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知られざる抗争 #6
Mr.X線
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1/3(Fri) 19:19
知られざる抗争
#6 そして
その攻撃は熾烈を極めた。恐らく、パイオニア2でも、これほどの単体戦力を持った人物は、他にはいないであろう。
他の追々を許さぬ、超高位のテクニック、そして迅速かつ強力な剣技。このコンビネーションの前には、もはや死角は存在しないといっても良かった。
事は数分前にさかのぼる。
「俺を関知するとは、なかなかの性能じゃないか」
歪曲した空間から、人間の影が現れる。
それは、声色からして男の様だったが、その姿はキャロルと同じく、銀髪と漆黒の衣装に身を包んだものだった。男は地面に降り立つと、奇妙な文字の刻まれた刀身に淡い色のフォトンをまとった、光の剣を手にこちらへ迫ってくる。
いや、実際にはゆっくりとした歩みであったのだが、キャロル達の目には、それが轟音をもって迫る大砲のように見えたのであろう。
近づいてくるにつれ、男の顔がはっきりと見えるようになったが、これを見て初めに叫びをあげたのはキットだった。
「あ、あんたは!!」
キットは、「彼」の顔を既存しているらしい。彼女の表情は、なぜお前がここにいるのだ、と物語っている。
それを認めた男は、口の端を釣り上げ、さも愉快そうに、
「お前ごときが、ラボの使いとはな。よほど、あそこは人材が足りないとみた」
と、言った。
この言葉に、キットは自らのプライドを傷つけられたのと、かつての苦い思い出が鮮明に蘇り、激昂する。
「シェゾ! あんたがあんな真似をしなければ、今、私がこんな事をしなくても済んだのよ! よくも、ぬけぬけとそんなことが言えるものね!!」
「ふ、あの時にも言っただろう。俺は、ラボのやり方には愛想が尽きた、と。お前はお前自身の意志で、そこに残った。今更、何を言う権利もないな」
キットは、歯ぎしりした。よもや、こんな形で、この男と再会することになろうとは――。
シェゾと言う名のこの男は、かつてキットの同僚であり、良きパートナーでもあった。キットとシェゾは、ラボの諜報機関に所属していた。
諜報員として、数々の任務をこなす内、二人はよくタッグを組むことが多くなった。
キットは非常に有能な女性だったが、シェゾはそれ以上だった。キット自身から見ても、シェゾはほとんどの面で自分を上回っている。
そんなシェゾと仕事を共にすることが、次第に彼女のささやかな楽しみのひとつとなっていった。やがて二人の関係は蜜月となって行くのだが、ひとつ事件が破局を招くことになる。
キットは組織に追従するタイプの性格だったが、シェゾは違った。彼は、自分の行動理念に沿う組織だけに所属し、なおかつ、その行動も己の理念によって決定され、また、それが許されるだけの才覚を持つ人物でもあった。
そんな折に、シェゾはラボを統括する存在である「チーフ」、ナターシャと任務の方針についてぶつかった。彼は非常に合理的な考え方をする人物であり、総督府とラボの相互補完をすべきだと主張したのだが、チーフ・ナターシャは個人的な感情から、これを否定した。
だが、先にも述べた通り、シェゾは己の理念に沿わぬ行動は起こさない人物である。チーフ・ナターシャの意見が割れた直後、彼はこつ然とラボから姿を消してしまった。
当のシェゾにそんなつもりは全く無かったのだが、それまで彼と親密な関係を持っていた、キットにしてみれば、これは完全に見捨てられた形になった。
そして、一言も残さずに自分の前から姿を消したシェゾが、今度は敵として自分の前に立っていた。深い絶望感もあるが、彼女は激昂せずにはいられなかった。
そして、言葉を交わすも間もなく、シェゾはキャロル達に圧倒的な力をもって、襲いかかってきた。何故、自分達を狙うのかは、解らない。だが、それが彼の理念に行動なのであろう。
「フッ、そんなものか?」
「チッ……」
キャロルは舌打ちする。そもそも、自分はフォースとして有能な人間ではなかった。高度なテクニックは行使できないし、さほどの精神力があるわけでもない。
その事もあり、キャロルは自分の体を科学によって強化改造し、ハンターズとして通用させていたのだが、この目の前の男は、力もテクニックも自分以上だった。
キャロルは、ちらと横のイングラムに目をやる。彼女は人の命に、ゴミ粕ほどの価値も見いだしておらず、自分の命にすら、価値のかけらも感じていなかった。
だが、そんな彼女でもイングラムだけは別格だった。彼の存在すべてが、自分の存在意義でもある。それは甚だ異常であり、最早、狂っていると言っても良かったが、そんなことはキャロルにとってはどうでも良い事だ。
だから、万が一にでも、彼が破壊されることなどあってはならない。もし、彼が破壊されれば、その時が自分死ぬ時でもある。
「……ナンテ、強さダ」
そんなキャロルの気持ちを知ってか知らずか、イングラムは絶望とも諦めとも取れる発言をする。ただ、機械ながらその音には、まだ希望が残っている。
キャロルが心配そうに見つめていると、イングラムは牽制のためシェゾの方を凝視したまま、彼女に声を掛けた。
「ハカセ……私が合図シタラ、すぐにリューカーで脱出してクダサイ」
「な、何を言っているの? こいつからは、逃げきれないわ!」
キャロルは、府に落ちない事を言い出すイングラムに、戸惑いを隠せなかった。そして、次のイングラムの言葉が、彼女をさらに狼狽させる事になる。
「私ガ、敵ヲ排除シマス。シカシ、危険ですので退避してクダサイ」
このイングラムの言葉を聞いたシェゾが、突然大笑いをはじめる。
「ふ、フハハハハハ……! どうしたポンコツ、恐怖かなにかで、プログラムが狂ったのか?」
命よりも大事なイングラムをポンコツ呼ばわりされたキャロルが、恐ろしげな表情で飛びかかろうとすると、イングラムが腕でそれ制し、小さな声で、
「リミッターを解除シテ、フォトンジェネレータを暴走サセ、辺り一帯を吹き飛ばしマス。生物ガ耐えられるレベルデハありまセン。逃げてクダサイ」
と言った。だが、これを聞いた彼女は、青くなってイングラムにしがみつく。
どんな機械にでも、リミッターがある。人間が常に、筋肉を暴走させ、自分の体を壊してしまわない様に発生させる力を抑える命令を出しているのと同じく、機械もリミッターによって自分を護っている。
普段は外すことはできないのだが、人間は窮地に陥ると、生き延びるために、無意識の内に脳がリミッターを外し、驚異的な力を出す事が可能になる。いわゆる、火事場の馬鹿力と言う諺は、ここから来ている。
だが、機械のイングラムは、自分の意志でこれを外そうとしている。
「む、無理よ! 私がプログラムした時は、それは出来ない様にしたもの……!」
キャロルは言う。しかし、イングラムはゆっくりと首を振り、その言葉を否定した。その姿は、最早人間のそれとなんら変わりがなかった。
「イイエ。私のコンピュータハ、博士ヲ護る事が第一と、学習シマシタ。私ハこの身ヲ砕いてデモ、博士ヲお護りシマス」
キャロルは、迫る絶望を前に涙声になっていた。
「そ、そんな、お願い止めてイングラム! 貴方がいなくなったら、」
だが、イングラムがそんなキャロルに返答をする前に、しびれを切らしたシェゾが襲い掛かってくる。その速度は、人間のレベルを超越していた。
「なにをごちゃごちゃと……そろそろ、終わりにさせてもらうぞ!」
「人間! オマエなどに、博士ヲやらせはシナイ!!」
その言葉と共に、突如とイングラムがシェゾの視界から消えた。それまで、一度たりともターゲットを見失った事のなかったシェゾは、これに狼狽した。
イングラムは、後ろに回り込んでいた。
「な、ど、どこへ行きやがった!?」
「ココダ!!」
言葉にシェゾが振り返ろうとした時は、既に遅かった。既に機体のオーバーロードによって、あちこちから冷却液の漏れ出しているイングラムが、彼を羽交い締めにしていたのだ。
本来ならば振りほどけるのだが、リミッターの外されたイングラムの力は、シェゾを超越していた。イングラムのボディからは悲鳴が上がっているが、同時に彼のメインエンジンであるフォトンジェネレータの駆動音も、騒々しいものになっている。
イングラムは、自爆によって敵を排除しようとしていた。力によって博士の外敵を、排除できないのだとすれば、これ以外に道は無かった。
キャロルがイングラムに抱く感情と同じ様に、彼にとっても、キャロル博士は命を張ってでも護るべき存在だった。
キャロルが、何事かを叫んでいる。だが、この敵を止めるには、自爆しか道はないのだ――そうイングラムが思った時、羽交い締めにしているシェゾに異変が現れた。
「ぐ、ぐあああああぁぁッ!?」
シェゾの体に、紫色の毒々しい色をしたフォトンがまとわりついていた。様子を見るに、それは彼の体を急速に蝕んでいる様にも見える。
狼狽するイングラムに、キャロルの叫び声が届いた。
「イングラム! もういいわ、もう離れて!! もう、そいつは動けないわ!」
キャロルの言う通り、シェゾは紫色のフォトンに身を焦がされていた。これなら、わざわざ自爆しなくとも、倒すとまでは行かなくとも、逃げる隙は出来るであろう。
イングラムはそう判断すると、再度リミッターを挿入し、ガタガタの体ながら博士の元へと駆け寄った。キャロルもまた、イングラムへと駆け寄る。
「うう、よかった、イングラム、あなた」
感情が高ぶり過ぎてしまい、キャロルの言葉は意味不明だった。だが、イングラムにはその気持ちはよく解るらしい、スミマセン、とだけ言い、後は潰してしまわない程度の力で、彼女を抱きしめた。
「ちょっと! 感動の場面の最中悪いんですけど、はやく逃げてくださいよ!!」
そんな折に、成り行きを見守っていたキットが、キャロルに声を掛ける。シェゾは確かに、行動を封じられているが、無力化したとは限らない。
キャロルもそんな事は解っていたため、キットの言葉には答えず、掠れた声でリューカーを唱えた。
そして混乱の中、キャロルとイングラムは、リューカーホールの中へ消えて行った。
その後もホールは消えずにその場に残っていた。お前もさっさと来い、と言う意味であろう。
だが、キットはホールに入らず、危険も省みず、シェゾの方まで歩み寄っていった。
「……シェゾ、いつまで演技してるのよ」
キャロルとイングラムの消えたホールに、キットの高い声が木霊した。それに反応するかの如く、彼の体にまとわり付いていたフォトンは消え、辺りに静寂が戻った。
「いつから、気づいていた?」
先ほどまでの苦悶の表情が嘘の様に、けろりとした顔で、シェゾはキットに言う。彼は、フォトンの炎に焼かれるフリをして、キャロル達を見逃したのだ。
キットは言う。
「私は、あんたとの付き合いが長かったのよ。最初から解るわ。なんであんな真似をしたの?」
「言ったはずだ。俺は自分の理念で行動するとな」
その言葉を聞いたキットは、目を鋭くする。
「まさか、あんた――」
「フン、相変わらずお前は鈍いんだな。そんな訳が無いだろうが……あの女と、アンドロイドの関係が、面白かっただけだ」
シェゾは言う。
「ところで、どうするんだ。ナターシャの馬鹿に協力することになっちまうのは胸クソ悪ィが、例のフォトンを手に入れたいのなら、手伝ってやっても良いぜ」
「え?」
その言葉を聞いたキットは、我が耳を疑った。シェゾは、自分達が新種フォトンを手に入れるのを阻止するために、襲いかかってきたはずだった。
だが、途中で敵を見逃すと言う特異な行動に出たため、キットはキャロルと共に逃げずにこの場に残った訳だったが、それにつけても今のシェゾの言葉は理解できなかった。
「だから言ったろうが、俺は自分の理念で行動する。任務を受けたときはどんな手を使ってでも、相手を消滅させてやろうと思ったが、お前が相手じゃな」
だが、彼の言葉を理解しきっていないキットは、なおもシェゾに食って掛かる。
「わ、私を裏切っておいて、今更なにを言っているのよ!!」
キットの言う事は、普通の感覚では真っ当だったが、シェゾという破天荒な人物からしてみれば、子供の理屈だった。
彼は、口の端を釣り上げて言う。
「相変わらず馬鹿な奴だ。俺はラボの事は見限ったが、お前を見限った訳じゃないんだ。ラボに代わる組織はいくらでもあるが、お前みたいな上玉はそうそう居ないからな。手放す訳ねえだろ」
「じゃ、なんで今まで連絡のひとつもくれなかったのよ!?」
この質問にも、シェゾは愉しそうに答えた。
「焦らしたら、お前がどんな行動に出るか楽しみでな。それに、俺の力ならいつでだって、お前をモノに出来るんでな」
シェゾは余裕だった。彼にしてみれば、ラボも総督府も取るに足らぬ存在だった。
余談ではあるが、彼は闇の組織ブラック・ペーパー最強の始末屋アンドロイド、キリーク・ザ・ブラックハウンドとも戦った事があったが、その時も彼を赤子の様にあしらって、追い返してしまったのだ。
それほどまでの力を持つシェゾは、勝手気ままに生きる、完全なる自由人であった。
だが、手のひらで踊らされたキットにとっては、たまった物ではない。静かな遺跡に、彼女の怒声が響き渡った。
「あ、あんたって人はあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それでも、シェゾは愉しそうに笑っていたのだった。
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