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- PIONEER1 HUNTERS - IXY [12/4(Wed) 16:54]
story1 闇の胎動1 - IXY [12/4(Wed) 16:55]
投稿者削除 - ---- [12/31(Tue) 21:29]
story1 闇の胎動2 - IXY [12/31(Tue) 21:30]
story1 闇の胎動3 - IXY [1/14(Tue) 1:14]
story1 闇の胎動4 - IXY [1/14(Tue) 18:08]
story1 闇の胎動5 - IXY [2/4(Tue) 16:53]
story1 闇の胎動6 - IXY [3/20(Thr) 13:30]
story1 闇の胎動7 - IXY [3/20(Thr) 13:31]
story1 闇の胎動8 - IXY [3/25(Tue) 17:03]



story1 闇の胎動8
IXY [Mail]
3/25(Tue) 17:03
 気が付くとレイカーは、暗い闇の中にいた。
 「ここは・・・どこだ?」
 一筋の光すらない真の闇に包まれ、レイカーは言い知れない不安に駆られる。
 「D!?アリアッ!メイ!誰かいないのか!?」
 レイカーは、仲間の名を呼びながら闇の中を進んでいた。
 いや、進んでいるのかすらもレイカーには解らなかった。
 完全な闇の中で、平衡感覚は失われ、自分が本当に前へ進んでいるのか、さらには上下の感覚すらも無くなってきていた。
 「一体何なんだここは・・・。」
 どれ位時が経ったのかも解らない。
 もう、何時間も彷徨ったようであり、一瞬の出来事のようでもあった。
 その時、只ならぬ気配を感じ、レイカーは総毛だった。
 「何だ・・・あれは・・・?」
 闇の中から、それよりも更に深い闇がレイカーに迫ってきていた。
 そして、「それ」はレイカーを包み込むように纏わり付いてきた。
 「くっ!何だこれは!?」
 レイカーは「それ」を振り払おうとするが、レイカーが動く度に、「それ」は蠢き、彼を呑み込もうとする。
 「く・・・そ・・・やめ・・・ろ・・・。」
 全身を「それ」に包まれ、呼吸すらもままならなくなったその時、レイカーの頭の中に直接響く様に、声が聞こえてきた。
 『・・・ウ・・・』
 (!?なんだっ!?この声は・・・。)
 『チガ・・・ウ・・・・・・・ナ・・・イ・・・』
 抑揚が無く、それでいて深く響くような声が闇の中から伝わって来る。
 (何だ・・・?何を・・・言っている・・・?)
 『チ・・・ガウ・・・・・・オ・・・マエ・・・デハ・・・・・・・・・ナイ!!』
 これまでより、一層大きな声が響いたかと思うと、レイカーの周囲の闇が晴れ、眩く、それでいて底知れぬ恐ろしさを感じさせる光がレイカーを包んだ。
 そして、レイカーは光の中に、異形の物を視界に捕らえた。
 「な・・・んだ・・・・・・あれは・・・・・・・。」
 レイカーがそれに気付くとほぼ同時に、異形はより強い光を発しながらレイカーに突進し、彼の肉体を貫いた。


 「うああああああああああ!!!」
 レイカーは絶叫と共に飛び起きた。
 「はあっはあっ・・・ゆ、夢・・・なのか・・・?」
 レイカーは額の汗を拭い、周囲を確認し時計に目をやる。
 (2時間ほど寝てたようだな・・・。)
 汗をかいた為か、ひどく喉が渇いている。
 レイカーはベッドから降り、タンクからカップに水を注ぐと一気に飲み干した。
 この詰所のライフラインが保持されていたのは、レイカー達にとって僥倖であった。
 携帯食も持ってはいたが、そう何日ももつ物ではなく、長期間地下に閉じ込められるようであるなら、助かる見込みは少なかったからだ。
 (あれは・・・一体・・・。)
 レイカーは先ほどの夢を思い出していた。
 夢にしてはやけに鮮明で、生々しい感触が今も残っているような気がして、レイカーは腕を擦った。
 「レイカーっ!Dっ!!起きて!」
 その時、アリアの慌しい声と共に、けたたましくドアが叩かれた。
 Dもその尋常ではない様子に、調整ベッドから降りてきた。
 レイカーがドアを開けると、アリアが部屋の中に飛び込んできた。
 「アリア、どうした?」
 「メイが、メイがいないのよ!」
 「何?」
 「二人と別れた後、私も部屋で休んでいたんだけど、目が覚めたらメイが居なくて、それで、他の部屋も見て回ったんだけど、どこにも居ないの。」
 今、レイカー達がいる施設は、採掘用の詰所としては大きいものだが、部屋数がそれほど多いという訳でもなく、どこかの部屋に居るならば、探し出すのは容易であるはずだった。
 (詰所の中には居ないということか?坑道への扉は閉ざされているし・・・となると・・・。)
 「まさか。」
 Dが思いついたように呟いた。
 恐らくレイカーと同様にメイの行方を推理し、そして、同じ答に行き着いたようだ。
 「あの馬鹿!!」


 その頃、メイは薄暗い通路を歩いていた。
 「ほえ〜、すっごいなぁ。こんな遺跡が埋まってたなんて。」
 遺跡の中は、壁や天井が淡く発光しているため、明かりには不自由しなかった。
 さらに、明らかに自分達の文明による照明が設置されている部屋もあった。
 「やっぱり、一度調査されてるみたいだなぁ。何で、こんなすごい発見を隠しておくんだろ?それに・・・。」
 メイは、自分が歩いてきた通路を振り返る。
 通路の先には扉が有り、今は固く閉じている。
 「この遺跡・・・まだ生きている。」
 メイが今まで通ってきた扉は、全て自動で開閉していた。
 始めは、この遺跡を調査していたと思われるラボによって手が加えられたとも考えたが、見たところそのような形跡は見られなく、また、調査途中の遺跡にそのような改造を行うとも思えず、ドアの自動開閉は遺跡に元から備えられた機能だと結論付けた。
 「ま、別にいいか。」
 そう言って、メイが新たな扉の前に立つと、例のごとく扉が開く。
 「うわっ!真っ暗。」
 扉の先の部屋は、漆黒の闇だった。
 通路から僅かに光が差し込んでいたが、部屋の奥は完全に闇に包まれていた。
 「ん〜しょうがないなぁ。」
 メイは携帯ライトを取り出し、部屋の中を照らしながら奥へと歩みを進めた。
 「結構広い部屋だなぁ。照明は無さそうだし、他に扉は・・・・・・・あ、あったあった。」
 メイは部屋の奥に新たな扉を見つけ、駆け寄るが、これまでの扉の様に自動で開くことは無く、固く閉ざされたままである。
 「あれぇ?何で開かないんだろ?ロックされてるのかなぁ?ん〜しょうがない、引き返して他の道を進むか・・・!?」
 言いかけた所で、突然メイは振り返り、部屋の中を照らす。
 だが、ライトに照らされた先には、ただ閑散とした部屋の床があるだけだった。
 「あれ?ん〜おかしいなぁ?何か後にいたような気がしたんだけど・・・。」
 ライトで照らしながら慎重に気配を感じた辺りに近付いてみるが、やはり何かがいたような形跡は見られなかった。
 「やっぱ、気のせいかなぁ・・・!!」
 だが、再び只ならぬ気配を背後から感じ振り返った。
 そこには、闇の中から染み出すかのように何者かが姿を現そうとしていた。
 「え・・・?な、何・・・!?」


 「全く、あいつは何を考えているんだ!こんな時に単独行動をとるか!?」
 レイカー達は、メイを追って遺跡内部の通路を進んでいた。
 暫く通路沿いに進むと、広いホールの様な場所に出た。
 「す、すごい・・・。」
 アリアが部屋の中を見回し、感嘆の声を上げた。
 「確かに・・・これといって照明らしきものは見当たらないが・・・天井が光っているのか?」
 「感心するのは後だ。メイを探すぞ。」
 「あ、ああ・・・そうだったな。」
 Dに促され、レイカーは端末を操作し、レーダーを起動した。
 「近くには・・居ないな。もう少し範囲を広げるか。」
 レーダーの探索範囲をより広域のものに切り替えていくと、画面の端に光点を捉えた。
 「いた!ここから北西方向に直線距離で約300メートル。・・・こっちだな。」
 レイカーはレーダーを確認しながら、部屋の隅の扉の方へ歩いていく。
 「あった。メイの足跡だ。」
 レイカーの指摘したように、長い期間放置された床には埃が堆積しており、そこには真新しい足跡が残されていた。
 「ったく、世話焼かせやがって。文句の一つでも言ってやらんと気がすまん。」
 そう言いながら、レイカーは通信の為にインカムを装着した。
 「通信・・・できるの?」
 「ああ・・・ドームのシステムを介したネットワーク通信は今のところ無理だが、端末同士の直接通信なら通じるはずだ。」
 レイカーが端末を操作すると、インカムから耳障りな音が響いてきた。
 「何だ?ノイズがひどいな・・・。おい!メイ、聞こえているか!?返事をしろ!」
 何度か呼びかけてみるが、メイからの応答は一向に返ってくる気配は無い。
 「やっぱり、通じないの?」
 「ああ、そうみたいだな。あるいは、聞こえていてわざと無視しているか・・・・・・いや、何か聞こえる!」
 レイカーはインカムから響くノイズの中から、僅かにメイの声を聞き取った。
 「メイ!聞こえてるんだろ!返事くらいしろ!」
 これまでのメイの行動に、かなり鬱憤が溜まっていたのか、思わず怒鳴るような声になってしまう。
 『・・・・・・て・・・・・・た・・・す・・・けて・・・』
 「メイ!?」
 自身の苛立った声とは対照的に、インカムから聞こえてくるメイの悲痛な声にレイカーは戸惑った。
 「どうした!?メイ!何かあったのか!?」
 『レイ・・・カー・・・助け・・・て・・・・・・・・・ああ、い、やあああああああああああああ!!!』
 「メイ!?メイ!!どうした!返事をしろ!!」
 何度も呼びかけるが、絶叫を最期にメイからの応答は無かった。
 「レイカー・・・。」
 レイカーの只ならぬ様子に、アリアの不安を隠せないでいる。
 「くっ!」
 「あっレイカー!?」
 レイカーは考えるよりも先に駆け出していた。
 Dもまた、それに続く。
 「ちょっDも、ま、待ってよ!」
 アリアもハンターズである以上、一般人よりは鍛えてはいたが、さすがにSランクに位置するハンターとレンジャーの健脚には遠く及ばず、あっという間もなくどんどん引き離されていく。
 レイカーとDは、レーダーに映されたメイの位置だけを頼りに扉を抜け、通路を駆けていた。
 (さっきのメイの様子・・・尋常じゃない。何があったっていうんだ。それに・・・。)
 レイカーが顔を上げると、通路の先には閉ざされた扉があり、それは、レイカー達が近付くと、さも当然であるかのようにその口を開けた。
 (照明もそうだが、この扉・・・。この遺跡の機能は今も生きているのか?くそっ!妙な胸騒ぎがする。メイ!無事でいろよ!)
 レイカー達が通路を右折すると、その先にまた扉があった。
 「反応が近い!あの扉の向こうだ!」
 これまでと同様に扉が開くと同時に、レイカーとDは部屋の中に飛び込むように駆け込んだ。
 「な、何だ?この部屋には照明がないのか?」
 突然の闇に、未だ慣れない目は部屋の中の様子を捉えることが出来ないでいた。
 レーダーに目をやると、確かにこの部屋の中からメイの反応が出ている。
 「おい!メイ、ここにいるのか?返事をしろ!」
 レイカーが呼びかけるが、メイの返答は無い。
 (どういうことだ?確かに反応はここからだが・・・こう暗くては何もできんか。とりあえず、明かりを・・・!?)
 レイカーがライトを取り出そうとした時、何か異様な臭いが鼻腔を刺激した。
 (何だ?これは・・・。)
 それは、鉄錆の様な臭いと、排泄物の臭いが交じり合ったような臭気であった。
 「!!?」
 ことの異常さに気付いたレイカーは、すぐさまライトを点け、部屋の中を照らした。
 「な・・・こ、これは!!」
 「はあっ、はあっ・・・も、もう、二人とも足速すぎ・・・。」
 レイカーが部屋の中の状況を確認すると同時に、息を切らしながらアリアがやってきた。
 「アリアッ!駄目だ、中に入るな!!」
 レイカーが叫ぶと共に振り返ると、その忠告も空しくアリアは既に部屋の中にいた。
 アリアは、両手で顔を覆う様にし、その顔色は見る間に蒼白となっていく。
 「そ、そんな・・・・・・い、いやああああああああ!!」
 アリアの絶叫が遺跡の中に木霊する。
 レイカーは再び向き直り、ライトが照らし出した部屋の中のある一点を見据えた。
 (一体、ここで何があったってんだ!)
 レイカーの持つライトが照らす先にあったのは、自ら流した血の海に横たわる、メイの変わり果てた姿だった。



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