苦労の果てに彼女がたどり着いた所、それは・・・、
通の間では有名な、知る人ぞ知る、その名も・・・、
「ナウラ3姉妹のケーキ屋。」
であった。 そこで彼女は・・・。
カタンという音がして、彼女の前にティーカップが 置かれる。
「恐れ入ります。」
彼女はそう言って、頭を下げた。
「それで・・・。」 「私達にどんなご用なのかしら?」 「実は・・・。」
ビーナスウルフは、これまでの経緯を語り始める。
「なるほど。」
ビーナスの話を聞いたナウラ3姉妹は、それぞれ うなづく。
「それで・・・。」 「あなたはお茶を入れる時に、どんな事を考え、 どんな事を思いながら、お茶を入れているの かしら?」 「え・・・?」
ナウラ3姉妹は言葉を続ける。
「私達は、ケーキを焼く時に色んな事を考えて、 色んな事を思いながらケーキを焼いているの。 でも・・・。」 「やっぱり、ケーキを買って下さるお客様に喜んで 頂ける様に、おいしいと思って頂けます様にと、 そう思いを込めているの。」 「私達は、ケーキを焼く事にこだわりと誇りを 持っているし、ケーキを焼く事が楽しいし、何より お客様に喜んでもらえる事が、一番嬉しいもの。」 「それが、ケーキ職人っていうものよ。まあ、あなた はケーキ職人じゃないけど、少なくとも私達はそう 思っているわ。」
彼女達の言葉を聞いて、ビーナスは気がついた。 自分が今までお茶を入れている時の気持ち、どんな 考えでお茶を入れていたかと言う事を。
(そうよ、私に足りなかったものは、きっとこれ なんだわ。)
ビーナスは、ナウラ3姉妹にお礼を言うと急いで 会社に戻って行った。 そして、タークス本社の秘書室で・・・。
「どう?チタン。」 「ピー、ガチャガチャ・・・。」 「分析終了。成分、その他の総合計の結果・・・。」 「完成度88、5%。ランクA。」 「やった〜!!」 「すご〜い。」 「うん、短期間でよくぞここまで。」
自分の入れたお茶を飲む秘書科のみんなの反応を 見ながら、ビーナスは思った。
(そうよ、私はこれまで上手にお茶を入れる事しか 考えてなかった。飲む人の事を全然思っていなかった のよ。お茶に気持ちが全くこもってなかったの。)
さて、それから数日・・・。 ウルフが仕事で会社を離れている時、代理として サムスのお茶汲み係となったビーナスが、サムスに お茶を出していた。
「あ〜ら、なんか今日のお茶はおいしいわぁ。」 「本当!?」 「ええ、ビーナスちゃんが入れた中で、今までで 一番よぉ〜。」 「やった〜!」 「でもねえ・・・。」 「え!?」 「お茶受けがイマイチだわ。今日はおまんじゅうじゃ なくて、ようかんが食べたかったのよねぇ。」 「残念ねえ、総合85点ってとこかしらぁ。」 「私のその時々の気分に合わせる事が出来ないと、 とても私のお茶汲み係は勤められないわよ、 オッホッホ。」 「がくっ。」
タークスのお茶汲み係にとって一番の課題は、お茶の おいしさよりも、いかにサムスの気まぐれに対処する 事かという事を知った、ビーナスウルフであった。
お茶汲みの心得・完結
|
|