相良さんを連れた私は自室へと走りました。 やはり善は急げですから。 ですが。 「だああああ、いつまでも首締めるなあ!」 私はあまりの力に転んでしまいました。あたりはそろそろ配給のために人がごったがえし、とても多くの人の目がありました。 「どうしましたの、相良さん?一緒に夢をかなえましょう」 でも、私は気にしませんわ! 「だから夢って何だああ!」 「貴女がお姫様になる夢ですわ!」 ここで周りの人が笑いました。そんなにおかしいことなのでしょうか?でも、この笑い声はとても嫌なものでした。私達にとって。 相良さんの顔が青くなります。 怒りのために。 「テメエラ、何笑ってんだああああ!」 相良さんはハルベルトを取り出しました。すぐに青いフォトン金属の棒の先から噴出し、まるで青龍刀のような形になります。 でも、そんな武器よりも怖い人が目の前にいます。相良さんは湯気が立ちかねない勢いで怒りを口から放ちました。 「文句ある奴は出てこい!あたしは本気なんだぞ!」 周りの人はそそくさにその場を離れて行きました。怒った相良さんに立ち向かおうなんていう勇気のある一般人はいません。その通りはほとんど人がいなくなっちゃいました。 そうやって逃げていく人達を相良さんは見てました。私からは相良さんの背中しか見えません。 寂しそうに見えるのは私の気のせいでしょうか? 強い人はやはり孤独なのでしょうか? 「なあ、ヘイゼル……」 「はい……」 「アタシって馬鹿なのかなあ?」 「いいえ」 「だって誰も考えないぜ、こんなガサツな女が『お姫様になりたい』なんて……」 「いいえ」 「!」 相良さんの顔は見えません、でも、驚いたのが背中で分かりました。 「だって皆同じですもの」 私は続けます。 「物事の馬鹿らしさはあくまで常識に縛られてできる物。なら常識を変えてしまえばいいのですわ」 背中にやさしく手で触り。 「貴女がお姫様になってしまえばいいのです」 「ヘイゼル」 無表情な顔で相良さんは私の方に向きました。 でも、私には泣いてるように見えてしまいました。 「何でそんな事言うんだ?」 これには答えがあります。とても自然な答えが。 「だって私は貴女の味方の『良い魔法使い』ですもの」
これは一つの記録。 とても小さくて大きい人と私が一緒にいた時間の跡。 この星で。 この時間で。 笑いと楽しさの証。 自分が自分であった証。
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