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- 今を生き抜く獣達 〜麗しき闇の真紅の玉〜 - サムス・アラン [2/3(Sun) 9:32]
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Re:〜麗しき闇の真紅の玉〜 終 - puni [11/25(Mon) 23:10]
Re:〜麗しき闇の真紅の玉〜 終 - GUM [11/30(Sat) 7:17]



〜麗しき闇の真紅の玉〜 11
サムス・アラン [Mail]
2/3(Sun) 21:52
 宿屋〜シェイク・スピア〜 2階サロン

 すでに二十四の刻が過ぎているのだが、リクオはなぜか寝つけず
 ここに足を運んできた。

 「……リクオさん?」

 サロンのテーブルには見知った先客がいた。

 「…起きてたのかデュオール。」

 そこではデュオールが紅茶を飲んでいた。今はクマの着ぐるみで
 はなく、深紫のローブだ。

 「……なんか寝つけなくてよ。」

 どうしたことだろうか、今のデュオールには何故か何を話したら
 いいのかわからない。
 ……今まで着ぐるみを着ていたから気付かなかったのだろうか、
 いまの物静かな表情で、優雅に紅茶を飲むデュオールの姿はと
 ても美しい。
 額の宝石が月明かりの中妖しく光る。デュオールはあたふたと
 したリクオの様子に首を傾げ

 「座らないんですか?」
 「え? …あ、ああ、そーだな…」

 心臓がどきどきする。デュオールの妖しい美しさと不思議な
 香りのする香水のせいか、気ぐるみを着ていたときとはまる
 で別人だ。

 「どうしたんです? 様子がおかしいですよ?」
 「は……はは、…なんかさ、こう改まってみると何はなして
  いいか分からなくてよ。」
 「ふうん……そういう時もありますよね。」

 デュオールは手にしていた紅茶をテーブルに置き、ゆっくり
 と立ちあがる。

 「お…おい、どこ行くんだよ。」
 「…別にどこにも行きませんよ。リクオにも紅茶を入れて差
  し上げようと思いましてね。」
 「…ああ、そっか。……すまねえ。」

 デュオールはコップに紅茶を注ぐ。

 「……そうですね、私の故郷の話でもしてあげましょうか。」

 紅茶をリクオの前に差し出す。
 
 広大かつ幻想的な地 フェリス 
 朝日に照らされたその地は とても神々しく 
 また 月夜のそれは不思議な雰囲気に満ち溢れ
 麗しき湖の青さはどこまでも深く 吐息が出るほど澄んでいる。
 魔道の神秘を その地に秘め

 詩のように流れるそれは不思議なくらいに美しい。リクオは何
 気なく紅茶を口にする。

 「……ん?」
 「……どうしました?」

 デュールの物憂げな瞳に見つめられ、リクオはあわてて目をそ
 らす。

 「……不思議な…香りがするな…この紅茶…」
 「わが故郷で代々受け継がれてきたハーブを使用しています。
  ……お口に合いませんか?」
 「…いやいや、うまいよこれ。…ただ、今まで飲んだどれとも
  違っているんだ。」
 「ふふ、そう?」

 デュオールはかすかにうれしそうに微笑み、再びイスに腰をか
 ける。リクオは紅茶を飲む手を止め

 「…フェリス…だったよな、魔導士村って。」
 「村というには少し大きすぎますがね。」

 デュオールも再び紅茶を口にし

 「とても綺麗な所ですよ。……リクオさんが思っているより。」
 「…え…」

 まるでリクオの心の奥底を見透かされているようだ。

 「一般では魔術と言う物は、魔物相手に戦う武器の一つと思われ
  がちですが……」

 デュオールは立ちあがり、リクオの後ろに立ち、……そしてリク
 オの頭をかき抱く。

 「…な…なにすんだよ……」
 「…じっとしてて…」

 リクオの心臓はさらに高鳴る。

 「傷を癒し、心を清める。……私は魔導の力をそういう事に使い
  たいのです。」

 デュオールの手のひらが銀色に輝く。

 「……あうっ…」

 とても不思議な…心地よいイメージがリクオの体全体を覆う。
 まるで時が止まったような空気…。…やがてデュオールは、
 まるで夢ではないかと思うようにゆっくりと手をもどす。

 「…それでは、私はそろそろ部屋に戻ります。」
 「え? ……あ、ああ、もうこんな時間だもんな。」
 「ではまた明日。」

 デュオールがサロンから消えて行く。リクオはまるで夢でも見て
 いたのではないかと、自分の意識を疑った。
 ……とても長く、そして短い不思議な瞬時であった。



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