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- エピタ1に掲載していた小説(期間限定) - シリカ [12/11(Tue) 2:03]



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エピタ1に掲載していた小説(期間限定)
シリカ [Mail]
12/11(Tue) 2:03
「うん、イケるイケる♪」
 ここは、ハンターギルド本部にある大食堂。
 ハンターズに仕事を依頼するためにやってきた人々や、必要な物資を納入するために来た業者も利用できるため、その規模はかなり大きい。大抵のハンターや依頼人、外部からの来訪者は、この安い食堂を利用する。見た目は巨大なファミリーレストランの印象を受ける。ここにはアンドロイドも息抜きのため、顔を出すのも珍しくはない。
 日当たりのいい…とは言っても人口太陽だが、お気に入りの窓際のボックス席で一人の少女が料理に舌鼓をうっていた。
 赤い色のサラサラのロングヘア、服も合わせるかのように赤い色の服を身に付けた、年の頃は12歳位の少女にしか見えない。しかし、この少女がハンターギルドの腕利きハンターだと言うことが、初めてみた人には信じられないとだろう。

 人間、食べている時が一番幸せ…後の人生はオマケみたいなものだ。
 だれの台詞かは覚えていないが、少女はその通りだと思った。
「相変わらずだな、オマエは」
 至福の時をすごしていた少女の前の席に、全身赤いボディのヒューキャストが腰掛ける。
 ギルド本部では交代制を採っており、昼夜の別なく活動しているのだが、今の時間は比較的空いているほうだ。にもかかわらず、このヒューキャストは、少女の相席に座ったのである。
「ナンパならお断り」
 少女は、照り焼きにした牛肉ハンバーグと目玉焼きをパンズに挟んだ期間限定メニューてりたまバーガーをガブリつきながら相手をロクに見ないで即答する。一方ヒューキャストはモノメイトを大量に積んだトレイをテーブルの上に置く。少女は、その尋常じゃない量に少し吃驚したが、今食べているバーガーを3口で平らげ、顔を上げた。
「で、何か用?魔王」
「オレをその名前で呼ぶな、今のオレはカズサだ」
 カズサと呼ばれた赤いボディのヒューキャストは、モノメイトの袋を開けて、一口食べだした。
 正確にはアンドロイドが「食べる」と言う表現は正しくない。アンドロイドの主なエネルギー源は、背中に装着されているバッテリーパックだが、最新型のアンドロイは生体部品もふんだんに使用されている。生体部品は主に伝達系や人工筋肉の補助として使われる事が多い。それゆえに、人間や生身の者が使用している同じ生体賦活剤、いわるるメイト類やアトマイザー系も効果があるのだ。生体部品はメカ的なそれとは異なり、一定の条件さえ整えておけば自己修復機能を簡単に持たせられる事も出来るのが大きなメリットとして採用されている。そのため、アンドロイドでも、モノメイトなどをHP回復アイテムとして利用できるのである。ちなみに、モノメイトは健康バランス栄養食品である。
「仕事の依頼?」
 少女は3個目のてりたまバーガーを手にする。ちなみに、少女のトレイの上には、あと20個のてりたまバーガーが山積みになっている。
「ああ、だがその前に、これを返す」
 そう言って、カズサは、なにやらユニットらしきパーツをテーブルの上に置いた。
「?」
 少女はテーブルの上のユニットを手にとる。
「…これって、前にあたしがあげた”トラップサーチ”じゃない?」
 トラップサーチとは、鎧などのスロットに挿す強化パーツのことである。これを装備していると目に見えないトラップでも識別できるようになる。
「便利だと思ってあげたんだけど…」
 少女はトラップサーチを置き、代わりに4個目のてりたまバーガーを手にする。
「うむ、そうだ、それでだな、その便利なアイテムのお礼をしたいと思ってな」
「お礼?ん〜じゃ、ラグオルに土地つき一戸建てが欲しいな」
 少女のボケを聞いてなかったのかそのまま無視して、カスサはもう一つアイテムをテーブルの上に置いた。
「…なにこれ?」
 5個目のてりたまバーガーをトレイの上におき、カズサのおいたアイテム手にして、アイテム鑑定をする。識別可能なアイテムなら鑑定屋に依頼しなくともハンターギルドから支給されているマグに登録されているデータベースにである程度判断できる。
 そして、鑑定の結果は…

 ゴッド/醤油++

「生身のお前には便利だと思うぞ」
 そう言って、カズサは、3個目のモノメイトの袋を開けて食べる。
「それで、何時でも何処でも簡単に味付けが…」
 カズサの言葉は、少女が顔面にたたきつけたゴッド/醤油++に遮られる。
「だああ!何処の世界に醤油を鎧のスロットに挿す馬鹿がいるのよ!こんなモノ役に立たないじゃない!!」
 頭から醤油をかぶったヒューキャストに少女は怒鳴り散らす。
 この騒動に、あたりが騒がしくなる。山積のバーガーと山積のモノメイトを挟んで騒いでいる少女と、醤油まみれのヒューキャスト。周りの人は何事かと見るが、少女の姿をみて納得したかのように所定の位置に戻る。
「そうだ、役に立たない物だ、それは、お前がオレにくれたトラップサーチも同じことが言える」
「え?」
 醤油だけでは飽きたらず、ケチャップ、塩、ドレッシングなどの数々の調味料をヒューキャストの顔面に叩きつけていた手が止まる。
「知らなかっただろうと思うが、アンドロイドのセンサーはトラップサーチ機能も備えているのだ」
 醤油などの調味料を滴らせながら、カズサは4個目のモノメイトの袋を開けて食べる。ドレッシングと醤油と塩が絶妙にブレンドされているが、アンドロイドには味までは識別できない。
「えっと、その…ごめんなさい」
 少女はペコっと頭を下げたが、別に反省しているわけでもない。
「ん、分かればいい、では本題と行こうか」
 未だに醤油などの調味料を滴らせながら、カズサは5個目のモノメイトの袋を開けて食べる。少女は先ほど置いた5個目のてりたまバーガーを手にする。
 だが、カズサはその後何も言わず黙々とトレイの上のモノメイトを平らげてゆく。少女も負けじと、黙々とトレイの上のバーガーを平らげてゆく。

 トレイの上の食品がお互い残り少なくなった時、カズサが口を開く。
「実はだな…とあるカルト集団を探って欲しいと依頼を受けたのだが、捜査していくにつれ、単独では不利と判断したので、おまえらに応援を頼みたいのだ」
「ふうん、アナタほどのハンターが珍しいわねぇ…そんなに難しいの?」
 少女は16個目のてりたまバーガーを途中で食べるのを止めて質問する。
「難易度だけで言うとA級だな…だが、誰も手をつけいなかったのでオレが受けたのだがな」
「ほう?、A級の難易度でも、手伝いが必要なんて、詳しく話してくれる?」
 少女は、食べかけの16個目のてりたまバーガーを口に放り込んだ。
 カズサの説明は、この、パイオニア2内で、謎のカルト集団が、何かよからぬ事を企んでいると言うので、調査して欲しいとの事だった。パイオニアクラスの移民船になると、監視の目をごまかす方法はいくらでもある。こう言った謎の集団や犯罪組織が多数あってもおかしくないのである。そして、その集団が不穏な動きを見せた場合は迅速かつ内密に鎮圧して欲しいとの事だった。
「ふみゅ、で、その調査をするにあたって何をすればいいのかな?」
 少女は、17個めのてりたまバーガーを手にとる。
「ああ、まずは街中に潜んでいるであろう構成員を捕まえて尋問するのが手っ取り早いと思ったのだがな」
 歯切れ悪い返答をしながら、カズサも14個めのモノメイトを手にとる。
「構成員ねぇ…何か、これが構成員だ!って見分けられるようなのがあればねぇ」
「あるぞ、実はだな、構成員は…」
 と、カズサが何かを言いかけたとき、爆音と共に窓ガラスをつき破ってきた何かが、少女達のいるボックス席のテーブルの上に無造作に放り投げられた。投げ込まれた物体は、普通の成人男性ほどの大きさがあり、ぴすぴすと黒煙を上げている。
 また起きた騒動に、あたりが騒がしくなる…が、少女の姿をみて納得したかのように所定の位置に戻る。
「…あんた、変わったもの注文するわね?」
 と、少女はテーブルの上の物体に目をやりながら、かろうじて無事だったてりたまバーガーをパクつく。
「…おまえが頼んだんではないのか?まえに、特大ステーキを食べたいといっていただろう、このくらいの肉ならお前ならいけるんではないか?」
「まあ、確かに言ったけど…これ料理じゃないし…」
「食い逃げ現行犯!および器物破損の罪で逮捕するよん!!」
 カズサと少女の会話を別の少女の声がさえぎりながら、テーブルの上の焼肉…もとい、黒焦げの物体が飛び込んできた窓から、別の物体が飛び込んできて、黒焦げの物体を踏みつけた。後から飛び込んできた物体は、大きなポンポンのついた帽子をかぶり、緑を基調としたニューマンが好んで着る派手な服を身につけたフォニュエールであった。
「…ジュン?何してるの、あんた」
 少女は飛び込んできた人物に、間の抜けた口調で声をかける。
「みゅ?ああ、シリカ〜、何でこんなところにいるんだよん?」
 少女にジュンと呼ばれたフォニュエールは、赤毛の少女の名前を呼ぶ。
「それはこっちの台詞…まあ、大体予想はつくけど、悪人捕まえるために、また街中でテクニックつかったでしょ」
「うみゅ、シリカが言うとおり悪人には人権はないよん」
「人権はなくても、すぐにテクニックに頼るのはやめなさい、破壊したものを、容疑者に押し付ける調書を書くのも大変なんだから」
「…いつもそんな事してるのかお前らは」
 2人のやり取りを、聞いていたカズサがため息をつく、しぐさをした。芸が細かい。
「で、さっきの話の続きだけど、構成員を見分ける方法って?」
「ああ、構成員は体のどこかに”DC”の文字を彫った刺青をしているらしい」
「…そんな目立つ目印がありながら、あんたその構成員を見つけることが出来なかったの?」
「…何十万といる人やアンドロイド、1人1人を身体検査をしろと言うのか?」
「あんたロボットでしょ、透視機能とかないの?」
「あるわけないだろ!それに、オレはロボットじゃない、アンドロイドだ!」
「…使えないわねぇ…」
「みゅ?この悪人、手に何か書いてあるよん」
 ジュンが、卓上の焦げた物手の甲を、シリカ達に見せる。そこには赤い文字でDCと書いてあった。
「……」
 カズサとシリカは、無言でジュンの頭をなでた。なんだか知らないけど、ジュンはなでられて満面の笑みを浮かべる。

「思いっきり話が進展したわね」
「うむ、尋問は、お前たち”ソウル・ブレイカーズ”に任せ…」
 カズサの言葉は、シリカが顔面にたたきつけたパルメザンチーズとジュンが投げつけた灰皿に遮られる。
『”ソウル・ブレイカーズ”じゃなく、”ソウル・エンジェルズ”』
 少女は叫びながら、手に持ったてりたまバーガーを一口で片付ける。
「…ふふふ、いいでしょう…その謎のカルト集団ってのに引導を渡してあげるわ…」
「いや、まずは調査なのだが…」
 カズサがつぶやく。今まで数多くの調味料を浴びたせいで水分を含んだ体に、先ほどぶつけられた粉チーズが付着して、さらに、灰皿の直撃のせいで、センサーに障害が生じたのか、添え置きの紙ナプキンで顔をふいている。
 そして、カズサは、テーブルの上の焼肉…もとい、構成員を持ち上げた。
「よし、では、ギルド行くとするか」
「と、その前に…すみませ〜ん!てりたまバーガーあと20個追加〜」

『まだ食べるんかい!!!』

 シリカの注文に、シリカを除いた食堂にいる全員が一斉に声をあげた。

 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請け負い、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、惑星が半壊するなどの大変な災害が巻き起こる。2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。
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