聴きたくもなかったが、とりあえず相手の好意なので頂いておく事にした。
それを見て男は満足そうにしていたが、今度は別のポケットからけたたましい電子音が鳴った。音からして携帯電話であろう。だが、その呼出音に彼は異常な反応を示した。
「い、いまでるいまでる……ッ! はいもしもし? ……うわっ! そんな大声出すなよ!! 近所に聞こえたらどうすん……ッ! 解った、今すぐに帰る! 帰りますから!!」
男が悲鳴を上げながら電話を切る。
「あらー、どうしたのかしら……?」
「ちょ、ちょっと家内から……悪いねサムスちゃん。今日はもうか、帰るからっ! またねっ!!」
男はそれだけ言い残すと、慌ただしく帰っていった。サムスはそれを苦笑まじりに見つめていたが、やがて真顔になって店を閉じ始めた。まだ酒場の経営時間としては浅い時間帯であるのに、だ。
やがて店を閉め切ると、サムスは店の奥の狭い個室の前に立つと、パスコード、指紋認証、網膜認証、声帯認証などの個室には全く不釣り合いな、厳重なロックを解除して入って行き、再びロックする。
そして、先ほど男からもらったディスクを再生器にかける。
『……こちら連絡員ナンバー七三七二……』
やがて再生されたディスクから聞こえてきた音は、人気ユニットの新曲などではなかった。それは、タークスのボスであるサムス宛に記録された、極秘情報だったのだ。
ディスクは再生を続ける。
『……ボス、ここの所「ブラック・ハウンド」が妙な動きを見せています。先日ボスが始末した男も、どうやらそれと関係のある奴だった様です。
まだ詳細は掴めていないのですが、ともかく注意して下さい――以上。なお、このディスクのデータは再生終了と共に消滅する』
その声と同時に再生が終了した。ディスクが再生機から吐き出されたが、これはもはや何の意味も成さないだろう。
サムスはしばらく思案を巡らしていた様だったが、やがてクスリ、と笑った。
「フ……面白いじゃない。「ブラック・ハウンド」……何をするつもりなのか知らないけれど、せいぜい私を失望させないで頂戴ね」
To be continue.
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