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知られざる抗争 #3
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12/14(Sat) 20:13
知られざる抗争

#3
 狙う者


「さて……君をここに呼んだのは、他でもない」

 そこは司令室らしき、無駄なまでに明るく、広い部屋だった。
 部屋に備え付けられた大きな円卓の奥に座った、軍服に身を包んだ初老の男が、もったいぶる様にして何事かを言っている。その視線の先には、

「前置きはいい、早く本題に入ってもらえないか」

 と、初老の男からは大分離れた位置に、黒いローブを身にまとった色白長身の男が立っていた。外見からして二十歳前後であろう。その、さらさらとした銀髪が、彼の美しさを一層引き立てている。
 だが、そんな外見とは裏腹に、性格や口はだいぶ悪い様だった。
 まくしたてられた初老の男は、そんな彼の言動に眉を釣り上げながらも、冷静を装う。

「君も、例の遺跡が発見された事は知っておろう」
「ああ……耳が腐る程聞いているが、それが何かあるのか?」
「そうだ。あの遺跡から、この様なものが検出された」

 と、初老の男は言いつつ、小箱の様なものを取り出す。ただ、小箱とは言え、それは精密機械の塊に見える。
「なんだ……?」

 色白の男は、小箱を受け取ると、蓋に該当する部分を開ける。瞬間、それまでつまらなそうにしていた彼の表情が一転する。
 それは間違いなく、驚愕と言うの名の表情だった。

「おい、これは――!」
「そうだ」

 彼の表情を認めた初老の男は、満足そうな笑顔をつくる。

「これは、今までにないタイプのフォトンだ。異常といってもいい」

 色白の男が見つめる小箱の中には、淡く紫色に光るフォトンが、サンプルとして収められていた。
 そこからは、従来のフォトンが持つエネルギーとは、比べ物にならぬほどの波動が感じられた。フォトンは、初めて発見されてから、既に二桁以上の年月が流れている。
 しかし、それまでの燃料エネルギーに比べ、空気を汚さない、小量で膨大なエネルギーを生み出す等、実に画期的なものだった。

 フォトンの登場により、それまでの旧式動力システムは殆どが駆逐され、世にはフォトンエネルギー機関が溢れ返る事となった。
 無論その性能は、軍事にも即転用され、世界のミリタリーバランスを大きく崩した。つまり、フォトンとはそれだけ圧倒的なものであったのである。
 だが、今、目の前の未知のフォトンは、それすらも大きく上回る力を秘めている。

 これを軍事転用すればどうなるか――誰しもが、予想のつく事だった。


「で、俺はなにをすればいい?」

 先ほどよりは幾分か口調の柔らかくなった、色白の男が問いかける。その答はすぐに返ってくる。

「なあに、簡単な事だ。要するに、我々のグループはコイツを独占したいと思っている」
「……だから、俺に邪魔者となる連中を消せってか。相変わらず、あんたらのやる事には反吐が出るぜ」

 色白の男は、ありったけの嫌味を込めて言葉を放ったが、初老の男は今度はまったく意に介さない様だった。
「頼んだよ、シェゾ・ウィグィィ君」
「良いだろう……だが、後でどうなっても知らねえぜ」

 色白の男――シェゾは、フンと鼻を鳴らし、部屋を後にした。








 汚水に浸した木綿の様な色に染まった空から、白い雪がひらひらと舞っている。パイオニア2は、そんな幻想的であり、生きるには無用の現象まで再現できる様に作られていた。
 そんな中、ハンターズと一部関係者のみが入る事ゆるされた、ラグオルへの転送ゲート区画に、人が歩く影が三つほど見える。

「イングラム……貴方をより高性能化するためには、ラグオル遺跡で発見された異常フォトンが必要なの」
「ソレハ解りましたガ……ナゼ、その様ナ情報ヲ?」
「「彼女」から仕入れたのよ。私も、それなりのパイプラインは持っている訳よ……」
「デハ、アナタが――」

 イングラムが上げた顔の先には、カジノやバーで見られる、肌を大きく露出させた黒い皮の服に、赤い網タイツを身に着けた、バニーと呼ばれる仕事の服装そっくりの一人の女が居た。尖った耳をしており、それは彼女がニューマンである事を証明している。
 さすがに、うさぎの耳を模したアクセサリまでは着けていなかったものの、この場所でその姿は異常と言っていい。

 だが、イングラムには目の前のこの女が、ただのバニーで無い事は解っていた。なぜなら、人間には見えないものの、彼のセンサーは彼女の身の回りに張られた、強力な防護フィールドを察知していたからだ。
 それは一般人が入手できる様な代物ではなかった。

「初めまして、R・イングラムさん。私はキットと申します」
「ハジメマシテ――」
「彼女は、いわゆる「情報屋」……さっきのフォトンの事は、政府の一部が掴んだ情報なんだけど、どうも連中は無能だわね。一部には筒抜けだったみたいよ」

 キャロルはそう言い、明らかに相手を馬鹿にした表情を浮かべる。少なくとも彼女は、政府など取るに足らぬ相手だと思っている。

「ええ――私も、さすがに始めて聞いた時は、我が耳を疑いましたよ。よっぽど情報の管理がなってないんでしょうね」

 ほどなくして、彼らの足は止まる。転送ゲート前まで到着したのだ。

「さあ、行きましょうか」
「……貴女も来るのかしら」
「当たり前じゃないですか、私がいなきゃ、迷子になっちゃいますよ」

 キャロルはその時初めて、キットに非難の目を向けた。彼女自身は、これ以上の事は自分だけの極秘で行いたいと思っていたからだ。なぜなら、新たな発見があった場合、第三者が側にいては情報の独占が難しくなるからである。
 それだけに、遺跡の中まで付いてこられるとあっては、非常に迷惑だった。

 結局キャロルは、押しに負けて、彼女の随伴を許す事にした。
 ゲートに転送パスコードを入力し、転送フィールドに足を踏み入れる。

「さあて。何が待つのやら、楽しみね。くく……」



続く



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