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ーN・I・N・J・A− 4
Mr.X線 [HomePage] [Mail]
4/28(Mon) 20:38
ーN・I・N・J・A−

 その四 ラグオル地表にて




 その時、キットは不機嫌だった。
 なぜなら、本来ならば一刻も早く、ラボの機密を嗅ぎ回る者の捕獲、および抹殺という、忍者としての任務に戻らなければならないはずだったのが、カムフラージュのためのハンター業で、妙な製薬会社の人間に目をつけられ、その要人(依頼主クリスティーナによれば、ジョンという名らしい)捜索に駆り出されてしまっているからだ。

 兵は神速を貴ぶ、という言葉がある。キットは兵士ではないが、少しでも早く事態を進展させる事は、彼女にとっても重要な課題だった。
 それなのに、呑気にラグオル地表を探索していなければならないと言う現状は、キットを苛立たせるのに十分な要素が揃っていた。

 唯一の救いは、まだこの惑星に人類が手を付けてから、それほど時間が経過していないため整備されている区画が少なく、また、整備されていない場所に単身潜入する事は、凄腕のハンターでも自殺行為といわれている程なので、ジョンが整備区画外に出ている事は有り得なく、限られた範囲の捜索で済むという事だ。

 だが、それでも一つの街か、それ以上の広さを誇る空間である。
 捜索とは本来、まず第一に人からの聴き込みがなければ始まらないが、捜索すべき人間が機密事項に属する人間のため、パイオニア2で聴き込みをする訳にも行かず、広大な砂漠で人探しをする様な状態にキットは陥っていた。

 キットは溜まりかね、クリスティーナに不満をぶつけた。

「ねえ、いつまでこんな化石探しみたいな事してなきゃなんないのよ!?」
「それがあなたの仕事だろう」

 そうクリスティーナにいわれて、あたしには時間が無いの――! と叫びたくなるのを、必死でキットはこらえる。

「……でも、こんなんじゃラチが明かないわ」
「ジョンにも通信機を持たせているはずだから、発信源を探れば無くしていない限り、容易に捜し出せる。今、通信コードを教えよう」
「そ、それをなんで早くいわないのよッ!!」
「忘れていた」
「くッ……」

 いけしゃあしゃあと言ってのけるクリスティーナに、軽い殺意を覚えながらも、キットは妙な事を感じていた。
 そもそも捜索すべきジョンという人物が、所属する製薬会社の作る製品の何かに必要なサンプルを求め、このラグオルに降り立っているのに、外部との連絡手段を持っていないという事など有り得ない。
 それでは緊急の事態に対処できないからだ。

 この事を、会社直属の治安部隊、それも裏の商品にまつわるトラブルを処理するための掃除屋と言う、選り優りの人間が集まった部隊の所属である、クリスティーナが忘れるはずがない。

 なにか、隠している――。
 そう感づいたキットは、クリスティーナに真相を問い詰めるため、カマを掛けてみる事にした。

「あんたねぇ、仮にも特殊部隊の女が、忘れてましたで済まされると思ってンの? そんな見え透いた嘘にごまかされる程、あたしゃ人間出来ちゃいないわよ!?」

「本当に忘れていたのだ。こう見えてもかなり焦っているんだ。私の首が掛かっているからな」
「……あっそ。あくまでシラ切るつもりなのね? だったら、ここで契約破棄よ。ハンター自身が同意できない仕事は、請け負う必要ないんだから」

「キット、我々にも事情というものがある。それにあなたは、我が社の機密を既に知ってしまっている。いかにハンターズの制定したルールがあっても、ここは私に従ってもらわないと困るのだ」

「もし、それでもイヤって言ったら?」
「その時は、あなたには悪いが消えてもらう。元よりあなたに選択の余地は無いのだ」

 クリスティーナの目に殺意が宿る。
 掃除屋というぐらいだから、彼女は人の命を奪う事に微塵もためらいはしないだろう。
 だが、キットとて数々の修羅場を潜りぬけてきた、ベテラン忍者である。少なくとも、この女に実力が劣っているとは思わない。

 そういう自信があったため、もう少し粘ってみる事にした。

「あたしをなめて掛かると、痛い目に逢っちゃうよ?」
「私とて、正面切って戦えるとは思っていないさ。ハンターは単独行動のエキスパートだからな……だからこそ、一人でもここの怪物共と渡り合える、あなたにこの件を依頼したのだ」

 至極もっともである。
 付け加えていえば、キットは忍者という、ハンターよりもさらに単独行動に長けた人間だ。
 だが、クリスティーナはそれでも余裕を崩さない。
 その理由はすぐに解った。

「しかし……そろそろか」
「え……うっ、こ、これは……!?」

 クリスティーナの言葉と時を同じくして、突如キットの身体に異変が起こった。
 視界がぐらぐらとし、世界が歪む。激しい頭痛と嘔吐感に襲われ、思考が定まらない。

「あ……うぁ……」

 苦しむキットの様子を確認したクリスティーナは、

「先ほど飲んだ紅茶に、ある薬品を入れさせてもらった。意識が混濁するだろう、ここに緩和剤がある」

 そういって、紙に包んだ肌色の粉末を差し出す。
 キットはそれをひったくる様にして奪い、一気に飲んだ。

 数分後、意識の混濁はやわらぎ、再び視界が正常に戻った。
 それを見計らうと、クリスティーナはキットに宣告をする。

「その薬品は脳に直接作用するもので、服用者の脳神経を破壊する事ができる。服用後1時間「きっかり」で効果が現れ、3時間で死に至らしめる事ができる、我が社の新型試作化学兵器のひとつだ」

 完全にキットの生殺与奪権を掌握したクリスティーナは、それでも笑みの一つ浮かべる事なく、冷淡に続ける。

「今あなたが飲んだ緩和剤は、薬の効果を約一日遅らせる事ができるが、解消はしない。解毒剤が欲しくば、依頼を達成する事だ……
 なお、私を殺して薬だけ奪っても無駄だぞ。今、所持しているものは全て調合前のものだ。そしてこの調合は我が社の中でも私を含め、数える程の人間にしか出来ない」

「あんた、ただの掃除屋じゃないわね……! く、ロクな死に方しないわよ。あたしが保証したげる」
「なんとでも言うがいい」

 キットはこの時、己の迂闊さを呪っていた。
 仮にも忍者である自分は、決して少なくない薬品に関する知識を持っている。
 そうであるのに、飲物に薬を盛られている事に気付けないとは――!

 しかし、これはどうしようも無い事であった。
 クリスティーナの盛った薬品は、従来の化学兵器に使われた薬品とは全く異なる、あらゆる意味での新型化学兵器なのだ。
 そして試作であるが故、一般に広まっておらずキットが知らなくても無理はない。

「ジョンの反応は、セントラルドームの辺りから出ている。さあキット、そこまで案内しろ」
「……解ったわよ!」

 キットは激しい後悔の念に駆られながらも、しぶしぶと捜索を再開した。




つづく



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