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- 時を越えた宿命〜第2話〜その1〜 - GUM [11/25(Mon) 3:07]
時を越えた宿命〜第2話〜その2〜 - GUM [11/25(Mon) 3:08]
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時を越えた宿命〜第2話〜その5〜 - GUM [11/25(Mon) 3:13]
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時を越えた宿命〜第2話〜その8〜 - GUM [11/25(Mon) 3:16]
時を越えた宿命〜第2話〜後書き〜 - GUM [11/25(Mon) 3:26]



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時を越えた宿命〜第2話〜その1〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:07
     PSOオリジナル小説「時を越えた宿命」
      《第2話:時を越えた勇者達〜中編》

今や第5医務室のマジックミラ−のこちらに設置されてる部屋、通称「観察者部屋」には研究者で溢れんばかりであった。
医務室内では、シンディ−が特殊言語通訳機につないだマイクの向こうで話をしている。
ベッドの上には、小柄な少女が一人座っていた。少女は検査用のロ−ブをきていた。
もう一人の少女は、ここからは陰になってみえないベッドに寝かされているのだろうか。
フィオナ達の位置からは見えなかった。医務室内での会話が聞こえる。

「私の言ってることが分かりますか?」

「・・・・・・・・。」

シンディ−は、検査の結果得られた、少女の母国語であろう言語で話しているはずであったが少女は何の反応もしなかった。

「私はシンディ−=レディアス。パイオニア2の評議員兼言語学者でもあります。あなたの名前は何ですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

このままでは埒があかないと思ったシンディ−は他の研究員すら追い出し、少女と二人きりになった。
マジックミラ−も結晶の働きを強くし、見えないようにした。机の上に固定されているマイクを、ワイヤレスのものに切り替える。
そして、少女のとなりに座ると優しく語りかけた。もちろん少女の側にもマイクをおいて自分たちの言語に変換させている。

「これで怖い人たちは居ないわ。ここにいるのは私達だけ。もちろん、私も、あなたに危害は加えないわ。
 ここは、あなたにとって安全な場所なのよ。さあ、ゆっくりでいいから、お姉さんとお話ししましょう。」
 
 シンディーは努めて優しく言った。

 「あなたの恐怖や、辛さは分かるわ。目が覚めたら、いきなりこんなとこに居るんですものね。
 でも、あなたのことを知らないと、協力したくてもできないわ。
 あなたがもと居たとこへ無事に戻るためにも、お姉さんに協力してちょうだい。」

「わ・・・・わたし・・・。」

少女の口から、言葉が紡ぎ出される。

「わ・・・・わたし・・・自分が・・・・・・誰なのか・・・・・分からない・・・・・。」

 辛うじて出た少女の言葉は、シンディ−も含め、周りに驚きを与えた。

「どういうこと?」

「頭に・・・・・靄みたいなものがかかって・・・・・・・何も・・・・思い出せないの。」

 「そう・・・・。それなら、無理に思い出さなくてもいいわ。」

『もしかして、記憶喪失?』

シンディ−は、自分が迂闊であったことを思い知った。
検査の結果では、頭部に損傷がないため、記憶などに関しても正常のままであり、会話しても平気だと思ったのであった。
記憶喪失までは、検査上出てこないからでもあるが、少女に苦痛を与えたのは間違いなかった。

シンディ−はこの少女のことを思うと可哀相になり、そっと抱きしめた。
少女もシンディ−にきつく抱きついてくる。よほど不安などを感じていたのであろう。少女は静かに泣き出した。

 「ご免ね。大変だったよね。苦しかったよね。悲しかったよね。それなのに無理に思い出させようとしちゃって。お姉さんを許してね。」

「うううん。それはいいの。お姉さん、やさしいし。でも、わたし、これから、どうしたらいいのかな。」

「それもゆっくり考えていきましょう。それでね、後もう一つだけ、聞きたいことがあるの。
 こっちの女の子のこと、あなた知らないかしら。思い出せる範囲だけでいいから、頑張って思い出してみてね。」

シンディ−に促され、もう一つのベッドに向かう少女。その足取りは重かった。
シンディ−に支えられながら、もう一つのベットに寝ている少女を見る。

「えっと・・・。う・・・・。あたまが・・・・・・。ううう・・・。ああ!!!」

その場にかがみ込んでしまう少女。余程頭が痛いのか、全身から脂汗が出る。
そのただならぬ様子に、シンディ−は、一刻も早く手当をと、部下達に指示を出す。

「あなた・・・・・大丈夫?・・・・いけない。すごい熱。
 レイラ、サリア、急いでこの子をベットへ・・・。
 その他の医療チ−ム員、全員救急医療準備・・・・・早く!!
 そっちの『観察者部屋』に居る方々、お引き取りを。
 それから、フィオナ。そこにるんでしょう?手伝って。」

静かに事の成り行きを見守っていた人たちが慌ただしく動き出す。
フィオナは、突然自分の名が呼び出されて戸惑った。しかし、数旬後、動き出すと早かった。

 室内がまた静かになった。ベットの上で、色々な機械に繋がれ
少女のデータを取る機械などに監視されながら少女は静かに眠っていた。

 「シンディ−、どうしたの?この子?」

「記憶喪失よ。無理に思い出そうとして、封印の力にやられちゃったのね。今、考えられるケ−スは二つ。
 一つは何者かが、この子の記憶を封印したこと。これは、その封印を施した人物でないと、ロックは解除できないわね。」

「もうひとつは?」

「まず、今の科学力ではありえないことだけど、時間と空間の両方を同時に、しかも無理に突破したため
 この次元の力が働いて、必然的に記憶が封鎖されたこと。
 これだと自然に回復するんだけど、何時回復するかは全く分からないわ。」

「ふ−ん。」

 「それに、一つ気になるデ−タがあるのよね。彼女から得られたあらゆるデ−タから
 彼女の住んでた星を割り出せたんだけど、その星って既に300年以上も前に滅びてるのよね。
 ラグオルを見つける前に、いろんなとこに探査機を飛ばしたでしょう?
 そのうちの一機が既に死滅してる星を発見してね。
 私は興味を持って、その探査機を操って、いろいろな情報を収集してみたのよ。
 あ、これ内緒ね。明確な違反だから。」

「それはいいけど、シンディ−の疑問って何?」

「つまり、彼女って、いったいどこからワ−プインしてきたか、なのよ。
 彼女の住んでた星は既に死滅してるんだから、まだ、その星が生きてたときに住んでたことになるの。
 今の私達の科学でも、空間は越えれるけど時間は超えれないじゃない?どうやったのかなあって思ったのよ。」

 「科学者の興味って奴?」

「そうかもしれないわね。」

「で?私を呼んだ理由は?」

「あの子に付いていてあげて欲しいの。私の代わりに。
 私は、何かあっても、評議員という立場があって、すぐに動けないから。
 フィオナに頼みたいの。あなたなら、何があっても軽く動けるわ。
 それに、レベルも70越えてるんでしょ。たしか76だっけ?」

「74だよ。それはそうと・・・・。さっきの声はこの子のか。ふうん。・・・・・・・。」

 フィオナは隣の部屋からの声を漏れ聞いていた。 

 「なに?どうしたの?」

「分かった。守るよ。この子。それに、ほっといても、あっちの部屋の二人が守りそうだから余計に危険かな。
 あの二人からも守らないとね。」

「そう。有り難う。じゃあ、そろそろ気がつくはずだから、お願いね。私からも言うから。」

 「う・・・いきなり・・・?」

「うん。もう覚醒用のスイッチ、入れちゃったから。」
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時を越えた宿命〜第2話〜その2〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:08

   こちらは部屋の中のクレイと、ラルフ。
フィオナが出ていき、二人はどうして良いのか分からずに、仕方なくその場に居ながら話をしていた。
扉が開け放たれていたおかげで、全部フィオナに聞こえてるとは二人とも思いもしなかった。

「さっきの子、すごく可愛い声してなかった?」

「ラルフ、お前なあ・・・・。」

「俺、あの子の事気に入っちゃったみたいだ。天使のような可愛い声。触れたら折れちゃいそうなほどの華奢な体。」

「お前、ロリコンの気があったのか?」

「愛に年齢は関係ないさ。好きになったら、相手が幾つであろうと関係ないだろう。」

「はあ・・・。それでお前、姉御のことはどうするんだ?可愛いって言ってたじゃないか。」

「それはそれ、これはこれだ。教官は確かに可愛いけど、あっちの子はもっと可愛いんだ。」

 「わかったわかった。そういうことにしとこう。それより、俺達は俺達の部屋に戻ろうぜ?」

 「お前だけ帰ればいいだろう?俺は、あの子をきちんと見届けてから戻るよ。」

「はいはい。好きにするさ。じゃあ、俺は戻ってるからな。」




 「う・・・・。」

覚醒を促された少女は、目を覚ました。しかし、意識が朦朧とするのか、会話はゆくっりとしたものになった。

「どう?頭、痛いの治った?」

「あ・・・シ・・・ン・・ディ−・・・・・さ・・・ん。」

「よかった。ご免ね。私の責任だわ。もう、酷い目には会わせないからね。」

「それは・・・・・いいの。でも・・・・・。さっき・・・・の・・・・お姉さん・・・・・
 見覚え・・・な・・・・・いけど・・・・・ないん・・・・・だけど、覚え・・・・てる気・・・・がする・・・・・の。
 でも、そ・・・・れを思い・・・・・出そ・・・・・うと・・・した・・・・ら・・・・・頭が・・・・凄く痛・・・・・くなった・・・・・の。」

「ありがとう。よく頑張ってくれたわね。あなたのこといっぱい褒めちゃうわよ。
 それからね、私の代わりに今日からこの人が一緒に暮らしてくれたり、世話してくれるからね。
 この人の名前はフィオナ。今日から、あなたのお友だちよ。」

「フィ・・・・・オ・・ナ・・さん・・・?」

「ヨロシクね、っと。ところで、この子の名前どうするの?」

フィオナは、シンディ−の方に聞くが、シンディ−は、首を横に振る。そこでフィオナは、少女自身に聞いてみた。

「あんたの名前、どうしようか。思い出す迄でいいから。名前ないと、呼びにくいよ。」

「私の・・・・名前・・・」

「まあ、それもゆっくり二人で考えてね。はい、フィオナ、これ。携帯型翻訳機。この子の為の特注品よ。
 もっとも、いろんなデーターも移しといたから、私が持ってるのとあまり性能は代わらないわ。」

「サンキュウ、シンディ−。じゃあ、あんた、今日からあたしの部屋で一緒に暮らすんだからね。
 それと、ここでの言葉やその他生活に必要なレベルでの知識も覚えてもらわないといけない。」

「こと・・・ば・・・?せ・・・・い・・・か・・・・・・つ?」

「あっと、ご免。一気に言われてもわかんないか。とにかく、あたしの部屋においで。」

「こことは違ってゆっくりできるからね。あ、あたしの部屋までは、あたしが抱いて行ってあげるから。心配しなくていいよ。」

「う・・・ん。・・・・・あ・・り・・・・が・・・と・・・う。」

フィオナは、少女に、自分の外套をかけると、抱き上げた。思ったより少女は軽かった。
そのまま医務室を出る。すると、そこに心配そうなラルフがいた。フィオナは翻訳機のスイッチを切った。

「教官。そのこ・・・・・。」

「お前は自分の部屋に帰ってろ。何かあったら呼んでやるからさ。それに、あんまりこの子に まとわりつくな。
 いくら好きになったって、今はこの子記憶がないんだ。それを取り戻してからだって、遅くはないだろう。
 あの部屋でのあんた達の会話、こっちに聞こえてたんだからな。お前の気持ちは分かってるんだ。
 だからお前も、こっちの事情分かってくれないか?分かってくれるなら、戻ってろ。」

ピシャリと撥ね除けるフィオナの言葉に、返す言葉が見当たらないラルフ。そんなラルフを残し、フィオナは、自室へと向かう。
途中、また翻訳機のスイッチを入れた。すかさず少女が話を始める。

「今の、お兄さん、なんて言ってたの?」

少し、意識が覚醒したのか、弱々しいが、はっきりとした口調で少女は聞いた。

「ああ、あんたに何かあったら、あのお兄さんも守ってくれるって言ってたんだよ。」

「みんな、やさしいんだね。・・・・・・私、ヒック。・・・・・・嬉しいよ〜。。。。。。ワ〜〜〜ン」

また、静かに泣き始めてしまった。小さな子をあやす様に、フィオナは静かに語りかける。

 「よし、よし。大丈夫だよ。泣きたければ、泣きたいだけ、泣くといい。いつでも、一緒にいてあげるから。」

「うん。ありがとう。フィオナさん。ありがとう。」

フィオナの自室前。そっと、側にクレイがひかえる。

「姉御、留守の間、何もあやしい奴の姿、ありませんでしたぜ。」

「おまえもか?・・・・・ハァ・・・・・全く、この子は、記憶もないくせに、人気者だね。」

「いえ。私は、姉御のことを心配してますので。」

 クレイの雰囲気がいつもと違うのを察したフィオナ。しかし、言葉はいつもと同じだった。

 「ほお〜。言うようになったねえ、クレイ君。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて、この後も、頼んだよ。」

「はい。」

自室へと入っていくフィオナと、彼女に抱かれて入っていく少女。
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時を越えた宿命〜第2話〜その3〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:10
  「さてと、あんたに似合う服、探さないとね。その間に、シャワ−でも浴びといで。」

「シャワ−?」

「って、シャワ−知らないか。じゃあ、う〜ん。まあ、いっか。一緒に入ろう。どうせ、使い方も教えないといけないんだし。」

「入る?」

「えっとね、体を洗うとこだよ。体の汗を流したり、汚れをきれいにしたりね。」

「はあ・・・。」

「とにかく、今着てるもん、全部脱ぎな。ここにさっき届いた、あんたが着てた服、洗ってあるから、置いとくよ。
 それより、もっとゆったりした服があるからさ。それを・・・・っと、おっけ〜。
 じゃあ、そっちの小さい部屋へ行こう。そこがシャワ−ル−ムだ。」

フィオナは、マイクを指向タイプに切り替え、そのポイントをシャワールームにした。さらに、スピーカーのレベルを最高にする。
そして、先に入って行った少女の体をじっくりと見た。体の幼さから見ると、少女は大体10才前後であろうか。
それと、体の線の細さに気がついた。線は細いのだが、細いなりに、体を動かす筋肉等はしっかりとついている。
しかし、無駄なぜい肉が全くないため、普通の子よりも余計に細く見えるのだ。

『この子、ニュ−マンじゃないかもしれない。
 これだけ細くて、無駄な肉が全くないなんて、いまのパイオニア2では考えにくいからなあ。
 でも、そう作られたとしたら?それなら、ニュ−マンかもしれない。いったい、何なんだろう。この子は。』

「あのお、フィオナさん。どうしたんですか?」

全く動かずに、自分の体をしげしげと眺めるフィオナに、少女は、不思議そうに声をかけた。

 「ああ、ごめんごめん。あんたの体が、つい綺麗だったんでね。」

陳腐な台詞だなと思いながらも苦しい言い訳をしたが、それには少女は意にも会さなかった。

 「使い方、おしえてくれるんじゃなかったんですか?」

「はいはい。まずね、ここのスイッチを操作するんだ。こうして・・・・」

 

 「は〜〜。何かさっぱりしました。久しぶりに、体を洗った気がします。」

「あはは。それはよかったね。それはそうと、使い方、覚えたかい?」

「はい。覚えました。」

今は、少女はフィオナのバスロ−ブを羽織り、ソファに腰を掛けている。

「あんたの名前を決めないとね。記憶を取り戻せば、本来の名前で呼ぶけどさ。それまでは、名前無いと呼びにくいだろ?」

「う〜ん。名前、名前・・・・・。だめですね。思い出せそうにないです。」

「コラコラ、シンディ−にも言われたろ?無理に思い出そうとするなって。」

「はい。ごめんなさい。」

「じゃあ、私が、以前本で読んだ、有名なフォ−スの人達の名前を挙げていくから、気に入ったのあったら、それにしよう。」

「はい。お願いします。」

「いくよ。えっと、『ミュウ』『ヴェゼッタ』『プリン』『ネメライアス』『セシル』『バ−バラ』『シンラ』『レイラス』『コノハ』
 このなかにあるかい??」

「最初から5番目の『セシル』って、可愛くて良いと思います。」

「じゃあ、あんたは、『セシル』でいいかな?」

「はい。」

「じゃあ、セシル。あんたには、明日から、少しづつ私たちの言葉、覚えてもらうからね。」

 「はい。」

名前が決まったからか、嬉しそうに、返事をするセシル。
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時を越えた宿命〜第2話〜その4〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:12

 「脳波に、覚醒の波形あり、シンディ−博士を呼べ!!」

突然、第5医務室が騒がしくなる。時刻は深夜3:30、パイオニア2中の人間が寝静まっているときであった。

「何、どうしたの?」

「何があったんだ、いったい。」

「あ、シンディ−博士、クライン博士まで。
 いえ、前から昏睡状態が続いてる少女の脳波なんですが、今までは、睡眠を表わすものだったんです。
 でも、さっき、一瞬だけ覚醒の脳波が出たので・・・・・・・これです。」

研究員は、その時の状況をディスプレイ上に表わして2人の博士に見せた。

「うむ・・・・・。むう・・・・・・。いかん。そろそろ起き出すな、こりゃ。
 君、ハンタ−のフィオナと、一緒に暮らしてる女の子を何でもいいから急いで呼んでくれ。
 クラインと、シンディ−からの緊急の用件だとな。」

「はい!!」


およそ10分後、フィオナとセシルと名乗り始めた少女が到着する。

「どうしたんですか。クラインさん。セシル・・・っと、彼女まで呼び出して。」

「ん?その子の名前、セシルにしたのか。うむ・・・似合うな。よかったなセシルちゃん。」

  「うん。」

「っと、いけない。いや、ここに寝てる少女が、そろそろ、起きるころなんだ。そっちの子より、遅れること5日。
 この違いが何なのかわからんが、起きたときに面倒がおこらないようにね。一応の用心のために、君たちを呼んだんだ。」

「ふ−ん。」

「セシルの知ってる人かも知れない。全然思い出せないけど、なぜかそれだけは思えるの。」

 「あ。波形が、より顕著になってきました。被験者、覚醒します。」


「う・・・・うう・・・。」

「大丈夫?」

セシルが、本来の自分たちの言葉で話しかけた。

「あ、あなたは、誰?ここは・・・・?」

「まず、落ち着いてね。それで、聞いても騒がずにね・・・・・危険なことは無いから。
 私もここに来たばっかりなの。みんなに助けてもらって、やっとここの生活にも慣れ始めたところなのよ。
 それに私にも、多分あなたと同じで以前の記憶はないんだけど、それでもあなたと私。
 何か、関係がある人のように思えるんだ。だから、安心してね。」

「うん・・・・。」
 
 今起きた少女は、分かっているのか分かっていないのか、セシルの言葉に頷いた。
周りで聞いてるシンディ−達も、翻訳機を通して聞きながら、マジックミラ−のこちらの部屋で様子を見ていた。
何かあったらすぐに出れるように、フィオナは身構えている。手には、スタン・ロッドが握られていた。

「いい?ここは大きな船の中。宇宙という広い海を渡っている、パイオニア2という大きな船の中なんだよ。」

「うちゅう?ぱいおにあ2?」

「今は、わかんなくてもいいんだよ。ゆっくりと、覚えていけば。あなたにも、記憶は、無いんでしょう?」

「きおく・・・・・記憶・・・・何も思い出せないわね・・・・・・・。
 でも、あなたとは、全く他人だとは思えないわ。不思議とは思うけど。」

「セシルも・・・あ、この名前、フィオナって言う女の人が付けてくれたんだ。
 でね、セシルも最初、あなたを見たとき、そう思ったの。」

「あなたとなら、上手くやって行けそうな気がするな。私。あなたに迷惑かけるかも知れないけど。」

「よかった。じゃあ、あなたに紹介したい人達がいるの。入ってもらっていいかな?」

「ええ、あなたのお友だちなら、いいわよ。」

「みんな優しい人なんだから。・・・・皆さん、どうぞ。」

セシルの声に導かれるかのように、みんなゆっくりと入ってきた。そして、お互いに自己紹介が進む。
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時を越えた宿命〜第2話〜その5〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:13

 そんな中、離れた通路からそっと中の様子を伺っているものがいた。

「あの人達に何かようかい?」

声をかけられ、それでもその人影はあわてふためく様子もなくそのまま通路を走り、やがて消え去った。
クレイは、その影が消え去ったほうを気にしていたが、ラルフは至って呑気であった。

「何だ、今のは?」

「俺にだって、わからんよ。」

「まあ、いいか。それよりセシルちゃんか〜。可愛い名前だなあ。あの子にぴったりだ。
 それに性格も、俺が思っていたとうり優しい良い子じゃないか。」

「はいはい。好きに言ってろ。俺はここを離れる。お前は、ここで彼女たちを見張っていろ。って、言うまでもないか。」

「モチロン!任せとけ。」

「じゃあな。」



ラルフと別れ、クレイは、影が逃げたほうへ向かっていく。そっちは、フィオナ達VIPクラスのハンタ−が住む居住区がある。
走るクレイは普段の数倍の速さをだった。

『俺の予感はなかなか外れた試しがない。良いほうに当たってくれれば良いがな。』

クレイは、フィオナの自室前についた。そっと中の様子を伺う。

クレイは、ハンタ−になる前は、裏の世界で盗みを生業にしていたのだ。
もっとも、ハンターズに登録すれば、皆レベル1からとなるので、過去を隠すにはうってつけだった。
だから、いたって坊ちゃん気質なラルフより、よっぽど腕は確かだった。普段は戦闘ができない振りをしているのだ。
相手がいかに優れたハンタ−であっても、気配を殺したり、中の様子を伺うのは、プロのクレイには敵わなかった。
クレイはじっと中の様子を伺う。全身の感覚を研ぎ澄ませ、相手の動きをトレ−スする。

『いるな。・・・・一人か。・・・・・音から察すると、今設置してるのはスタンガスだな。
 姉御を捕らえるか、セシルちゃんを捕らえるか。まあ、考えるまでもないか・・・・。
 踏み込むか・・・。いや、ここに来るまで、約188秒、俺が遅れているはずだ。
 相手が、もしプロなら、後2つは仕掛けているはず。俺なら、4つか。
 ま、それもどうでもいいことか。・・・・・仕方ない。
 こんなところで、昔に戻りたくはないが『義賊クレイ』の名は伊達だった訳じゃないって事を
 中の奴に知らせてやるか。』

クレイはそういうと、アイテムパックから、昔よく使っていた道具を取り出した。

クレイはそっと扉を開ける。本来は、この扉は自動なのだが、そのスイッチは切っってしまった。
さらにクレイは、クレイ以外には開けられないように細工した。細く開けた隙間から中に入る。
そして、細工を施しながら、扉を閉めた。

一つ目の罠を発見した。クレイはさっと、解いてしまう。

『何も知らずに帰ってくれば、床に仕掛けられた針のせいで、体が麻痺する・・・か。簡単なものだな。ん。まてよ・・・・。』

クレイは、あることに気が付いて急いで部屋を後にした。扉の細工もはずしてきた。

フィオナの部屋は通路の一番奥にあった。その通路で、クレイは、普通の人ならまずかからないであろう場所に、罠を掛けた。

『姉御の部屋は、奥の行き止まりだ。ほかに出る通路も、窓もない。
 通気孔はあるが、並みの奴では、そこは使えんからな。
 あいつなら・・・・・・まず使わんな。表に面してる窓はあるが外は、宇宙だ。
 つまり、中にいる奴は、必ずここを通る。
 普通の奴ならかからんが、俺達の同業なら、カメラを気にして、この位置を通るだろう。』

 数十秒後、クレイの考えは的中した。罠にかかった賊が、床を転げ回っている。
それを引きずり、自室に連れ帰る。もちろん、帰る前に、自分が仕掛けた罠や
賊が仕掛けたものを綺麗に片付けるのは、当然のことであろう。
ただ、クレイの予感で1つ外れたことがあった。賊は一人であったのだ。



 「あんたが、あのクレイか。おれが敵う訳ねえな。」

賊は回復すると、まずその言葉をクレイに贈った。

「いや、既に足を洗ってるさ。お前さんの方が少し、運がなかっただけだ。」

「クレイさんよ。捕まった俺が言うのもなんだが、何も話せねえのは分かってるよな。」

「もちろんだ。俺がお前をここに連れてきたのは、下手に転がしといて騒ぎになるとまずいと思ったからだ。
 俺にとっても、お前にとってもな。」

クレイも足を洗ったとはいえ、もともと住んでいた世界のことだ。すべてを言われなくても分かっている。
賊の方も既に、クレイの言わんとする所は分かったらしい。

「すまねえな。俺は、今回の事から手を引くよ。あんたが付いてちゃ、勝ち目がねえや。」

「それが良いかもな。俺も、下手に血を流すことはしたくないんだ。」

クレイの底知れぬ威圧感に、賊は恐れ戦く。普段のクレイを知っていれば、その違いに別人と思うかもしれない。

「クレイさんよ、最後に一つだけ教えといてやるよ。あのセシルって女の子から一時も目を放すな。それだけだ。」

「・・・・・・・。お前のこと、覚えててやるよ。今の礼にな。」

「俺も、命は惜しいからな。じゃあな。」

言うや否や、男の気配は消えた。

「全く。何だって、あの子に・・・・・。そうか、あいつらか。姉御の部屋で捕らえなくて良かったぜ。」
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時を越えた宿命〜第2話〜その6〜
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11/25(Mon) 3:14

  フィオナは、セシルともう一人の少女を連れて、自分の部屋に帰ってきた。
表向き、何も変わったところは無かった。しかし、何か部屋の様子がいつもとが違うと思ったフィオナは
何が違うか探そうとしたが、あるところに巧妙に隠されていたクレイの書き置きを見て、何が起こったか理解する。
だが、そんなことは一切表に出さずに、二人と話をした。

「セシルは良いけど、あんたの名前も決めないとね。」

「そうですね。」

「前に、フィオナちゃんが言ってた中から決めれば良いじゃない?」

 「じゃあそっちのあんたさ、あたしが今から人の名前言うから、気に入ったのあったらそれにしよう。」

「はい。」

「じゃあ、いくよ。いいかい?『ミュウ』『ヴェゼッタ』『プリン』『ネメライアス』『セシル』
 ・・・・あ、セシルは既にそっちの子が使ってるからだめだな。
 続き行くぞ『バ−バラ』『シンラ』『レイラス』『コノハ』このなかにあるかい?」

「『シンラ』って言うのが良いですね。響きがとっても。」

「じゃあ、あんたは、シンラだね。」

「シンラちゃん・・・・か〜。かわいいね。」

「ありがとう。セシル。フィオナさん。」

こうして、突然の乱入者である二人は、名前も与えられ、この世界で使われてる言葉を覚え
また、ここにいる一般人なら当たり前のほどの知識も蓄え、普通の生活をして行った。



そんなある日、シンラと、セシルのクラインや、シンディ−の目の前での、身体測定が行われた。
ハンタ−ズギルドに登録するのに必要な要素を測定するためであった。
もっとも、登録はレベル1であるから、そんなことをする必要は全く無かったのだが。

「じゃあ、シンラちゃんから、行きますよ。」

「はい。お願いします。」

シンラは、寝台に横になり、各測定装置が、スキャンするのを待った。数十秒程たった時。

「はいオッケ〜よ〜。次、セシルちゃん、お願いね。」

「は〜〜い。」

セシルも同じように横になる。同じように、数十秒後。終了を告げる声がかかった。


「う〜ん。二人とも凄いねえ。表層レベルだけじゃなく、潜在レベルも恐ろしい数値だよ。」

 クラインはデ−タを見て、また本人を見る。それをくり返した。

「二人とも以前いた世界では、それなりに名を残してるかもしれないわね。」

「シンディ−が以前調べたという星に行けば、手がかりはあるかもしれない。
 そこで、何らかの記憶を戻す手がかりが掴めるかもしれないな。
 いずれ、この船は惑星ラグオルに着く。そうしたら小型船をかりてその星に行こう。手配をしとくよ。」

 「ほんとですか、クラインさん。」

シンラも、セシルも、自分たちが何者かを知らないことに不安を感じているのだ。
一応生活には困らないほどに言語を習得し、知識も得てはいるのだが
自分というものがないため、毎日が不安との戦いであった。でも、その不安が消えるかもしれない。
クラインの言葉は、彼女たちに、また希望をもたらすものだった。


クラインの言葉のおかげか、シンラもセシルも、日に日に明るさが増してきた。
既に、ハンタ−ズギルドには登録は済ましていた。
もっとも、その登録はクラインやシンディ−がしてくれたもので、シンラとセシルの過去を捏造して登録したものであった。
日常の訓練も、シンラとセシルがパ−トナ−となり、フィオナが面倒を見ていた。

ラルフとクレイも、二人には負けてはいなかった。あれ以来二人はまじめに特訓をしていた。
もっともラルフは、愛するセシルに良いとこを見せたいという、そういう動機ではあったが。
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時を越えた宿命〜第2話〜その7〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:15

 そんなある日、フィオナは初めて、ラルフ、クレイ、シンラ、セシルの四人を組ませて、一つのパ−ティにした。
そのうえ、大広間を二つつなげて、大々的な戦闘訓練を考えたのであった。

「今日は、あんた等4人に組んでもらって、レベルの高いパ−ティ−戦術をマスタ−してもらう。
 組んだことがないのは分かってるから、一つ目の部屋では数の少ない敵を出す。
 そして、二つ目の部屋では、今までに体験したこともないほどの大群を出すつもりだ。
 もちろん訓練だから、攻撃力は低めに設定するし、危ないと判断できる時は中止にもする。」

 「姉御、俺等はいいんですが、こちらのお二人大丈夫ですかい?フォ−スだから怪我しやすいんじゃないかと思うんですがね。」

「いや、お前たちには悪いが、シンラとセシルは、なりはよわっちい新米フォ−スでも、その実力は
 ベテランフォ−スすら凌ぐさ。お前たちが、足もとにも及ばないほど強いぜ。戦えば分かるさ。
 じゃあ、いったいった。・・・・・シンラ、セシル。頑張りな。」

「はい。」

「うん。ありがとう。フィオナちゃん。」


「じゃあ、訓練開始。頑張れよ。」

ラルフ、クレイを先頭に、あとに続くシンラとセシル。道の前から、『ブ−マ』が3匹出てきた。
フォ−スが先に軽く牽制をすると習ったとうり、シンラと、セシルは、別々のブ−マに炎のテクニックのうち
初級に位置する『フォイエ』を放つ。

テクニックとは、ナノマシンを使い、古代に使われていたという『魔法』を再現しているという。
そのため、大体同じ職業の人が使うと、敵に与えるダメ−ジも、ほぼ一定なのだ。
レベルや、初級、中級、上級などの差があるが、それでも、同じ職業のものが同じ名前の同じレベルのものを使えば
あまりダメ−ジは変わらなかった。それが、テクニックの定義なのだ。
もっとも、これは精神力の値が同じように成長した場合であり、著しく精神力の値が違えば
与えるダメージにも格段に差が出てくるのだ。

フィオナは、二人が放つフォイエが明らかに他の駆け出しのフォ−スが放つものとは違っているのが、見て取れた。
他のフォ−スが放てば、確かにブ−マ程度の敵にすら丁度いい牽制になるのだが
二人の放つフォイエは、ブ−マを一撃のもとに倒してしまっているのだ。

「おい、クレイ、俺は夢見てるのかね。フォイエ一発で、ブ−マ死んだぜ?」

「確かに。凄えな。俺等なら3、4発は放たないと死なないんだけどな。」

「ねえねえ、フィオナちゃん。聞いてたのと違うよ。強すぎない?これ。」

「そうですね。倒してしまっては、訓練になりませんよね。」

「それは、シンラとセシルの精神力が、他の人達より桁違いに高いからだよ。
 テクニックは、敵に与えるダメ−ジにもともとの威力と、使用者の精神力も絡むからね。」

「じゃあ、私達はどうすればいいんですか?」

「まあ、見てなって、そのうち、どんどん強くなっていくようにしてあるからさ。」

「わ−い。じゃあ、続きいこ〜。」

訓練を再開する4人。確かに、次に出てきた『ブ−マ』5匹は、さっきより強かった。
しかしフォ−ス二人の活躍もあり、あっさり、片付いてしまった。さらに、先を行く4人。

次に出てきたのは、『ゴブ−マ』5匹であった。このゴブ−マは、フォイエを苦手とはしていない。
フォ−スの二人はすぐにそれを悟り、覚えたばかりのテクニック『ゾンデ』を放つ。
これは、電撃のテクニックで、初級に位置するものだ。
しかし、それでも『ゴブ−マ』ですら、大した傷も受けづに片付けることができた。
これで、一つ目の部屋は終わったのだ。

そして、二つ目の部屋に入っていった4人。しかし。大きく、空間を取った作りになってはいるが、敵は全くいなかった。
隠れてる気配もない。4人は、お互いの顔を見合わせ、ゆっくりと進んでいく。

大広間のほぼ中心に来たときだろうか。

周り中から、ボコッという土を掘り返すような音がしたかと思うと
その音のしたとこからコ−ドネ−ム『ジゴブ−マ』で呼ばれる生物が現れたのだ。
この『ジゴブ−マ』は、ブ−マ族では、もっとも強く、炎のテクニックも電撃のテクニックも苦手とはしていなかった。
フォ−スの二人は、この『ジゴブ−マ』に効く氷系のテクニックをまだ覚えていなかった。
18匹もの大群だが、時間差で攻めて来るらしく、近くにいた3匹以外は動いてこなかった。

「むう・・・敵の数は、18匹か、ちっと多いな。」

「だが、こいつらにむざむざやられる訳にもいくまい?」

「それに、確かデ−タではフォイエもゾンデも効き難いとはあるけど、効かないとは書いてないものね。」

 「そうそう。セシル達が牽制するから、クレイさん達はやっつけちゃってよ。」

4人は、素早く態勢を整えると、まず最初に近づいてきた、3匹と戦闘に入る。

「フォイエ!!」

セシルが真ん中の一匹にフォイエを放つ。少したじろぎ歩みが止まる。
そこを、すかさずクレイがセイバ−の一撃を見舞う。しかしまだ致命傷には至らないらしい。

「ゾンデ!」

シンラが、ゾンデを同じ奴に放つ。そして、残った2匹を、セシルが誘導する。

「こっちだよ〜〜〜だ!」

これでラルフは、残った弱った敵に安心してトドメが刺せた。

「キャア!!」

残った『ジゴブ−マ』を誘導していたセシルは、調子に乗ったせいか足元をよく見ていなかった。
足もとに出ていた木の根っ子に引っかかり、倒れてしまったのだ。
『ジゴブ−マ』はそれぞれ左右に分かれセシルを囲むように近づいて来る。
また、動かなった残りの『ジゴブ−マ』もセシルのほうにいっせいに近づいてきた。
クレイ達3人は、少し離れていた場所にいた。駆け寄ってくるが『ジゴブ−マ』達の攻撃のほうが早いだろう。

セシルは起き上がることはできたが、前後を木で阻まれ、左右を、『ジゴブ−マ』達の大群で囲まれどうにもできなかった。
『ジゴブ−マ』達は、いっせいに、セシルに攻撃をする。

「いやあ、来ないで〜〜!!」

セシルは無意識にある呪文を唱えた。唱えるというか呟く程度だ。
記憶をなくしているはずであり、もちろん記憶がないのだから覚えてすらいないはずの呪文を。

『フレイムピラ−!!』

クレイ、ラルフ、シンラにも、もちろんフィオナにも、その呪文は聞こえなかった。

セシルを中心に、そのすぐ周りから、勢いよく炎が噴き出す。もちろん、ナノマシンが見せる再現された炎ではない。
本物の炎だ。それが、勢いを増し、槍上に尖り、セシルの周りをゆっくりと周りながら、広がっていった。
セシルを攻撃しようとしていた『ジゴブ−マ』達をあっという間に、炎が飲み込む。

フィオナは『炎が尖ってなければ、ギフォイエに似てるなあ』と、思わず呟いていた。

訓練終了の合図がなる。


 炎が収まると、辺りにいた17匹もの『ジゴブ−マ』の影はなかった。
また、炎による大広間への影響もなかった。無意識に攻撃対象を『ジゴブ−マ』達へと絞っていたためだろう。
セシルは炎が消えると、自分の無事を確かめ皆の方へ近づいていった。

「あれは、いったい・・・。」

クレイ達みんながポカンとしていた。

「ありがとう。だれかが、炎のテクニックで、助けてくれたんだよね。」

セシルは、自分が、炎を放ったことに気がついていないらしい。

「そうさ、あたしが、ギフォイエを上から放ったんだ。」

「あ・・・・姉御・・・・?」

「それで納得かい?セシルちゃん。みんな。」

「うん。」

「脅かさないでくださいよ〜〜!」

フィオナは、前にクラインから聞いていたことを思い出した。それで、こんなことを言ったのだった。

「訓練が無事に終わってよかったねえ。」
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時を越えた宿命〜第2話〜その8〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:16

 みんなが、談笑を始めたその時だった。

不意に天井付近が明るくなった。大広間のそれほど高くない天井付近に、輝く白い霧のような物が発生してきたのだ。
それは次第に広がり、4人の頭のすぐ上までせまってきた。

「姉御、これって・・・・。」

言われる迄もない。フィオナはすぐさま機械をリセットし、下に降りていった。

「シンラ、セシル。あんた達が現れたときも、ああいう感じだったんだよ。また、誰か現れるのかね・・・・。」

そういううちに天井の輝きはさらに増した。そのうちに銀色の球体が現れゆっくりと、降下してくる。
降下と同時に球体の透明度が増し、中にいるかなり大柄な人影が見て取れた。

フィオナは身構えたが、球体は床まであと1〜2メ−トル程まで降りて来たあと突然消えた。
中の人物は派手な音を立てて床に落ちたが、着てる鎧にその衝撃は吸収されたようだ。

フィオナ達5人は、その男をよく見た。青く、昔話に出てきそうなほど古めかしい鎧を着ていた。
髪の色は輝くほどの金髪であった。

「はあ・・・・またかい。ラルフ、シンディ−に連絡を。クレイ、運んでいっとくれ。シンラ、セシル、あんた達もついてくるんだ。」

 


 「なるほど・・・話は判った。」

フィオナの説明により、クラインは、事と次第が理解できた。

「しかし、アンチワ−プフィ−ルドを展開してあるパイオニア船内に3回も侵入されるとはな・・・・・」

クラインの言葉に、一時不安そうな顔をするセシルとシンラ。そしてクラインが言葉を付け加える。

「ああ、もちろん、セシルちゃんやシンラちゃんは、わざと入ってきたわけじゃないんだから心配しなくていいよ。
 法に触れることは、何もないんだからね。この男も故意にではないだろうから、もちろん何の問題もない。
 それに、これらのことは君たちの記憶が戻ればわかるかもしれないしね。」

何の問題もないとはっきり言ってもらったので、安心する二人。

「だが、惑星ラグオルに着くまで、今日入れても3日しかないんだ。明後日には着いてしまうんだぞ。
 この男に関しては、シンラちゃんや、セシルちゃんの時とは勝手が違う。」

 クラインは、自分達の忙しさや、シンラやセシルのようにゆっくり覚えてもらう為の時間がないことを、みんなに話した。

「しょうがない、あらゆるデ−タを睡眠学習で学んでもらうか。
 我々が明後日の昼に惑星ラグオルに着くから期限はその朝までにしよう。」

クラインは計器類をセットしながら、ベッドの上の大柄な男を見てそっと呟く。

「・・・・・すまんな、君。お互いに自己紹介は惑星ラグオルについてからだな。もっとも、君も記憶喪失かも知れんがね・・・・・。」


    (PSOオリジナル小説『時を越えた宿命』第2話「時を越えた勇者達〜中編」完)
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時を越えた宿命〜第2話〜後書き〜
GUM [Mail]
11/25(Mon) 3:26

 毎度どうも。Gumです。今回は中篇をお届けいたします。

 まだ、話し的には続きますので読み始めてしまった方は
せめて第3話まではお付き合いくださいませ。

 第3話をUPした後に、序章の下にネタバレ的設定集から抜粋して
少しキャラの設定などを紹介します。

興味を持っていただけた方にはお楽しみ頂けるかと思います。

 それでは、UPの期間が不定期ですが、最後までよろしくお願いします。

 
 
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