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- 暴発天使ソウルブレイカーズGC - シリカ [11/22(Mon) 22:30]
暴発天使ソウルブレイカーズGC 第1話 - シリカ [11/22(Mon) 22:34]
暴発天使ソウルブレイカーズGC 第2話 - シリカ [11/26(Fri) 21:55]
あとがき - シリカ [11/26(Fri) 21:45]
ソウルブレイカーズ プロトタイプ - シリカ [12/13(Mon) 21:49]
ソウル・ブレイカーズ 第1024話「灼熱のファイヤーダンス」 - シリカ [12/13(Mon) 21:50]
ソウル・ブレイカーズ 第1025話「せめて人間らしく」 - シリカ [12/13(Mon) 21:50]
ソウル・ブレイカーズ 第1026話「最強の男」 - シリカ [12/13(Mon) 21:51]
ソウル・ブレイカーズ 第1027話「総督、大地に立つ」 - シリカ [12/13(Mon) 21:52]
ソウル・ブレイカーズ 第1028話「総督ファイト レディーゴー」 - シリカ [12/13(Mon) 21:53]
ソウル・ブレイカーズ 第1029話「世界の中心でアイを叫んだかもしれないケモノ」 - シリカ [12/13(Mon) 21:55]



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暴発天使ソウルブレイカーズGC
シリカ [Mail]
11/22(Mon) 22:30
誰も読んでいないと思うけど、前書き

DC版のころに描いた小説を、GC版用にリメイクしてみた。
当時は時間がなかったのか、誤字脱字が多い(今でも多いが)
とり合えず、長い間小説を書いていなかったので、リハビリをかねて、リメイクしてみたんだけど…悪乗りしすぎた_| ̄|○

読んでくれた人ありがとう、そしてできればダメ出しと感想をよろしくお願いします。

気が向いたら、今まで書いたのをリメイクして続けてみようかなと思う今日この頃。
レスをつける


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暴発天使ソウルブレイカーズGC 第1話
シリカ [Mail]
11/22(Mon) 22:34
第1話「紅の二重奏」

「うん、イケるイケる♪」
 ここは、ハンターギルド本部にある大食堂。
 ハンターズに仕事を依頼するためにやってきた人々や、必要な物資を納入するために来た業者も利用できるため、その規模はかなり大きい。大抵のハンターや依頼人、外部からの来訪者は、この食堂を利用する。見た目は巨大なファミリーレストランの印象を受けるこの食堂は、人間、ニューマンはもとより、アンドロイドも息抜きのため、顔を出すのも珍しくはない。
 日当たりのいい…とは言ってもミラーで太陽光を反射させているので厳密には日当たりとはいえないが、とにかく、その窓際のお気に入りのボックス席で一人の少女が料理に舌鼓をうっている。
 赤い色髪を後ろに束ねて、いわゆるポニーテールと呼ばれる髪型、服も合わせるかのように赤い色の服を身に付けた、年の頃は16歳位にしか見えない。あ、胸の大きさは12歳くらいだが…おっと、それは禁句だ。この少女がハンターギルドのA級ハンターだと言うことは、初めてみた人には信じられないであろう。
 人間、食べている時が一番幸せ…後の人生はオマケみたいなものだ。だれの台詞かは覚えていないが、この少女を見ていると、そう思えてくる。
「相変わらずだな、オマエは」
 その、至福の時をすごしていた少女の前の席に、全身が赤く、まるで、ジョ○ーライ○ン少佐専用のモビ○スーツのような色彩のボディをしたヒューキャストが腰掛ける。
 ギルド本部では交代制を採っており、昼夜の別なく活動しているのだが、今の時間は比較的空いているほうだ。にもかかわらず、このヒューキャストは、少女の相席に座る。
「ナンパならお断り」
 少女は、照り焼きにした牛肉ハンバーグと目玉焼きをパンズに挟んだ期間限定メニュー”てりたまバーガー”をガブリつきながら相手をロクに見ないで即答する。一方のヒューキャストは少女の言葉を聞いていない、というか無視して、モノメイトを大量に積んだトレイをテーブルの上に置く。
 過度に食料規制をされていた頃のパイオニア2では、食料といえばモノメイト、ディメイトなどの、メイト系が主であり、ハロウィンなどで配られていたお菓子すらモノメイトだったらしい。
 メイト系はカロリーの摂取を重視しているため、食べ過ぎると鼻血が出たり、短期間で体重が増加したりと、かなりの高カロリーなのである。この当時のパイオニア2の食生活は、朝食に軽くモノメイト、昼食にモノメイト、おやつにペロリーメイト、晩御飯はちょっと贅沢にディメイト、月に1度の贅沢はトリメイト…と、考えただけで嫌過ぎる食生活をしていたらしい。
 メイト系でもHPの回復はする、テクニックの「レスタ」でもHPの回復はする、ならば、レスタでもお腹は膨れる?…と考えたとあるフォースの食生活は、朝食にレスタ、昼食にレスタ、おやつにディフルイド、晩御飯にレスタ、疲れたときはリバーサ、正に”生き返る”ような感じがしたとか、そして、気分がいいときは「よーし、今日はこのフロアにいる全員におごっちゃうぞ」と言いながらレスタアンプを装備して、レストランの中心でレスタを叫ぶ、などしていたとか…ちなみに、レスタでは、お腹は膨れなかったそうだ。
 ちなみに、現在では食料規制は解除されており、ここに居る少女のように、ハンバーガーをバカ食いしたり、ラグオルの洞窟まで買いに行かなければ手に入らなかった、ミッシングオブジェとされていた伝説のお菓子”ケーキ”も普通に手に入るようになっている。
 話しを戻そう、少女は、目の前に積み上げられたモノメイトの尋常じゃない量に少し吃驚したが、何事も無かったように食べているバーガーを3口で平らげ、顔を上げた。
「で、何か用?魔王」
「オレをその名前で呼ぶな、今のオレはカズサだ」
 カズサと呼ばれた赤いボディのヒューキャストは、モノメイトの袋を開けて、一口食べだした。
 正確にはアンドロイドが「食べる」と言う表現は正しくない。アンドロイドの主なエネルギー源は、背中に装着されているバッテリーパックだが、最新型のアンドロイは生体部品もふんだんに使用されており、生体部品は主に伝達系や人工筋肉の補助として使われる事が多い。それゆえに、生身の者が使用している同じ生体賦活剤、いわゆるメイト類やアトマイザー系も効果があるのだ。
 生体部品はメカ的なそれとは異なり、一定の条件さえ整えておけば自己修復機能を簡単に持たせられる事も出来るので大きなメリットとして採用されている。そのため、アンドロイドでも、モノメイトなどをHP回復アイテムとして利用できるのである。ちなみに、現在のモノメイトはカロリーを抑えた健康バランス栄養食品となっている。商品の正式名称は「モノメイトC16」カロリー16分の1と言う意味らしい。
「だったら、あたしの名前はオマエじゃなくシリカよ…、まあいいわ、で、何の用?」
 シリカと名乗った少女は3個目のてりたまバーガーを手にする。ちなみに、シリカのトレイの上には、あと10個のてりたまバーガーと13個のダブルチーズバーガーが山積みになっている。
「ちょっと、頼まれた仕事があるのだが、用件の前に、新しい装備を作ってみたので見て欲しい」
「…また、妖しいのをつくったんだ…」
 シリカのつぶやきを無視して、カスサは何かのユニットらしきものをテーブルの上に置いた。置かれたアイテムボックスは、☆が9個以上の場合に収納される赤い色の箱である。
 ちなみに、カズサの趣味は日曜大工でオリジナルのアイテムを発明したり製作することである。
「…レアアイテム?」
 シリカは、4個目のてりたまバーガーをテーブルの上に置き、代わりにカズサが置いたアイテムを手にとり、自分の肩の上に居るマグの『シャト』に見せる。
「タマ、これの鑑定お願い」
 ハンターに支給されているマグは、とある研究機関が開発したもので、主にハンターたちのサポート用の防具とされているが、その構造はブラックボックスが多い。
 マグは、ステータスの補強したり、搭載されているサーチ機能で、エリアマップの表示やレーダー機能でエネミーを解析や表示をしたりする他、ハンターギルドから支給されているアイテムデータベースを利用することで、鑑定屋に依頼しなくとも、ある程度のアイテムは鑑定できるのである。
 マグは最初に登録した持ち主を主人と認め、例え主人が帰らぬ人になろうともその忠誠心は固く大抵のマグは主人と生涯をともにする。マグはただのサポートメカでは無く、感情があるとされている、事実、腹を空かせて主人に餌をねだったり、他のマグと会話をしたりもする。ただし音声機能は搭載されていないので、マグ同士、もしくはマグに近い存在しか会話内容はわからない。
 ちなみに、タマと言うのは、シリカが『シャト』につけた愛称である。更に余談だが、シリカの相棒もシャト型のマグを所有していて、愛称は「ミナコ」と言う。

『おまたせ、姐さん、鑑定結果が出たでぇ』
 しばらくして、シリカの肩の上にいる赤い色の『シャト』のタマが喋る。先ほどの解説で通常のマグには喋る機能は付いていないと言ったが、タマはカズサが趣味で音声機能をつけた怪しい発明の1つである。ちなみに、違法改造であることは言うまでもない。
「なになに?」
 シリカは先ほどテーブルに置いたバーガーを手に持ち、口に入れようとする。
『こいつの名前は「ゴッド/ヌーブラ」っちゅうて、女性がつけると胸が大きくなったように見えるスグレモンやで』
「そう、しかもこいつは、++効果で更に性能アップ!例えばBカップならDカップに、Eカップなら、なんとHカップになる優れものだ」
 タマの後に、カズサが付け加えるように説明をしながら、3個目のモノメイトの袋を開けて食べる。
 プチンッと張り詰めた糸が切れたような音が、シリカのほうから聞こえた…ような気がする、ちなみに、シリカの手にもっていたはずの、バーガーは無残にも握りつぶされている。
 そんな、シリカの様子に気づかず、タマは更に鑑定結果を告げる。
『うほっ、姐さん姐さん、こいつぁ驚きだぁ、材質には、従来のゴムではなく、新素材のトリポリック材を使用してあって、通気性はもちろん、防具としての強度も期待できまっせー』
「うむ、この超高性能ユニットなら、お前のその貧弱な胸も…」
 と、言いながら、カズサはチラッとシリカの胸を見る、タマもシリカの肩の上からシリカの胸を見下ろす。
『…なあ、カズサ兄さん…ワイの計算では、このユニットを使用しても姐さんの胸には…』
「…そうだな、どうやら俺の予想をはるかに下回っていたようだ…すまん、この超高性能ユニットをもってしても、お前の胸では、あまり変化は望めないかもびゅしゅ…」
 カズサの言葉は、シリカが投げつけたタマの顔面直撃に遮られる。
「大きなお世話よ、このヘタレマグにエロキャストがぁ!!」
 さらに、間いれず、右回し蹴りをカズサの顔面に炸裂させる。カズサの顔面にめり込んでいたタマはその衝撃で、遠くの方にふっ飛ばされる。
「そんなに高性能だと言い張るのなら、自分でつけてみなさいよ!」
 シリカはテーブルの上に置いてある、カズサ自慢の超高性能ユニット『ゴッド/ヌーブラ++』を、カズサ本人に取り付けようとする。
「ま、まて、このユニットは女性用だ、ほら、Xがついているだろう…あ、こら、やめろ、そんなところにつけるな…」
 この2人の騒動に、周囲の人は何事かと見るが、シリカ達の姿をみて、皆何かを悟ったような表情で所定の位置に戻る。

ゴリゴリゴリメキゴシャボコガンガンバキドカボコギシギシグシャゴキャンメキャルボキャル

 大勢いるはずの空間には、いっさいの話し声が無くなり、静かになった食堂内には、FRP製の何かに、異質な何かを無理やり取り付けようとしている妙な音がするだけだった。
 妙な音の他には、たまに、「痛たた、やめ…」「ごふぁ」「がはっ」と嫌なノイズが流れる以外、しばらく静かな時間が続いた。
 こんな嫌な時間が延々と続くのも何なので、その間、FRPの解説でもしていよう。
 FRPとは、Fiber Reinforced Plasticsの略で、Fiber=繊維、Reinforced=強化された、Plastics=プラスチックのことである。
 繊維と樹脂を用いてプラスチックを補強することによって、強度を著しく向上し、宇宙・航空産業をはじめバイク、自動車、鉄道、建設産業、医療分野等さまざまな分野で用いられているのは有名である。
 FRPの特性は、耐候性、耐熱性、耐薬品性、断熱性はもちろん、電気絶縁性もあるので電波透過性に優れており、さまざまな形状の製作に対応でき、着色が自由であり、軽量かつ強度的に大変優れているので、ハンターが使う装備の他に、キャスト系の外装しても使用されているのである。
 余談だが、武器や防具の展示用の見本やコレクターアイテム用のレプリカ、他にはコスプレ用の小道具などにもFRPは幅広く使われている。

「分かった…お詫びに、この新ユニット『ゴッド/醤油++』をお前にやろう…これは何時でもどこでも和風な味が…」
「…その恥ずかしい格好のまま、生命活動を停止させてもらいたい?」
 どうやら、超高性能ユニットの取り付け作業が終わったようである。カズサは、なにやらまた怪しいユニットを披露しようとしたらしいが、テーブルに備え付けのウェットティッシュで、手についた握りつぶしたバーガーをふき取りながら物静かに語るシリカの気迫に負けて、取り出したアイテムボックスを懐に戻す。
「…と、まあ、冗談はこれくらいにして、本題に入ろう」
 頭の上に、ネコ耳を思わせるような妙な2つの突起物つけたヒューキャストは5個目のモノメイトの袋を開けて食べる。よく見ればその突起物は、先ほどのカズサ自慢の超高性能ユニット『ゴッド/ヌーブラ++』だと分かるが、今はそんなことはどうでもいい。
 ちなみに、山積みのモノメイトの脇には、カズサとおそろいの突起物…というか、自前のネコ耳をつけた、ボロボロになったタマが転がっている。こちらは、もうすでに生命活動を停止しているらしい(つまり壊れていると言うこと)。
 カズサの頭に、マグを叩きつけて蹴り入れて、怪しいユニットを無理やり取り付けて気が済んだのか、シリカも5個目のてりたまバーガーを手にして、カズサの言葉を待つ。
 だが、カズサはその後何も言わず黙々とトレイの上のモノメイトを平らげてゆく。シリカも黙々とトレイの上のバーガーを平らげてゆく。

 フロア内は、先ほどの静けさが、無かったかのように、人の話し声や食器の音などの喧騒が戻っている。
 2人の間に、妙な沈黙がしばし流れ、お互いのトレイの上の食品が残り少なくなった時、カズサが口を開く。
「実はだな…とある、お偉い様の依頼で、新しいVRシステムを開発したので、適合試験をするために、被験者としてA級ハンターを集めているらしいのだ」
「ふーん」
「興味なさそうな返答だな」
「だって、めんどくさそうなんだもん」
「お前ならそう言うと思った、だがな、向こうは名指しで、お前らを指名してきたと言ったらどうする?」
「お前ら…って、複数形だねぇ、後は誰?」
「お前の相棒しかいないだろう」
「…うーん、A級ハンターなら他にもいるでしょ?なんで、あたしらなの?」
 シリカは、いぶかしげな表情をしながら、てりたまバーガーを取ろうとしたが、どうやら食べ尽くしてしまったらしいので、ダブルチーズバーガーの方に手をかける。
「この件に、D型寄生細胞と侵食遺伝子が関係していると言っておこう」
 カズサの言葉に、2個目のダブルチーズバーガーを取ろうとしたシリカの手が止まる。
「それは、トリプルA級の機密事項じゃない…つーか、その件はもう終わったんじゃなかった?」
 『D型寄生細胞』『侵食遺伝子』とは、数年前に起きた事件”Dの悲劇”と関係あるのだが、その存在は、総督府と一部のハンター以外にしか知られていない。
 そんな機密事項を、ハンターギルド本部にある大食堂みたいな、雑多な場所で話すのは不自然と思われがちだが、逆にこう言う雑多な場所ほど、他人の会話など気にしないし、盗聴されにくいのである。
「うむ、実はだな、あの事件は、あれで終わりではなかったらしいのだ」
「どーゆーこと?」
 シリカは、3個目のダブルチーズバーガーを手にとる。
「詳細は、この用紙を見てくれ」
 と、カズサは1枚のレポート用紙を差し出す。今の時代、手紙など従来、紙を媒体としていたものは、ほぼすべて電子ファイル化されて、パイオニア2内に設置されているネット環境内でやり取りされている。電子ファイルは手軽に扱えるし、紙の媒体と違いゴミが発生しないため、ほとんどの人が利用している。しかし、ネット環境であるために、どんなにセキュリティを固くしても、情報が外に漏れてしまうこともある欠点もある。
 よって、最重要機密などは、現在も紙が使用されている。紙は完全オフラインであり、ネットからの情報漏れや盗聴などの心配が少なく、いざと言うときは焼却処分することで、機密を守ることができる利点があるからである。
 シリカは、先ほど手にとったダブルチーズバーガーをパクつきながら、渡されたレポート用紙に目を通す。
「んー、この内容だけだと不鮮明な部分が多いけど、ようするに、あの事件の関係者である、あたしたちに来て欲しい…と言うか来い!と言うことね」
「そう言うことだ、俺たちの他にも、やつらも呼ばれているはずだ」
 カズサはシリカから渡された、レポート用紙を受け取ると、丸めた後灰皿の上において火をつける書類を隠滅する。
「…やつら…ねぇ…会ったら同窓会でもしますか?」
「それもいいかもな、だが、仕事が終わってからだぞ」
「わかってまーす」
 シリカは、5個目のダブルチーズバーガーを手にとりパクつく。カズサも14個目のモノメイトを口に入れる。
「で、とあるお偉い様というのは、総督府のヅラ親父?」
「いや、あのヅラ親父ではなく、ラボからの依頼だ」
「…ラボ?」
 パイオニア2研究団、通称P2ラボとは、パイオニア2を本拠地に、ラグオルでの調査分析、及び生体・遺伝子工学・機械工学・フォトンエネルギーなどの実験研究を行い、総督府・本星への報告を目的として設置された機関のことである。
 モンタギュー博士が在籍時は軍部側の影響も強かったが、現在は政府に身を置くナターシャ=ミラローズの指揮の下に組織改編が成され、パイオニア2内においても本星政府を背景に持つ、独立勢力としての色が濃くなっている。
 名義上総督府に属するが、一部では内密で政府主導・軍部主導による調査研究・実験が行なわれている…という影の部分も…あるとかないとか。

「あんまり、いいうわさ聞かないんだけどなぁ…あそこ」
「まあ、そう言うな、そうそう、報酬の方は…成功報酬だがかなりの額だぞ」
「報酬を高くすれば、あたしが喜ぶと思ったのかしらねぇ…まあ、あまり乗り気ではないけど、アレ絡みなら、行くしかないようね、さて、ジュンに連絡をっと」
「相棒はどこにいるんだ?」
「うーん、確か今日は、アキハバラにラーメンを食べに行っているはず」
「相変わらずの食通だな」
 シリカがテーブルの上に横たわっているボロボロになったタマをつかんで、ビジフォンを取りだしてコールする。程なくして、テレビ画面には相棒のフォニュエールの顔が映し出される。
「ういうい、ジュンだよん♪」
「あ、ジュン?今、何処?何してんの?」
 シリカの言葉に、画面向こうのフォニュエールは辺りをキョロキョロ見回して、ニコっと笑って答える。
「ん〜、え〜と、ツキヂ…かなぁ」
「はあ?あんたアキハバラにラーメン食べに行ったんじゃないの?何で、ツキヂなんかににいるのよ!!」
「え〜と…ああ!居たぁ、まて〜ラフォイエ!!」

ヅドッカァ〜〜〜〜〜〜ン…プツン

 爆音がしたと思ったら、画面の向こう側から一方的に切られる。

「…なんか、お取り込み中みたい」
 シリカは、ため息をつきながら、最後のダブルチーズバーガーを手にとる。脱力しているように見えるが、食欲は無くならないみたいだ。
「…さすが”ソウル・ブレイカーズ”と異名をとるだけはあるな…ツキヂ市場で破壊活動か?」
 カズサの言葉がきちんと言い終わったのを確認した後、シリカは、にっこり微笑んだ後、手に持っていた物を、力いっぱいカズサの顔面に叩き付けた。ちなみに、叩き付けた物は赤くて猫の形をした物体なのは言うまでもない。
「”ソウル・ブレイカーズ”じゃなく、”ソウル・エンジェルズ”」
 シリカは叫びながら、手に持ったダブルチーズバーガーを一口で片付ける。
「…まあ、そんな事より、これ以上汚名を被ると、さすがにフォローできなくなるので、ちょっと行ってくるわ」
「大変だな、俺はここで待っているから、さっさと行って来い」
「なに言ってるのよ、あんたも来るのよ!」
「マジですか?」
「マジです…と、その前に…おばちゃ〜ん!てりたまバーガーあと20個追加〜」

『まだ食べるんかい!!!』

 シリカの注文に、シリカを除いた食堂にいる全員が一斉に声をあげた。

 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請負、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。
仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、2人は悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、宇宙戦艦が墜落し、惑星をも吹き飛ばすなどの大変な災害が巻き起こる。
2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。
レスをつける


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暴発天使ソウルブレイカーズGC 第2話
シリカ [Mail]
11/26(Fri) 21:55
第2話「紅を超える紫」

「けっこー空いてるんだねぇ」
 シリカは電車の長いすに座りながら、先ほど購入した、てりたまバーガーをパク付いている、大き目の紙袋のなかには、あと14個分のてりたまバーガーが入っている。
「トランスポーターがまだ不完全だった頃は、エレカや電車などの移動手段は欠かせないものになっていたが、今では各所にトランスポーターが設置されているからな、電車の利用者は少なくなっているのだろう」
 隣に座るカズサも、先ほど購入した、モノメイトをパク付いている、大き目の紙袋のなかには、あと16個分のモノメイトが入っている。
 車内には、2人の他に、家族連れ、会社帰りのサラリーマン、学校帰りの女子高生、ヘッドフォンで音楽を聞いている若者、携帯ゲームに夢中になっている子供などもいる。
「なるほどねぇ、そんな時代遅れの交通手段に乗って移動している、あたしたちは時の旅人ってところかな」
「時の旅人はともかく、ぶらり途中下車をしたいわけではなかろう?ツキヂ市場なら、アキハバラ経由のトランスポーターで行くことが出来たはずだが、俺たちは何故に電車で移動しているんだ?」
 2人が電車に乗ってかなりの時間がたったはずなのだが、カズサは、今まで突っ込まなかった質問を、5個目のモノメイトを飲み込んだあと口にする。
「トランスポーターを利用するのってさ、一般人なら市民ID、ハンターならハンターライセンス、軍人や政府関係なら証明書などが必要じゃない」
「ああ、密航者とかモグリの業者に悪用されない手段だな、それと、電車での移動に何か関係あるのか?」
「ハンターズのハンターライセンスって…なーんだ?」
 問われたカズサの方は、6個目のモノメイトを取り出し、一口で平らげて一息ついた後で答える。
「マグだろう?」
「そう、マグは、ハンターズに所属しているものなら誰でも持っている…と言うか、所持を義務付けられるもので、単にサポートメカの存在ではなく、いろいろな機能を内蔵してあるのよねぇ」
「何が言いたいんだ?」
「さて問題です、これはなーんだ」
 と、シリカは自分の肩に置いてある、赤く猫の形をしたオブジェを見せる、これは別にネコ型の玩具でもファッションではなく、マグの最終進化形態の『シャト』である。
 マグは通常、重力など無視して、主人のそばをぷかぷか浮いているものなのだが、このマグはシリカの肩の上に置いてあるだけである、ちなみに、可動状態なら目にあたるセンサーは通常は光を放っているはずなのだが、このマグのセンサーには光がない。
「マグだろう?」
 カズサは先ほどと同じ言葉を言う、多少ニュアンスは違うが。
「この子は、現在稼動していません、さて、何故でしょう?」
 更に、問われたカズサは、7個目のモノメイトを取り出し、袋から出したが食べずに、ため息をする仕草をしてから、答える。
「それは、お前が俺の顔に叩きつけた後、蹴りを食らわせて、更に俺の顔面に叩きつけてトドメをさしたからだろう」
「ピンポンピンポン、大当たりです、賞品は、このてりたまバーガー…の包み紙です」
 そう言って、シリカは手にもっていた、てりたまバーガーの包装紙を、カズサのモノメイトの入っている紙袋の中に押し込む。
「こら、ゴミをいれるな!入れるならこっちにしろ」
 カズサは押し込まれたゴミを取り出して、持参している「マイゴミ袋」に放り込む。
「つまり、マグが壊れていいて、ハンターズとして承認されないから、トランスポーターを使用できず、こうやってのどかに電車の旅をしていると、いいたいわけか?」
「はい、よく出来ました、ぴったり賞のあなたには、このマグを修理する権利が与えられます」
 そう言いながらシリカは、シャトの尻尾に似せてあるパーツを摘んでカズサに渡す。
「いらん、そんな権利」
「いいですかぁ、マグにも感情はあるんですぅ、マグを大切にしないとダメですよぉ」
 シリカは、右手の人差し指だけ立てて、チッチッと左右に降り、両目を閉じて少し顎を引いた状態で、普段の口調と違う、妙に間延びした口調で言う。
「それは、誰のモノマネだ!と言うか大切にしてないのは、お前だろう!」
「だってぇ、音声機能をつける前は、素直で可愛かったのに、あんたが改造してからと言うもの、口調は無茶苦茶になったし、エロイし…そうそう、聞いてよ、この前インターネットに頻繁にアクセスしてるから何事かと思ってアクセス履歴調べたら、アダルトサイト覗いてるのよ、しかもしっかりSpybot(コンピューターウィルスの一種)を貰ってきちゃって駆除が大変だったんだから…ファイヤーウォールぐらい設置しておけっつーの…あとね、お気に入りのフォルダを見てみたらエッチな画像ばかり集めてあったり、その中には、あたしの盗撮画像まであったのよ、もう信じられない!」
 普段の口調に戻ったシリカは一気に喋ながら、手に持っている赤い物体を、ゴンゴンと小突く。
「ふむ、その盗撮画像はちょっと欲しいな、お前の胸なんか興味は無いが、今後の恐喝ネタになりそうなので、ダウンロードするからちょっとそれを貸してみろ」
「死んでしまえ!残念だけど、そんなもの、もうとっくにデリートしたわよ!」
「それは残念だな、いろんな意味で」
 カズサは、ため息をつく仕草をする、本来アンドロイドは感情の表現はしないのだが、カズサはヒューキャストでありながら、わざと人間くさい表情をしたりする少し変わったアンドロイドなのである。
「まったく、普通に音声機能をつけるだけでいいのに、何でこんな余計なことばかりするのよ」
 シリカは、ふてくされながら、8個目のてりたまバーガーを取り出して、パク付くが、次に発せられたカズサの言葉で、食べていたバーガーの手が止まる。
「いいですかぁ、マグにも感情はあるんですぅ」
「…あんたが言うと気持ち悪いわよ…」
「ほっとけ、まあ、とにかく、マグと言うのは、登録前の状態では感情と言うか性格はどれも同じなんだ」
 カズサは、8個目のモノメイトを取り出し、一口で平らげてる。シリカのほうは黙って、モクモクとてりやきバーガーを食べている。
「はじめてマグを装備することで、装備した者を主人と認めて、主人の好みの色…この場合はマグを装備した時点の主人の服装の色と同じになる」
 カズサは、9個目のモノメイトを取り出し、一口で平らげてる。
「だから、あたしのマグも、あんたのマグも赤いわけね」
「うむ、だが、この時点でも、あらかじめプログラムされている基本の性格のままだ、マグは餌を与えることで成長していき、その成長過程で見てきたものを学習して、自分の性格を確立して行くのだ」
 そう言ってカズサは、10個目と11個目のモノメイトを取り出し、2個いっぺんに一口で平らげてる。反対に、シリカのほうのバーガーを食べる手は止まっている。
「…それって、つまり」
「そう、音声機能をつけていないマグは、俺たちでは言葉がわからない、つまり、性格とかの判断は通常は分からないと言うことだ、だから、そいつ性格は、音声機能をつける前から育てた主人…つまりお前の性格そのものだったかも知れないと言うことだ」
「え〜!あたしこいつみたい、インターネットでエッチな画像を集めたりしないし、変な口調じゃないわよぅ」
「多分その部分は、改造する時にしばらく俺の家に置いて置いてあったせいだろう、そのときTVから流れていた漫才とか、インターネットでエロ画像を集めた俺の行動パターンを学習したのだろうな」
「なるほど…ってやっぱりあんたのせいなんじゃない!!もうやだ、マグを買いかえるぅ!」
 シリカは半べそを書きながら、手に持っていた物を、力いっぱいカズサの顔面に叩き付けた。ちなみに、叩き付けた物は食べかけのバーガーと赤くて猫の形をした物体なのは言うまでもない。
 過去にシリカを慕っていたピンクのボディのレイキャシールが、今のこの赤い物体を見たら、「Nug2000バズーガー」を乱射してくるかも知れないほど、無残にボロボロになっていた。
「分かった分かった、直してやるから、後で俺の家にもってこい」
 顔面に、てりやきばーがのソースやマヨネーズを滴らせながらも、カズサは11個目のモノメイトの袋を開けて食べる。このモノメイトはてりやき味にブレンドされているが、アンドロイドには味までは識別できないので問題は無い…と思う。
「その時は、バージョンアップとして、マグの強度を、あんたの頭と同じくらいにして、それから、この変なの性格を普通にしてよね」
「強度は上げることは可能だが、性格の改ざんは、俺では無理だ、マグを開発した研究機関にでも持っていけ」
「やっぱり買いかえるぅ…と言うか、あんたを訴える!そして勝つわよ」
 ちなみに、昔はマグの売却や買い替えも可能だったが、現在は禁止とされている。理由は一度固定してしまった性格を変えるのは、そのマグのメモリを初期化する=殺すと言うことになるので、マグ保護団体から苦情が来たからだとか。

「それにしても、空いてるわねぇ」
「そうだな、こんな状態だと、この電車も近いうちに廃線になるだろうな」
 いつの間にか車内は、シリカとカズサだけになっていた。トランスポーターの普及により電車の利用客は確かに減ったが、トランスポーターの設置されていない地区に行くときは電車やエレカを利用する機会は多い。さらに今の時刻なら帰宅時間も重なって、混む時間帯である。現に、シリカ達の乗っている車両以外の車両はかなり混雑している。
 要するに、シリカ達の居る車両だけだけが人気(ひとけ)がないのだ、理由は、床に散乱したてりやきバーガーと赤いネコの形をしたオブジェが落ちていて、更に大量の食料の入った紙袋を抱えたニューマンと頭に猫耳っぽい突起物をつけたヒューキャストの2人が、大声をあげながら喧嘩していれば、誰だって近寄りたくはないものである。
「次は、ツキジ〜ツキヂ〜」
 2人以外誰も居なくなった空間に、車掌の鼻にかかったアナウンスが響き渡る。

 2人が下車した場所は、パイオニア2第3階層の商業区にあるツキヂ駅である。ツキヂ駅のターミナルからツキヂ卸売市場が見える。
 市場は定休日以外はつねに人で賑わっており、商人たちの元気な掛け声が飛び交っている…はずなのだが、建物から聞こえる音は、普段と明らかに違いを感じる、違和感の元は、流れてくる音が人々や商人たちの喧騒…ではなく、断続的に響く爆発音だからである。
「カズサ先生、あたしのマグは、故障中なので、ちょっと詳しいデータを入手できないんですけど、あたしたちは卸売市場ではなく、花火工場に来てしまったのでしょうか?」
「ふむ、では、わたくしのマグ”インテグラ”に聞いてみるでゴワス」
 2人の口調がおかしいのは、別に、脳がおかしくなったわけでも、電子頭脳にバグが発生したわけでもなく、とある存在の行動を認めたくなく、現実逃避をしたいが出来ないでいる状態で居るために、まともな思考が出来ないためである…要するに混乱していると言うこと。ちなみに、インテグラと言うのは、カズサのマグ『ヴァラーハ』につけた愛称である。
『お答えしますマスター、残念ながら、現在、小爆発が起きている建物は、正真正銘”ツキヂ卸売市場”です、爆発の原因はフォニュエールによる…』
「ストーップ、99%分かってたことだけど、認めたくなかっただけよ」
 シリカは、インテグラの解析結果報告を遮る。
「…って、なんで、あたしのマグは、あんたに似ているのに、あんたのマグはあんたに似てないのよ」
「フフン、似ていないのではなく、こいつは俺の性格を忠実にトレースして学習をしているから礼儀正しいのだ」
 カズサが、腰に両手を添えて胸を張って自慢していると、インテグラが言葉を発した。
『違います、マグには感情があるのはご存知ですね、しかし、全てのマグが主人の性格をそのままトレースするわけでもなく、マグの中には主人を反面教師として、性格を形成したりもするのもあるのです』
「つまり、インテグラは、主人であるカズサの性格”だけ”にはなりたくないから、カズサと逆の事をしていると?」
 シリカが疑問を投げつけると、インテグラはしばらくの沈黙の後、ボソッとつぶやく。
『そう言うことになしますかね…』
「インテグラ…あんたナイス判断!」
 シリカは、大笑いしながら、インテグラに向かって親指を突き出す。いっぽうカズサのほうはと言うと、先ほどのポーズのまま動かない。アンドロイドの顔には表情をあらわす機能が無いので分かりにくいが、全身が小刻みに震えているところを見ると、インテグラの言葉にかなりショックを受けたらしい。
『それよりも、私の計算では、このまま爆発が続いた場合、3分後には建物が全壊して取り返しがつかなくなると出ましたが…』
「うわっと、こんなところで現実逃避している場合ではないわ、行くわよ、スケベ大魔王」
 そう言って、シリカはツキヂ卸売市場に向かって走り出した。ちなみに、カズサはいまだにショックから立ち直っていなかった。

「まてまてーーーーだよん…っても待たないか…ゾンデ!」

バシュバシュヅドォォォォォン!

 少女は、目の前の走っている男に向かってテクニックを放つが、発生した落雷は見当違いの方向にある山積みになっているコンテナを吹き飛ばした。その爆風は背中まで伸ばした少女の紫色の髪をはためかせる。
 ここは、ツキジ卸売市場の内部。卸売市場とは、野菜や魚など生鮮食料品を集め、市街区の小売店やスーパーなどに卸売りする場所で、卸売市場はその所在地や施設の規模などによりいくつか区分されている。また、一般の人でも利用できるようにしてあるため。今の時間帯は、夕食の食材を購入する客で賑わっている…はずなのだが、人ごみの中を駆け抜ける男とそれを追いかけるニューマンの少女のせいで、爆音と悲鳴で賑わう阿鼻叫喚の世界へと変貌している。
 追われているのは、黒いスーツで身を固めサングラスをしている、いわゆる怪しい人、もしくはどこかの組織の下っ端と言う感じである、その男を威嚇しているのか、ただ単に破壊活動をしているだけなのか不明だが、追っているのは、年の頃は14歳位にしか見えない少女である。紫色の髪でロングヘア、大きなポンポンを2つ付けた、フォニュエールの間で流行り帽子をかぶっている。ちなみに、この少女もハンターギルドのA級ハンターだと言うことは、初めてみた人には信じられないであろう。
「クッ、しつこいガキだ…これでも喰らえ!」
 逃げる男は、その場に積み上げてあったミカンの入ったダンボール箱を倒す。豪快にぶちまけられるミカンが少女を襲う。
「あまいよん!」
 少女はひるむ様子も無くミカンの散弾を避ける。その際にミカンを2個ほど失敬する。背後では、青果部の親父が何か叫んでいるがストーリーに関係ないので先に進もう。
 男は、逃げる先々で詰んであるコンテナを片っ端からなぎ倒し、追撃者の手から逃れようとするが、少女の行く手を遮ることは出来ない。ただ無意味に少女のアイテムボックスに食料が増えていくだけであった。
「うにゅう…これならどうだぁ!」
 もう何発撃ったかわからない大量破壊テクニックをやめて、腰についている金色に輝くマシンガンを抜き引き金を引く…が、弾は発射されない。
 パイオニア2内では、フォトンを使用した兵器はセーフティがかけられてあり、いっさい使用できないようになっている、艦内で街中での武器等の使用が認められているのは軍と警察だけであり、いくら、武器の携帯が許されているハンターズでも街中での使用は許されないのである。もっともニューマンは手先があまり器用ではないので射撃は苦手な部類とされており、この少女も例外ではなくお世辞にも射撃は上手いとはいえない。なので、この少女のマシンガンの使い方はいつも0距離射撃なのである。
 逃亡者は、銃を向けられたときは少し顔が青ざめていたが、市場の出口を見つけ表情に余裕の笑みが浮かぶ。街中に紛れてしまえば逃げ切れると思っているのだ。だが、次の瞬間その考えは甘かったと認識する。出口付近には、赤い服を着た赤い髪のニューマンの少女と、同じく赤い色のボディをしたヒューキャストが立っていた。
「くそ、どけ!バカガキ!」
 逃走者は、ヒューキャストに喧嘩を売るよりかは、ニューマンの少女の方がマシと判断したのか、シリカに殴るかかる。
「どやかましい!これ以上騒ぎを広めるな、ボケ!」
 シリカは、殴りかかってきた男の拳をさらっと回避して、男の顔面にクロスカウンターを見舞う。吹き飛んだ男をカズサが羽交い絞めにして受け取る。
「ほら、捕まえたよ、ジュン」
 シリカは、男のあとを追ってきた少女に呼びかける…が、ジュンと呼ばれたフォニュエールはテクニックを使うために意識を集中している。シリカは相棒が放とうとしているテクニックを瞬時に悟る。
「…って、そのテクニック!!ちょっ待てぇぇぇぇぇ…」
「ラフォイエ!」

ピカ…チュドォォォォォォォン!!

 少女の絶叫も空しく、卸売市場の一角が爆音と炎に包まれる。
 ジュンの放った問答無用の大量殺傷テクニックは、シリカと逃亡者を確保していたカズサはもちろんの事、その場に居合わせた数人の一般人をも巻き込んだ。その身長に見合った体重しかない軽量の少女は5メートルほど上空に吹き飛ばされつつも、あの娘には一般常識と人権問題を再教育しないとダメだわ…と思いながら、つかの間のスカイダイビングを満喫していた。

「見事に、空襲を受けた後の焼け野原みたいだな、こんなのは、昔に本星で起きた世界大戦時の映像資料でしか見たことが無いぞ」
 カズサはあたりを見回しながらつぶやく。
「あたしは、毎度毎度似たような光景を見ているんですけど、何か?」
 シリカはもう顔を上げる気力もないようにうなだれている。
「ぶいぶーい!」
 そんな2人を尻目に、この焼け野原を作った張本人であるフォニュエールは、黒焦げになった元逃亡者の上に乗り、手にVサインを作りながら無邪気に飛び跳ねている。
「いや…ぶいぶーい、じゃなく、あたし毎回毎回言ってるよね、犯罪者を捕まえるために、街中でテクニック使うなと」
「にゃう〜…だってぇ、ちょこまか逃げるんだもん…」
「そういう場合は、ラフォイエやラゾンデは周囲の被害の方が大きいから、ラグラブトで重力を発生させて押し潰して足止めするとか、ラザンあたりで足を切り刻むとか、いっそうの事、サボルトあたりで神経組織を破壊して死んだら捕まえて拘束した後、リバーサで生き返らすとかしなさいと言ってるでしょ」
「…足止めごときで殺すなよ…と言うか、そんな大戦時に開発された殺傷力の高い物騒なテクニック使うより、ドランクあたりで神経の反応速度を減衰させ、敵の素早さを下げるとかで十分ではないか?」
 そう言った後、カズサはあたりの惨状を見て、肩を落としながらつぶやく。
「…その前にホーミング機能が付いているゾンデすら外す、そのノーコンを直すのが先か…」
 通常攻撃テクニックにはオートロックオン(自動照準機能)が備わっているのだが、ジュンの放つテクニックには、他のフォースに比べると、どれも強力なのだが、オートロックオン機能が壊れているのではないかと言うほど命中率が悪い。
「ちょこまか逃げる、コレが悪いよん」
 ジュンは、そう言いながら、黒焦げになった元逃亡者を「ブレイブハンマー」でポクポクと叩いている。
「…コレとか言うな…なあ、ジュン、人権と言う言葉知ってるか?」
 無駄だと思いながらもカズサはジュンに聞いてみる。
「悪人には人権は無い!…と、シリカが、いつも言ってるよん」
 予想通りの返答を聞いたカズサは、「はうっ」と、ため息をつく仕草をする。
「確かに、悪人には人権は無いと言ってるけど、広範囲テクニックに頼るのはやめなさい、破壊したものとかの責任を、容疑者に押し付けるための調書を書くのも大変なんだから…」
「…いつもそんな事してるのかお前らは…」
 カズサは、手を付帯に添えて、頭痛をしているような仕草をしながら頭を左右に振る。実際、アンドロイドは頭痛などはしないのだが、こんな奴らを相手にしていれば、電子頭脳が熱暴走を起こしても不思議ではない。
「さて、全責任は、この黒焦げに押し付けるとして…怪我人の治療と壊したものは直しておかないとね…じゃ、ジュン、いつものお願い」
「ウイウイサー!」
 シリカに言われたジュンは、敬礼の真似事をした後、ツキヂ卸売市場の中央の位置に歩いて行く。
「直すって…怪我人は分かるとして、この焼け野原をどうやって…」
 カズサと周囲の人が疑問に思っている間に、ジュンがテクニックの詠唱を開始する。
「我癒す、斜陽の傷痕…」
「だああ!それは、著作権にひっかかっるって!」
 慌てて、シリカが止める。
「んじゃあ、軌跡の力よ、ジュンに奇跡を…」
「それもだめぇ!」
「…うにゅう、じゃあ、なんて言えばいいん?」
「普通に、レスタでいいでしょ」
「うっきゅう…レスタ!」
 ジュンの手から、光が発生する。光に包まれた怪我人の傷はみるみる間に修復していき、傷跡も残らず怪我が修復する。それだけならただのレスタと同じなのだが、その光はさらに奇跡を起こす。
 光に包まれたものは怪我だけではなく、破損した衣服も修復して、さらに壊れた破片は輝きながら浮くと、まるでカメラの巻き戻しのように、壊れる前の壁やコンテナが戻っていき、光が消えた頃には、何事も無かったように復活していた。
 この不思議な現象を見ていた、カズサを始めとする、周りの人達も唖然としている。
 当の本人のジュンは、一仕事を終えたからか、ニコニコ顔でその場に座ると、先ほど失敬したミカンの皮を剥いて、中の実を食べる。

「えーと、この不思議な現象を説明してくれますか?…と言うか、説明しろ…であります、シリカさん」
 しばらく固まっていたカズサだが、我に返ってシリカに質問してみた。周囲の人達も同じ心境であろう。カズサの口調が無茶苦茶なのは混乱しているからであろうか?…しかし、シリカから返ってきた答えはそっけなかった。
「見たまんまよ」
「見てて、分からんから聞いているんだろがぁ!」
 うんうんと、周囲の人達も、カズサのツッコミに賛同している。シリカは、仕方ないなぁ…と言うような表情を浮かべて、腕組みをしながら語る。
「ええとね、現在一般に出回っている、レスタってさ、元々治療用に開発されていていたものをディスク化して、万人向けにしたテクニックじゃない」
「確か昔は、医学の心得がないと習得できなかったテクニックだったな、まあ、俺たちアンドロイドは、テクニック自体使えんが」
「でもって、昔は生物しか対照で無かったレスタだけど、今使用されているのって、生物以外でもロボットなども破損個所を治したりできるでしょ?」
「ロボット言うな…それに、アンドロイドと言ってもの、最新型のアンドロイドの外装みたいにFRPをベースにナノテクノロジーによる自己修復機能を備えているものなら、レスタなどを受けると生態部品が作用されて破損個所が治るが、ナノテクノロジーが使用されていない旧式のアンドロイドやドロイドは無効だなはずだが」
「うん、でもね、ジュンの使うレスタって、ちょっと違うらしく、原理はよく分からないんだけど、物質が持っていた記憶に呼びかけて本来の姿…つまり、破損する前の姿に戻すらしいのよ、だから対象は、生物だけではなく無機質でも何でもオッケーらしいのよ」
「ああ、これ美味しそう、おばちゃーん!このマグロを、とりあえず10尾よろしくだよん♪」
 語っているシリカを他所に、ジュンは買い物を楽しんでいる…って、10尾のマグロを買い込んでどうする気だ。ちなみに、このマグロもジュンのテクニックで吹き飛んでネギトロ状態になっていたのだが、元の冷凍マグロに戻っている。
「…それって、レスタと呼べるのか?」
 冷凍マグロを10尾も購入しているジュンも謎だが、先ほどのレスタの謎の方が気になるのか、カズサはあえて話しを続ける。
「うーん、なんだったかな…そうそう、モンちゃん(モンタギュー博士のことと思われる)の言うには、ロストテクニックのスター…ええと、なんだったかな、そんな名前のことを言ってたけど、忘れた」
「スター…アトマイザーか?」
「それは香水でしょ、でも、スターアトマイザーとか、ムーンアトマイザーとか名前の元になったようなテクニックがあったらしいのよ…なんだったかなぁ」
『スターフォースでッせ、姐さん』
 シリカの代わりに答えたのは、シリカの肩の上をぷかぷか浮かんでいる赤いネコのような形をした物体である。
「…何で、あんた復活してるのよ…って、そうか、ジュンのレスタで、あんたも治ってしまったのね…誤算だったわ、やっぱり駅前のゴミ箱にでも捨てて置けばよかったわ」
『ひどいな言いようやな、ワテみたいなラブリーなマグ他にありませんぜ!せや、せっかく生き返ったんだから姐さん!ここは、お祝いに、ぱぁっと裸踊りでも披露しておくんなまし…この際、胸の無いのは我慢するさかい』
「…あんたの、外装を引っぺがして、裸踊りでもさせてあげようか?」
 と言うが早いか、シリカはマグの頭の部分を鷲づかみにして、パーツの継ぎ目に指を入れる。その言葉が冗談ではない証拠に、バキバキバキと外装が悲鳴をあげている。
『どわあぁぁぁぁぁ!、冗談やがな!マジ堪忍してーな!!』
「…スターフォースとか言ったか?確かそんな名前のビデオゲームがあったな」
 カズサのすっとぼけた返答を聞いた、シリカとマグは同時にずっこける、ペット…いやマグは飼い主に似ると言うのは本当のようである。
「ビデオゲームって、いつの時代の話しをしてるのよ…つーか、ゲームの話しなんかしてないでしょ…」
「ゲイングランドは面白かったなぁ…」
「だめだ、いつもの妄想の世界に旅立ってしまった…」
 メルヘンの世界に入った、カズサを放っておいて、シリカは一息ついて木箱の上に座る、ちなみに元逃亡者は、いつの間にか逃げないようにワイヤーでぐるぐる巻きにしてある。
『スターフォースで、無機質の物体まで修復するなど、私のデータベースにはそのような情報はありませんが?』
 メルヘンの世界に旅立った、ご主人様(カズサ)の代わりに、インテグラが疑問を投げる。
「それはね…えーと、タマ!解説お願い」
『まったく、困ったことがあると、何でもワテに押し付けるんやな…大食いの割には全然成長せんし、大きくなると言えば態度だけやし、胸だけでなく脳みそにも栄養が行ってないんとちゃうん?』
「ピッチャー振りかぶって、第一球…投げた!」
 と言うと同時に、シリカは鷲づかみにしたマグを壁に叩きつける。

ズバガゴン!

 音速を超えるようなスピードで勢いよく壁に叩きつけられてバウンドしたマグは、赤いパーツを撒き散らしながら弧を描いて飛んでいき、運河の中に落ちて沈んで行く。
『にぅ、タマ兄さんがお亡くなりになったので、仕方が無いので、代わりに自分が説明するにゃ』
 いつの間にか、シリカの側に来て隣にチョコンと座っているジュン…の肩の上でプカプカ浮いているシャト型のマグ「ミナコ」が言葉を発する。ちなみに、タマとミナコは同時期に製造されて、同時期にリリースされたマグなので兄妹と言うことになっている。
『えーと、レスタとスターフォースの違いは、レスタが生き物の代謝速度を上げ、対照の破損個所を修復するのに対してスターフォースは、生物、アンドロイド関係なく、対照の破損個所を修復するところなんにゃ』
『確かに、新型のアンドロイドがレスタの恩恵を受けられるのは、生態部品を使用しているからであり、生態部品を使用していない旧式のアンドロイドや無機質の物体には作用しませんね』
『そこにゃ、マスターが使っているレスタは前例が無いので、モンタギュー博士は、効果の似たスターフォースと分類したけど、実際は時間に干渉しているテクニックらしいので、未だによく分かっていないのにゃ』
『つまり…話しを引っ張った割には、誰も正確なことは解らないと言うことですか?』
『そう言うことにゃ、研究をしていたモンタギュー博士もいまは行方不明で、謎は謎のままになっているけど、後遺症などは今のところ見られないので、使用しているのにゃ』
「そんな意味不明のテクニックを使ってて、平気なのか?」
 いつの間にか現実の世界に戻ってきたカズサが至極当然の質問をする。
「確かに正体は不明だけど、そんなテクニックもう絶滅してるか、封印されているかのどちらかだし、使っている人なんかいないでしょ?対照がなんであれ、使えば修復するんだから、便宜上レスタと言うことで使っているだけ、おっけ?」
 カズサも周りの人達も、この説明に100%納得した…と言うわけではないが、シリカにこれ以上問い詰めても逆ギレ起こすだけだし、とりあえず通常のレスタとは違うが、ジュンが使うテクニックだからと言うことで、無理やり納得して、各々所定の位置に戻って行く。
 ちなみに、仕事の依頼をこなすたびに、常に何かを壊している…と言うか壊さないときがすまないのか、気持ちいいほど壊しまくるシリカ達(主に破壊担当はジュンだが)が、犯罪者にならずにお咎め無しでハンターを続けているのは、この不思議なレスタのおかげでなのである。
「さて、とりあえず一件落着ってことで…ところで、こいつ何をしたの?」
 シリカは足元に転がっている男に目をやる。
「うみゅ、そいつはねぇ…」


「ぶあっかもぉぉぉぉぉぉん!!」
 頭が剥げ上がった中年男性が入れ歯まで飛んできそうな勢いで唾マシンガンを繰り出しながら2人の少女と1人のヒューキャストに怒声をあげていた。
 ここは、ハンターギルド本部にある、ギルド管理局長室。部屋の内装はシンプルで、窓際にデスクがある。他の調度品は来客用の応接セットと観葉植物(フェイク)が置いてある。床に敷いてある絨毯は、かなり高級なものである。噂では前局長がハンター達が毎月納入するハンターライセンスを横領して購入したのではないかと言う曰くつきの品物だ。
 卸売市場爆破事件の重要参考人として事情聴取を受けていたが3人(ジュンと何故かシリカとカズサ)は、開放されたと同時に、この部屋に呼びつけられたのである。ちなみに、この中年男性はハンターギルドの管理局長である。
「ほらほら、そんなに怒ると血圧上がるよん、もういい年なんだから…そうだ、これあげるよん」
 騒ぎを起こした張本人であるジュンは悪びれた様子も無くニコニコ微笑みながら卸売市場から失敬したミカンを差し出す。
「誰のせいで、私がこんなしなくてもいい苦労をしていると思ってるんだぁぁぁぁァァァァァーーーッ!」
 先ほどの怒声よりもさらにボリュームを上げ、唾マシンガンの弾数を3割増(当社比)と言うか、これはもう唾ショット呼んでいいほど唾を拡散して絶叫する管理局長。怒りが絶頂に達したのか語尾が裏返っている。
「誰だろう?カズサ、あんたじゃない?」
「純真無垢で善良なハンターの鏡…言うか全てのハンターの模範と呼べる存在である俺が、尊敬するギルド長に迷惑をかけるはずは無かろう、シリカ、お前のことではないか?」
「穢れを知らない天使が降臨したと言われているこのあたしが、お父さんより尊敬している局長様に迷惑をかけるはずないじゃない、ジュン、あんたのことよ」
「花も恥らう可憐な乙女と言われているジュンに限ってそんなことは無いよん、ああ、解った!局長が迷惑をかけているんだよん」
「おお!そうか、なるほど」
 ジュンの言葉に、シリカとカズサは同時に納得してポンと手を打つ。
「きしゃあぁぁぁぁぁ!んな訳あるかぁい!何でワシが自分自身に迷惑をかけなくてはならんのじゃああああ!お前ら3人の以外誰がいるンじゃあぁぁぁぁァァァァァーーーッ!」
 3人のすっとぼけた事を言葉がトドメになったのか、剥げ頭の先まで真っ赤にした、まさに茹でたこ状態になった局長の怒りはMAX値に達した。
「うにゅう…ジュンは悪くないよん、逃げていた男が悪いんだよん」
「その逃げていた男と言うのは、ただの食い逃げ犯だったと言うことではないかぁァァァ、しかも、ギルドの依頼とは無関係ということではないかぁァァァッァア!」
 ハンターズは基本的にギルドからの依頼を受けて仕事をするものであり、依頼外の仕事は警察などに任せることになっているい、今回のようにギルドの依頼以外の仕事は規則では禁止とされている。
「食い逃げ犯も、殺人犯も同じ悪人、悪人には人権は無いよん」
 ジュンは悪びれた風も無く、エヘンと胸を張る、どこぞの紅い人とは違い存在感のある大きな胸がゆれる。
「ハグッ」
 局長は息を荒くして心臓のあたりを手で抑えながら、よろよろと自分のデスクに向かい、引出しから取り出した錠剤を大量に口に入れて水と一緒に飲み干す。
「まあ、もう過ぎたことだし、いいのではないか?」
「そうそう、破損した個所は全て直したし、怪我人も傷の後も無く綺麗に完治したし、ジュンの破壊活動以前に壊れていたものまで直ったと逆に感謝くらいなんだから」
 局長の哀れな姿に同情したのか、ただ単に話しを終わらせた言うのか、シリカとカズサがフォローをする…が、次のジュンの台詞で、全てが台無しになる。
「そうそう、何時までも過去に拘ってちゃダメだよん、悩みすぎると頭が剥げるよん♪」
「お、お、おまえにゃあ……ぐはっ!」
 局長はゆで上がったエビのように顔を真っ赤にして怒鳴ろうとしたが、「プチン」と、張り詰めた糸が切れたような音がしたと思ったら心臓のあたりを手で抑えながら、そのまま倒れた。
 修復したとは言え、卸売市場の一角を焼け野原にして、相棒を含む大量のけが人を出しながらも、それを過去の出来事として片付けてしまうジュンを、シリカとカズサは、その天真爛漫で悪気が無い分たちが悪いフォニュエールの少女の性格を少しうらやましく思った。
「…人を呼び寄せておいて寝てしまうなんて…これだからヒューマンは勝手だと言われるんだよん…話しが済んだなら帰るよん」
 泡を吹いて倒れている局長を尻目に、ジュンは帽子に付いているのポンポンを小刻みに揺らしながらさっさと退出していく。シリカとカズサは顔を見合わせてため息をつく。シリカは、例え全てを敵に回しても、ジュンだけは敵に回したくないと心に決めたらしい。
 余談だが、このギルド局長は48代目である。局長の任期は最低でも1年であり、次期候補が挙がらない場合は、継続して同じ人が行うのであるが、ここ2年間で局長だけでも28代も入れ替わっている。2年前と言えば…シリカとジュンがコンビを組みトラブルシューター「ソウル・エンジェルズ」として活動しだしたのも丁度その頃である。
 さらに余談だが、この局長、就任直後の頭髪は豊富にあり、心肺機能に異常は無く健康そのものだったのだが、シリカ達と関わるようになってからと言うもの、見る見るうちに毛髪が抜け、精神安定剤を服用しつづけていないと倒れてしまうような体になってしまったのである、ご愁傷様としか言えない。

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第2話あとがき
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ちょい悪乗りしすぎた、文字数多すぎ。
まあ、読むの疲れたと思うけど、お疲れ様でした。
レスをつける


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あとがき
シリカ [Mail]
11/26(Fri) 21:45
なんつうか、久々に帰ってきてみれば、寂しいところになってるねぇ、ここ。
レスをつける


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ソウルブレイカーズ プロトタイプ
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:49
 HDDを整理していたら、昔懐かしい、ソウルブレイカーズのプロトタイプとも呼べる小説ファイルが見つかったので、加筆修正をしてUPしてみることにした。
 存在として面白いのが、ジュンで、シリカのツッコミ役な役割をしていることかな、ソルブレ本編では、破壊神の異名をとっているだけに、この役割はある意味新鮮である。
 口調も、この話では普通に喋っている。独特な口調にしたのは、本編からで、シリカの台詞と区別をつけるための措置だったのだが、それが書き手を苦しめることになろうとはその時は知る由も無かった。
レスをつける


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ソウル・ブレイカーズ 第1024話「灼熱のファイヤーダンス」
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:50
 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。
 ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請負、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。
 仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、2人は悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、宇宙戦艦が墜落し、惑星をも吹き飛ばすなどの大変な災害が巻き起こる。
 2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。

       第1024話「灼熱のファイヤーダンス…なんじゃそりゃ?」

「私の全人類カツラ化計画を実行するのに、お前達は邪魔な存在なのだ」
 相変わらず訳のわからない事を言って、タイレル総督は指を鳴らした。

 すると、赤毛のハニュエールの少女の足下の地面が不自然に盛り上がる。
「?!」
 とっさに身をかわした少女の目の前には、かつてレベルが低い時、散々苦しめられたあの、超嫌な生物(?)が姿を現した。
「ジ、ジゴブーマぁ??」
 タイレルはその様子を見て不適な笑いを残し、転送ゲートを使いその場から消えた。行く先は森エリア2である。
「あ、こら、待ちなさい!」
 待てと言われて素直に待つ逃亡者は居いないが、お約束として叫ぶ少女。その、少女に向かってジゴブーマの容赦ない攻撃が迫る。しかし、余裕でその一撃を避ける。
「ふう、危ない危ない…ってモグラごときが、このあたしの邪魔をするとは…出世したわね」
「大丈夫?シリカ?」
 大きなポンポン飾りのついた帽子をかぶり、緑を基調としたニューマンが好んで着る派手な服を身につけたフォニュエールが、少女の名を呼びながら走り寄る。
「ジュン…あたしが、こんなヤツの攻撃に当ると思って?」
「ん〜、シリカ運悪いし…もしかしたらと思って…」
「大きなお世話!」
 ジゴブーマの存在を無視して暢気に会話しているシリカとジュン。
「さてとっ、先ずはコイツを先に何とかしないとね…覚悟しなさい!これで決めてあげるわ」
 シリカはバックパックから取り出した大剣「ラストサバイバー」を手にジゴブーマに向かっていった。
「あ、シリカ!その剣って……」
 シリカにはジュンの声はもう届いていない。
「シリカ・ソォォォォォドクラァァァァァシュ!!」
 その身体に似合わない、自分の身長より大振りの剣を軽々振り上げ、ジゴブーマーの頭に振り下ろす。

 ガキィィィィィィィン。

 耳をつく激しい金属音が鳴り、辺りは蒼い光に包まれた。シリカは勝利を確信した…が次の瞬間、悲劇は起こった。

 ビシビシビシ・・・・バキィィィィン!!

 なんと、「ラストサバイバー」の芯の部分に無数の亀裂が入り…砕け散った。

「なーーーーーーーーーーーーー!…け、剣が…折れたぁ?」
「だから止めようとしたのに…」
 ジュンは、折れた剣を信じられないといった感じで見つめているシリカに暢気に話し掛ける。ジゴブーマーは…よほど痛かったのか頭を抑えてうずくまっている。
「だって、これ、ラストサバイバーよ…手にした者はいかなる戦場も生き残ると噂される伝説の大剣よ!折れちゃったら…死ねって言ってるようなものじゃない!」
「だから、武器はこまめに手入れした方がいいよって何回も言ったでしょうに」
「いいや、コレは不良品だったのよ…うん、そうに違いない!今から武器屋の親父に文句言ってくる!」
「試し切りとか言って、タブチックやギルチックを数千体も斬り刻んだ後、手入れもロクにしないから…いくら刃の部分がフォトンでも芯のほうがダメになる…って、ちょっとぉ」
 ジュンのツッコミを無視して、シリカは武器屋の親父にクレームを付けに行こうとリューカーを出そうとしていた。
「ダメだったら、クレームなら後でジュンも協力するからぁ…そして最後はお店を壊わすのにも協力するから…今は依頼を片付けようよ」
「こらこらこら、それじゃあたしが何時クレームと称して破壊活動をしてるって言ってるようなものじゃない!!」
 シリカの「口より先に手が出る」性格は今始まった事では無い。言い争いから始まり、最終的には腕ずくで相手を黙らせるパターンである。しかし、本人はそれが当たり前のように振舞う。無知は無敵とはこの事である。

「じゃ、仕方ない…疲れるけどアレを使うしかないわね…」
「うん、アレを使う方が、ジュン達らしいしね」
 シリカとジュンはバックパックからなにやら筒状の物を取り出す。
「フフフ、壊れたラストサバイバーはモグラの体で弁償してもらうとしますか♪」
「さあ、掃除開始よ!」
 そして筒状の物を取り出し高々と掲げようとしたとき…。

「まったぁぁぁ!あんたの背中を守らせてくれぇーーーっ!!」
 いきなり後ろから間抜けな叫び…もとい何か聞き覚えのある声に出鼻を挫かれたシリカは恨めしそうな目で振り向く。そこにいた人物は…。
「へっ?アッシュじゃない…なんであんたがここにいるの?」
「あ、本当だ、キミ?何処から生えてきたんだよん」
「オレは、最初からここにいたぞ!!お前らの目は節穴か!!」
 アッシュは頭に血管を浮かべながら少々引きつりながら答えた。
 その姿を見たシリカは両手を後ろ頭にあて微笑みながら…、
「ゴメン、影薄いから分らなかった♪」
「ジュンも気がつかなかった…もしかして空蝉の術?」
「影薄いって言うなぁぁ!それに、空蝉の術って何だぁァァ!」
 アッシュは額に2〜3個ほど血管を浮き出たせながら絶叫する。完全無視されたジゴブーマーは、自分が掘り起こした土で山を作り棒倒しをして遊んでいる。
「と、とにかく!今はこの状況をどうするか考えることだ!!そうだろう?」
 アッシュは怒を抑えて2人に言った。
「…ん〜、ねえ、シリカぁ?ジュン達、何をしようとしたんだっけ?」
「…何だっけ?」
 しかし、アッシュを無視して会話を進める2人。
「…と、言うわけだから…その…あの…あ、あんたの…その…背中を守らせてくれないか?」
 さらに、無視されている事も気づかず、アッシュは恥ずかしさのあまり顔を紅く染めてシリカに言う。
 しかし、アッシュの言葉を無視して、顎に手を添えて考え込む2人。アッシュの顔色は恥ずかしさの紅潮から怒りの紅潮に代わる。
「こら!シリカぁ!!人の話を聞けぇぇぇぇ!ゴルァ!!」
 アッシュが絶叫する。驚いたジゴブーマーは誤って棒を倒してしまう。
 当のシリカ達は声の大きさよりも声の存在自体を驚き、アッシュを見て呟く。
「…アッシュ、まだいたの?」
「あ、本当だ、存在感ないからもういなくなったと思った」
 シリカとジュンのクリティカルヒット!所詮未来永劫問答無用の役立たずなのだよ…君は。
「あ、あんたらなぁぁぁぁ!!」
 さすがのアッシュも堪忍袋の尾が切れたようだ。ゆっくり腰のツインブランドに手が伸びる。

 ピカッ…ぼちゅこぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!

 話が先に進まない3人に対して、棒倒しに負けた腹いせに、何故かジゴブーマーがラ・フェイオをぶち込む。燃えさかる火柱!

彼女らの安否は?


 自分を! 幸せいっぱいの家庭を! ついでに人々を!!救うことができるのか!?
 邪魔するものは全て破壊せよ!紅い破壊者シリカ!!
 火に油を注げ!緑の破壊者ジュン!
 押しが足りないぞ!未来永劫役立たずのアッシュ!
 君たちの保護者は泣いているぞ!
 …次回へ続く(のか?)
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ソウル・ブレイカーズ 第1025話「せめて人間らしく」
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:50
 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。
 ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請負、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。
 仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、2人は悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、宇宙戦艦が墜落し、惑星をも吹き飛ばすなどの大変な災害が巻き起こる。
 2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。

     第1025話「せめて人間らしく…扱ってね」

 ピカッ…ぼちゅこぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!
 話が先に進まない3人に対して、棒倒しに負けた腹いせに、何故かジゴブーマーがラ・フェイオをぶち込む。燃えさかる火柱!彼らの安否は?

「ふう、危なかった」
 ジゴブーマは音声の聞こえた方向に反応する。少し高くなった場所には、赤いサラサラのロングヘアーが風に揺れる、赤い軽装甲服を身につけた、年の頃12歳のハニュエールと、頭に大きなポンポンのついた帽子をかぶり、緑を基本とした少し変わった服を身につけている年の頃16歳位のフォニュエールが太陽をバックにポーズを決めて叫んだ。
「強気に本気!過激に素敵!元気に勇気! レッドル・エンジェル シリカ!参上」
「同じく愛と正義の美少女! グリール・エンジェル ジュン!ここに見参!!」
『今日も元気にサクっと掃除しよう♪』

 ビシィィィィ!

 最後は2人で言葉をそろえて、ジゴブーマを指さす。2人の足下にはぴすぴすと黒煙を上げている物体がある。数分前までは人間だった物体が程良く焦げて落ちている、が、今は話に関係ないので放っておこう。

 解説しよう!
 あの業火の中、何故シリカ達が無事でいられたか。時間を3秒ほど巻き戻してみよう。ツッコミラ・フェイオが放たれた時、シリカとジュンは、まず、ラ・フェイオをシールド防御する(この間約1.5秒)。
 盾といっても現在主流なのはフォトンにより不可視の防御幕を貼り、攻撃を防ぐシステムである。扱いが簡単で軽いのでハンターズはもちろん軍や一般人の護身用に普及している。
 ただ、この盾の弱点は、荷電粒子砲…つまり、レーザーやテクニックなのは防げないと言うこと。テクニックを防ぐには、フォトンではなく実盾と呼ばれる昔ながらの盾が必要である。話を戻そう、シールドでラ・フェイオを防いだ2人は爆風を利用して、目標(この場合ジゴブーマ)の目線より上に跳躍する。
 条件は太陽を背にしていないといけない(笑)(ここで約3.0秒)
 ちなみに、今回のシリカ達の装備には実盾は無かったはずなのだが…。

「うし!決まった!」
「♪」
 2人は、それぞれガッツポーズを決める。足下の焦げた物体はいまだにぴすぴすと黒煙を上げている。ぴくりとも動かない、でも、まだ話には関係ないので放っておこう。

 ボシュゥゥゥゥゥン!!

 シリカ達が決めポーズをしているスキにジゴブーマはフォイエを放つ。こいつ、本当にジゴブーマなのか?と言うツッコミは不許可。
「おおっと、危ない!!」
 シリカは足下に転がっていた半分炭化したシールド(?)を拾って防御する。火球は激しい音とともにシールド(?)の表面上で消滅する。ジュンは哀れみの目でシールド(?)を見つめていた。
「今度はこっちの番ね!!必殺!ストライクシィィィルド!!」
 シリカは、さっき思いついたような台詞を言いながら、手に持っていたシールド(?)をジゴブーマに投げつける。

 解説しよう!ストライクシールドとは?
 シリカの足下で、ぴすぴすと黒煙を上げていた物体を盾にした後、不要になったので投げつけただけ。シリカは、通常のニューマンに比べると攻撃力がずば抜けて高いのである。
 そのため75Kg近くある重いシールド(?)も至極簡単に投げ飛ばすのは造作もないことである。

 ジゴブーマは、投げつけられたストライクシールドを難なく回避する…と言うか、ただ単に狙いが外れただけだった。行き場を失ったストライクシールドはゆっくりと谷底に吸い込まれていき…もう肉眼では確認できないところまで落ちていった。ジュンは谷底に消えたアッ…じゃなく、ストライクシールドに合掌するのであった。
「アッシュ、あなたは確かにあたしを守ったわ、安心して成仏してね…さて、許さないわジゴブーマ!!アッシュの敵!!」
 自分のやったことを棚に上げて怒りに燃えるシリカ。そして今まで持っていた筒状のもの片手に、ジゴブーマめがけてジャンプする。ジュンは谷底に消えたストライクシールドにまだ合掌している。
「行くよ!ソウルバニッシュ」
 シリカが叫ぶと同時に、筒状のものがシリカの身長より長くなり、その先には鎌のような光の刃がフォトンで形成される。

 解説しよう!ソウルバニッシュとは?
 徐々に生命力を吸い取られる呪われし鎌。特殊攻撃は生命力を消費しながらの大攻撃が可能。シリカとジュンはこの武器を使うことから「ソウル・ブレイカーズ」の異名をとることになる。ちなみに、ジュンの装備している鎌はソウルイーターである。

「観念なさい! 今度は決めるわよ!」
 シリカは「ソウルバニッシュ」でジゴブーマに斬りかかった。ジュンは谷底に消えたストライクシールドにまだ合掌している。

 自分を! 幸せいっぱいの家庭を! ついでに人々を!!救うことができるのか!?
 邪魔するものは全て破壊せよ!紅い破壊者シリカ!!
 火に油を注げ!緑の破壊者ジュン!
 君たちの保護者は泣いているぞ!
 …次回へ続く(性懲りもなく)
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ソウル・ブレイカーズ 第1026話「最強の男」
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:51
 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。
 ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請負、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。
 仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、2人は悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、宇宙戦艦が墜落し、惑星をも吹き飛ばすなどの大変な災害が巻き起こる。
 2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。

     第1026話「ある意味、最強の男」

「観念なさい! 今度は決めるわよ!」
 シリカは「ソウルバニッシュ」でジゴブーマに斬りかかった。ジュンは谷底に消えたストライクシールドにまだ合掌している。

「くらいな!」

ぼしゅぅぅぅぅん!

 どこからともなく発生した炎の塊がシリカに遅いかかる。宙に舞っていたシリカには交わしようがない。
「ぐはぁ」
「ああ!シリカァ〜!」
 ジュンの叫びもむなしく、シリカの体は、炎の塊に吹き飛ばされて一段下の崖下に転落する。シリカの落ちた場所には、青を基本としたプロテクトスーツを身にまとい、軍が使用するような大型の重火器を持ったレイマーが立っていた。
「これで、やっと話が先に進むと思ったのに!!今度は誰よ!邪魔するのは」
 ジュンも同じ場所に飛び降りながら、新たに出現した邪魔者に文句を投げかける。
「ん?オレか…オレの名は…ゾークJrとでも呼んでくれ、ハンターズのレイマーだ。それから、コイツが相棒のスカイだ。」
「ヨロシクナ」
 ゾークJrの紹介で、肩に泊まっていた鷹がペコリと頭を下げ拶をする。ハンターズに支給されるサポートメカといえばマグが主流なのだが、このレイマーは何故か訓練した鷹を使用している。ちなみに鷹が何故喋るのかと言うと、ほら、インコだってオウムだって喋るでしょ、そう言うこと。ちなみに、この鷹は、頭に1本の角、尾羽のあたりに2本の突起物が生えている。
「ゾックだかアッガイだか知らないけど、ここは関係者以外立ち入り禁止だから、おとなしく家に帰りなさいな」
「そりゃあ、水陸両用モビルスーツじゃねえか!つうか、アッガイってなんだオレの名前に1文字もかすりもしてねぇ、それに何だ!家に帰れってのは、子ども扱いす…」
「どやかましい!」
 ジュンの講義に対して、ゾークJrは反論するが、その反論は復活したシリカによって中断される。ジゴブーマは頬を爪でポリポリと掻いている。汗をかけるものなら、冷や汗をかいているに違いない。
「もう、部外者は邪魔しないで欲しいわね!!」
 せっかくのチャンスを潰されて、シリカの怒りは頂点に達している。
「部外者?…いや違うな」
 バーニィは、哀れなものを見つめるような目で語る。そして肩をすくめてため息をつく。
『?』
 シリカとジュンの頭の上には疑問詞が羅列する。
「いいか?よく聞け、オレ事ゾークJrは、最新作のファンタシースターユニバースの主人公に任命されたんだ。だから、この小説でもオレが主人公と言うわけだ」
「ゆにばあす?」
「うそうそ、そんな話、聞いてないよぉ」
 ゾークJrの主役宣言より別の単語に反応する2人。

 解説しよう!「ファンタシースターユニバース」とは
 詳細は未だに不明だが、MMORPGとして多人数同時プレイを目指したゲームだとか、ドリームキャストが生産停止になる前に起死回生を試みたセガが世紀末に世に送り出した迷作「PSO」が、ユーザーに叩かれながらもここまで進化したのである。
 とは言え、所詮はPSOなので、またバージョンアップと称したアイテム全初期化とか不正利用者による横暴は絶えないとは思う。ちなみに、ゾークJrはPSOの主役では無いし、ソルブレの本編にも登場しないし、名前が思い浮かばないので適当につけた存在で、この小説のみの一発キャラでしかない。

 何時もながら、何処からか流れる解説を聞いて、シリカ達は呆然とする。
「そういう訳だ、あんたらはDCの中でサーバーのサービスが切れるまで、ガクガクブルブルしているといい、今までご苦労さん」
「一発キャラが偉そうなことほざいてるんじゃないわよ、そもそも、あんたの存在は、作者が名前が思い浮かばないからって、2秒で思いついたようなキャラに主役を奪われる覚えはないわよ!」
 ゾークJrの売り言葉にを間に受けて、シリカも負けじと反撃する、
「それを言うなバカぁぁぁぁぁぁ、お母ちゃんにいいつけてやる!」
 何だかよく分からないが、ゾークJrはガキ化している。もう収拾がつかなくなってきたな、誰か何とかしてくれ。
「シリカ…そんな子供相手にしていないで、話を先に進めようよ〜」
 意外にも冷静なジュンのストーリーを進めようとする発言に、シリカも我に返る。
「ハッ、そうだ…ええと、何だっけ、台本台本…ああ、そうそう、人質を助けるんだったよね…ええと、ジドムだか、ガンガルだか、どうでもいいけど、この件は、また後で…」
「1文字もかすっていない上にモビルフォース扱いかよ!オレの名前は、ゾークJrだ!お前らの頭の中にはウニがはいってるのか?」
「おっと、忘れ物をした」
 シリカとゾークJrが主人公争奪バトルを繰り広げている最中、一つ上の崖にある転送装置から暢気な声が聞こえた。シリカ達は声の聞こえた方向を見ると、先ほど転送されたハズのタイレル達が姿をあらわす。

 自分を! 幸せいっぱいの家庭を! ついでに人々を!!救うことができるのか!?
 邪魔するものは全て破壊せよ!紅い破壊者シリカ!!
 火に油を注げ!緑の破壊者ジュン!」
 一発キャラだからって気にするな、今後も出番はあるさゾークJr(保証できないが)。
 君たちの保護者は泣いているぞ!
 …次回へ続く(のか?)
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ソウル・ブレイカーズ 第1027話「総督、大地に立つ」
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:52
 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。
 ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請負、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。
 仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、2人は悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、宇宙戦艦が墜落し、惑星をも吹き飛ばすなどの大変な災害が巻き起こる。
 2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。

         第1027話「総督、大地に立つ…というか、戻ってきた」

「おっと、忘れ物をした」
 シリカとゾークJrが主人公争奪バトルを繰り広げている最中、一つ上の崖にある転送装置から暢気な声が聞こえた。シリカ達は声の聞こえた方向を見ると、先ほど転送されたハズのタイレル達が姿をあらわす。

「もしかして、ここか?…お、あったぞ、やはりここだ…」
 謎の人物は、なにやら呟きながら何かを拾い上げた。
「探しものは見つかりましたか?総督」
 更に、転送機から、3人の怪しい人物が姿をあらわした。
「うむ、このリコちゃん人形が無いと、安心して眠れないのいでな…よかったよかった」
 総督と呼ばれた人物は、先ほど拾った忘れ物”リコちゃん人形”を嬉しそうに頬擦りする。もし、この人形の基となった人が生きていたとしたら、油ギッシュのオッサンに頬擦りされた感触に嫌悪を示していたに違いない。
 唐突に現れた謎の集団は全部で6人。中央に、黒いマントに身に包んだその左肩は異様に大きく、唯一露出している右手には先ほどの人形を持ち、見た目ただの危ないオッサンにしか見えないけど、今回の黒幕であるタイレル総督である。
 その後ろで控えている3人は、オレンジ色を基本とした燃え上がる炎をイメージした全身よろいに身を包み、大きな一本角のフルフェイスマスクで頭部を覆っておる性別不明の人物、”炎将軍”。マリンブルーを基本とした荒ぶる水飛沫をイメージした全身よろいに身を包み、両側に清流をイメージした飾りを付けているフルフェイスマスクで頭部を覆っておる性別不明の人物、”水将軍”。グリーンニルを基本とした微風をイメージした全身よろいに身を包み、飾りも何も無い、シンプルなフルフェイスマスクで頭部を覆っておる性別不明の人物、”風将軍”。そして、総監と3将軍の背後には、さらわれた人質のアリシア・パズとのノル・リネイルの姿があった。

『アリシア!ノル!』
 シリカ達は、うつろな目の女性の名を叫ぶび駆け寄ろうとしたが、視界をさえぎるかのように、何かが立ちはだかった。
「チッ、ジゴブーマがここまで?!」
「だから、アンタの背中を守らせてくれよォォォォォ!」
 シリカの邪魔をしたのは、ジゴブーマと思いきや、何時の間にか復活したストライクシールド事アッシュである。ちなみにジゴブーマはジュンとジャンケンをしている。

ブチン

 何かが切れる音と共に、シリカの頭上に”LIMIT BREAK!!”の文字が点滅表示される。
「どやかましい!これ以上話をややこしくするな!ボケ!」

ザン!ゴシュ!ズパ!ギャシュ!ザン!ゴシュ!ズパ!ギャシュ!ドガシャーン!!

 動く障害物ことアッシュは、シリカの連続技「無陣連我漸」を受けて再度沈黙する。

 解説しよう!「無陣連我漸」とは?
 シリカの堪忍袋ゲージがMAXになった状態で、何かしら攻撃を受けると発動する裏超必殺技である。上下左右ワンセットで十字を切るように計2回斬った後、倒れた相手にトドメのソウルバニッシュの特殊技を叩き込む人権を無視した連続技である。

 アッシュの不幸は、復活したが黒焦げのままだったため、誰の目からもアッシュとして認識され無かった事である。アッシュが完全な姿で出現した場合は、最悪は免れた…カモしれなかっただろう…まあ、シリカの場合は、アッシュが黒焦げだろうが完全だろうが構わず”邪魔だから斬った”と思うが。

「ふぅ…少しすっきりした…」
 シリカは大きく息ついて額の汗を拭う。
「…いいなぁ、シリカは…ストレス発散ができて…」
 ジュンは、シリカにより先ほど生成されたボロクズを人差し指で突付きながら呟く。この展開に、ゾークJrは”ムンクの叫び”のように口を大きく開けて呆然としている。
 タイレル総督は、下が騒がしいのに気づき崖下を見下ろす。

「ぬう、あいつ等、まだ生きていたか…やはり、ジゴブーマ程度ではヤツ等を倒すことは無理だったと言うことか…」
 ジゴブーマは、倒す倒される以前に、相手にもされていません。
「総督!ここは自分が…」
 炎将軍の申し出をタイレル総監は手で差し止め。
「いや、ワシ自ら引導を渡してやる」
 そう言って、体を追っていたマントを脱ぎ捨てる。
「しかし、このままでは、スケジュールに遅延が…総監の楽しみにしている”ふたりはプリキュア”の放送が始まってしまいます」
 風将軍は、スケジュール表らしき用紙を見ながらタイレルのマントを拾い上げる。
「…心配するな、1分で片を付ける」
 そう言ってタイレルは、クマの縫いぐるみを水将軍に手渡して、崖の上から飛び降りた。

グシャ。

 タイレルの飛び降りた足元には、ジゴブーマ改がいたのだが、タイレルは構わず着地する。

ブシューっブシューっ

 赤色の液体を体中から吐き出しながら、ジゴブーマは無言で絶命する。
 マントを取ったタイレルの姿は奇形で、左肩の不気味にうごめく触手と異様なほど、頭を覆っている頭髪が彼を人間以外の生物だと言うことを物語っている。
「総督…いや…タイレル!」
 シリカはソウルバニッシュを構えながら、新たに出現した敵の名を呟く。
「おい?アンタ、今なんて言った?」
 今まで、自分の常識を超えた展開に付いて行けなくて思考停止していたゾークJrが我に返りシリカの肩を掴む。
「何よ、また邪魔する気?」
 先ほど、全ての怒りをアッシュにぶつけたせいか怒りはなく普通に軽くゾークJrの手を振り払う。ただし、鎌の刃の先も向けているが…。
「あ、すまん…頼む、さっき言ったあいつの名前をもう一度言ってくれ」
 ゾークJrは、シリカがアッシュを屠った連続技を見たせいか、先ほどの威勢が消え去り弱気に尋ねる。
「…彼の名は、タイレル総督…ヅラである事がパイオニア2の全員にばれて、いや、前からみな知っていたが口に出さなかっただけなんだけど、逆上してダークサイドのカツラに魂を売った男…全人類の毛を狩り、全人類カツラ化しようと考えている…人類最大の敵…」
 タイレルと対峙して睨み合いをしているシリカの脇で、ジュンが説明じみた言葉を呟く。
「ダークサイドのカツラ?…ダ−クサイド…ダーク…」
 ジュンの話を聞いたゾークJrは腕組をして、小首をかしげる。
「…ダーク…か」
 該当する記憶が検索されたのかゾークJrが静かに呟く。
「そうか!その異様な左肩と頭髪!、ダーク…ダークファルスか…なるほど…こんな所に隠れていたとはな!」
 そう言って、シリカ達の前に出たゾークJrは、レイマーと言ったはずなのに、何故か双剣「サンゲヤシャ」を構えてタイレルと対峙する。
「覚悟しやがれ!親父の敵だ!!」
「え?あ、あの〜?それはあたしの獲物なんですけど〜…もしもし?聞いてます?」
「覚悟しろゴルァ!」
 ゾークJrの剣幕に、シリカは呆気にとられる、もはや、シリカの言葉はゾークJrに届いていない。
「フッ、ここは関係者以外は立ち入り禁止だ、部外者は早々に立ち去ってもらおう」
「部外者なんかじゃねぇ、オレは、お前に殺された、ゾーク・ミヤマの息子、ゾークJrだ!」
「ゾーク?ああ、あのミヤマ家の人間か、だが、お前には関係ない、そこをどけ」
「ドイツもコイツもオレを無視しやがって、一発キャラだからって舐めるな!オマエはダークファルスで、親父の敵だ!大人しくオレに殺られろ!」
 一発キャラと自認しているところが少し悲しいが、お前の出番は、後にも先にもこの話だけだ、頑張れゾークJr。
「誰と勘違いしているのか分からんが、私は”ダークファルス”ではなく”タイレル”だ」
「タイレルだか、タイガーアッパーカットだか知らねぇが、オレは騙されねーぞ!行け!スカイ!!」
 ゾークJrの号令と共に、肩に泊まっていた鳥…スカイは高く飛び経ちタイレルの頭上に襲いかかる。この技は、スカイが相手を空高く持ち上げ(引力?航空力学?そんなの無視)た後、落とす。落下先にはゾークJrが待ち構えてて、受身の取れない相手を切り刻む技だ。
「ふん、小賢しい…」
 タイレルは何をしたわけでもないのに、急降下してきたスカイは炎に包まれる。
「ピィィィィーっ!」
 火の鳥と化たスカイは、甲高い泣き声と共に、そのままタイレルの背後に墜落、爆発炎上する。
「うお!スカイ!…オマエ何時の間に科学忍法火の鳥を覚えたんだ?…しかし惜しい!目標に当たらないと意味無いぞ」

 解説しよう!「科学忍法火の鳥」とは?
 つうか、そろそろ、解説するのも疲れてきたので、詳細はガッチャマンのDVDが発売されているから、それでもを見てくれ(ヲイ)

 タイレルがテクニックを発動したように見えなかったゾークJrの目にはスカイの新技にしか見えなかった。実際は、タイレルの怪しく動く頭髪が、フレエリ(炎の魔術)を放ったのだが…。

「さて、つかみは終わった、ここからは本気だ、覚悟しやがれ!」
「…ふん、仕方ない、お前から、先に始末してやろう…」
 ゾークJrは、見た目は「カムイヤシャ」にしか見えないが、名前の表示は「サンゲヤシャ」と言う不思議な武器を構え直す、対してタイレルは頭髪を怪しく動かす。そして、何時の間にか、シリカとジュンの姿は消えていた。


 自分を! 幸せいっぱいの家庭を! ついでに人々を!!救うことができるのか!?
 邪魔するものは全て破壊せよ!紅い破壊者シリカ!!
 火に油を注げ!緑の破壊者ジュン!
 一発キャラの癖に目立ってるじゃねーか、ゾークJr!!
 君たちの保護者は泣いているぞ!
 …次回へ続く(のか?)
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ソウル・ブレイカーズ 第1028話「総督ファイト レディーゴー」
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:53
 コードネーム「ソウル・エンジェルズ」
 赤毛のハニュエールと大きなポンポンのついた帽子をかぶったフォニュエールのコンビのチーム名。
ハンターズの仕事の中でも困難な仕事を請負、必ず達成するハンターズ公認のトラブルシューターである。
仕事成功率は常に100%なのだが、目的のためなら手段を選ばない行動を取るため、2人は悪気があってしたわけでは無いが、なぜか街が壊滅し、宇宙戦艦が墜落し、惑星をも吹き飛ばすなどの大変な災害が巻き起こる。
2人の通った後に無事なものがない事から、形あるものは魂までも破壊すると言う意味を込めて、彼女等を「ソウル・ブレイカーズ」と呼んだ。

      第1028話「総督ファイト レディーゴー…って話しが全然進んでないなぁ」

「…1分、経ちましたわね」
 緑の鎧に身を包んだ風将軍は、時計を見ながら呟く。
「まあ、あのオッサンの言うことは当てにならないからね…」
 ディスカを起用に操りながら、水色の鎧に身を包んだ水将軍が答える。
「確かに、何時も口だけだしね…」
 アクスの柄で手のひらをバシバシたたきながら誰とも無しに呟くオレンジ色の鎧に身を包んだ炎将軍。
「それは言わない約束でしょ!あなたたちは、わたしの考えに同意してくれたから、ここにいるのでしょう?」
 風将軍は、メガネを掛け直すような仕種をしたが、フルフェイスメットで顔を覆っていることに気づき慌てて手を引っ込める。
「そうなんだよなぁ…でも、この事がばれたら、残された道は犯罪に手を染めるしかないんだよなぁ…」
 炎将軍が再度ぼやき、3人は大きなため息をつく。今やっている事も十分犯罪なのだが、この件は”大義名分”と言うことで犯罪だとは思っていない所が凄い。
「でも、こんな人質までとって私達、十分犯罪者のような気がするけど…」
 人質…アリシアとノルの居る方向を見て、水将軍の言葉は止まった。

「やあ、お勤めご苦労さん」
 人質の居た場所には、何時の間にかシリカが居て、3人の足元にシュっと何かを投げて挨拶をする。シリカの肩の上には自分の身長より大きいノルを抱えている。その背後では、ジュンがアリシアをシリカに渡しながら、同じように挨拶をしている。
「じゃ、そゆことで、予告どおり品物は貰っていきますので、後よろしく〜」
 そう言ってシリカ達は、固まっている3将軍を尻目に、そそくさと立ち去っていく。3将軍の足元には、先ほどシリカの投げた予告状”キャッツカード”が刺さっていた…って、獲ってから予告状も何も無いような気もするが…。
 シリカ達がどんどん遠くなっていくが、3将軍は呆然としていた動かなかった。
     ・
     ・
     ・
「ハッ!わたしとしたことが!追いますよ!」
 一番早く立ち直ったのは風将軍だ、その声に、残り2人も我に返った。
『こら〜!待ちなさい!』
「バ〜カ!待てと言って待つヤツが居るかっつうの、アバヨ〜とっつぁん!!」
 人質を両肩に抱えて走るシリカは何やら甲高い声で何処かで聞いたような台詞を言いながら逃げる。
『誰が”とっつあん”だーーーーーーーーっ!!!』
 ”バカ”と言う単語より、”とっつあん”と言う単語に激しく反応する3将軍。
     ・
     ・
     ・
「ふう…やるじゃねーか、オッサン…」
「ハァハァ、小僧!オマエもな…」
 崖上で逃走劇を繰り広げている連中に気づかず、タイレルとゾークJrは互角の戦いをしていた。
「…こんな所で何をしているのですか?」
 そんな2人の背後で、女性の声がした、2人は、振り返ると…そこには、黒いボディの女性…いや、レイキャシールがいた。
「?」
「シ、シノ?何でオマエ…こんな所に…」
 不信がるタイレルに対して、ゾークJrはレイキャシールの名を呼んだ。
「”何でこんな所に”ではありません、Jrが急に居なくなったから探しに来たのです」
 シノと呼ばれた女性は、頬を膨らませて(いる様な仕種をして)ゾークJrを攻める。実はこのレイキャシールは、父親であるゾーク・ミヤマ(とは言っているが実の親子ではない)が所有していた相方のレイキャシールをモデルに作成したレプリカである。オリジナルのシノはマスターであるゾークの死後、付き添うように自分の機能を止め、今でも地下の遺跡で永遠の眠りについている。
「あ、いや…そうだ、それ所じゃ無いんだ!見ろよ!親父の敵を見つけたぞ!」
 ”実は、道に迷っていたら、ここに迷い込んだ”なんて格好悪くて言えないゾークJrはタイレルで話を有耶無耶にしようと試みる。
「?」
 ゾークJrの側に下りたシノは、視線をタイレルに向ける。
「…本当ですか?…」
「ああ。確かに悪魔が宿ったとか言ってたぞ、悪魔といったら…アイツしかいないだろう」
 単に勘違いしているだけなのだが、ゾークJrには、タイレルはダークファルスだと思い込んでいる。
「……確かに、頭髪のあたりで異常なフォトンを検出しましたが…人間ですよ、彼は」
 シノは(当たり前だが)ダークファルスのフォトン反応を示さないタイレルを見て思索する…って、異常なのは頭髪だけか?行動パターンとか思考パターンも…いやはっきり言おう、頭の中も異常だと思うのだが、どうだ?
「それは…まだ覚醒していないからとか…?」
「そうでしょうか?」
 ゾークJrの提案をあっさり却下するシノ。
「じゃあ…あの異常なフォトンを検出したカツラを取ってみれば、正体を現すかも、シノ、ちょっと毟ってきてくれないか?」
「お断りします、例えて言うなら人間で言う、気持ち悪い、と言えばいいのでしょうか?とにかくマスターの命令でも、これだけは拒否します」
「…ラゾンデ」

パグシャァァァァァン!!

「うわぁぁぁぁぁー」
「きゃぁぁぁぁぁー」
 さっきから好き勝手なことを言っているゾークJr達に腹を立てたタイレルは、特大の稲妻テクニックを発動する。
「…いたたたた、テメエよくもやったな!」
 まだ痺れの取れない体を起こしながらゾークJrは、タイレルに食って掛かった。シノは…感電していて暫くは機能が回復できない状態になっている。
「あったまきたぜ!いくぞスカイ!」
 ゾークJrは何時ものように相棒に声をかけた…が、一向に姿をあらわさない。不審に思ったゾークJrはあたりを見回す。感電してるシノ、タイレル、黒焦げになった人型のボロクズ、鳥の丸焼き、などが目に入るが相棒のスカイの姿は見当たらない。
「Jr、あそこにあるものは何ですか?」
 何時の間にか感電から回復したシノは、先ほど見つけた鳥の丸焼きを指差した。
「うん?あれか…ただの鳥の丸焼き…だな」
 シノの指した方向には、クリスマスの食卓を飾る主役のケーキに並ぶもう一つの料理”七面鳥の丸焼き”いわゆる”ターキー”らしき物体が置いてあった。焼きたてなのか、こんがり焼けたターキーは見る者の食欲を誘う色に焼きあがっている。その姿は、まるで「私を食べて」と言っているかのようだ。
「なあ、それより、スカイを探してくれないか?多分そこら辺に飛んでると思うんだが…」
 と言ってから、ゾークJrは不審に思った。ボロクズと言うか人型の燃えカスはともかく、ターキーの置いてある場所が場所なだけに違和感が在りすぎるのだ。
「…………………………」
 ゾークJrは、ターキーを良く観察した。料理にしては、皿の上に盛り付けていない、それに、頭や足がついたままだ。尾っぽの部分には2本の突起状の何かが付いたままだし、頭にも角のようなものがついている。
「…あの突起物…何処かで見たような…」
「鳥の丸焼き、またはターキーで、データー検索…ヒット、カテゴリーは食料ですね、人間で言う、美味しそうと言うのでしょうか、食べやすいように切り分けますか?」
 難しい顔をして、懸命に該当する記憶を探っているゾークJrに対して、心なしか暢気に声をかけるシノ。
「ちょっと待て!もうすぐ思い出しそうなんだが…ああ〜、こんな時にスカイが居てくれたら、何かしら助言をしてくれるのに」
 頭をかきむしりながら、相棒の名を呼んだあたりで該当する記憶が検索された。
「ええと、スカイは…ダークファルスを掴むため急降下して…火の鳥になった…あっ…」
 ようやく記憶の整理がついたゾークJrは、スカイが今どこにいるか解って冷や汗をかく。そんなゾークJrの気も知らずに、シノは鼻歌を歌いながらアイテムパックから何かを取り出していた。
「うわーーーーーーーーーーっ!!ス、スカイ!?…なんて美味しそう…じゃなく哀れな姿に!」
 ゾークJrはターキーと化したスカイの元に駆け寄る。そのゾークJrのすぐ後にフォークとナイフを手にしたシノが到着する。
「さあ、切り分けましょう、冒険先では何が起きるかわかりません、食料は切り分けて保存食にするのが一番良いとデータベースにあります」
「ダメダメ!これは、スカ…あ、こら!フォークで刺すな、ナイフで切るな」
 美味しそうに焼きあがったスカイにフォークを突き刺し、ナイフで切り分けようとするシノを必至で押さえ込むゾークJr。
 その、微笑ましい姿に戦意を喪失したタイレルは、ふと娘のリコ・タイレルのことを思い出してた。だが、その娘は、結果的にはハンター達に倒されたとは、夢にも思わないであろう。

「…アバヨ〜とっつぁん!!」
『誰が”とっつあん”だーーーーーーーーっ!!!』
 タイレルが物思いにふけっていると、なにやら頭上が騒がしい。見ると、人質を両肩担いで走るシリカを追いかける3将軍の姿が目に入った。その珍騒動にスカイ争奪戦を繰り広げていたゾークJr達も一時休戦して上の騒動を見つめていた。
「…何してるんだ?アイツ等は…」
 もはや、戦意0のタイレルは崖上の微笑ましい光景を見てただ呆れるだけであった。
「何の騒ぎでしょうか、Jr」
 シノは、新しい興味対象が増えたので、もうスカイの事は忘れてしまっている。ゾークJrも騒ぎの方向を向く。
「…ふむ、シリカが担いでいるフォマールの女性…合格」
「え?」
 何が合格なのか不明だが、ゾークJrはポツリと呟いた、よく聞き取れなかったシノは確認のため聞き返す。
「じゃ、そう言うことで、お嬢すぁん達を悪人の手か取り戻すとしますか!」
 言うが早いか、青い弾丸と化したゾークJrは物凄い勢いで崖を登っていく。ちなみに、無二の親友にして相棒のスカイは、ターキー状態で放置したままである。ムーンアトマイザーくらい使ってやれよ。
「あ、待っください」
 ゾークJrのいきなりの行動に呆気に取られていたシノだが、ゾークJrの後を追う。
「うぬっ、待て!」
 あまりの急な展開のため、不意をつかれたタイレルはゾークJrを取り逃がしたが、シノまで逃がす訳にはいかないと思い、慌てて触手を伸ばす。伸びた触手は、シノの足に絡みつく。バランスを崩したシノは、不意をつかれた形のため受身が取れず顔から地面に突っ込む。

「お嬢すぁん!今行きますからねーーーーーーーーーー!!」
 一方、崖を登りきったゾークJrは、狂ったように手を振り回しながらシリカ達を追う。

 自分を! 幸せいっぱいの家庭を! ついでに人々を!!救うことができるのか!?
 邪魔するものは全て破壊せよ!紅い破壊者シリカ!!
 火に油を注げ!緑の破壊者ジュン!
 お嬢すぁんのハートをゲットできるか?!ゾークJr
 君たちの保護者は泣いているぞ!
 …次回へ続く(のか?)
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ソウル・ブレイカーズ 第1029話「世界の中心でアイを叫んだかもしれないケモノ」
シリカ [Mail]
12/13(Mon) 21:55

続きませんでした_| ̄|○

 収拾をつけるには、ラグオルを爆破して「みんな星になりました」とかしないと終わりそうもないので、このファイルを闇に葬りました(苦笑)

 ちなみに、変更前のファイルでは、ゾークJrはバーニィと言う名前でしたが、あまりにも実際のバーニィと性格が違いすぎるので変更しました。

この小説が原点で、これを何とか完成させようと書き始めたのが、DC版PSO公式BBSに掲載した、ソウルブレイカーズDCなのですが…心半ばにして倒れました(爆)
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