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時を越えた宿命〜第2話〜その1〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:07
     PSOオリジナル小説「時を越えた宿命」
      《第2話:時を越えた勇者達〜中編》

今や第5医務室のマジックミラ−のこちらに設置されてる部屋、通称「観察者部屋」には研究者で溢れんばかりであった。
医務室内では、シンディ−が特殊言語通訳機につないだマイクの向こうで話をしている。
ベッドの上には、小柄な少女が一人座っていた。少女は検査用のロ−ブをきていた。
もう一人の少女は、ここからは陰になってみえないベッドに寝かされているのだろうか。
フィオナ達の位置からは見えなかった。医務室内での会話が聞こえる。

「私の言ってることが分かりますか?」

「・・・・・・・・。」

シンディ−は、検査の結果得られた、少女の母国語であろう言語で話しているはずであったが少女は何の反応もしなかった。

「私はシンディ−=レディアス。パイオニア2の評議員兼言語学者でもあります。あなたの名前は何ですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

このままでは埒があかないと思ったシンディ−は他の研究員すら追い出し、少女と二人きりになった。
マジックミラ−も結晶の働きを強くし、見えないようにした。机の上に固定されているマイクを、ワイヤレスのものに切り替える。
そして、少女のとなりに座ると優しく語りかけた。もちろん少女の側にもマイクをおいて自分たちの言語に変換させている。

「これで怖い人たちは居ないわ。ここにいるのは私達だけ。もちろん、私も、あなたに危害は加えないわ。
 ここは、あなたにとって安全な場所なのよ。さあ、ゆっくりでいいから、お姉さんとお話ししましょう。」
 
 シンディーは努めて優しく言った。

 「あなたの恐怖や、辛さは分かるわ。目が覚めたら、いきなりこんなとこに居るんですものね。
 でも、あなたのことを知らないと、協力したくてもできないわ。
 あなたがもと居たとこへ無事に戻るためにも、お姉さんに協力してちょうだい。」

「わ・・・・わたし・・・。」

少女の口から、言葉が紡ぎ出される。

「わ・・・・わたし・・・自分が・・・・・・誰なのか・・・・・分からない・・・・・。」

 辛うじて出た少女の言葉は、シンディ−も含め、周りに驚きを与えた。

「どういうこと?」

「頭に・・・・・靄みたいなものがかかって・・・・・・・何も・・・・思い出せないの。」

 「そう・・・・。それなら、無理に思い出さなくてもいいわ。」

『もしかして、記憶喪失?』

シンディ−は、自分が迂闊であったことを思い知った。
検査の結果では、頭部に損傷がないため、記憶などに関しても正常のままであり、会話しても平気だと思ったのであった。
記憶喪失までは、検査上出てこないからでもあるが、少女に苦痛を与えたのは間違いなかった。

シンディ−はこの少女のことを思うと可哀相になり、そっと抱きしめた。
少女もシンディ−にきつく抱きついてくる。よほど不安などを感じていたのであろう。少女は静かに泣き出した。

 「ご免ね。大変だったよね。苦しかったよね。悲しかったよね。それなのに無理に思い出させようとしちゃって。お姉さんを許してね。」

「うううん。それはいいの。お姉さん、やさしいし。でも、わたし、これから、どうしたらいいのかな。」

「それもゆっくり考えていきましょう。それでね、後もう一つだけ、聞きたいことがあるの。
 こっちの女の子のこと、あなた知らないかしら。思い出せる範囲だけでいいから、頑張って思い出してみてね。」

シンディ−に促され、もう一つのベッドに向かう少女。その足取りは重かった。
シンディ−に支えられながら、もう一つのベットに寝ている少女を見る。

「えっと・・・。う・・・・。あたまが・・・・・・。ううう・・・。ああ!!!」

その場にかがみ込んでしまう少女。余程頭が痛いのか、全身から脂汗が出る。
そのただならぬ様子に、シンディ−は、一刻も早く手当をと、部下達に指示を出す。

「あなた・・・・・大丈夫?・・・・いけない。すごい熱。
 レイラ、サリア、急いでこの子をベットへ・・・。
 その他の医療チ−ム員、全員救急医療準備・・・・・早く!!
 そっちの『観察者部屋』に居る方々、お引き取りを。
 それから、フィオナ。そこにるんでしょう?手伝って。」

静かに事の成り行きを見守っていた人たちが慌ただしく動き出す。
フィオナは、突然自分の名が呼び出されて戸惑った。しかし、数旬後、動き出すと早かった。

 室内がまた静かになった。ベットの上で、色々な機械に繋がれ
少女のデータを取る機械などに監視されながら少女は静かに眠っていた。

 「シンディ−、どうしたの?この子?」

「記憶喪失よ。無理に思い出そうとして、封印の力にやられちゃったのね。今、考えられるケ−スは二つ。
 一つは何者かが、この子の記憶を封印したこと。これは、その封印を施した人物でないと、ロックは解除できないわね。」

「もうひとつは?」

「まず、今の科学力ではありえないことだけど、時間と空間の両方を同時に、しかも無理に突破したため
 この次元の力が働いて、必然的に記憶が封鎖されたこと。
 これだと自然に回復するんだけど、何時回復するかは全く分からないわ。」

「ふ−ん。」

 「それに、一つ気になるデ−タがあるのよね。彼女から得られたあらゆるデ−タから
 彼女の住んでた星を割り出せたんだけど、その星って既に300年以上も前に滅びてるのよね。
 ラグオルを見つける前に、いろんなとこに探査機を飛ばしたでしょう?
 そのうちの一機が既に死滅してる星を発見してね。
 私は興味を持って、その探査機を操って、いろいろな情報を収集してみたのよ。
 あ、これ内緒ね。明確な違反だから。」

「それはいいけど、シンディ−の疑問って何?」

「つまり、彼女って、いったいどこからワ−プインしてきたか、なのよ。
 彼女の住んでた星は既に死滅してるんだから、まだ、その星が生きてたときに住んでたことになるの。
 今の私達の科学でも、空間は越えれるけど時間は超えれないじゃない?どうやったのかなあって思ったのよ。」

 「科学者の興味って奴?」

「そうかもしれないわね。」

「で?私を呼んだ理由は?」

「あの子に付いていてあげて欲しいの。私の代わりに。
 私は、何かあっても、評議員という立場があって、すぐに動けないから。
 フィオナに頼みたいの。あなたなら、何があっても軽く動けるわ。
 それに、レベルも70越えてるんでしょ。たしか76だっけ?」

「74だよ。それはそうと・・・・。さっきの声はこの子のか。ふうん。・・・・・・・。」

 フィオナは隣の部屋からの声を漏れ聞いていた。 

 「なに?どうしたの?」

「分かった。守るよ。この子。それに、ほっといても、あっちの部屋の二人が守りそうだから余計に危険かな。
 あの二人からも守らないとね。」

「そう。有り難う。じゃあ、そろそろ気がつくはずだから、お願いね。私からも言うから。」

 「う・・・いきなり・・・?」

「うん。もう覚醒用のスイッチ、入れちゃったから。」



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