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TURKS!!-No.10
Gum [Mail]
12/8(Sun) 14:03
 

 その男は先ほど支給された、彼専用の部屋の中で色々な準備をしていた。
男の背は160cmそこそこ。長い黒髪を背中の方にまで伸ばし、白い服を着ている。

 男が手を休めふと窓の外を見る・・・・。

 窓から見える満月が綺麗だった。

 『こんなとこから見る月じゃなきゃ、綺麗な月を見つつ酒でものみたいな。』

 そう思ったものだ。

 しばらくアイテムパックから色々なものを出していたが、パックの底の方から出てきた指輪が目に付いた。

 「そう言えば・・連絡しなきゃね。・・・これで良いのかな?」

 指にはめた小型通信機を操作してみる。
しばらくその小さな通信機と格闘していたが、だいたいの操作方法はわかった。

 連絡員から聞いた周波数に会わせて通信をする。

 「お〜い・・・・聞こえたら返事してくれ〜。」

 その男は繰り返す。次第に声が大きくなっていく。

 「お〜い!・・・・お〜〜〜〜い!!」

 「やかましい!」

 静かだが、有無を言わさぬ調子で返事が返ってきた。返事の主はアルフリートだった。

 「おっ。その声はアルちゃん!俺はライゾだぞ〜〜!」
 
 「ライゾ・・・・・・・・・・・・・・・ああ、最近入ったという若造か?」

 「うっす!その若造で〜〜す。」

 ライゾはつい最近タークスに入った男だった。時には明るく、時には物静かだ。
周りの人間は彼と言う人となりを掴むのに時間がかかるものだった。

 ライゾはサムスが捕まる直前にサムスに直にタークスのことを聞いた数少ない隊員の一人だ。

 ライゾは、他の隊員のように牢に入っているわけではない。
監獄監視職員用の個室に入っているのだ。
たいして贅沢なつくりではないが、最低限の人間としての威厳は保たれている部屋だ。
たかれているスチームが暖かく、心地よい。部屋の壁際には簡易なベッドと、簡易な執務机があった。

 「それで、そのライゾはどこにいるのだ?」

 「俺は監視人用の個室にいますよ〜。」

 「どう言うことだ?」

 「話すと長いんですが、いいんですか?」

 「ああ・・・監視はついさっき来たばかりだ。」

 「じゃあ、言いますけどね・・・・俺がタークスに入っても個人的に色々な仕事を受け取ってるのは知ってると思うんですよ。
 ある時、俺の端末に依頼が入ってたんです。
 依頼人は『ジェント国所属、マルダイト刑務所所長、ガルツ・ウェルズ大佐』。・・・そうです。ここの所長さんです〜。
 んで、俺がその依頼を受けてここに来たんですよ。
 依頼内容は『監獄・独房には関係無く、こちらの勤務シフトにおいて、当刑務所の監視人として一定期間勤務して欲しい』
 というものでした。報酬が良いので引きうけちまったんですよ。
 でもね誤解ないよう言っときますとね?俺は本気でアルちゃん達の計画を潰すつもりはないです。」

 「それでは、我々の任務には?」

 「可能な限り手伝いたいですね。俺の能力は割と最適かと思ってますから。」

 「お前の能力・・・・ああ・・・あの能力か。それなら役に立つだろう。よろしく頼む。」

 そこまで言うとアルフリートはいきなり通信を切った。
監視員が来たのだ。アルフリートは寝たふりをしてやり過ごす。
いつ通信が入ってもおかしくないが、聞こえる音の大きさは最小に絞っておいた。


 ライゾは連絡を終えた後、しばらく精神を集中する。
彼の能力を使ってみるつもりだった。

 ライゾの能力名は『覗き趣味』。その能力の内容はこういうものだ。

 『ある任意の範囲の映像が見えるもの。ただし見ている間は激しくは動けないし
 精神の集中が切れればとたんに映像は消える。
 効果範囲はおよそ監視カメラ程度からこの島全てを見えるくらいまで任意。
 見ている場面をそのまま移動できる。例えれば、監視カメラをそのまま動かせる様なものか。 
 ただし、見るのにも条件がある。
 自分が見たい場所が、地図や実際に見たことのある場所であり、地理を把握していなければならないということだ。
 それ以外の場所は見れないという制限がつく。
 その上、音は拾えない。映像だけである。読唇術でもできれば話してる内容は分かるが、ライゾはある程度しか出来ない。
 またこれだけではなく、もう一つの能力もある。
 それは、今見ている映像はは無理だが、今まで見ていた映像をそのまま人に見せることもできる。
 これにも条件があり、自分と相手が共に精神を集中し、自分の見た映像をそのまま相手の脳裏に浮かばせるものだ。
 その間やはりお互いに激しくは動けないし、どちらかの精神集中が切れればとたんに映像は途切れる。』

 男子監房のあちこちを探ってみた。確かに、アルフリートを始め潜入している面々がいた。
もちろん、自分が担当する部署であるから地理はしっかり把握してある。

 ある男子監房まで見ている画面を移動させた時だ。 

 「な?なんでお前がここにいる・・・・・・ガム。」

 ライゾは思わず呟いていた。それでもその程度ではライゾの精神集中は途切れない。

 ガムとライゾは、前まで同じ師匠のもとでその能力を磨いた仲だった。

 画面の中のガムはライゾと同じ様な格好をしていた。
恐らく、彼の能力を使っているのだろう。もしかすると、この部屋の音を聞いてるかもしれない。
すると、画面の中のガムはまるで何処から見られているのかが分かるかのように
ライゾの見ている方を向き、ゆっくりと口を動かした。

 『良く来たな。ライゾ。お前と協力してサムスを救い出す。手を貸せ。』

 ガムの口の動きはこう言っていた。もちろん、その程度はライゾにはお手のものの読唇術だ。

 「分かった。しかし、まだ俺はここに来て日が浅い。独房の方は地理を把握してないんだ。だがいずれ、任されるだろう。
 それからなら協力はできる。その他手に入る情報は俺の能力でお前とアルちゃんに見せるよ。」

 そうつぶやく。それでガムには十分である。

 ガムにとってもライゾにとっても、自分の立場と能力の狭間でのサムス救出の日々が続く。

 看守側のタークスメンバー囚人側のタークスメンバーのそれぞれの日がまた始まる。


 



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