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知られざる抗争 #5
Mr.X線
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12/30(Mon) 0:13
知られざる抗争
#5
流転
キャロルは、歩きながら考えていた。
隣に歩く、大型のレイキャスト、R・イングラムは紛れもなく自分の可愛い息子であり、恋人だった。澄み渡る大空の様におおからな心と、古木の様に大きな体の、彼女の理想とする男性像を映した、鏡とも言える。
だが、それは彼女が創り出した、虚構の存在であるに過ぎない。所詮は、プログラムと言う名の命令に忠実に沿って動くだけの、精密なただの機械に過ぎないのである。
キャロル・キャロラインは、理知的な女性だった。それが解っているからこそ、未知のフォトンを手に入れ、それを使用して、イングラムに人間と同等の感情や考え方を与えたかった。
しかし、考えてもみれば、人間とてニューロンの反応が、中核を成す脳の中で起こっているに過ぎない。
言ってみれば、多少の語弊はあるものの、超高度に発達した機械ならば、それは人間と同じであるとも言えるのだ。その証拠に、近年に至るアンドロイド族は、人間とほぼ同等の扱いを受けている。機械であるに過ぎないのに、だ。
キャロルは気がついた。
結局、自分はイングラムを溺愛していても、本質的に信用していないのだ。自分の造ったものも信用できず、何が科学者だろうか。
未知のフォトンによってアンドロイドに人間と同等の能力を備えたいなど、己の至らなさを差し置いた、自己満足に過ぎないのだ。
キャロルは自嘲したい気分に駆られた。
「博士、いかが致しマシタカ?」
「え……」
そんな事を考えている内に、自然と暗い顔になっていたらしい。別に元々明るい顔な訳でもないのだが。
しかし、そんな些細な事でも心配してくれるイングラムが、彼女は好きだった。この感情を、プログラムではない生のものにしたいと、今までは思っていた。だが、彼女は考えを改めつついた。
言ってみれば、イングラムがここまで成長したのは、自分が手塩に掛けて愛情を注いだ結果だ。それは、人間が親に愛情を受けて育つのと、なんら変わりがない。
ならば、機械が、プログラムが、となど思わず、大事な存在として生涯接して行けばいい。イングラムもまた、それに応えてくれる。
そう考えると、もはや未知のフォトンなど、どうでも良くなってきた。彼女は、発見を求める人間ではなかった。
「いえ……なんでも無いわ。でもね、なんだか私、新種フォトンなんてどうでも良くなっちゃったわ」
キャロルは言う。紛れもない事実だが、イングラムは要領を得ない様子である。
「ハ……シカシ、それはまたナゼ?」
「あなたはあなただって事よ。イングラム」
「ハァ……では、いかが致しマスカ?」
「研究所に帰りましょう」
キャロルは、未だ要領を得ていないイングラムを連れ、リューカーを唱えようとする。だが、それまでキャロルとイングラムのやりとりを黙って見ていたキットが、急に態度を豹変させた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」
「なによ……」
「もう目と鼻の先に、アレがあるんですよ! 今更なにをいって――」
キットがそこまで言い終わらない内に、キャロルの右手が彼女の首を掴んだ。イングラムを造る時の試験として、自らの体を強化改造した彼女は、女性といえど常人よりも遥かに強い力を持っていた。
その力で首を締め付けられたキットは、思わずかすれた悲鳴を上げた。
「さっきと言い今と言い、あなた何を企んでいるの? 只のガイド役が、私に指図するんじゃないわよ」
「ウグッ……は、はなじでぐだざい……」
あまりの苦しさに、顔の真っ赤になったキットが懇願する。それを認めると、キャロルは鼻をならして、キットを解放した。
ようやく空気を吸えられたキットが、激しくむせ込む。
しばしの時を置いて、キャロルはキットに詰問する。
「で……何であなたは、そんなに例のフォトンにこだわるのかしら」
「そ、それは……」
何か事情があるらしく、言い淀むキットに、キャロルは半機械の右手の間接をキシキシと鳴らし、凄味をきかせた。
基本的に、彼女は敵対する人間、あるいはするかも知れない、と言う相手に対しては容赦がなかった。
ややあってキットが観念したのか、真相を話しはじめる。
「実は、私はラボの人間なんです。知っていますよね、あらゆる情報が集まる場所――ここで新種フォトンの存在が確認されました」
キットは淡々と話す。キャロルは、獲物を狩る様な目つきながら、その話に黙って耳を傾けている。
「でも、ある時問題が起きました。このパイオニア2は、政府と我々ラボで管理運営されている訳ですが、両者が仲が非常に悪いんです。そこで、ラボは新種フォトンを政府には内密に調査しようとしたのですが、どこからか情報が洩れてしまいました。
当然政府も、それを手に入れようと躍起になる訳ですが、ラボ側も強硬にそれを阻止しようとしました。いってみれば、極秘に、一部に紛失したサンプル以外の新種フォトンを、ラボで独占しようとしたんです。
しかし、ラボは戦闘力の有能な人間が居ないし、また、政府と結び付きの強いハンターズにこの依頼をする訳にもいかない。
そんな折に、個人的に付き合いのあったキャロルさんが、工学利用できるフォトンを欲しがっていたのを、思い出しまして――」
そこまで話すと、キットは諦めたかの様にぐったりと肩を下ろす。
それを聞いたキャロルは、これ以上ないと言って良いほどの呆れ顔で、
「まったく……政府が無能なのは知っていたけれど、ラボも同じくらいに愚かだとはね。馬っ鹿みたい」
と、毒づく。
だが、この言葉にキットは何も返せない。彼女自身も、政府とラボの確執に、半ば呆れていたからだ。
「バレてしまった以上は、仕方ありませんね……でも、この事は、ご内密にお願いします」
「フン、考えが浅はかだから、こういう目に逢うのよ」
事件は、ここで幕を閉じるはずだった。だが――
「……! 博士、伏せてクダサイ!!」
イングラムがセンサーに何かを関知したらしい。彼は、虚空に向かってマシンガンを乱射した。否、それは虚空鵜などではなかった。
空間が歪み、中から人影が現れる。
「ほう、俺を関知できるとは――なかなかに高性能じゃないか」
「あ、あんたは……!!」
続く
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