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ーN・I・N・J・A−
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3/16(Sun) 23:02
小太りX線です。

文書というモノは一見地味なためか、いまいち絵に比べ、投稿数や人気度が低いですな。
んが、小説などを手にとって、面白いと思った方には理解いただけると思いますが、時に文書とは、荘厳な絵よりも、より具体的に、そして美麗にその風景を、頭の中に映し出す事があります。もちろん、その反対もありますが。

現代は特に、我が国は漫画大国と呼ばれるほどに、人の活字離れが進んでいる様です。だから漫画等が悪いというわけでは決してありません。エリートだとか知識階級などと呼ばれる人種は、楽しむという行為を敵視するのか、小説ですらも、かつて明治の時代に初登場したとき、「実に下賎な物である」と、偉い方々にはそう認識されていたそうです。

さて少々話がそれましたが、しかし、文書を読むという事の楽しさについて、今一度、再認識してほしいなあ、と思っています。

そこでイマイチ寂しいNovelsに活気が出れば、ちう事で新作の投稿です。
今回も、呆れられること承知で、自キャラにまつわるお話を描く予定です。





ーN・I・N・J・A−

 その一 時代の陰を生きる者





「綺麗だねぇ」

 ハニュエールのキットは、巨大宇宙移民船・パイオニア2の、VR(仮想現実)空間で日の光に照らされ、ダイヤモンドよりも美しく輝き、時に純白の化粧を施す、蒼色の空間をじっと見つめていた。

 これは、かつて母星が健在であったときの、自然の映像を逐一記録したものを、最新のコンピュータで加工し、VR空間に三次元的に再現したものである。

 昔はどんなにリアルに現実を再現しようとも、本物の美しさや質量には追い付かなかったものだが、コンピュータの発達は、VR空間で自然界において、人間のあらゆる感覚できるものを再現した。
 触れる事も匂う事も、全てがほぼ完全に現実と同じであった。

 だが、それでも彼らは自分たちの作り出したものでは満足行かないらしく、衰弱した母星に代わる新たな大地を必要としていた。

「よっ」

 キットは、VR上に再現された砂浜の上を、たん、と跳躍した。その衝撃できらめく砂粒が、ひらひらと空中に舞い上がる。目の前に広がる大海に比べても、遜色ないほどに美しい。

 だが、その砂を舞い上げた本人は、同じ人間がみれば砂や海を掻き消してしまう程に、美しかった。身の丈一七〇センチほどの彼女は、セミロングに整えた純黒髪を乗せた、やや小ぶりな頭に、きりとした目鼻を持ち、実に端正な顔立ちをしている。

 そして小さな頭とは反対に、その体はたわわに実った乳房に、ほど良くくびれた胴回り、そして綺麗な丸みを帯びている腰まわりが、その全体像を妖艶なものとしていた。

 さらに言えば、彼女の着衣しているものは、生地で覆われている部分よりも肌が露出している部分が多く、露出している箇所が、これまた人目を引いた。
 感覚的にいえば、今日におけるビキニ型の水着と言っても、差し支えないだろう。

 しかも、これは水着ではなく、常時着流すものだ。さすがにこうなると、下品な男共なら喜ぶかもしれないが、通常の感覚をもった女性や、公共良俗を重んじる者であれば、眉をひそめるものであった。


 だが、この服は見た目に反し、超という文字をつけてもおかしく無いほどに、最新科学の粋を結集した高性能着衣式防具であった。

 その性能は、服全体から発生する薄い純正フォトンの幕が、古式実弾式銃などの弾丸は無論、フォトンの刃や弾からすらも強固に体を防護し、さらに着衣した者の身体能力を、ある程度向上させるというものだった。

 しかしこれは、最新科学の粋を結集したという所からも解る様に、一般の人間が手に入れられる様な代物ではない。
 つまり、彼女は一般市民などでは無かった。浜辺にいるのも、ただVRを使って海水浴を楽しみに来ているのではない。

 その証拠に、彼女の端正な顔には、気迫のこもった表情があった。凄まじいまでの「気」である。並の人間ならば、この時点で恐れをなしてしまうだろう。

 キットは、砂浜をなめる様にして駆けてゆく。その速度は、強化服の影響もあってか、常人の走る速度よりもかなり速いものだった。

 だがキットの行く先に、それまで何もなかった虚空から、突如とフェードインする様な感じで、異形のモノが現れた。その姿は、非常にグロテスクではあったが、我々の世界に棲む「蜂」と似ている。ただ、その大きさは蜂よりも遥かに大きく、ドッジボール並の大きさがあった。

 それは、VR上に設定された「エネミー」だった。彼女の目的は、おそらく海水浴ではなく、足の取られる地面の上での、戦闘訓練なのであろう。

 なぜ、それが「砂浜」であるのかは、解らないが。もしかすると、本人の希望だったのかもしれない。

 そしてこれが戦闘訓練である事を証明するかの如く、巨大蜂は明らかな敵意も持って、キットに襲い掛かってきた。普通の人間は、こんなモノに襲われようものなら泡を食って逃げ出すか、下手をすれば腰が抜けてしまうであろう。

 だが、先述の通り彼女は一般人ではない。ふっと空間に手を浮かべると、淡いグリーンの光と共に、一振りの小太刀が拳の中に現れた。

 それの形状は日本刀だ。キットはおもむろに鞘から抜くと、それは日の光を全身に浴び、ぎらりと輝いた。
 しかし刀としては、刃渡りが約六〇センチほどと短く、さらに沿っておらず、垂直に伸びていた。それは、むしろ日本刀というより、「忍者刀」と呼ばれるそれに、酷似していた。

 戦闘で相手を斬り伏せる目的の他にも、高飛びの棒の様にして使う等、用途は様々に渡る。
 が、今は刀本来の目的である、相手の殺傷に使用すべきだろう。

 キットは、自在に宙を飛び回る敵にも焦らず、じりじりと間合いを詰めてゆく。そして、敵と一定の距離まで近づくと突如、

「ィやァッ!」

 キットは高く、短いかけ声を発し、巨大蜂に飛びかかった。
 一閃。

 ズブ、と鈍い音が鳴った。放物線を描きつつ、キットが着地する。
 既に巨大蜂は真二つに割れ、砂浜の上に屍を晒していた。

「ふぅ……ま、こんなモンかねェ」

 倒された巨大蜂が、データの藻屑となって消滅するのを確認したキットは、一戦終わった後の安堵のため息をついた。ふい、と頭を振った際に、流れるセミロングの純黒髪が美しい。

 そして、しばらくすると、

「見事だな、ニンジャ・キット」

 やや低い、女性のものと思われる声がどこからか響いた。
 キットは声に反応し、光輝く太陽のある空に顔を向けると、不敵な笑みを浮かべた。

「まぁ、これ位でなきゃ、このお仕事、命がありませんしねぇ」

 そう言いながら、彼女はチン、と抜いた刃を鞘に納めるのだった。



つづく
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ーN・I・N・J・A− 2
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3/29(Sat) 23:10
ーN・I・N・J・A−

 その二 任務





 かちゃかちゃと音がする。
 不規則にメロディを奏でているこの音は、一部の食器を使用している時に、よく聞かれる。

 時刻は午前九時。キットは、パイオニア2の住宅街ブロックにある自宅にて、遅めの朝食を取っていた。
 話をする相手もいないので、もくもくと箸を動かし続けた。

 先ほどから続く、かちゃかちゃというこの音は、この二本の細い棒状の食器が、陶器製の器に当たる際に、発生しているものだった。

 キットが食べている物は、白米だった。我々の世界では日本や中国など、アジアの国々で主食とされる事が多い。
 この世界でも、母星にある彼女の故郷などが、似通った食文化を持っていたらしく、主食の他に、汁物や惣菜として、緑の漬物などがあり、やはり我々がよく、口にするものである。

「ちょっと、ぐにゃぐにゃするね……水の量を、多くし過ぎたかな」

 自分の作った飯に文句を付けつつ、箸を口に運んで行く。
 その合間に、ずず、と音を立てて汁物をすすった。

 食事はものの数分で終わった。簡素な献立であったために、作るのも容易いが、それ以上に食べるために掛かる時間は、さらに早かった。


 後片付けを済ますと、彼女は自宅を後にした。
 この後、彼女は仕事場に向かう訳だが、キットは表向きハンターとして活動しているのだが、実際は、密偵の様な仕事に就いている。

(様な、と表現したのは本物の密偵とは違い、暗殺や破壊工作など、派手な仕事を引き受けたりもするからである)
 
 この職業柄、次に自宅に戻るのはおそらく、大分後になるだろう。

 また、余談ではあるが、古代からの技術を受け継いでいる事と、かつてその技術を使用してた職業が、密偵と呼ぶよりも、現在の仕事内容に酷似していたため、キットは自らを忍者と呼称していた。


 表の仕事場である、ハンターズギルドへと繋がっているトランスポーターに移動するまでの間、キットは昨日、本当の雇い主から受けた命令を、思い返していた。




「ニンジャ・キット。君の今回の任務における適正試験の結果は、合格だ。非の打ちどころも無い」
「そりゃ、どうも。で、私に何をさせようってんです?」
「簡単だ。簡単であるが、君の様に優秀な者でなければ、勤まらないものだよ」
「勿体ぶらずに、早くお教え願いたいんですがねぇ……」

「では、説明しよう。実は、ここのところ、我々の周りを嗅ぎまわっている輩がいる。
 総督府の人間であると言う所までは察しが付いているのだが、いかんせん素早い奴でね。中々、尻尾を捕まえられんのだよ。
 そいつを、発見して捕縛するなり、黙らせて欲しい。その判断は君に任せる」

「なるほど。そりゃあ確かに、ヘボじゃあ、こなせませんねぇ」
「……また、聞き出せるなら、そいつから総督府の情報を引き出してくれると助かる」
「ま、せいぜい頑張らさせて貰いますよ」

「ところで、キット」
「はい?」
「前々から思っていたのだが、その服装、なんとかならないのか?」

「運も実力の内、色香も武器の内、ってね」
「……敵が男であるとは、限らないぞ」

「そん時ゃ、百合の世界にでも誘い込みますよ」



 しばらくして、キットはハンターズギルドへと到着した。先の任務のこともあるが、まずは表の仕事も片付けねばならない。
 それに、意外に表の世界から得られる情報も、馬鹿にはならないものだ。

 キットはハンターズの中では、そこそこ腕が立ち、高すぎない報酬で雇えるハンターとして通っていた。本来なら、高級ハンターとしてもやっていけるだけの実力を、彼女は持っている。

 しかし、目立ち過ぎては本来の仕事に影響を及ぼしてしまうし、かと言って知名度が低すぎても情報にありつけないのと、またその仕事は、収入が不安定と言われているこのハンター業よりも、さらに安定しないという性格上、生活を成り立たせるために、現在の様な地位を意図的に造り出していた。

 キットは寄せられた仕事依頼を整理し、情報をハンターに提供するロビーに移動した。
 すると、顔なじみのヒューマーが近づいてきた。軽く手を挙げて挨拶する。

「よう、サエコ。今日は一段と華やかだな!」
「何時もと同じ服よ。ほめたって、何も出ないよ?」

 冴子というのは、キットの偽名である。冴子が名で、姓は神山という。
 が、しかし、キットというのも組織上のコードネームに過ぎず、アルファベットでK・I・T・Tと書く。
 彼女の本名は、特にどこの記録にも残されていなく、また交友関係も薄く、調べる手立てが無いので、謎のままだ。

 キットはロビーで自分宛の情報を引き出す。
 一件の仕事依頼が入っていた。内容は、以下の通りとなっている。

『差出人、クリスティーナ・片桐(女性、会社員)
 依頼内容、恋人ジョンの捜索』

 蒸発した人間の捜索、というのはハンターズがこなす仕事の中でも、比較的依頼確率の高いものだった。
 特に怪しい点も無いのえ、キットは取り敢えず依頼人に会って話を聞くことにした。何にしても、まず情報が無ければ始まらない。

 早速、依頼人のクリスティーナに連絡を取り、待ち合わせた。
 運良く、今日中に会える様だ。

 示し合わせた喫茶店で小一時間ほど待った後、かくして依頼人は現れた。
 身長はキットとほぼ同じく、一七〇センチほどだったが、体付きは正反対で、肉感的なものが一切なく、すらりとしていてスレンダーである。

 ニューマンであるらしく、尖った耳と、ショートにまとめたモスグリーンの髪をしている。
 なかなか美しい女性であったが、つり上がった目をしており、性格の中に、ややきつい物がありそうだ。

 また、会社員らしくグレーの質素なスーツに身を包んでおり、風俗嬢のごとき格好をしているキットとは、ここでも対極であった。

「こんにちは、あなたが神山冴子さん?」
「そーそ。んで、彼氏の捜索だって話だけど、逃げられちゃったワケ?」

 キットは、やや常識に欠けた発言をする。本人はジョークのつもりなのだが、いささか無礼が過ぎる。
 が、クリスティーナは気に止めた風もなく、さらりと受けて返した。

「いいえ、違う。ジョンも、あなたと同じハンターだったけど、ラグオルで失踪してしまったの」

 クリスティーナの意外すぎる発言に驚いたキットは、辺りを見回して盗聴されていない事を確認すると、その丸い目を細め、

「ちょっと待った、なんでそんな事知ってんの? 一般人には、私達がラグオルに降りているって言う情報すら、公開されていないはずよ。あんた、一体何者?」

 と、詰問口調で訪ねた。

 もしかしたら、目の前の女は一般人ではないのかも知れない。依頼人を装い、ハンターを罠に陥れる輩も、しばしば存在する。
 そんな目に逢う訳には行かない。ただでさえ、本来の仕事があるのだ。表の仕事を手間取らせる事は、絶対に避けねばならない。

 さらに言えば、キットの本来の仕事を妨害する人間が、一般人に成りすましている可能性もある。
 だが、その様に巧妙な罠を仕掛ける者が、果たして今の様な初歩的なミスを、犯してしまうものだろうか?

 静寂が支配している中、キットが思いあぐねていると、クリスティーナが口を開く。
 その口元は、薄く笑っている様にも見えた。



つづく
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ーN・I・N・J・A− 3
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4/21(Mon) 23:41
ーN・I・N・J・A−

 その三 ジョン


 しばしの間、沈黙が続いた。
 キットは、迷っていた。この依頼を、受けるべきか否か。
 拒否するのは簡単だ。依頼者とハンター双方の同意が無ければ、依頼は成立しない。

 だが、機密事項を知っている一般人(では無い可能性が高いのだが)を放っておくのは、問題がある。特にそれが、自分に何か目的のある人間だった場合、命が危険にさらされる可能性さえもある。

 ハンターとは、常にそういったリスクを背負わなければならな職業なのである。
 有名になれば有名になるほど、危険性は上昇する。キットがハンターズの中で、本来の実力よりも自分の地位をかなり下に位置させているのは、この様な理由もあった。

 前を向いてみれば、依然としてクリスティーナは微笑を浮かべている。
 こんな状態で微笑されていると、かえって気味が悪い。

(仕方ないなぁ)

 キットは、思い切って訪ねてみる事にした。
 この女の正体を、である。一般人を装っているが、例えマスコミでもこの最高機密を知っている人間は、ある一人の人物を除いて、存在しない。

「ねえ、あんた……どこの組織のモンなの?」

 声に、出来る限りの凄味を効かせる。
 もちろん通用するとは思っていないが、こういう時に優しく訪ねる馬鹿はいない。

 だが、その答えは意外と簡単に返ってきた。

「私のオモテの所属は知っている?」
「アルバート製薬、でしょ……」

 アルバート製薬は、パイオニア2に便乗してきた製薬会社の一つである。
 勢力は他社に比べてやや劣るが、管理システムが抜群らしく、資産は郡を抜いているという企業だ。
 クリスティーナは続ける。

「今どきの企業は、自衛のために私設軍隊を持っている所が少なくないが……」

 そこまでいうと、クリスティーナは口の端を歪める。

「この会社は二つ、私設軍が存在する。一つはテロや要人誘拐に対抗するための、通常部隊。そしてもう一つが……」
「裏の商品が起こしちゃったトラブルを、極秘に処理するための部隊、掃除屋って奴ね」
「そう。そして、私の所属は後者――OLというのは、表の顔だ」

「……で、その掃除屋さんが、ハンターに何の用なワケ?」
「さっき言った通りだ。私の恋人の捜索、忘れたか」

 気づけば、クリスティーナの口調が変わっていた。いや、仕草や雰囲気すらも違う。
 先ほどまでの仕草は、全て演技だったのだろう。

「地表に居た怪物共の、生体データやサンプルを確保してもらっていたが、数日前に消息を絶ってしまった。もしも死んでいた場合、遺体が他者に回収されれば、我が社の機密事項が明るみに出てしまう。
 だが、事の性格上、いかに掃除部隊といえども総督府に気づかれずに行動するのは、至難の業なのだ」

「だから、あたしが指名されたっての? それじゃあ、なんでもっと高級ハンターを雇わないのよ」
「……とぼけるか?」
「…………」

 キットはこの時、内心歯噛みしていた。
 自身の正体は完璧といえる程、巧妙に隠してきた。それが、いとも簡単に見破られるとは。
 だが、次のクリスティーナの言葉は、またしても意外なものだった。

「我が社の得意先に、とある人物がいる。あなたも良く知っているぞ」
「え?」
「キャロル・キャロライン博士。最近は機械工学の他に、生物学にも手を出し始めたらしい。
 あんな私設研究所に篭っているのが、惜しすぎる才能だ。我が社も何度かスカウトしたが、いつもNOと即答される」

 キャロル・キャロラインという人物を、キットは確かによく知っていた。
 以前、ラグオル古代遺跡に眠る、未知の新種フォトン入手のため、キャロルのガイドを(護衛は強力なアンドロイドを従えていたので、必要なかったらしい)、勤めた(それでも一応、戦闘の手助けもした)事があったのだ。

 彼女は独自の情報網を持っているらしく、キットの正体もなぜか知っていた。
 結局、その新種フォトンは何があったのか、捨ててしまったそうたが、かなり特異な人物だったので記憶によく残っている。

「今回の事件をちょっと相談したら、あなたを紹介してくれたのだ」
「あのオバサン、余計な事を……」





「へくしゅん!」
「お風邪デスカ、博士」
「衛生管理は万全のはずだけど、おかしいわね……」





「そういう訳だ。だから私の恋人、ジョンの捜索を手伝って欲しい」

 有無を言わせぬ状況である。
 あのキャロルと言う人物は人間嫌いだといっている癖に、妙に多くのパイプを持っている。
 今回拒否したとして、その顔に泥を塗った場合、どんな災厄が自分に降り懸かってくるか解ったものではない。
 脅迫されている様なものだ。

 キットは諦めた表情で言う。

「ハイハイ、わかりましたよ。やりゃ良いんでしょ、やりゃ。そんじゃあさっさと、その「恋人」とやらを捜しに行きましょ」
「ありがとう、キット」

 二人は店を出て行く。
 向かう先は、ラグオル地表へのトランスポーター。
 キットに取っては見慣れたものだが、今回ばかりは地獄行き列車の駅の様に見えた。


つづく
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ーN・I・N・J・A− 4
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4/28(Mon) 20:38
ーN・I・N・J・A−

 その四 ラグオル地表にて




 その時、キットは不機嫌だった。
 なぜなら、本来ならば一刻も早く、ラボの機密を嗅ぎ回る者の捕獲、および抹殺という、忍者としての任務に戻らなければならないはずだったのが、カムフラージュのためのハンター業で、妙な製薬会社の人間に目をつけられ、その要人(依頼主クリスティーナによれば、ジョンという名らしい)捜索に駆り出されてしまっているからだ。

 兵は神速を貴ぶ、という言葉がある。キットは兵士ではないが、少しでも早く事態を進展させる事は、彼女にとっても重要な課題だった。
 それなのに、呑気にラグオル地表を探索していなければならないと言う現状は、キットを苛立たせるのに十分な要素が揃っていた。

 唯一の救いは、まだこの惑星に人類が手を付けてから、それほど時間が経過していないため整備されている区画が少なく、また、整備されていない場所に単身潜入する事は、凄腕のハンターでも自殺行為といわれている程なので、ジョンが整備区画外に出ている事は有り得なく、限られた範囲の捜索で済むという事だ。

 だが、それでも一つの街か、それ以上の広さを誇る空間である。
 捜索とは本来、まず第一に人からの聴き込みがなければ始まらないが、捜索すべき人間が機密事項に属する人間のため、パイオニア2で聴き込みをする訳にも行かず、広大な砂漠で人探しをする様な状態にキットは陥っていた。

 キットは溜まりかね、クリスティーナに不満をぶつけた。

「ねえ、いつまでこんな化石探しみたいな事してなきゃなんないのよ!?」
「それがあなたの仕事だろう」

 そうクリスティーナにいわれて、あたしには時間が無いの――! と叫びたくなるのを、必死でキットはこらえる。

「……でも、こんなんじゃラチが明かないわ」
「ジョンにも通信機を持たせているはずだから、発信源を探れば無くしていない限り、容易に捜し出せる。今、通信コードを教えよう」
「そ、それをなんで早くいわないのよッ!!」
「忘れていた」
「くッ……」

 いけしゃあしゃあと言ってのけるクリスティーナに、軽い殺意を覚えながらも、キットは妙な事を感じていた。
 そもそも捜索すべきジョンという人物が、所属する製薬会社の作る製品の何かに必要なサンプルを求め、このラグオルに降り立っているのに、外部との連絡手段を持っていないという事など有り得ない。
 それでは緊急の事態に対処できないからだ。

 この事を、会社直属の治安部隊、それも裏の商品にまつわるトラブルを処理するための掃除屋と言う、選り優りの人間が集まった部隊の所属である、クリスティーナが忘れるはずがない。

 なにか、隠している――。
 そう感づいたキットは、クリスティーナに真相を問い詰めるため、カマを掛けてみる事にした。

「あんたねぇ、仮にも特殊部隊の女が、忘れてましたで済まされると思ってンの? そんな見え透いた嘘にごまかされる程、あたしゃ人間出来ちゃいないわよ!?」

「本当に忘れていたのだ。こう見えてもかなり焦っているんだ。私の首が掛かっているからな」
「……あっそ。あくまでシラ切るつもりなのね? だったら、ここで契約破棄よ。ハンター自身が同意できない仕事は、請け負う必要ないんだから」

「キット、我々にも事情というものがある。それにあなたは、我が社の機密を既に知ってしまっている。いかにハンターズの制定したルールがあっても、ここは私に従ってもらわないと困るのだ」

「もし、それでもイヤって言ったら?」
「その時は、あなたには悪いが消えてもらう。元よりあなたに選択の余地は無いのだ」

 クリスティーナの目に殺意が宿る。
 掃除屋というぐらいだから、彼女は人の命を奪う事に微塵もためらいはしないだろう。
 だが、キットとて数々の修羅場を潜りぬけてきた、ベテラン忍者である。少なくとも、この女に実力が劣っているとは思わない。

 そういう自信があったため、もう少し粘ってみる事にした。

「あたしをなめて掛かると、痛い目に逢っちゃうよ?」
「私とて、正面切って戦えるとは思っていないさ。ハンターは単独行動のエキスパートだからな……だからこそ、一人でもここの怪物共と渡り合える、あなたにこの件を依頼したのだ」

 至極もっともである。
 付け加えていえば、キットは忍者という、ハンターよりもさらに単独行動に長けた人間だ。
 だが、クリスティーナはそれでも余裕を崩さない。
 その理由はすぐに解った。

「しかし……そろそろか」
「え……うっ、こ、これは……!?」

 クリスティーナの言葉と時を同じくして、突如キットの身体に異変が起こった。
 視界がぐらぐらとし、世界が歪む。激しい頭痛と嘔吐感に襲われ、思考が定まらない。

「あ……うぁ……」

 苦しむキットの様子を確認したクリスティーナは、

「先ほど飲んだ紅茶に、ある薬品を入れさせてもらった。意識が混濁するだろう、ここに緩和剤がある」

 そういって、紙に包んだ肌色の粉末を差し出す。
 キットはそれをひったくる様にして奪い、一気に飲んだ。

 数分後、意識の混濁はやわらぎ、再び視界が正常に戻った。
 それを見計らうと、クリスティーナはキットに宣告をする。

「その薬品は脳に直接作用するもので、服用者の脳神経を破壊する事ができる。服用後1時間「きっかり」で効果が現れ、3時間で死に至らしめる事ができる、我が社の新型試作化学兵器のひとつだ」

 完全にキットの生殺与奪権を掌握したクリスティーナは、それでも笑みの一つ浮かべる事なく、冷淡に続ける。

「今あなたが飲んだ緩和剤は、薬の効果を約一日遅らせる事ができるが、解消はしない。解毒剤が欲しくば、依頼を達成する事だ……
 なお、私を殺して薬だけ奪っても無駄だぞ。今、所持しているものは全て調合前のものだ。そしてこの調合は我が社の中でも私を含め、数える程の人間にしか出来ない」

「あんた、ただの掃除屋じゃないわね……! く、ロクな死に方しないわよ。あたしが保証したげる」
「なんとでも言うがいい」

 キットはこの時、己の迂闊さを呪っていた。
 仮にも忍者である自分は、決して少なくない薬品に関する知識を持っている。
 そうであるのに、飲物に薬を盛られている事に気付けないとは――!

 しかし、これはどうしようも無い事であった。
 クリスティーナの盛った薬品は、従来の化学兵器に使われた薬品とは全く異なる、あらゆる意味での新型化学兵器なのだ。
 そして試作であるが故、一般に広まっておらずキットが知らなくても無理はない。

「ジョンの反応は、セントラルドームの辺りから出ている。さあキット、そこまで案内しろ」
「……解ったわよ!」

 キットは激しい後悔の念に駆られながらも、しぶしぶと捜索を再開した。




つづく
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ーN・I・N・J・A− 完結編
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5/14(Wed) 18:24
ーN・I・N・J・A−

 その五 忍者は閃光と共に


「このッ……」

 汚水に浸した様な鬱蒼とした色の雲が広がる森の中に、鈍い音と共に閃光が走る。
 それはキットの愛刀、カムイによる斬撃だった。
 脳天から一直線に斬り裂かれたラグオル原生生物のブーマは、悲鳴を上げる間もなく崩れ落ちる。

 精神体のみの破壊神、ダークファルスが放つ闇の波動に侵された原生生物たちは、かつて体は大きくとも穏やかだった頃の面影など一切なく、ただただ凶暴な怪物へと成り果てていた。

 だが、凶暴化して人間を襲う怪物ではあっても、彼らは被害者だった。
 それ故パイオニア2の科学者陣の中には、危険を省みずなんとか、保護しようと試みる者さえもあったが、今のキットには邪魔なオブジェにしか見えなかった。

 それほどまでに、彼女はいま、自分の置かれている状況が忌々しく、そして腹立たしかったのである。
 たかだかカムフラージュのためにやっている表の職業で、こんな足止めを食らうという事は、言ってみれば自分の無能を示す事になる。

 他人が見ればそうはいわないかも知れないが、少なくとも彼女にとってこの失敗は、痛恨事だった。

「もうすぐだな」

 すると終始無言でキットにセントラル・ドームへの道案内をさせていたクリスティーナは、ぼそりと言った。
「ああ、そうよ。だから何」

 吐き捨てる様にキットが言う。

「……」

 クリスティーナは、何も答えなかった。
 結局、目的地につくまで会話を交わしたのはこれっきりで、戦闘もキット一人で全て片付けた。
 この新しい住居地区になるはずだった森林地帯は、比較的ダークファルスの波動の影響が少ない場所らしく、原生生物たちはキット程の手練相手には、さしたる脅威にもならなかった。

 そしてたいした時間もかからず、セントラル・ドーム前へと着いた。

 ドーム正面の入り口は分厚い瓦礫に覆われており、かつ、ドーム自体の損壊も激しいため、重火器などを使って無理矢理壊すと、全てが崩壊する危険があって侵入不可能だったが、少し離れた場所に内部へのトランスポーターが設置されていた。

 内部はもはやかつての面影がこれっぽっちもなく、どこからか飛来した凶悪なドラゴンが巣を作っていた。
 中世期の翼竜をほうふつとさせる外見にたがわぬ力を持っていて、これにやられたハンターも少なくなかった。

「ジョンの反応は、この中から出ている」
「ふん、こン中にゃドラゴンがいるのよ。今ごろ、奴の火炎の餌食になって灰になってるわよ!」
「行ってみなければ解らない。それに反応が出ていると言う事は、少なくとも発信機は無事だ」

 キットは渋い顔をしながらも、トランスポーターへと足を踏み入れた。






「!?」

 少しの間の後、彼女の眼前には溶岩が吹き出す地面と、巨大なセントラル・ドームの天井があるはずだった。
 しかし、

「ここ、どこよっ!?」

 キットは狼狽した。トランスポーターから転送された先は、見たこともない牢獄の様な場所だった。
 あのトランスポーターは別の場所にも繋がっていて、その先には氷の化身のようなシル・ドラゴンが待ちかまえているという噂もあったが、ここはそことは全く違う。
 なによりも狭すぎるのだ。会議室ぐらいの大きさぐらいしかない。

「フ……フフフ……フフフフ……!!」

 すると、これまで笑みの一つすら浮かべなかったクリスティーナが、不気味な含み笑いを漏らした。

「あんた、まさか……」

 キットがそう言うか言わない内に、どこからともなく黒い全身スーツに身を包み、ライフルを構えた者たちが現れる。
「今ごろ気が付いたか? ラボの犬め……」
「そうか、あんた民間組織所属なんて嘘ね、あたしと同じで、身分を隠して任務に着く……!」
「そう。私はカール。K・A・R・Rだ。私も忍者だ……ただし、総督府に直属するな」

 勝ち誇った様な笑みを浮かべて、クリスティーナ、否、カールは続けた。

「残念だが、情報戦はラボよりも、我々総督府の方が上手だった様だな。お前はまんまと私の正体に気づかないまま、ダミーの依頼を受けてくれた。
 そして、私が細工したトランスポーターへと足を踏み入れてくれた訳だ……」

「じゃ、キャロル博士もグルだったってワケ?」
「所詮は民間人だ。偽の情報を与えてお前と同様踊ってもらうぐらい、造作もない」
「クッ!」

 キットが怒りにまかせて抜刀しようとする、しかし、

「あぅッ!?」

 キットが激痛にみじろぎする。見れば、肩にフォトンの刃が突き刺さっていた。
 ややあってフォトンはすっと消えてゆくが、その形状は通常のものとは違うものだった。
 それはかつて手裏剣と呼ばれた物に酷似していた。

「……無駄な事はしない方が、身のためだぞ」
「姐さん」

 キットを制したカールに、先ほどの黒スーツの一人が話かけてきた。
 覆面のため顔は解らなかったが、体型と声で男だと言う事は判別できる。

「この女、始末する前に好きにして良いですかね?」
「……良いだろう。だが、もしも奴が反撃して逃げ出そうと暴れたら、お前ごと射殺する」
「へっへっ、解ってますって」

 キットはこの会話を内心、唾を吐き掛けたい思いで聞いていたが、既に覚悟は決まっていたので何も言わなかった。
 忍者は、その任務に失敗すれば死が待っている。
 そんな事は先刻承知の事だ。
 そして、自分の性別と美貌を考えれば、さらに屈辱という結果があることも無論、承知の事だった。

 数人の男がキットを動けない様に羽交い締めにし、特殊綱ワイヤーで全身を縛る。
 このワイヤーは最近開発された物で、千トンの重量すらも支えられた。
 本来、フォトンが使えない時の緊急時アンドロイド拘束用に総研(総督府直属研究所)が作ったこのワイヤーは、さすがのキットも引きちぎる事など不可能であった。

 成す術も無くその肢体を縛られてゆく。
 キットは情けない自分の姿を目に入れまいと瞳を閉じた。
 
「さあて、そんじゃ行かせてもらうぜ」

 そしてキットのビキニの様な防護服を斬り裂こうと、男のセイバーがキットの胸に触れた時だった。
 凄まじい衝撃がこの牢獄の様な部屋を襲った。
 そして次の瞬間、堅牢な合金で構成されているはずの壁の一角が吹き飛ばされる。

「何者だ!」

 その言葉と同時に、キットを襲おうとしていた男は影に殴り倒された。
 そして壁が吹き飛ばされて発生した粉塵が晴れると、

「あ、あんたは……」
「御無事デスカ、キットサン」

 縛られて身動きの取れないキットの前に、護る様に大柄な白いレイキャストが立っていた。

「お前は!」
「よくも私をたばかってくれたわね」

 さらに女の声がし、巨大な鎌が宙を舞い、その刃が数人の黒スーツの首をさらっていった。
 鮮血が辺りに飛び散る。

「馬鹿な……民間人が、なぜ」

 瞬間の出来事に立ち尽くしたカールが気を取り戻すと、自分が踊らせたはずの人間が明らかな敵意を向けてこちらを睨んでいた。

「私の情報網を甘く見るんじゃないわよ。そこらの軍隊以上なのよ……」
「ドクター・キャロル! こんな事をして、ただで済むと思っているのか!?」
 腰抜けの総督府なんかに、何ができるっていうの? 私がタークスと手を組んだ事ぐらい、知っているんじゃないかしら」
「くぅ……!」

 タークス。総督府ともラボとも、そして悪名高い犯罪組織ブラックペーパーとも違うパイオニア2、四つ目の巨大組織。
 ハンターを始め、様々な雄志が集って結成されており、その組織力、情報収拾能力、戦力といい最高レベルの組織だった。
 特に戦力は全組織随一といわれており、いまだかつてこの組織に喧嘩を売って無事だった者はいない。

「イングラム……やっちゃいなさい」
「了解シマシタ博士」

 キャロルの号令と同時に、白いレイキャストが動いた。
 携えていた二丁のガトリング砲が火を吹き、辺りにいた人間が、無慈悲なまでに薙ぎ払われて行く。

 本来、このイングラムと言うレイキャストは、繊細ともいって良い程に優しい性格をしているが、キャロルの命令だけは必ず死守した。
 その点、ロボットらしいと言えばロボットらしいと言えただろう。

 数分後、ようやく銃撃が止んだ。
 狭い室内である。生き残っている者はほとんどおらず、かろうじてカールが重傷で済んでいた。

「フ、フフフ……だが……残念だったな。キットは、総研が開発した……ウィルスに侵されている。ラボは情報のガードが堅い……た、助かる見込みなどない……ぞ」

「フン。悪いけど、ワクチンの方はもう貰ったわよ。ここに寄る前に、研究所に殴り込ませてもらったのよ。
 もうすこし、強力なガードシステムを持った方が良いわよ」

 最後の力を振り絞って捨て台詞を残したカールに、キャロルは悠然と答えた。






「今回は助けられました。礼、いっときます」
「それだけ? ずいぶん感謝の念が薄いわね……」
「後は行動で示しますよって」

 ラボを脱出した後、キットはしばらくキャロルの研究所に保護されていた。
 結局、ラグオルに移住すると言う大目的に支障をきたす訳には行かないと、タークスの総帥であるサムス・アランが総督府とラボのそれぞれへ出かけて行き、タイレルとナターシャに話をつけた。

 結果、今回の件に限っては双方、無かった事にという決定がなされた。
 それゆえ、この事件に関わって死んだ人間は最初から居ない事に、そして生き残ったキットはラボとは無関係の者という扱いになった。

 簡単にいえば、クビである。
 一応ハンターとしての仕事は残っているが、しばらく熱が冷めるまでは、総督府やラボの周辺には出入りしにくいので実質、職を失った状態になってしまった。

「コーヒーをお持ちシマシタ」
「ん、ありがとうイングラム」

 イングラムが持ってきたコーヒーをすすり、キャロルは言った。

「キット……何だったら、タークスに行ったらどうかしら」
「えっ」

 キットは驚いた。
 あれだけの騒ぎを起こしておきながら、今更迎えてくれる組織などあるのだろうか。
 だが、キャロルはアルバイトに行く事を勧めるかの様な口調だった。

「でも、これだけ騒ぎ起こした後じゃ……」
「心配ないわ。これを持っていきなさい」
「?」

 そう行ってキャロルが差し出したのは、コンピュータ・ゲームのソフトだった。
 場所を取らない娯楽として、旧世紀から存在するこれはパイオニア2にもメーカーごと持ち込まれていた。
 そしてキャロルが差し出したのはまだ発売されていない、新作のβ版だった。

「ざくろ大戦?」
「タークスの総帥が大好きなシリーズだそうよ。それで釣れば、簡単に入れてくれるわ」
「んなアホな……」

「イングラム、もう一杯コーヒーちょうだい」
「カシコマリマシタ」

 キットが総督府の忍者として、閃光の様に駆け巡った時代はここで終わった。
 これもまた小さな紛争ではあったが、ダーク・ファルスはこの様な人の負の感情を最も好む。
 パイオニア2の受難は、恐らくまだ長く続くのだろう。
 しかし、それはまた別の話である……。



終わり
レスをつける



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