ウィンダス連邦 ミンダルシア大陸の南方や、その近隣の島々に住む小柄な民タルタルの諸部族が連合して成立させた連邦国家。近年は古くから友好関係にあるミスラも住み着き始め、気候は温暖で乾燥して住みやすく、多彩な食料とその自然と神秘に包まれたこの国は貴方を退屈させることはないだろう。 ヴァナ’ディール旅行案内――P5より抜粋
予告状 麗しきミスラのお嬢様と勇敢なるタルタル様へ サルタバルタ大草原にも涼やかな風が吹き、とても過ごしやすい季節になりましたね。 御体に変わりはないでしょうか? ウィンダス市内の平和を保つという責任あるお仕事に就かれている皆様には日頃から尊敬の念が絶えません。これから夜が少し寒くなります。お節介とは思いますが、一級品のウィンダス茶葉を包んでおきました。どうぞ、皆様で召し上がってください。 ところで、明日 0:00にそちらから星の大樹の実を無断で譲り受けにいきたいと思います。大変礼の欠いた行動だと思いますが、なにとぞご容赦の事を。
ウィンダス守護戦士隊隊長を務めるシルバーブロンドのミスラの女性――頭頂部に生えた尖った耳と毛の生えたスマートな尻尾が特徴(有り体に言ってしまえば猫のような人間)の種族――、セミ・ラフィーナは即座にこの舐め腐った手紙をぶち破いた。 茶色の羊皮紙が粉々に破かれて部屋の中を舞う。 「ふざけるな――――――!私の隊の警備はクロウラーの様に鈍重と言いたいのか?そうだな!?そう言いたいんだな!貴族なんぞを気取りおって、貴様は何様のつもりだ!?たかがこそ泥風情がウィンダス守護戦士に良く吼えたな、“今度こそ”貴様の首を胴体と泣き別れさせてヤグートの贈り物にしてくれるわ―――!」 ラフィーナは周りにいた赤毛と黒毛の部下ミスラ二人組がビビるのをまるで気にせず、暖炉の中に手紙を叩き込むと、白い髪に映える褐色の肌の頬を、勇ましさを表す青の双眸を憤怒で赤く染めて叫んだ! ムカツク!ムカツク!!ムカツク!!! この“義賊”気取りの一番やっかいなところは民衆を味方につける術を身につけているということだ。狙うのは不正を働いた魔法学校の職員や一部の商品を独占して高値をふっかける商人である。そして、自分の盗んだ一部を「天からの贈り物」と称して民衆にばらまくのだ。さらにこのこそ泥の一番嫌なところは自分の盗みに入り、終わるまでの記録を見事な物語にしたため、ウィンダスにばらまくのだ。退屈ばかりでこういう事件好きのタルタル――魔法に長けた小人族、性別、年齢にかかわらず、容姿が可愛らしいのが特徴、ついでに噂好きでもある――は、このこそ泥を今では英雄視しており、一部ではファンクラブまであるそうだ。当然そこには今までウィンダスの警備隊がことごとくおちょくられた記録でもあるのだ、これに怒らず何に怒れと言うのだ! 「おのれ――――!」 そのラフィーナをなだめるべく赤毛のミスラが言った。 「ラフィーナ隊長!今は怒るより行動を起こすのが先です!」 赤毛の追従に黒毛のミスラが続く。 「それより、今度こそとっつかまえてやればそれこそ私らの名誉も格もオールオッケーです!」 そう言われてやっとラフィーナは止まった。まだ息が荒く、鼓動は荒い。 「その通りだ」 ラフィーナは凄絶とも言える笑みを浮かべてうなずいた、多分子供は一発で逃げるほど不敵な笑みだ。赤毛と黒毛は揃ってその笑みに気圧され、一歩下がる。 普段は知的でクールで、守護戦士としてウィンダス中から尊敬を浴びている守護戦士隊隊長、セミ・ラフィーナとしてはあまり見られない光景だった。 そんな二人を知ってか知らずか、ラフィーナは命を下した。 「今度こそ、捕まえてやる、各隊に通告、星の大樹と入り口と飛空商社を中心に警戒態勢を引け」 「は!」 予告状には最後にこう記されていた。
サルタ綿花の収穫も忙しい秋から アルフリート・ザ・エブリシング
それが後世に残る伝説のエルヴァーンの名前だった。 そろそろ風も少し冷たくなってきたウィンダスに、一騒動が起ころうとしていた。
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