タークス小説投稿掲示板

　時に、全ハンタ－ズに地上調査の指令が出る３０時間前の話である。
言い換えれば、翌々日の早朝に指令は出るのであった。

その翌日の朝、クレイはフィオナとレオン達を自室に招き、ウィルを紹介する。

「そうか、君が謎の奴等に追われてた少女か。・・・・なるほど。言われて見ればシヴァンそっくりだな。」

「ウィルちゃん、検査の結果が出たよ～。ウィルちゃん、やっぱりフォ－スに向いてるんだって。
　あはははは～。シヴァンと同じだ～。」

シヴァンが、クラインから入った連絡を告げる。おなじ位の年の友達ができて嬉しいのだろうか。
入ってくるなり隣に座って一緒に話をしている。

クレイは、ギルドに連絡しウィルをフォ－スとして登録する。もちろん、ウィルの過去は捏造して登録したのではあるが。

「じゃあ今日はここまでだ。明日の朝は早いから、みんな今日はゆっくり休めよ。それからクレイ。
　明日は、ラルフにもその子の事ちゃんと紹介してやれよ。」

フィオナがそう言い、レオン達は帰っていく。

残ったクレイとウィルは、早々とベットにもぐり込み、休んだ。

　ウィルは夢を見ていた。自分が創られたころの夢だ。
創られた後、気がついた頃には自分の意にそぐわない仕事をさせられていた。
回りにはそんな少女がたくさんいた。みんなここで創られたのだ。

　組織のリ－ダ－を名乗る男が創り出されたばかりのウィルに言う。

「お前は逃げた女の代わりに創り出されたんだ。自分の境遇を呪うならその女を憎め。
　お前の名前は今日から『シアン』だ。頑張って働いてくれよ。」

ウィルに安穏の時はなかった。最もその組織で創られた少女の全員にそのようなものはなかったのだが。
来る日も来る日も、ウィル達は絶望の中で過ごしていた。

そんな生きることに意義を見出せないある日、ウィルは一瞬の隙をついて逃げ出した。

逃げ出す少し前のある日、親切な人が唯の一度だけ訪れたことがあった。
ウィル達の内情を知ると、ものすごく同情してくれた。
その人が話すには『クレイ』と呼ばれる裏社会では有名な人がいるという。
もし逃げたりできたら彼を頼ると良いと言っていた。

ウィルは逃げながら、町中の公衆端末でクレイのことを調べていった。
そして、ついにクレイの住みかを突き止めクレイを見つけたのであった。
しかし、ウィルの体は長い逃亡生活のため衰弱しきっていた。
そして・・・・クレイに会った瞬間、緊張の糸が切れたのか意識がなくなってしまったのだ。
後で分かるのだが、この時期に発症した記憶喪失も体の衰弱による一時的なものだった。

翌日の事だった。クレイの留守中に組織の人間がウィルを発見し、無理やり連れ戻そうとした。
ウィルは部屋の中を逃げ回り、組織の人間は追いかけ回す。
「もうだめだ。捕まる」とウィルが諦めかけたときだった。

ちょうどそこにクレイが帰ってきた。クレイはウィルを追いかけ回す男達を一瞬で倒した。

「ウィル・・・・大丈夫か？もう安心だ。俺が帰ってきたからな。」

「うん。・・・・・・」

パン！

部屋の中に、乾いた銃声が響いた。隠れていた組織の人間にクレイは撃たれてしまったのだ。
床の上に広がっていく、クレイのおびただしいほどの血。それは、彼が既に生きてないことの証明でもあった。

「いや～～～！クレイさん、クレイさ～～～ん！クレイさ～～～～～～ん！！」

ウィルは駆け寄ろうとするが、銃を持った組織の男に手を捕まれ、近寄ることができない。
ウィルは、ありったけの声でクレイに向かって叫ぶ。まるで、眠っているクレイを起こすかのように。

自分の叫び声で、ウィルは飛び起きた。その脇ではクレイも起きていた。

「どうした？恐い夢でも見たか？」

「あ・・・・・夢・・・・だったんだ。」

「大丈夫だ。俺がついてる。俺がついてるから安心して寝てろ。・・・・な。」

クレイはウィルを抱きしめた。

ウィルは、あれは単なる夢だったと思い直し眠りについた。
ウィルが完全に眠りにつくまで、クレイはウィルの髪をなでていた。

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