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- 3DAYS - KAZUMA [7/26(Thr) 10:40]
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その六 - KAZUMA [7/26(Thr) 10:46]
その七 - KAZUMA [7/26(Thr) 10:46]
あとがき - KAZUMA [7/26(Thr) 10:47]
Re:あとがき - GAS [7/30(Mon) 21:18]
あったかいですね - 守護者 [8/10(Fri) 12:29]



その七
KAZUMA [HomePage] [Mail]
7/26(Thr) 10:46
 三日目、二人はあの公園に立っていた。
 今日、彼女は帰る。
 自分の世界に。
 良の住む世界と、綾華のすむ世界。
 交わることはないはずの世界。
 だが、彼女は、綾華はそれを踏み越えてしまったのだった。
 そんなことも良にとってはどうでもいいことだった。
 綾華も同じ。
 そのおかげで二人は出会えたのだから。
 一年の内のある特定の三日間、彼女は二つの世界を行き来する。
 初めて経験した時、最初は何が起こったのか分からなかった。
 一瞬目の前が暗くなって、次の瞬間まったく知らない場所にいた。
 自分の家を捜して歩き回った。
 怖くて、お母さんに会いたくて。
 泣き出しそうになった時に良に会った。
 やさしい男の子だった。
 二人で綾華の家を捜した。
 綾華が疲れたのを見ると、彼女を三輪車にまたがらせ、自分は後ろから押してくれた。
 だが、どうやっても家は見つからなかった。
 二人ともくたくたになって、公園のブランコの横にへたり込んでしまった。
 涙がボロボロとこぼれだす。
(家に帰りたい!お母さんに会いたい!)
 目をつぶってそう思った瞬間、自分の家の前にいた。
 次の日、今度は良に会いたいと願った。必死に思った。
 すると、良と最後に行った公園、ブランコの横に立っていた。
 綾華の前には、目をまんまるにして、口を開けている良がいた。
 次の日も良と遊んだ。
 だがその次の日から、どうしても良の住む場所に行く事が出来なくなってしまった。
 毎日、毎日、神様にお願いをした。一日たりともお願いを忘れることはなかった。
 一年後、綾華は見覚えのある公園、見覚えのあるブランコのそばに立っていた。
 良もそこにいた。やっぱり目をまんまるにして、口を開いていた。思わず綾華は笑ってしまった。
 綾華と初めて会った日と同じ日の今日、ここにくれば綾華に会えるのではと思い、良はやってきたのだった。そう言われて、綾華も初めてそれに気が付いた。
 大きくなるにつれ、自分がどこか遠くの知らない場所に、それも三日間だけ行けることが分かってきた。
 理由はわからない。
 一年の内、決まった三日間だけの魔法だった。
 小さい頃は、神様が良に会わせてくれるために魔法を使わせてくれているのだと思っていた。
 今、それが正しかったことがわかる。
 良が来なかった年。
 悲しくて悲しくてずっと泣いていた。
 しかし、あきらめなかった。
 次の年も、また次の年も良を待っていた。
 いつしか待つことをやめ、良を捜しはじめた。
 それでも良を見つけることはできなかった。
 今年でもう最後にしようと思っていた時、その時に奇跡が起きた。
(良を見つけた!)
 やっぱり魔法だったのだ。
 神様が良と会わせてくれるためにくれた魔法だった。
 良もそれを信じていた。
 自分をここに戻らせたもの、それが魔法だった。
 今、二人は公園を歩いていく。しっかりと手を取り合って。
 ブランコの横で立ち止まり 良が綾華をやさしく抱きしめた。
 お互いの唇がそっと触れ合う。
 二人はしばらく抱き合い、やがて離れ、手のひらを合わせた。
 ずっと昔、まだ二人が幼かった頃そうやったように。
 見つめあった二人の口から同じ言葉が同時に出てきた。
 神様が良と綾華にくれた魔法の呪文。
 二人だけの秘密の呪文。
「また来年、またこの場所で、また同じ日、また同じ時間に。」

・・・Fin



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