この物語は、フィクションです。 登場人物は、あくまでも架空の人物です。
「かぼちゃ」
いつものように、オンラインに接続して、いつものように、いつものシップへ足を運ぶ。 インフォメーションカウンターをみて、すでに作ってある部屋を見てると「かぼちゃ」と書かれた部屋があり、部屋の中を確認すると、知っている名前があった。 パスワードがかかっていたが、知り合いなので、いつものパスワードを入力して、部屋に入る。
ZAIN さんが入ってきます、しばらくお待ちください。
ZAIN(ザイン)とは、PSO内でのキャラの名前である。 ザインの中の人は、部屋に入ると、ザインになりきって挨拶をする。 「待たせたな」 別に待たせたわけではないが、これは、いつもの挨拶なのだ、しかし、部屋主からは挨拶の返答は無い。 ザインはチェックルームの前まで移動する、そこには、極小サイズの身長で作成された、背中まで伸ばしたロングヘアのハニュエールが立っていた。 赤い色が好きとの事で、髪の色もコスチュームも赤で統一している、名前は、シリカ(SILICA)という。 ちなみに、ザインは、中サイズの身長で作成して、黒いボディに身を包んだ、尖ったヘッドパーツをつけた、ヒューキャストである。
「よう、こんなところで何をしてるんだ?」 「あ、いや、これなんだけどね…ちょっとおかしいのよねぇ」 シリカの足元には、かぼちゃ…らしき物体が置いてあり、くるくる回っている。 見た目は、普通にかぼちゃだ、別に異常には見えない、くるくる回ってるのは、PSOの仕様だし、表示も”かぼちゃ”となっている。
「かぼちゃ…だよな?」 「そう、そっちから見ても、かぼちゃ…なのね」 おかしな事を言う、GC版PSOでは、アイテムを下に置いたとき、1部のアイテムは、アイテムボックスの形ではなく、名称にちなんだ形状が異なるものがある。 かぼちゃ、CD、梱包したプレゼントなどが当たる、他には、実際は見たことは無いので何ともいえないのだが、イースターエッグやケーキなどもユニークな形をしてると思われる。
「ハロウィンクエストで手に入れたのか?」 「いや、オンラインクエストの[かぼちゃプレゼント]ってのがあったので選んでみたら、いきなり女性が現れて、有無言わず渡されたのよ」 「なるほど、オンライン調整版(Ver1.1)をコンバートした人だけがもらえる、”お詫びアイテム”か…しかし、何故に今ごろ?」 現在は、2004年の9月で、オンライン調整版(Ver1.1)の交換が行なわれたのは、ずいぶん前の話である。 「ああ、トライアル版までだして、公開デバッグして、なおかつ製品デバッグしたにもかかわらずチェックが甘く、怪しい機械をつけなくても、アイテムの複製ができたり、サーバー側では直せない致命的なバグで接続できないユーザーがでたりして、収拾つかなくなったので、表向きは接続不具合を直しましたディスクをVer1.0と交換させて、複製したアイテムを消し去るために、コンバート時はアイテムとメセタを全初期化して、コンバートした後でもアイテムを渡せないように、チーターの巣窟となった1.0サーバーと1.1サーバーを隔離した上に、1.0サーバーはそのうち使えなくなるので、長く遊びたかったら、さっさと全初期化しちゃってよと脅しをかけて、普通に遊んでいた人に迷惑を掛け捲った、あのオンライン調整版ね」 シリカが発言してる途中で、ザインが「うぇdrfgthyじゅいこl」と発言しだす、ザインの中の人がキーボードに顔を床に突っ伏してたからである。
「どしたん?」 「…話が長すぎる…というか、恨みたっぷりな言い方だな」 画面だけだと、ザインもシリカも、ただ突っ立っているようにしか見えないが、実際、ザインの中の人は、ため息をつきながらキーを打っている。 「あたりまえでしょ、アレのせいで、せっかく育てたマグや稼いだメセタが無くなり、やる気が起こらず、1年半ほど放置してあったんだから、しかも、結局1.1になってもアイテム複製できてしまうってのだから、初期化された意味がないっつーの」 「それを言うな、Plusでは修正されているのだから」 「発売から2年経った後でも、ダウンロードクエストが配信されない上に、DC版であったクエストも、追加されてないのもあるし…[セントラルドームの炎渦]がなんで、Plusに追加されてるて、Ver1.1にないのよ!」 「一言で言うと、大人の都合ってもんだろう、ダウンロードクエストの配信のプログラムに、なにか致命的な不具合か何かがあり、配信するとユーザーに何か被害が起きるようなものがあるのだろう、例えソレが直せたとしてPlusに組み込むことが出来たとしても、Ver1.1では相変わらず修正できないため、また、Ver1.1ユーザーに[オンライン調整版(Ver1.2)]なるものと交換させても多大な損害を受けるし、例え1人用クエストでも、「心の座」や[東天の塔]みたいに、クエスト配信ならオンラインクエストという形で追加していけばいいし、ブルーバーストも発売されているので、今更X−BOXやGCに人員をさいたり、手を加えるくらいなら、すぱっと見捨てて、ダウンロードクエストは無かったことにして放置しているのだろうな」 ザインが発言している途中で、今度はシリカが「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」と発言しだす、おそらく、シリカの中の人がキーボードに顔を床に突っ伏してたからであろう。
「どうした?」 「…あんた…あたし以上に毒がたっぷり含まれてる発言してるわよ…」 画面だけだと、ザインもシリカも、ただ突っ立っているようにしか見えないが、画面の向こうのシリカの中の人が、ため息をつきながらキーを打っている姿が想像できる。
「まあ、言い出したらきりが無いから、”大人の事情”はここまでにして、話を戻そう…で、なんだったかな?」 「これよこれ」 と、シリカは自分の足元に転がっている、かぼちゃをベシベシ蹴りつける、正確に言うと、ロビーアクションが出来ない街中では、実際には蹴りは入れるしぐさは出来ないので、「ペシペシ」と発言しながら、かぼちゃの周りを回ってるだけなのだが。 「蹴るな蹴るな、用途が分からないなら、とりあえず、オフラインで使ってみると良かろう」 かぼちゃは、使うとランダムでマグ細胞に変化するアイテムである。 だが、シリカはおかしな事を言いだした。 「…つかう?」 「うむ、使ってみれば分かるが、ランダムで、いろいろなマグ細胞に変化するぞ」 「……これを…つかう…の?」 シリカは、握りこぶしを顎に軽く当てて「?」と発言している顔をイメージしたシンボルチャットを連発している。 画面の向こうの、シリカの中の人も、同じしぐさをしているのであろうか。
「…日本語分かるか?」 「”使う”の意味ぐらいわかるわよ!ただ、どうやって使うのよ、装備品なのに」 「…装備品…だと?」 ザインの中の人は、「なに言ってるんだろ、こいつ」と言いながら、ポテチを口に入れる。 「疑うなら、拾って、自分の目で確認してみなさいよ」 ザインの中の人は半信半疑で、ザインを操作して、かぼちゃを拾って確認してみると、確かに、普通なら”使う・置く・ソート”と表示されているところが”装備・置く・ソート”表示されている。 ”装備”の部分の文字は黒くなっているが、武器であることは分かる、武器アイコンの脇にはXはついていないので、ハンターは装備可能であることは分かる、しかし、装備条件が表示されていないので、どのパラメーターが不足なのか判別できない。 「俺には装備できないみたいだな」 と発言させて、かぼちゃ?を床の上に置く。 「え?そうなの?」 と言って、シリカは、かぼちゃ?を拾い上げる。 「あたしでは装備できるみたいだけど」 シリカの場合は、”装備”の部分の文字は白く表示されているらしい。 シリカとザインとの違いは、ハンターと言う職業は同じで、LVはザインのほうが高い、唯一違うのは、ハニュエールとヒューキャストと言う点だけである。
「だとすると、装備条件は、女性専用か精神力と言ったところだろう」 と言った後、間違えたことをいったことに気づく、女性専用か精神力が条件なら、武器アイコンの脇にはXがつくはずだ。 「じゃあ、もしかしたら、運のパラメーターかもね」 聞くと、ザインの運のパラメーターは34であるが、シリカの運のパラメータは52とのことである。 「運が装備条件?そんなアイテム他にあったかな?」 「うーん、違いはそれしかないしねぇ…あ、今の洒落じゃないよ」 「解っている、どっちにしろ面白くないしな」 「ペシペシペシ(怒)」 「蹴るな蹴るな」 画面の中の、シリカが「ペシペシ」言いながら、ザインの周りを回っている。
「そうか、解った!これが噂のESウェポンなんだ!」 「いや、それはない」 ザインの中の人は、思わずつぶやいた台詞を、ザインに発言させる、この間、約1秒。
「…否定が早いわね」 「こんな不気味なものがESウェポンなわけがなかろう」 「じゃあ、その不気味なものは、いったい何なのよ」 「…そんなに気になるなら、装備して、ラグオルに降りて見てくればよかろう?」 「…ふむ、それもそうね、んじゃ、ちと行ってくる」 シリカはラグオルへ降りる転送ゲートに走っていき、ゲートから姿が消える、そして、名前の表示もきえて、サーバーから姿を消す。
「…まあ、当然だろうな」と、ザインの中の人はつぶやいて、とりあえず、お茶をとりに台所へむかう。 ザインの中の人はが、お茶を持って戻ってくると、画面には「SILICA さんが入ってきます、しばらくお待ちください。」と表示されていた。
「ただいま(怒)」 帰ってきた、画面の中のシリカが発言する、文字だけでもかなり怒っている事がわかる。 ザインの中の人は、お茶をコタツの上に置いて腰をおろして、画面の中のザインに「おかえり」と発言させる。
「ラグオルに降りたら、サーバーとの接続が切断されました、と出て、いきなり落とされたわよ!」 「そんな怪しいものを装備してたら、普通は落とされるわな、それより、そんなものを所持しながら部屋を作れたほうが不思議だがな」 「普通に部屋を作れたわよ」 「まあ、とにかくアカバンされなくて、良かったな」 「アカバンされたら、告訴するわよ、それで絶対に勝わよ!」 シリカは、どこかで聞いたような台詞を言う。
「そんな怪しいものは、そこら辺に投げ捨てて、ゲーム終了して、電子の海に返したほうがいいと思うぞ」 「え〜、せっかく貰ったのにぃ〜」 「そんなもの持ってたら、いつか本当にアカバンされるぞ」 「だから、アカバンされたら、告訴するわよ、それで絶対に勝わよ!」 「弁護士の”成歩堂龍一”にでも相談してくれ…しかし、らちがあかんな、ならばどうしたい?」 「…何か他に使い道は無いかな?」 「…どこかの部屋に乱入して、そのかぼちゃ?をこっそり置いてくるとか?面白がって装備してラグオル降りたヤツは、抽選でめでたくアカバンのオマケつきと」 「それじゃチー●ーと同じ、犯罪者じゃない…そうじゃなく、このかぼちゃを面白おかしく、使う方法」 「…オンラインで、装備したままラグオルに降りると落ちると言う、体当たりのネタ以外使い道がないと思うがな」 「う〜、こんな不良品を渡した総政府に、仕返ししたい気分になってきた」 シリカは、マンガなどで怒った場合、額に浮かび上がる血管の形をした、シンボルマークを連発する。 …芸の細かいヤツだと、ザインの中の人は思った。
「仕返しときたか…たとえば?」 「この、かぼちゃを総督に叩きつける…とか、ああ、ただ叩きつけただけじゃ面白くないわね…」 「このゲームの仕様上叩きつけることは無理だと思うが…と言うか、何故に総督?」 「総政府で一番偉いのは総督でしょ?部下の不始末は上司の責任…そんなわけで総督に八つ当たりするのは至極当然!」 「…お前の、怒りは良くわかった…で、どうしたいわけだ?」 「ええとね、まず、総督を台車の上に正座させて、肩には…そうだなぁ”今日の主役”もしくは”私はヅラです”と書いたタスキを下げさせて、このかぼちゃで、98000回ほど頭を叩きながら街の中を走り回る…って何よ」 シリカが言い終わる前に、ザインが「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」と発言しだす、ザインの中の人がキーボードに顔を床に突っ伏してたからである。
ザインの中の人は、しばらく突っ伏してたが、ゆっくり起き上がり、お茶を一口飲んでから、キーボードを叩く。 「つっこみどころ満載だが、順にツッコミをいれるぞ…まず、98000回と言う数字はどこから出てきた?」 「なんとなく」 「何故にタスキなんだ?しかも、”私はヅラです”は解るが、”今日の主役”ってなんだ?」 「なんとなく」 「何故に台車の上に正座ってなんだ?」 「なんとなく」 「98000回も叩いた場合…いや、10数回くらいで、総督の頭が割れる前に、かぼちゃが割れると思うがどうだ?」 「…わからないわよ、総督の頭、ヅラの分だけトリポリックシールド並みの強度があるかもよ」 「あのヅラはトリポリック材でできてるのか!!」 「…うっさいわねぇ…じゃあ、試してるわよ、人間の頭は、かぼちゃで叩きつづけた場合、どっちが先に割れるかを」 「こ、こら、そんな物騒なこと試すな!」 と、ザインの中の人が発言したが、シリカからは、まったく返答が無くなる。
「おーい」 打ち込んでみたが、やはり返答は無い。
しばらく、待ってみたが、画面の中のシリカは、まったく動く気配が無い。 自分の頭で試してるのかな?と思いながら、ザインの中の人は、タバコに火をつけた。 すると、自分の部屋のドアが開いた音がして、人の気配を感じた、ザインの中の人は、ゆっくり後ろを向くと、そこには、右手にかぼちゃを、左手に”今日の主役”と書かれたタスキを持った人が立っていた。
「ええと、どちらさま?」とザインの中の人が、言いかけると、今まで沈黙してた、画面の中のシリカが発言しだした。
「んじゃ、今から試してみるね♪」
|
|