Turks Novels BBS
〜小説投稿掲示板〜


[新規投稿] [ツリー表示] [親記事一覧] [最新の記事を表示] [ログ検索] [ヘルプ] [ホームページへ戻る]


- 今を生き抜く獣達〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜 - サムス・アラン [12/22(Sun) 17:56]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜 2 - サムス・アラン [4/21(Mon) 1:22]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜3 - サムス・アラン [6/4(Sat) 8:09]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜4 - サムス・アラン [6/4(Sat) 8:25]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜5 - サムス・アラン [6/4(Sat) 8:44]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜6 - サムス・アラン [6/4(Sat) 8:57]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜7 - サムス・アラン [6/4(Sat) 9:05]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜8 - サムス・アラン [6/4(Sat) 9:18]
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜9 - サムス・アラン [6/4(Sat) 9:55]



△上に戻る
今を生き抜く獣達〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜
サムス・アラン [Mail]
12/22(Sun) 17:56
今を生き抜く獣達 〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜

フェリス南、大商人トルストイ・セントバーナードの屋敷
がある。トルストイ・セントバーナード…裏世界での方が
有名な男でもある。2・3の盗賊団のボスという噂もちら
ほらと。その屋敷に今丁度トルストイが帰ってきた所、二
十三時の事である。

「見ろよカルナ、この輝きを!」

頭の禿げ上がった男トルストイが青い宝石を天に掲げる。

「ブルースプラッシュオーブ!!魔力を秘めたオーブがや
っと手に入ったぞ!!」
「いわくつきな物好きねあなた。」

その妻であるカルナ。トルストイの首に手をまわし

「たまには私の相手もしてよ…」

部屋の片隅の鎧にかくれ、それを見ている者がいた。
(…くぅー、あれか、ブルースプラッシュ…絶対手に
いれてやる…)
少年だ。10代半ばの。
(…!?)
しかしもう一人、部屋に入ってきた。

「…ふんっ、貴様がトルストイか、私に何か用か?」

緑色に輝く、後ろで束ねられた髪、とても鋭い目つき、
深緑のマント、…そして背に負った大槍。

(あ…あいつは…)

「おーきたか死神。」

死神と呼ばれたその女は、ゆっくりとトルストイの方へ歩む。

「まー用というのはだネ、この私の護衛を頼みたいのだよ。」
「ほぉう。」

(…やべー…あんなのがいるんじゃ身動きが取れねえ…!!)

死神カリカは、部屋の片隅の鎧を見

「じゃあまずそこに隠れている害虫から駆除して行こうか。」

(…!!?)

死神はゆっくり槍を構える。

「ちぃっ!!」

少年は鎧を蹴り倒して窓ガラスへ向かって飛び込む。

「…くっ!?」

窓ガラスはわれ、少年はそのまま湖に真っ直ぐ突っ込む。

「ふん…逃したか。」

死神は軽く舌うちをする。

「ほー、よく見つけてくれたねー死神ちゃんっ。」
「…ちゃんをつけるな。」

死神はため息をつき部屋の片隅を見て

「あんな所に隠れる奴も隠れる奴なら、気づかん奴も
気づかん奴だ…。」


マリーの実でとても有名な町サン・マリーノ、その一画
にあるPUBスーペアリア、黒猫の盗賊の通り名をもつ
バンダナの少年リクオは、昼食を取っていた。

「…なあマスター」
「あん?」
「こいつぁ一体なんだよ…」

リクオは自分の食べている昼食を指す。

「見ての通り、俺様のお手製料理“マックナイト・クック
ドゥー・サーモンマリネ丼だ!」
「…もーちょっとましなもんつくれよ…」

うんざり口調のリクオにずずいっとつめよるマスター。

「てめえ金もねーくせにうちにメシたかりにきやがったん
だ、つべこべいわずに食え、そいつは試作品なんだ。」
「試作品ねえ…。」

リクオは口をもごもごし、口の中を空にして

「よほどの物好きじゃねーかぎりこんなもん…」
「こんなもんとはなんだてめえ、俺様の腕を駆使して作っ
た高級料理だぞっ!」

と、マスターと争っていた中…

「お、いたいた、リクオーっ!!」

店に入ってくるなり勢いよくリクオに飛びつく少年。

「うお!?なんだクーじゃないか」

リクオは以外そうにクーを見る。

「お前、いつこっちに戻ってきたんだ!?」
「つい昨日だよ、ちょっとえらい目にあってやー」

クーはさらにリクオにつめより

「ここにきたらお前に会えると思ってたぜー。どーだ、
一稼ぎしないか!?いい儲け話あってさー」
「もーけ話ねえ…お前と組んでろくな目にあったため
しねーからなあ」
「今度はぜってーもーかるって!!」

クー・グラシダル、その昔リクオとともに盗賊をやっ
ていた少年だ。かれこれ二年の付き合いになる。

「絶対ねえ。一体どういった内容だ?」
「なーに簡単簡単、俺とくんである屋敷から宝石盗み
だすだけだって。」
「普通に難いだろぉーー」

ぱかっとクーの頭を叩く。

「…てぇー…まあ聞けや。その宝石ってなぁあの有名な
ブルースプラッシュなんだ!」
「ブルースプラッシュ!?」

リクオとマスターが口を揃えて叫ぶ。

「…伝説上に出てくるレザヌーラの女神が祈りの時に使
う青いオーブ…そういう言い伝えはあるが、それが本
物なら確かに悪い話じゃねえ…お前もいっきに大金持
ちだぜリクオ!!」
「ああ…本物なら…な。それは確かなんだろうなあ…クー。」
「俺が保障するよ、あれは本物だ!」

リクオはクーをじーーっと見て

「てめーの保障ほどあてになんねーもんもねーけど
な…」
「なーんだよ、中には当たりもあったろ?いろいろ
と稼がせてやったじゃねーかやー」
「…ま、いっか、今んとこ仕事も金もねーし。」
「そーか、まー今回仕事終わるまではメシ代くらい
出してやるぜー」
「…なんか気前いいなクー。」

クーは胸をはって

「最近金回りがよくってよぉ、びんぼー人一人養う
くらいわけねーぜーぬっはっはっはっ。」
「くっそーー、なんかくやしい」

金のないリクオに言い返す言葉はない。

「そームキになんなって、今回当てれば俺とお前は大
金持ちさ!!」

そんなクーの視線がリクオの顔から少し下に移り

「うまそーなもんくってんじゃねーか、リクオぉ」

マックナイト・クックドゥー・サーモンマリネ丼。
リクオもそれn視線をむけ

「…食うか?俺いらねーし…」
「本当か?やりぃっ!!」

サーモンマリネ丼をうまそーにくいはじめるクー。


21時、もうすっかり夜だ。

リクオとクーはマリーノの町の南、ニングルの森を歩
いていた。

「リクオ」
「あん?」
「そろそろやすもーぜー…疲れた。」
「…そーだな。」

リクオは荷を降ろして座る。

「なあリクオ。」

クーも座り込み、ウォッカの入った水筒の蓋を
あけ、飲み始める。

「お前バッサーとはうまくやってんのか?」
「…バッサー?」

リクオの昔つきあっていた女である。

「…いや、だいぶ前にさよならしたぜ。」
「へー…なんで?」
「他に男つくりやがったのさぁー」
「ふーん…。」

クーはけだるそうに空を見上げ

「ま、お前のような風来坊じゃしょーがないか」
「てめえに言われたくねえ」
「だっはっはー。」
「そういえばクー、お前はどーなんだ?」
「え、俺?」

クーは首筋をかきながら

「今でも片思いさ。」
「おいおい…。」
「リクオは今はフリーなのか?」
「悪いかよ。」
「…いんや。」

クーはあくびをしながら

「似合ってるぜ。」
「…嫌味か」
「んにゃ、率直な感想。」
「…どっちもうれしくねえぇぇぇぇぇ」

そろそろ焚き火がきえかかってきている。


「ねえシャン。」
「うん?」

マリーノの南、セントアンドリューの町中にあるおし
ゃれな宿屋さん〜シェイク・スピア〜、ポニーテール
の女メルが宿屋に入ってくるなりフサフサのマダラ頭
にバンダナの女シャンにかけより

「知ってる?フェリスの町のトルストイって男がブル
ー・スプラッシュ手に入れたんだって。」
「…なにぃ!?」

ポニーのメルとフサフサのシャン、今でこそこの宿屋
を経営している二人ではあるが、その昔は二人組みの
盗賊「キタキツネのメルシャン」で世間を騒がしてい
た二人である。

「…どーするシャン、ブルースプラッシュだよ?」
「…盗みにいくか。」

シャンの拳に力が入る。

「そーいうと思った、でも私達はもう足を洗う
って決めたんだよ、宿屋もあるしぃ。」
「っっだーーっ!!盗みに行きてえのか行きた
くねえのかどっちなのよメル!!!」
「…行きたひ…。」
「じゃあ準備はじめよ。」
「準備っていわれても今お客いるし…」
「メドがつきしだいうちきって店しめるのよっ
!!」
「あいさーっ!!」


朝八時

「すかーーっ」
「…ん…ぐぐ」

リクオは腹部に何か苦しみを感じ、目をさます。

「…な…なんだ。」
「すかーっ。」

リクオは自分の腹部を見る、なんとそこにはクーの
頭があるではないか!とても気持ち良さそうに寝て
いる。

「こ…この野郎…。」

リクオはクーの鼻をつまむ。

「…ん…ぐぐ…ぐぐぐ…」

クーは苦しそうだ。

「ん…ぐぐぐ…ぐぐぐぐ」

とても苦しそうだ。

「…んがあ!」

さらに苦しそうだ。ついには目をさます。

「…がーーー…なにすんだよリクオぉ」
「うるせえ、てめーが俺をマクラにすっからだ!」
「んぐ!?わり、そりゃしらなんだ。」

むくっと起き上がり

「ほしにくあるぜー、くうかリクオ」


フェリス南、トルストイ・セントバーナードの屋敷

「この宝石は明日この大広間に展示する。死神さん
はそれの護衛をしてくれればいい。」

トルストイはブルー・スプラッシュを天に掲げる。

「ふん、金持ちのコレクターには自慢したがりが多
い物だ。」
「ふわっはっはっは、早くこの宝石を皆に見せてや
りたくてのぉ」

カリカの皮肉に全くこたえる様子のないトルストイ。

「素敵よあなた」

妻のカルナはうっとりとトルストイを見つめている。

「…ふん、まあ私は金さえもらえば文句はないのだ
がな…。」

そのころリクオ達は

「ぐがおーーーーーっ!!」
「ひいぃぃぃぃぃ!!」

クマに追われていた。

「ばっかやろーーーっ!なんでクマの餌なんか横取
りするんだ!!」

逃げながらクーの頭をはたくリクオ。

「だってうまそーだったんだもんよぉあの魚ぁー」

だんだんクマとの差がちぢまってくる。

「だー!てめー責任とってクマのエサになれ!俺逃
げるし!」
「あ、ひでーなリクオ、今までどんだけもーけさせ
てやったと思ってんだーー」
「知るかっ!!今くわれちまっちゃ意味ねーんだよ
っ!!」

二人がとやかく言っている中、前方から人影が見え
てくる。やたらと大きい女だ。その女には見覚えが
あった。

「ありゃあたしか…。」

黒く長い髪、異国風の武道着に真っ白のヘアバンド。

「…くま…でかいくま…うまそう。」

女は右手を軽くならし、くまに突っ込んでいく。

「がぁぁーーーーっ!!」
「あううーーーーーっ!!」

べきぃっという音とともに、女は拳をくまの頭
にたたきつける。くまは顔から血をふき、その
まま倒れる。もはやぴくりとも動かない。
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜 2
サムス・アラン [Mail]
4/21(Mon) 1:22
「うーーっくまちょろい!ジンつおい!さっそくクマ食う!」

ごつい女、もといジンはリクオの方を見

「大丈夫かっ、このへんくま多い、気をつける!!!…て、
 あれ?」

ジンはリクオの顔をじーーっと見

「お手。」
「にゃん。」

ジンに差し出された手の平にリクオはいつの間にか手を乗せて
いた。

「うーっかしこいかしこい、やはりお前か。」
 
リクオの頭をなでるジン。リクオの肩がふるふる震えている。

「せっかくだ、お前と…もう一人のそこのチビ、くる!この
 クマごちそうするぞ!」

そう言ってジンはリクオとクーをひょいっとつまみあげる。

「…なあリクオ。」
「んだよ…。」
「…知り合いか?」
「まーちょっとね…。」

リクオは首をふる。

「でも、そん時ぁ敵だった…。」


ニングルの川のほとり。

リクオ、クー、そしてジンはおいしそうにクマの丸焼きを
食べはじめていた。

「うっ、そーいえばお前名、なんて言う?」

ジンは肉をほおばりながらリクオをさす。

「俺?リクオ・ディヅァーだ。名前言ってなかったな。」
「う…?リクオ?なんかかたくていい名前。」

ジンはさらに肉をほおばり

「この森修行場にもってこい。食糧現地調達できるっ!!」
「このクマの事か…。」

ジンは腕をぶんっとぶんまわし

「ジンつおい!皆から豪極のジンと呼ばれてる。豪極の名は
 伊達じゃない!」

(…そういえばこいつ筋肉バカって呼ばれてtな…)

リクオは口にすら出さないまでも、目がそれを語っていた。

「そーいえばリクオ、お前トルんとこのブルースプラッシュ
 見にいくのか?」
「ぐふっ!?」

咳き込むリクオ。

「な…なんで知ってんだよお前」

ジンは骨を噛み砕きながら

「トル、なんかパーティー開く言ってたぞ。ブルースプラッシュ
 皆に見せたい言ってた。」
「なんとまぁ…。」
 
クーはあきれ返って

「わざわざ盗みに来て下さいといわんばかりだナ…。」

リクオは腕を組み、しばし考え

「なあジン。」
「う?」
「あんたトルストイの事、しってんのか?」

ジンは再びくまの肉を引きちぎり

「知ってるぞ。サガよくそいつの仕事受ける。」
 
(サガ…たしかこいつらのボスだっけ?)

「ジン、トルにブルースプラッシュ見に来い言われてる。
 だから明日のパーティ行く。」
「…なあジンさん。」

クーはジンにつめより

「そのパーティ、なんか招待状みたいなもんいるのか?」
「いるぞ。そーかお前達も行くのか!」

クーは困ったように

「行きたいんだけど、招待状がないんだよね」
「まかせる!!ジンの友達言えば、通してくれる!!」

ジンはクーの肩をばんっとたたく。

「え、いいのかそれで…」

ジンはようやくクマを食べ終わり

「そーときまれば、今から一緒に行く!!」


「ふん…つまらん。」

トルストイの屋敷の中、カリカが一人ぼやいていた。

「明日護衛をすれば良い…か。それまでする事がないのだ…。」

とりあえず「今日は自由♪」と言われ、仕方なく屋敷を
ぶらついている。

「あーもう、やってらんねーわよう!なんで宝石守るために
 きたあたしがお掃除させらんなきゃいけねーのよう!」

それはカリカの知った顔であった。幻のリザルーリャ。…その前
の旅でいろいろとお世話になった。

「サガ様もひでーわっ!?なにが「リザを預けておく、なんなり
 と使ってくれ」ようっ!人を物みたいに!!」

さっするに、どうやらサガがトルストイにリザルーリャを預けた
という事らしい。仕事か何かで。

「まーったく…うん?」

リザは視線を感じ、こちら側をふりむく。そして目があった。二
人の間で瞬時沈黙、そして…。

「…あんたたしかこの前の。」
「…ふん、覚えていてくれて光栄と言っておこうか。」

カリカはリザの方に向かって歩きながら

「貴様もトルストイ・セントバーナードに雇われた口か?」
「正確には仕事を受けたのはサガ様、であたしはサガ様の
 命令にしたがってここの宝石のおもりする事になったっ
 てわけよぅ。」
「ふん、そうか。私はトルストイ自信の護衛だ、今回は
 貴様と手を組んでの仕事になりそうなのだ。」
「あたしの足ひっぱんじゃねえわよ?」

リザの言葉にカリカはふてきな笑みを浮かべ

「良い自身だ、それなりに期待している。」


二十時、日もくれ月が輝いている。

リクオ達一行はニングルの森をこえ、マリーノの町の南にあたる
セント・アンドリューについていた。

「フェリスまでもうちょいってとこか…どっかで休んでいこーぜ
 リクオ。」

クーが立ち止まる。

「なんだよクー、もうバテたのか?」
「何いってんだよ、確かにこのまま歩きぁ今日中にフェリスにつ
 くさ。でも今フェリスじゃあブルー・スプラッシュを見ようと
 沢山の人間がつめかけてるこったろーよ、むこーじゃ多分宿屋
 はいっぱいだぜ。」
「それもそうか…。」

仕方なく一行は近くのてごろな宿屋へ向かう。

 
おしゃれな宿屋さん〜シェイク・スピア〜

カランコロン

「ん?お客さんかしら。」
「…えーーーー?」

メルの言葉にいやそうにうめくシャン。

「これからトルストイの所に行こうと思ってたのにぃ…。」
「じゃあおいかえす?」

言ったメルの頭をぱかっと殴る。

「いった〜い…」
「馬鹿!店にとってはお客が命、お客が神様なのよ!?閉店の
 看板たててなかった以上追い返せるわけないじゃない!!」
「でもぉ…。」
「あんた、宿屋の鉄則覚えてるよね?」

シャンは天を指し

「どんな状況であれお客が来た以上身の安全を保障し、快適な
 一夜を送ってもらわなければならない!」

メルはみけんに指をあて

「そのための宿屋です…。」
「わかったら客をもてなす!」
「らじゃーっ!」

メルはとてとてと玄関の方にかけていく。
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜3
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 8:09
「いらっしゃいま…ふぐぉっ!?」
 
奥から出てくるなり、後ろによろけるメル。
 
「…う?何?」
「い…いぃぃぃぃいぃいぇ…ごごご…ご用件は…?」
 
メルのまん前にはジン。2メートル10センチの大女である。
ジンはメルに詰めより
 
「う、部屋貸せ。」
「…シャ…シャンーーーーーっ!!!」
 
メルは、涙目で奥に戻って行く。
 
 
「シャンーーーーっ!!!」
「…あん?」
 
気持ち良さそうに煙草を吸っていた所にメルが部屋に飛び込
んで来る。
 
「あ…あうっあうっ…客が…へ…部屋貸せって…」
「…?…貸せばいいじゃん。」
 
メルの尋常ではない状態に、シャンはどっこいしょと立ち上
がる。
 
「いったいどうしたのさ。」
 
とりあえず、表に出るシャン。
 
 
「へいよー、らっしゃ…うがぁ!?」
 
客を見るなり、腰を抜かしかけるシャン。
 
「…な…なんだぁっ!?う…うちに何の用よ!?」
 
シャンはおびえながら、ジンに向かってさけびかける。
 
「う、部屋貸せ。」
「な…なによぉっ!?他当たれよ、何で私達の店を賊のアジト
 としてあんたらに提供しなきゃなんないのよっ!!」
「うっ!?何っ部屋貸さないっ!?ここ宿屋違うのかっ!?」
 
カウンターをガンとたたくジン。びくっと振るえあがるメルと
シャン。
 
「な…なな…何だよ、やんのかよっ!!」
「ジンとやりたい?」
 
ジンは、シャンの首をがしっとつかみ、自らの顔位置まで近づ
ける。
 
「ぐ…ぐぐ…」
「お前いい度胸、その顔粉々にする!」
 
ジンは右手を振り上げ…しかし
 
「や、やめてぇーーっ!シャンが死んだら、お店が、経営がー
 −−−っ!!!」
「あうーっ邪魔っのけっ!!」
 
ジンは、メルを3メートルけり飛ばし
 
「お前、こいつの次に殺すっ!」
「…シャ…シャンん…」
 
メルは血をはき、その場に倒れ込む。
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜4
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 8:25
「…なあクー。」
「…なんだ」
 
その場の一連を見ていたリクオとクー。
 
「…意見を聞きたい。」
「そうだな…俺が思うにさ」
 
クーは、かりこりと頭をかき
 
「もうそろそろジン姉ぇを止めてやらないと、取り返しの
 つかない事になりそうな気ぃするぜー…なんとなくだけ
 ど、さ…。」
「何故だろうな…。」
 
リクオは頭を抱えながら
 
「お前の”絶対”はアテにならないけど…」
 
ジンの方を見る。
 
「お前の”なんとなく”は、以外と良く当たる気がするぜ…」
「へへん照れるぜ…とか言ってる場合でもねーぜやー…」
 
それからとりあえず二人がかりでジンを止めるのに、反刻ほど
かかった。
 
 
「…悪かった、いや見た感じ強盗にたいに見えたから…。」
 
長イスにうなだれながら、シャン。
 
「…うー…ジンも悪かった、大丈夫か?」
 
心配そうなジンに、シャンは煙草を軽くふかし
 
「ありがと、でも心配ならメルにしてあげな。」
 
同じく、長イスでぐったりしているメル、さすがにジンの蹴り
は尋常ではなかったらしく、まだ立ち上がる事は出来ない。
ジンはメルの所へ行き、メルを抱きかかえる。
 
「…大丈夫か?手加減はしてないけど、死ぬほどじゃないはず
 …。」
「…え……ええ…確かに死んじゃいないよ…ぐふ…で…でも…
 ……死ななきゃいいってものでも…」
 
もはや風前のともし火である。それでも必死にジンの言葉に突
っ込むあたり、キタキツネのメルシャンの異名は伊達では無い。
 
「まー初めに止めなかった俺らも悪いんだけどやー…で、ここ
 の部屋、貸してくれねーか?」
 
クーの言葉に、シャンはメルに向かってキーを投げる。
 
「ほらメル、案内したげて。」
「ぐ…ぐふ……シャ…シャン…そんな…私、今…」
「ええ、今メルが当番でしょ?さ、早く行ってきな。」
 
シャンの言葉に、メルはうめきながらも
 
「シャン…す…少しくらい休ませてくれても…」
「だあめ。お客を待たせちゃ行けないわ、宿屋の鉄則、それ
 はお客に安心、確実、迅速、清潔、そして何よりも快適に
 すごしてもらわなければならないっ!」
 
シャンのその言葉に、メルは血を吐きながらも
 
「…そのための宿屋です…」
「わかったら、とっとと案内するっ!!」
「…らじゃー…ぐふ…」
 
メルはよろめきながらも、歩き出す。
 
「そーそーメルぅー」
「…な…何?」
 
シャンは玄関の方を親指でさし
 
「ついでだし、表に”閉店”の看板出しといて、あたしもー寝
 るし。」
「…うー…それ、ジンやろうか?」
 
どういうわけか、だんだんメルの事が可愛そうに思えてくるの
だろうか、ジン。
 
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜5
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 8:44
「…おい、リザルーリャ。」
「なによう。」
「ヒマなのだな。」
「全くよう。…あちゃー結構でけえ手ね…。」
 
一方、トルストイの屋敷では、リザルーリャとカリカがチェス
を楽しんでいた。
 
「…んぁぁぁああもう!なんであたし達やる事もねぇのに外に
 出ちゃ駄目なワケ…!?」
 
リザルーリャはわめきながら、ピース(駒)をだん、と置く。
 
「ふん、そうだな。」
 
丁度その時、ガチャっとドアが開き
 
「ねえ、そこのお二人さん、下のお台所今結構忙しいから、手
 伝いに来てくれるぅ?」
 
トルストイの妻、カルナがそう言うだけ言って、ドアを閉めて
去って行く。
 
「あれのためではないか?」
「あーーーーあああっもうっ!なんでこの幻のリザルーリャが
 そんなナメた事させられなくちゃならねぇのよぅ!?」
 
地団太を踏むリザルーリャ。
 
「ふん、運が悪かったとでも思って、諦めるしかなさそうなの
 だな。そうそう、リザルーリャ。」
「なにようトットちゃん。」
「カリカ・トゥートットだ。」
 
カリカはこと、と、ゆっくりピースを置き
 
「チェックメイトだ。」
 
 
トルストイの屋敷の食堂広間、奥の台所。
 
「そこのアータっ!」
 
神経質そうなふとっちょメガネのおばさん。
 
「ぬう…」
「アータ何枚お皿割ったら気がすむん!」
「す…すまない…あぐっ…」
 
おばさんにゲンコツをお見舞いされるカリカ。そして
 
「ぺぐぅ!」
 
次はリザルーリャの尻に蹴りを入れる。
 
「そこのアータも!何お肉こがしてるのっ!?」
「あ…あにすんのよぅっ…!」
 
おばさんにつっかかるリザルーリャに、さらにおばさんの
ボディブロがリザルーリャの腹部に炸裂する。
 
「げばぁっ…!?」
 
さらにおばさんは手にもっているまな板でばしばしリザル
ーリャを叩き続ける。
 
「あーたこそ何まのぬけた事やってんのー!!あーたのお
 かげでお客に差し出す牛ふぇれのそてー、一枚無駄にな
 ったんヨっ!?一枚いくらするとおもってんノーー!!」
「あたたたたいてぇっいてぇわっ!?あ、あたしが悪かっ
 たわっだから堪忍してぇーーーーっ!!」
「ハイ解ったらとっとと持ち場につくっ!!」
 
そしてずかずかとよそへ行くおばさん。
 
「…ひ…ひでぇわぁぁ…あたしは用心棒なのよぅ…?」
 
涙を流すリザルーリャの肩をカリカはぽんと叩き
 
「皿にしろ肉にしろ、ここの物を駄目にしてしまったのだ、その
 責任は働いて取るしか無いのだ。」
 
割れた皿をせくせくとひろい出す。リザルーリャはぐすぐす泣き
ながら
 
「なんであたしがこんな目にあわなくちゃなんねーのよぅ…」
「…今は、耐えるのだ…。」
 
 
 
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜6
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 8:57
ぐがーーーーー
 
「…なあクー。」
「…あんだよ…。」
 
おしゃれな宿屋さん〜シェイク・スピア〜の一室 
 
「なんで俺ら3人が同じ部屋で寝なきゃいけないんだ…。」
 
ジンに肩を組まれた状態のリクオがぼやく。
 
「文句ゆーなや…宿代だしてんの俺だべ…?安くつくなら
 いーじゃねーか。」
「ああ…しかし3人で寝るのはどうなんだこれ…。」
「いやならてめー床で寝ろや」
「…じゃあクー、お前こいつを何とかしてくれ…。」
 
ぐがーーーーーー
 
大きないびきをたてるジン。リクオとクーの肩を組んだまま
離してくれない。
 
「リクオ…このねーちゃん、クマ素手で殴りころす化け物だ
 ぜ…俺様のかよわい腕でこの手をほどけるわけねーぜやー」
「ああ…まったく、何をどんだけ食えばこんなになれるんだ
 …顔は美人なねーちゃんなんだけどなぁ…それにしても…」
 
ぐがーーーーーー
 
「…うるせえ…。」
 
 
朝八時
 
 
「…なあクー。」
「…んーだよ…。」
 
リクオは眠たそうに
 
「よく眠れたか…?」
「…んにゃー、あんまり…。」
 
クーは目の下にクマを作っている。
 
「…リクオ…そろそろ起きる時間だーな…。」

「…ああ…」
 
ぐがーーーー
 
まだ目の覚めないジン。
 
 
八時半
 
 
「ここのメシ、うまいぞ!」
 
ジンがすごい勢いで朝食にありついている。
 
「そーだねー…おいしーやなー…。」
 
もはや気力のかけらもないクー。
 
「この塩とソースのハーモニーがメルヘンー…」
 
寝ているのか起きているのかもわからないリクオ。
 
「う?どうした二人とも、元気ないぞ」
 
にぱっと笑顔のジン。
 
「…元気そうだなジン…」
 
もはや死に掛けているリクオ。
 
「うー!ジンとっても元気!」
 
一回殺そうか、ふとそんな事を思ってしまうリクオ。
 
 
ようやく朝食を終え、出発の準備を整える二人。
 
「…リクオー…」
「どうしたクー。」
「…今日ブルースプラッシュ盗まなくちゃなんねーのに…さ、
 けっこーハードだや…。」
「…ま、人生いろいろとあらあな…。」
 
ドアを開け、差し込んできた朝日が妙に眩しかった。
 
 
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜7
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 9:05
「…おい、そろそろ起きろ。」
 
トルストイの屋敷の一室。
 
「…うーん、駄目よぅサガ様ぁっまだ早ぇわぁ…」
 
とかいいながら、カリカに抱きつくリザルーリャ。そして
 
「…はっ」
 
目覚める。暫く沈黙のまま見つめあう二人。
 
「ふん、朝飯が出来ているらしいから、食いに行くぞ。」
「…あれ、あれれ?ここは…。」
 
リザルーリャは我を取り戻し
 
「…そうだ、あたしここでどういうワケか、メイド染みた事
 してたんだっけ…。」
「ふん、メイドの仕事はもっと優雅な物だ。」
「いちいち突っ込むんじゃねぇわよぅっ!!で、朝ごはんが
 何?」
 
カリカは、ふーっとため息をつき
 
「カルナが態々私達のために作ってくれたそうだ。」
「あのおばはんが?なんで?」
 
カリカはさて、とあさっての方向を向き

「ふん、年ゆえに、といった所か。」
「おせっかい好きになるもんねーおばはんになると」
「年がどうしたってぇ?」
 
「「んぐぅっ!?」」
 
カリカとリザルーリャの会話に、さらっと入って来たのは
他の誰でもないカルナ。
 
「い…いいいや、こ…こここ今年もいい年でおめでとうよー
 って…。」
「ふ…ふん、宴の席での酒はほどほどにとな…」
「…二人とも、言ってる事ばらばらよ。」
 
動揺を隠すのが下手な二人であった。
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜8
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 9:18
十一時 
 
「相変わらずにぎやかな所だぜ。」
 
リクオ達は、フェリスについていた。
 
「そだリクオ、魔導士村見にいかねーか?けっこー掘り出し
 物あんだぜー。」
 
クーの言葉にリクオは頭を抱え
 
「…魔導士村か…あんまりいい思い出無いんだけどな…。」
 
魔導士村、以前リクオがジンとリザルーリャに待ち伏せを食
らって殺されかけた場所である。
 
「いーじゃねーかー、まだ時間あるしやー。」
 
 
魔導都市フェリス、魔導士村。
 
「魔導の秘薬はいらんかえー?」
「世にも珍しい光のオーブだよー」
 
今魔導士村では、市場が開かれていた。そこもかしこも、色々
と怪しい物が並べられている。
 
「あ、これなんかシンプルで俺好みだぜー」
 
と、くまのぬいぐるみを抱きしめるクー。
 
「何がどうシンプルなんだ。」
 
リクオがクマの頭をポンポン叩いている。
 
「大丈夫、そのクマよりお前の方がかわいい、リクオ。」
 
笑いながらリクオを抱き上げるジン。
 
「リクオ…てめ、えらいのに気にいられたやーな…。」
「…よせや、照れるじゃねえか…。」
 
気力の無いクーの言葉に、やはり気力の無い言葉で答える
リクオ。
 
「お姉ぇーちゃん、このクマくれや。」
 
気を取り直し、店のお姉さんに声をかけるクー。
 
「あら、お客さんお目が高い、微笑みのクマさんは今結構
 話題を呼んでるのよ。」
「ほ…ほほえみのクマさん…?」
 
お姉さんの言葉に、目が点になる3人。
 
「ええ、そう、日が沈み、美しい夜になり二十四時の針が
 すぎさろうとするか否かの狭間で、ふっとやさしく微笑
 んでくれるのよ。」
「いやじゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「あううぅーーーーー!!」
 
絶叫するリクオと、その後ろで身を小さくして隠れるジン。
しかし…。
 
「ちょーだいっ♪」
 
笑顔で金を差し出すクー。
 
「まいどありです。」
「やったぜー。」
 
くまをもてあまして喜んでいるクーを異様な目で見るジンと
リクオ。
 
「…んーだよてめーら。」
 
クーの言葉にリクオは顔を引きつらせながら
 
「…いや、いいけどさ…。」
「う…ジンのそばにそれもってきたら潰す…」
 
ジンも、がたがたと震えている。
レスをつける


△上に戻る
〜鐘を鳴らそう、お前の為に〜9
サムス・アラン [Mail]
6/4(Sat) 9:55
十三時、トルストイの屋敷にて、パーティが開かれる。
会場では、色々なコレクションが並べられているが、肝心な
ブルー・スプラッシュが皆の前に現れるのは、夜、ダンスパ
ーティが行われた後らしい。
 
「…ジン様ですね?」
「う。」
 
屋敷の前でメイド風のお姉さんがジンに確認を求める。
 
「うしろの二人もつれてく、いいか?」
「…え。」
 
お姉さんは少し戸惑い
 
「少々お待ち下さい。」
 
と、奥へ駆けて行く。
 
「…大丈夫なのかジン。」
 
リクオが心配そうに聞くが
 
「大丈夫!」
 
ジンはそれの一点張りである。そして奥から再びメイドが現れ
 
「よろしいですよ、どうぞ。」
「うっじゃあ行く!」
 
そして、屋敷の中に入って行く3人。
 
 
屋敷の中はとても広く、様々な客がテーブルについている。
 
「じゃあ、この辺座る!」
 
どかっと手近なイスに腰を下ろすジン。
 
「やっぱりブルース・プラッシュってだけあって、沢山集
 まってんな。」
 
と、あたりを見回しながらリクオ達も腰を下ろす。そしてか
くメイド達が、様々な料理を配りだす。そしてほどなくリク
オ達のもとにもメイドが一人。
 
「お、来た。」
 
緑に輝く黒い髪をかきあげた、真っ赤なルージュが印象的な
メイド。そのメイドは、リクオ達を見て、一瞬凍るが
 
「良く来た…てくれましたお客、どうぞ楽しんで言って下さ
 い」
 
テーブルに料理を並べはじめるメイド。
 
「…美人だなぁ…。」
 
リクオはただ、見とれていた。クーはジト目で見ている。
 
「おーおー、鼻の下のばしちゃってやー」
 
と、クーはそのメイドを見ているが
 
「…ん?」
 
クーは何かを思い出し、いそいでメイドから顔を背ける。
 
メイドは料理を並び終え、その場を去る。
 
ーーー間違い無ぇ…アイツだ…
 
クーはガタガタ震えている。 
 
「う、何いまのメイド、無愛想で可愛くない。」
 
ジンは気楽そうに、料理に手をつけていた。
 
 
食事はかなり豪勢であった。
 
「えー、みなさん、本日はこのトルストイ・セントバーナード
 の為に…」
 
前でトルストイが何かを話しているが、リクオ達の耳には届い
ていない。そんな中、メイド達が食後のティーを配りだす。
 
「はいどーぞ。…はう!?」
「…う?…!お前、リザ!?」
 
メイドの顔を見るなり、目をまんまるくするジン。
 
「ジ…ジン、あんた今お仕事休暇中じゃなかったのぅ!?」
「う、そうだ。だからこうしてここに遊びに来た。」
「…あ…遊びに…。」
 
リザルーリャががくっと肩を落とす。
 
「はーそーいーわねージンちゃんはこんな所でくつろいでい
 られてー…」
「そういうお前、こんな所で何してる?」
 
ジンの言葉に、リザルーリャはぱっと手を広げ
 
「見ての通りよう、この幻のリザルーリャがメイドよ、メ・イ
 ・ド。」
「う?もうサガに従わないのか?」
「はうぅーーーーっ!!サガ様の命令なのよこれはぁーーっ!
 !!!」
「ふーん。」
 
わめくリザルーリャに、ジンは気のなさそうな返事。
 
からんっコトコトトト…。
 
ジンの手から、スプーンが床に転げ落ちる。
 
「おいリザ。」
「なによう。」
「スプーン落ちた、拾え。」
「……あん?」
「客がスプーン落とした、メイドのお前、拾え。」
 
ジンは優雅にコーヒーを飲む。
 
「ぐ…ぐぐ…て…てめぇねぇ…。」
 
肩をわなわなと震わせながらもスプーンを拾う。
 
「ほ…ほーら、拾ってあげたわよ、お客様っ♪」

ジンはリザルーリャの広い上げたスプーンを一瞥し
 
「スプーン汚れてる、洗って来い。」
「んくぅぅっ!?」
 
さらに顔がひきつるリザルーリャ、額の青筋がまた一本。
 
「しょ…少々お待ち下さいませ…。」
 
ひきつけでも起こしそうな笑顔で、奥へかけていく。
 
「…む…むごい。」
 
それを見ていたリクオは、リザルーリャの後ろ姿を哀れな
目で見送っていた。
 
「う、いつも人をバカバカ言うむくい。」
 
しっかり根に持っていたのか。
 
「…しかし、そろそろ爆発だぜあの姉ぇちゃんさ…。」
 
クーも、心配そうだ。
 
 
「えー、これはクリスタルマウンテンに行った時…」
 
トルストイの自慢話はまだ続いている。
 
「…お…お客様、スプーン洗ってきたわよ…♪」
「う?」
 
ジンはリザルーリャを見
 
「コーヒー全部飲んだし、いらない。」
 
と、軽くリザルーリャをあしらう。
 
「…て…てめぇ…百万回ぶち殺してやるわ…。」
 
リザルーリャが何かの魔法を詠唱し出す。
 
「うっ?やるかっ!?」
 
ジンががたぁっと立ちだすが
 
「ちょっとアータ!!!」
 
リザルーリャの詠唱がその叫びに遮断される。
 
「え…な、何よう」
 
リザルーリャの言葉がとどいているのか否か、ふとっちょ
メガネのキララさんがずかずかとリザルーリャの前へ来て 
 
がこんっ
 
「はがぁっ!?」
 
リザルーリャの頭に、100メガショックのげんこつをお
見舞いし
 
「なーにこんな所で油うってんのっとっととこっちきて皿
 洗いするっ!!」
「ひ…ひでぇわっ、あたしは犬や猫じゃねぇのよっ!?グ
 ロリアス帝国の法律に基づいて訴えるわよぅっ!?」
 
リザルーリャの言葉に、威風堂々と
 
「ここでは、アタシが法律よ。」
 
と、悪あがきをするリザルーリャにとどめを刺す。
 
「り…理不尽よぉぉぉぉっ!!!!」
 
キララにずるずるとひきずられていくリザルーリャ。あと
には、戦闘態勢のまま取り残されたジンが、何事かを理解
出来ないままそのまま立っていた。
 
 
レスをつける



Tree BBS by The Room