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- 信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(まえがき) - 御神楽 紫苑 [10/31(Wed) 1:46]
信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(序:紅魔、起つ - 御神楽 紫苑 [10/31(Wed) 4:09]
信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(1:風雲・岩付城) - 御神楽 紫苑 [10/31(Wed) 16:19]
Re:信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(2:常陸の大賢者・前) - 御神楽 紫苑 [11/7(Wed) 22:05]



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信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(まえがき)
御神楽 紫苑 [Mail]
10/31(Wed) 1:46
 ついカッとなって思いついた。 反省はしていない。
 HOI2のAARを読んでて、これ信長でも行けるんじゃない? と思ったので。 探してみると、どうもこの手の文章系リプレイはあんまり無いみたいだけれども、まぁHOI2のAAR群を参考にしつつ頑張ってみます。

担当勢力:古河足利家→大名武将変更でレミリア・スカーレット
シナリオ:尾張統一
寿命:なし
討死:なし
その他諸々:すべて標準
追加武将:東方キャラほぼすべて、総勢五十余人

こんな感じで。
それじゃ、需要があるのかどーか全くわかりゃしないけど、次回より本編スタートの方向で。 生暖かく見守って頂戴な。
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信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(序:紅魔、起つ
御神楽 紫苑 [Mail]
10/31(Wed) 4:09
 時は、1555年、春――ところは下総国、古河御所。

「咲夜」
 レミリア・スカーレット――永遠に幼き紅い月の異名をとる齢500歳の吸血鬼は、自らの従者に向かって忌々しげに語りかけた。
「何故、どうして、この私が、あんな奴の下風に立たなければならないの」
 『あんな奴』。 彼女達二人と、そしてもう一人を保護し、この館に仮の住まいを与えた人物のこと。
「そもそも私達は、八雲の気まぐれに無理矢理付き合わされただけなのに。 こんな茶番、早々に終わらせるべきよ」
 ふん、とレミリアは詰まらなそうに鼻を鳴らす。 銀の従者は、行灯の光の影に控え、一言も発しない。
 ――『あんな奴』、すなわち古河公方・足利晴氏は、つい先ごろ彼を表向き尊重すると見せかけておきながら、その影響力を有名無実化し、関東に覇を唱えんとする小田原の北条氏康を打倒すると決意した。 彼にしてみれば、この幼い吸血鬼とその従者の持つ力は、自身の願いを成就させるための大きな力となるように思われた。 そこで彼は、彼女達に協力を求めたのだった。
 『協力』。 実際のところは、彼の臣下となって働けという事である。 足利将軍家の一門として、傅かれる事に慣れている晴氏は、そのような形でしか意志を伝える事ができなかった。
 「私は嫌。 私が敬意を払うに足る存在ならともかく、あんな奴が私を使おうだなんて。 せめて弾幕ごっこで私に勝ってからにしてもらいたいわ」
 「ですが」
 口を開いたのは銀の従者ではなく、ベルベットの小悪魔だった。 紅魔館地下の大図書館に住まう七曜の大賢者の使い魔として、司書その他諸々の雑事を任されていた彼女だが、何故かこの場所には当の魔女の姿はない。 これもまた張本人の気まぐれなのか、或いはただの偶然なのかは定かではないが、とりあえず彼女は、一緒にいた主の友人の元に身を寄せているのだった。
 「私には……その、得策ではないように思えます。 小耳に挟んだ話ですが、晴氏さんはこのあたり一帯の人々に対してかなり影響力を持っているそうです」
 実力をもって排除すれば、周囲全てが敵になりかねない。 そう懸念を伝えた小悪魔に対して、レミリアは事も無げに、「一向に構わないわ」と断言してのけた。
 「旗織がよくわかっていいじゃないの。 私に従わないないっていうなら、力ずくで従わせる、それでいい。 そういう時代なんでしょう? 咲夜」
 問われて、漸く白銀のメイド――十六夜咲夜は声を発した。
 「全てはお嬢様の御意のままに」


 ――かくて、古河公方・足利晴氏の命運は決定した。 レミリア・スカーレットおよびその従者達の謀反に対して晴氏は抗しえず、古河御所を追われたのだった。


紹介期間:1555年5月 足利晴氏追放
 コマンド操作1個だけにこんだけ使うとか何を考えてるの自分。 でも理由付けはしっかりしないとね……。



―― 以下、武将紹介 ――

レミリア・スカーレット 役職:無 官位:左兵衛督
統率:99+8 武勇:117 知略:85 政治:72+8
所持戦法:槍衾 槍突撃 槍車 強襲 先駆け 斉射
     火矢 早撃ち 二段撃 鼓舞 威圧
 主人公。 主人公補正とカリスマ補正と吸血鬼補正と3重にかかってこの数値。 まあ、周囲に居るのが北条、武田、佐竹、長野とリアルチートやら普通の強豪だったりするから勘弁してください。

十六夜 咲夜 役職:無 官位:無
統率:89 武勇:96 知略:92 政治:94
所持戦法:槍衾 先駆け 斉射 火矢
     早撃ち 鼓舞 威圧 混乱
 完全で瀟洒な従者はなんでもそつなくこなす。 ザ・ワールドはさすがに信長にゃ未実装だけど。 副将的な位置なので、官位や家宝は優先的に与えていきます。 あとPAD長言うな。

小悪魔 リトル 役職:無 官位:無
統率:63 武勇:48 知略:86 政治:85
所持戦法:斉射 早撃ち 鼓舞 混乱 篭絡
 内政官だけど保有戦法は強力。 本編だと台詞も立ち絵もスペルカードも無い中ボスキャラだけに好き勝手ができる。 篭絡はサキュバスかもっていう二次設定から。 なかでも個人的には凡用人型兵器氏の「そんなエサに俺様がこぁクマー!」が大好き。 Coolierの東方創想話作品集その33に収蔵、ご一読あれ。

次回:武蔵攻略、或いは防衛。 あくまで予定。
修正:上総→下総。
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信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(1:風雲・岩付城)
御神楽 紫苑 [Mail]
10/31(Wed) 16:19
 1555年、5月――晴氏追放から数日後。
 レミリア・スカーレットは、正式に城主として古河御所に入り、晴氏からの家臣に対して臣従の意志の確認を行った。 結城政勝を初めとする主だった者達はすべてレミリアに従う意を明らかにしたが、ただ一人異を唱えたものがいた。 築田晴助である。
 レミリアは彼の離反を許し、晴助は古河を去った。 「よいのですか」と結城政勝に問われれば、「敵になるかも知れない相手を飼っておくよりは、敵になって貰った方が有難いわ、この際」と、何の事もない、という態度であった。
 さらに、その場でレミリアは全員に指示を下す。 咲夜には周辺の視察と人材探索を命じ、そのほかの家臣には、急ぎ古河御所周辺に市を整備し、安定した収入を確保するよう求めた。 レミリア自らも市の建設の一部を担当し――小悪魔に日傘を持たせつつ、だったが――その甲斐あって、収入がある6月までには、赤字であったスカーレット家の財政は好転した。
 
 「上総、武蔵、常陸。 この3国には金山があるのね」
 およそ一月後、人材探索から千葉胤富という男を伴って帰還した咲夜の報告を受けて、レミリアはしばし考え込んだ。
 「上総には里見家、常陸には佐竹家、武蔵には太田家がそれぞれ勢力を保持しています」
 「んー……そうね。 太田といえば、北条と敵対していたはずね」
 足利晴氏時代に結んだ、北条家との同盟関係は未だに有効だ。 どういうわけかとレミリアも咲夜も晴朝も頭を捻ったが、どうやら「そういうもの」らしい。 しかし、之を利用しないという手はなかった。
 「さらにですが、甲斐の武田氏も岩付に進出する構えを見せています」
 「関東への出入り口を確保しよう、というわけか」
 結城政勝の息子、晴朝がうなる。 彼は旧来からの家臣の中では最も優れたものを持っており、父の政勝と同様かそれ以上に重用されていた。
 「武田は既に甲斐・信濃の二国を有する強国。 その彼らに、肥沃な土地と金山を有する武蔵を取られるのは、拙い」
 「その通りね。 当面の目標は岩付の防衛としましょう。 できるなら、私達が太田家を滅ぼして武蔵を手中に収め、このあたり一帯での地歩を固める。 財政にもあんまり余裕がないみたいだし、金山は正直有難いわ」
 「承知致しました。 ですが、兵力が足りませんね……編成できても、最大で八千というところ。 それも古河の守りをがら空きにして、です。 この状態で岩付を攻めるのは、やはり」
 「無理があるわね、確かに」
 咲夜の言葉に、レミリアも頷く。
 「兵糧も足りませぬぞ。 現在の当家の状況では、咲夜殿のおっしゃられた足軽八千を、10ヶ月も行軍させれば糧食が底をついてしまう。 岩付を手に入れられたとしても、武田が再び攻めてくるやもしれませぬし、里見や佐竹、下野の宇都宮や上野の長野も油断ならぬ相手。 余裕を持たせておくに越した事はありませぬ」
 と、晴朝。
 「そうね。 ……私は面倒は嫌いなんだけれど。 細かい事は二人に任せる、とりあえずこの夏は兵糧収入の確保に努めて。 募兵は私自らが機を見て行うわ。 以上」
 レミリアのこの言葉をもって、今回の軍議は終了。 スカーレット家、1555年夏の方針が固められた。

 それから数日が経った、ある日。
 「なぁ、咲夜殿」
 「何?」
 晴朝に声をかけられ、先を歩んでいた咲夜が振り返る。
 「里見に放っていた密偵から、面白い報告があってな。 聞くかい? ん?」
 しばらくの間に、この二人はそれなりに親しい間柄となったのだった。 お互いに歳が近いこともあって。
 「なんでも、久留里城のあたりで、真ッ昼間なのに太陽を覆い隠すような闇と、やけに大量の蛍が舞っているのが見られたそうだ。 心当たりはあるかい」
 「ああ」
 咲夜には思い当たる節が山ほどあった。 昼間の暗闇。 蛍の大群。 どちらも、そういう事ができる妖怪を知っている。
 「あいつらしか居ないわね。 そういう事ができるのは」
 「あいつら?」
 「すぐ解る、里見に行ったらきっとね。 さて、私達は仕事をしましょう。 募兵はお嬢様に任せておけば良いわ、お嬢様には――そうね、カリスマがあるから」
 ひらひらと手を振りながら、歩みを進める瀟洒な従者。 その後姿に目を奪われつつ、晴朝は釈然としない風に呟いた。
 「かりすま、ねえ」
 
 
 秋になって、状況はにわかに動き出した。 小田原の北条氏康が太田資正の居城である岩付城を攻撃するため出陣。 同盟国である武田家も、呼応して軍を動かした。 その数は北条が一万、武田が一万二千。
 「この動きに乗らない手はないわ。 少ない兵で岩付を手に入れる好機!」
 レミリアは出陣の号令を発し、小悪魔と多賀谷(日傘係)を副将として足軽隊八千を率いて進発。 古河御所には腹心の咲夜と晴朝を残し、その他の勢力への押さえとした。

――レミリア・スカーレット隊 足軽八千 統率107 武勇117 知略86
  戦法:槍衾 槍突撃 篭絡

 進軍路は南側を選択。 レミリア隊は順調に行軍を続け、武蔵と下総の国境付近に一時的に布陣、出撃の機会を伺っていた。 同盟関係には無い武田軍と距離を置く為だが、この心配は杞憂となった。
 「武田軍が武蔵に入ってすぐ帰った?」
 斥候からの報告を受けて、レミリアは一瞬きょとんとした面持ちになったが、すぐに我に還ると、「全軍出陣!」と号令を発した。 最早「大嫌い」な日の光も意に介さず、真紅の大槍を手に先陣を切って突撃してゆく。
 北条軍が既に岩付城を攻囲し、迎撃の太田資正隊が出撃している中に突っ込んだスカーレット軍は、迎撃部隊の相手を北条軍に任せ、一斉に城門目掛けて突き進んだ。
 「この戦に当家の命運全てが懸かっていると思いなさい!」
 レミリアの言葉は将兵を奮い立たせるためのものだったが、それはまた事実でもあった。 古河御所にはわずかに三千の兵しか残っておらず、いかに咲夜や晴朝をもってしても、佐竹や宇都宮が大挙して押し寄せてくれば勝ち目は薄い。 財政も逼迫している中で、スカーレット家はこの戦になんとしても勝利する必要があった。
 小悪魔の篭絡の計は失敗。 力技でかかる他ないと心得たレミリアは、部隊の士気が下がる前に勝敗を決するべく、城門向けてその真紅の槍を放つ態勢をとる。
 「――必殺『ハートブレイク』!」
 閃光、突風、そして轟音。 吸血鬼の膂力をもって投擲された大槍は、木製の城門をいともやすやすと粉砕し、さらに守兵の一部を巻き添えにして館に突き立った。
 「蹂躙せよ!」
 号令一下、スカーレット家の軍兵が一斉に突入を開始する。 資正の隊がとって返そうとするが、レミリアを先頭にしたスカーレット軍の殿隊と、氏康率いる北条軍の前衛の挟撃に遭い、着実にその兵力を削り取られてゆく。
 そして、最終決着の刻が訪れる。 城内では最後に残った櫓に一部の兵が立てこもり、頑強な抵抗を続けていたが――
 「『スピア・ザ・グングニル』ッ!」
 先程に倍する大きさの真紅の魔槍が放たれ、その意志を潰えさせた。
 ここにスカーレット家の岩付城攻略は成り、下総に加えて武蔵をレミリアは手に入れたのであった……。

 「これは良いネタが手に入りましたねっ」
 北条家の軍列の上空、その光景を小箱を手に見下ろす影。 鴉の翼を持ったその存在は、満足げに微笑んで小箱を一撫ですると、小田原の方角に飛び去っていった。


紹介期間:1555年5月〜11月
 岩付攻略。 テストプレイでは武田・北条と三つ巴の戦になって、制圧後も武田が帰ってくれなくて苦労したものだけれど、今回はアッサリ制圧できちゃってちょっと拍子抜け。
 そして某天狗様の登場フラグ……だけれど、北条と戦端を開くのは当分先。 本格的な出番はもっと後に。

―― 武将紹介 ――

太田 資正
統率:88 武勇:74 知略:78 政治:50
所持戦法:槍衾 槍突撃 先駆け 斉射 罵声
 太田道灌の曾孫。 初め北条家臣、後に扇谷上杉家臣。 軍用犬を活用して風魔衆を擁する北条家に対し情報戦で優位に立ち、所領を守り続けたが、嫡男氏資の裏切りに遭い城を追われる。 その後は佐竹氏のもとに身を寄せ、北条との戦いを継続した。 後に出家して三楽齋と号す。
 S1開始即滅亡の太田家として名物化してるけど、統率に関してはかなり優秀で、しばらくはレミリア、咲夜に次いで前線での活躍が期待できる。
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Re:信長の野望【革新】リプレイ −お嬢様の野望−(2:常陸の大賢者・前)
御神楽 紫苑 [Mail]
11/7(Wed) 22:05
 ――岩付城を陥落せしめて以来、スカーレット家は金山と市からもたらされる収益を元に、内政の拡充に勤めた。 湯治場を建設して将兵達を慰労し、工匠を招き荒れた岩付の町並みを修復。 さらに太田資正以下、旧太田家の遺臣達を一人も処断することなく登用し、古河における内政に重用した。
 しかし、全てが平穏無事には運ばなかった。 見事な手際で岩付をめぐる攻防に勝利を収めたスカーレット家に対して、周辺諸勢力は警戒を強め、人材の引き抜きや一揆の扇動といった計略による攻勢をかけてきたのである。
 翌年一月には千葉胤富、三月には成田泰季が里見家、長野家に引き抜かれる中で、咲夜は忍者集団を招致、養成してこれに対抗させ、ある程度の成果を上げたが、完全に誘引、扇動を防げたわけではなかった。
 しかし咲夜と晴朝を中心とした内政は着実に成果を挙げた。 秋には岩付、古河の両都市は、関東地方においては北条家の小田原に並ぶ、或いはそれを凌ぐ繁栄ぶりを示し、積極的に開墾を推し進めた事により、生産力も飛躍的に向上した。 この時点でスカーレット家は、最早吹けば飛ぶような弱小の勢力ではなく、周辺の諸家を圧倒するだけの国力を手に入れていたのである。
 そんな中で秋を迎えた頃、ひとつの噂話が舞い込んできた。 そしてそれは、レミリア達にとって重大な意味をもつものであった――。

 「パチュリー様が佐竹に!?」
 「らしいわ」
 小悪魔が目を輝かせるのも無理はなかった。 紫と永琳の気まぐれで、彼女達がこの地に放り込まれてから、かれこれ1年近い月日が経過している。
 その情報は、奥州から常陸を経由して、品川の商人衆に特産物の取引にきた秋田商人からもたらされたものだった。 曰く、佐竹家の治める常陸太田城には大変な人物がおり、晴れの日に雨を降らし、雨の日に太陽を現出させ、その御業にあやかろうと多くの人々が訪れているということ。 与力から上がってきたこの話を耳にした資正と晴朝は顔を見合わせてから考え込んでしまった。 そこに通りがかった咲夜が仔細を聞き、「パチュリー・ノーレッジは佐竹家に居る」という結論が導きだされた。
 「大丈夫でしょうか……」
 心配そうに、小悪魔。 パチュリーは陰陽五行の魔術に精通し、相克する属性を併用するばかりか、五行全てを結集して賢者の石を練成してしまうほどの賢者であるが、健康面にひとつ深刻な不安を抱えていた。 すなわち、喘息持ちなのだった。
 「あの図書館より空気の悪い場所なんて、探しても早々ありやしないわよ」
 そう咲夜は言うものの、やはり彼女も心配ではあるらしく、書棚に寄りかかる手指はとんとんと板を叩いて落ち着きがない。
 「美鈴はどうも宇都宮で、やっぱり門番をしてるらしいし。 次に攻めるのは、どっちかでしょうね」
 「そんな、お二人と戦う事になるかも……」
 不安げに両手を口元にやる小悪魔だったが、咲夜は苦笑して「大丈夫よ」と、自分より幾分背の低い悪魔の肩に手を置いた。
 「わかってる。 でもね、お嬢様は楽しみらしいの。 パチュリー様と弾幕ごっこなんて、本当に久しぶりらしいから」
 
 
 「秋ね」
 「ですな」
 レミリアの傍に控えているのは資正だ。 征服したものと征服されたものと、両者が共にあるというのはある種奇妙な光景だが、スカーレット家にはそれを気にする者はとくに存在しなかった。 この500年を生きる吸血鬼にとっては、所詮全てが戯れなのだ。
 「貴方、犬好きなんですって?」
 ――犬。
 「犬は良いものですな。 なにせ人を裏切らない。 私も彼らにはよく助けられたものです」
 「北条の軍勢と風魔衆の二重の囲みを、犬に密書を託して破った。 古河でもよく聞いたものだわ」
 レミリアが見下ろす視線の先には岩付城の中庭があり、そこでは数匹の犬達が戯れている。 そして、その傍には……
 「それで、貴方からみて、うちの狗はどうかしら」
 「――は?」
 ……『悪魔の狗』十六夜咲夜。
 レミリアの肩が震えている。 資正がもう少し近寄れば、「狗が犬と遊んでるわ」と呟きながらくつくつと笑う声を聞き取れたかもしれないが、彼はレミリアの思考回路が一体どうなっているのかを測りかねて、みょんな表情をするばかりであった。


 10月、レミリアは足軽五千を率いて佐竹領、常陸へと赴いた。 佐竹家の陣容をその目で確かめ、出戦してきた場合はこれを撃破、捕虜を獲得するためである。 陣容はレミリア以下、十六夜咲夜と宮越政明の三名。
 対する佐竹方は、一栗放牛を主将とした足軽八千を迎撃に出陣させた。 将の質ではスカーレット家が先んじるが、数の上での不利は否めない。
 「如何なさいますか」
 咲夜が問うと、レミリアは口の端に笑みを浮かべて、前進を維持するよう命じる。 ややあって両軍は激突、瞬間、レミリアは紅い光弾を上空目掛けて撃ち上げた。
 それが合図の狼煙だった。 レミリアは魚隣陣をとる敵部隊と接する隊を後退させ、両翼を前進させた。
 一栗放牛は老齢ながら、未だ前線に立ち続ける百戦錬磨の将である。 攻勢に出た軍勢が快調にレミリア軍の足軽を追い立ててゆくのを、渋面で見守っていた。
 「脆すぎるな」
 「ですが敵は寡兵、このまま押し切れば――」
 「いや、引く。 これは罠じゃ」
 放牛の下した判断は正しかった。 正しかったが、少し遅かった。
 レミリア軍の陣形はさながら網が魚を受け止め、絡めとるように変化し――佐竹軍は、自分達も気がつかないうちに、半包囲の只中にあったのだ。
 「遅いわ……」
 三方から容赦ない打撃を加えつつも、レミリアは不満顔だ。 この策を完成させる、あと一つのピースが足りていない。
 「遅かったか」
 放牛もまた、レミリアと同じような台詞を、此方は痛恨の表情でうめく様に呟いていた。 後退を命じた軍勢が向かう先、太田城の方角に蠢く黒い影は、味方の軍勢などではなく――
 「奇襲! 国人衆の奇襲ぞ!」
 咲夜が事前に手を回していた国人衆が、八千の兵をもって一栗隊の退路を塞いだのである。
 「やっと来たわね」
 レミリアの顔に、僅かながら安堵の色が差した。 この奇襲をもって両軍の形勢は逆転。 国人衆隊とレミリア隊、合計およそ一万三千が八千の一栗隊を完全に包囲する形となったのだ。 五千対八千でも、レミリアには勝利する自信はある。 しかし、それでは多数の敵に対する事になり、兵の損耗も大きくなる。 寡兵をもって大軍に勝利した、そんな戦は後世に華々しい逸話と共に長く伝わってゆく。 木曽義仲の倶利伽羅峠、源義経の一の谷、楠正成の千早城、この時代にはまだ起きていないが、真田昌幸の上田合戦。 しかし、それらはほんの一握りの例外であって、戦とは、より多数の兵をより効果的に運用した者が勝利を手にするモノなのだ。
 レミリアは今回、国人衆に頼らざるを得なかったが、それは全力を常陸に傾ける訳には行かないため。 岩付を手に入れたとはいえ、長野、宇都宮、里見、そして武田と警戒すべき勢力は数多いのだ。
 「レミリア様」
 勝利が決定的となった局面だが、そこに新たな報がもたらされた。 宮越が報告してきたところによると、太田城から新たな騎馬部隊が出陣し、戦場向けて急行しつつある、と。
 「数は六千。 大将は――佐竹家当主、義昭にございます」
 「……ふぅん?」
 レミリアの方眉が上がる。 一栗隊は壊滅、将を捕虜とすることはできなかったが、大量の負傷兵を捕虜とすることができた。 成果としては十分なものだ。
 「引き上げるわ。 義昭の隊は国人衆に相手でもさせて、気付かれないよう撤退する。 追撃はないと思うけど、一応――殿は咲夜、頼むわ」
 「仰せのままに」
 潮が引くように古河へと撤退してゆくスカーレット軍。 義昭隊を国人衆に受け持たせたことで、自軍にはほとんど被害を出さずに撤退を成功させることができたのだった……。

 

紹介期間:1555年12月〜1556年11月

―― 武将紹介 ――

パチュリー・ノーレッジ
統率:88 武勇:41 知略:98 政治:85
所持戦法:斉射 火矢 早撃ち 二段撃 罵声 威圧 混乱 同士討
 紅魔館の地下に広がる大図書館に住む、齢100を数える魔女。 陰陽五行に基づいた精霊魔法を扱い、地・火・水・木・金・陽・陰の七属性を自在に操る。 その力量は合成魔法を扱うばかりか、七曜の力を結集し賢者の石を練成してしまう程。 ただし、喘息持ちで体調が良くないと呪文を最後まで唱えられないという弱点を持つ。
 知略要員が不足気味なスカーレット家にとっては、全国でも有数の知略98は大いに助けになるはず。
 通称パチェ、他むらさきもやし、むきゅー等。
 恐らく、東方キャラで最も多くのスペルカード持ち。 テスト段階では火牛持ちだったけれど、序盤にしては強力過ぎるので削除。
レスをつける



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