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- もとのかたち。 - Shin [5/23(Thr) 15:31]
Re:もとのかたち。 - ラウド [5/24(Fri) 12:18]
Re[2]:もとのかたち。 - Shin [5/24(Fri) 17:32]
Re[3]:もとのかたち。 - nova_nova [6/16(Sun) 11:48]
Re[4]:もとのかたち。 - Shin [6/20(Thr) 23:38]
Re[5]:もとのかたち。 - nova_nova [6/24(Mon) 17:51]



もとのかたち。
Shin [HomePage] [Mail]
5/23(Thr) 15:31
初めに、この小説は俺の体験した実際の出来事を元に書いたフィクションです。
登場するキャラの名前も架空の物ですので、あしからず。

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電話線を繋ぐ。

電源を入れる。

スタートボタンを押す。


ほぼ日常の習慣となってしまっているその行動。


画面には、無数の光の粒子が飛び交っている。


やがてこう表示される。
「ファンタシースターオンラインの世界へようこそ。」











俺はこのゲームを、発売して少したってから買う事にした。
初めはオンラインゲームとしてではなく、純粋にRPGとして面白そうだったから。
気になってはいたが買うまでにはいたらず、友人の遊んでいるところを見て買う事を決心した。

体型まで選べるキャラクターメイキング。
独特の世界観。
それらの要素は、俺の遊び心をくすぐるのに十分すぎる材料だった。











「ピロ」

テレビから効果音が聞こえ、画面上部にメールが届いた事を知らせるマークが点灯する。
俺は手馴れた手つきでウィンドウを開き、メールを確認した。
「…Luffyか。今日も来てたんだな。」

メールの差出人は、いつも一緒に遊んでいるPSOの中で知り合った「友人」だった。

『ばんわ〜w やっときたね、一緒に潜らない?』

いつものような、他愛の無い、いつもの内容のメール。
そして俺はいつものようにギルドカードで彼を検索し、彼のいる場所に飛ぶ。











このゲームを始めたころは、本当に新鮮なことばかりで、何もかもが楽しかった。

次々へ現れる敵への攻撃。
出現する新たなアイテム。
本当に倒せるのかどうか疑ってしまうような、強大なボスモンスター。

俺はこの世界にあっという間に引き込まれ、一日中PSOで遊んでいる日も多かった。


俺の扱っている武器は、貧弱な物だった。
店で売られている武器を使い、なんとかゲームを進めていった。


ゲームが中盤まで進んだころ、友人の間でとある噂が広まった。
「一度クリアすると、別の難易度が遊べて、もっと強い武器が手に入るらしい。」

俺は期待しつつ、なんとかゲームをクリアした。
そこには噂にたがわない、新たなアイテム達が俺を待っていた。

そして再び新鮮な気持ちで味わえるこの楽しさ。
自分の中で一番充実している時間にさえ思えた。











友人のLuffyはすでに部屋を作っており、その中に一人で入っていた。
部屋にはパスワードがかけられていた。

俺はその部屋を選択すると、手馴れた手つきでいつものパスワードを入力する。

再び画面は無数の光の粒子となり、闇の中を飛んでいく。


「おい〜っすw」
部屋に入ると、まず吹き出しが出てきた。

「おいっす、昨日ぶり〜w」

いつものような、他愛のない会話。
俺はそれが一番の楽しみだった。











進む事の出来る難易度には、まだ上が存在した。
俺は公式ホームページのBBSを見て、とある文字に心を躍らせた。

「スペシャルウェポン」

まだ、強い武器が存在する。
まだ見ぬ武器が。

俺はその事実だけで、コントローラーを握らずにはいられなかった。

死に物狂いでようやく到達した難易度ベリーハードの遺跡。
俺はようやくその文字を目にすることになる。

青い文字。
エレメント付きの武器とは違う。

いそいで拾った俺は、鑑定屋に急ぎ、100メセタを支払った。
ちょっとした音楽が、随分と長く感じる。

ほんの数秒。

そこに映し出されたのは、見た事もないような色合いをしたフォトンのついたハンドガンだった。











「なにかレア見つかった?」

Luffyとの、いつもの他愛の無い会話。
「いや、な〜んも見つからんよ〜。」

PSOのバージョン2が発売され、俺達はすでにそちらへキャラクターをコンバートし、遊んでいた。
バージョン2では、たくさんのレアアイテムが追加されたそうだ。

しかし、やはりそう簡単に入手できるような代物ではなかった。

新たな難易度、アルティメットモードも遊べるようになっていた。
今までとはまるで雰囲気が違うステージ。
すさまじいほどに強化されたモンスター達。

それらの追加は、また昔のあの感動をよみがえらせてくれるものだった。











俺の初めて入手したスペシャルウェポンは、後に「3大クズレア」と呼ばれる武器の一つにすぎなかった。

しかしその時の俺にとっては、何物にも替えがたいとっておきの武器だった。


このとき俺には、いまだインターネットの環境が整っておらず、一人でオフラインばかりをプレイしていた。
しかし、友人のオンラインでの体験談を聞いているうちに、それがとても魅力的に感じた。


なによりも、あのゲームが大勢で楽しめる。

俺のオンラインプレイの認識は、その程度の物だった。


しかし、ネット環境を整えるのは簡単ではなく、俺はしばらくはオフラインで遊びつづけた。



そのころには、ID別に存在する、ごく希少なレアアイテムの存在が確認されていた。

しかしどうやら、出現確立はすさまじいくらいに低く設定されているらしい。
実際に手に入れた人は、本当にごく少数にすぎなかった。











バージョン2の発売からまもないころ、急にBBSに見た事もないような武器の名前が多数確認できるようになってきた。

「大方、どこかのゲーマーがやりこんで、さっさと見つけてしまったんだろう。」

初めの俺の感想は、そんなものだった。


しかし、事態はそんな簡単に解決できるような問題ではなかった。



俺はある日、いつものようにPSOの世界で部屋を作ろうとした。

しかし、その日はなにかいつもと違っていた。


画面に表示されたのは光の粒子ではなく、一つの文章だった。


メーカー側が、不正アイテムの存在に気付き、急遽取締りを始めたのだ。
それまで知らないうちに不正アイテムを所持していた人達は、突然の出来事に戸惑い、ロビーで罵りや不満の言葉を発言していた。

そして、俺もその中の一人になってしまっていた。











俺はいつものように、同じ場所の敵を倒しつづけていた。

「いつかはレアアイテムを手に入れる事ができるんじゃないか」
そんな気持ちにかりたてられ、いつまでも同じことを繰り返していた。

しかしその期待に反して、出現するスペシャルウェポンは全て「3大クズレア」にすぎなかった。


鑑定しては落胆、毎日飽きもせずそれを繰り返していた。

ある日曜日、俺は自分の目を疑った。

画面のキャラクターが装備したその武器は、いつもの「3大クズレア」の一つとは、明らかに違っていた。

見た目も、威力も、モーションも。
その全てが初めて目にするものだった。


俺は声も出ないくらいに喜び、画面の前を跳ねまわった。











オンラインの「不正アイテム狩り」が行われ、知らない間に不正アイテムを所持している人がゲームを楽しめない、という状況の下、あらかじめそれを防ごうと考える人達も出てきた。

自分が不正アイテムを持っているかどうかわからないのならば、初めから全てのアイテムを捨ててこよう、という考えだった。











俺の入手した武器は、どうやら結構な価値があるらしく、ハンターを扱っている人達には、その武器に憧れている人も少なくはなかった。


ようやくネット環境が整った俺は、初めてのオンラインに胸を躍らせていた。

画面の中を光の粒子達が飛び交って行く。
ただいつもと違っているのは、画面の下のほうに文字が表示されていた。

「ファンタシースターオンラインの世界へようこそ。」


俺はアイテム探しでひたすらモンスターを倒しつづけていたのが幸いし、レベルはすでに90を超えていた。

いつもとは明らかに違う画面。

そこには大勢のキャラクター達が存在し、吹き出しを使ったチャットで会話していた。


俺はなれない手つきでワードパッドを開き、言葉を発した。
その瞬間、俺はオンラインデビューを果たした。

「はじめまして」


その時の俺は十分な強さを誇っており、入手した武器も手伝ってまわりの人達には信じられないくらいの強さだったようだ。

知り合った人の中に、彼はいた。

「それいいな〜w 実は俺も探してるんだ、それ」

Luffyだった。
彼もハンターのキャラを扱っていて、俺の手に入れたその武器が、いわば「憧れの武器」の一つだった。

しばらくの間彼と一緒に遊んでいると、彼はとある武器を置き、俺にこう言った。
「俺はこれとったんだけど、装備できないんだよね〜」

その武器は、俺の「憧れの武器」だった。


初めてのアイテム交換だった。
つりあっていたかどうかは怪しいが、当時の俺達には十分納得でき、満足できる交換だった。


俺はその日から、その武器を使って遊んだ。

そんなある日、俺は一人の人と知り合った。


「一緒にベリーハード行きませんか〜?」
俺はロビーにいる人達に、声をかけてまわっていた。

しかしその日は誰もが知り合い同士で話していて、俺の誘いを聞いてくれている様子は無かった。
そんなとき、声をかけてくれた人がいた。
「すこしだけなら、あそべるよ」

小さなフォニュエールのキャラだった。


彼女は冒険を始めると、すぐに俺の持っていた銃に興味を持った。
その銃本体の珍しさより、彼女は自分に疑いもせず見せてくれた事が、うれしかったらしい。

それがきっかけとなり、二人でそれまで入手した武器の見せ合いが始まった。


「いつかレアアイテム全部集めてやるんだw」


そんなことを言いながら、自慢の武器を見せていく。

様々な苦楽を共にした自慢の武器達、かなりの時間を費やしてようやく入手した武器達。
その一つ一つを、お互い確かめ合うように見せあった。











「え…?本気で捨てちゃうの?」

俺は戸惑っていた。
昔、アイテムを見せ合って知り合ったkonohaが、不正扱いされるのを防ぐ為に、持ち物を全てオフラインで捨ててくる、と言い出したのだ。

「だって、わけもわからず不正扱いなんてされたくないし…アイテムはまた集めればいいよ」
彼女はいつもより元気の無い話し方でそう言った。

「でも…全部捨てちゃうわけ?自分で拾った物も?」
そう、何も全てが他人から譲り受けたものではない。
自分で拾った物くらいは…

「でも、何がどうして不正になってるかもわからないから。とりあえず全部捨ててくるね。」

そう言って、彼女は俺の前から姿を消した。


捨てる…全部。
だとしたらあの武器も…











俺とkonohaはいつも一緒に潜るようになっていた。
当然、色々な憧れの武器のことも話し合ったりした。

そんな彼女の憧れの武器は、とある杖だった。
それはフォースを扱っている人なら誰しも一度は憧れる杖で、価値もかなり高い物だった。

たとえ交換で入手しようとしても、つりあうのは…俺の銃くらい。


俺はその日konohaと別れると、ロビー中を駆けずり回った。
「誰か、アイテム交換しませんか〜?」
そう叫びながら。


なけなしのレアアイテムと、俺の憧れの銃を手放し、その杖をようやく入手した。
そう、彼女にプレゼントするために。

彼女は凄く喜んでくれた。
でも、その日から俺の手には、いつも持っていた銃がなくなっていた。

その事には彼女は一切触れないようにしてくれた。











「ただいま〜」

再び彼女が俺の目の前に姿を現す。

「おかえり〜…ほんとに全部捨ててきたの?」
彼女は少し間を置くと、答えた。
「うん。ごめんね、もらった物も捨ててきちゃった」


結局この日、自分がどんな不正アイテムを持っているのかさえもわからず、思い入れのある物を捨て去らずを得ない人たちが後をたたなかった。

ロビーで悲しそうな台詞が次々に表示される。
メーカーを罵倒する台詞が絶え間なく表示される。
明日から辞めてやる、という吹き出しが妙に目に残る。


この日、俺は続けて遊ぶ気になれず、そのままロビーを後にした。











ある日、俺はLuffyがアイテムロストをしたことを知った。

Luffyは人一倍頑張っており、かなりの数のレアアイテムを持っていたことを俺は知っている。
すぐに検索し、Luffyの元へ駆けつけた。

「あ、昨日ぶり〜」
彼の挨拶はいつもより心なしか元気が無かった。

「ロストしたって…本当?」

彼は何もいわなかった。
「仕方ないから、2ndキャラに変えてくるよ」
俺は「うん」とだけ答え、彼の帰りを待った。

しかし、帰ってきた彼のキャラは2ndではなく、なぜか3rdキャラだった。

「あれ?2ndにしたんじゃなかったの?」
俺は軽い気持ちでそう聞いた。

「…なんだよ、これ…俺にどうしろっていうんだよ…」
Luffyはいつもと全く違う様子だった。

「…?どうした?何があったんだ?」








彼は全てのキャラクターでアイテムロストをしていた。











次の日、カード検索にはLuffyもkonohaもかからなかった。

俺は部屋に乱入する気にもなれず、一人でひたすら潜っていた。











Luffyが全てのキャラでロストをした次の日、彼のカードを検索すると、見慣れない名前が検出された。

そのまま彼の元へ行ってみると、彼は俺の知らない人たちと親しげに話している最中だった。


でも、彼の扱っているキャラは今まで見たことの無いキャラだった。
それに…最大だった。レベルが。

彼がこちらに気がつくと、俺にこう言った。
「よぉ。何か欲しいアイテムあるか?」



俺は何も言わず、全てを悟った。


そこに昨日までのLuffyがいない事を、認めざるを得なかった。











俺は今日も一人でラグオルにいた。

眠気のせいか、頭がぼんやりしている。


今日も二人は検索にかかることはなく、俺は一人で遊んでいた。

ふと、昔みんなで一緒に冒険した日々を思い出す。
あの頃驚いていたボスなんか、今は一人でも通過儀礼のように倒してしまう。



ふと画面に目をやると、俺しかいないはずの部屋にもう一人、キャラクターがいた。

俺と全く同じキャラクター。
…いや、装備が昔の物?


彼は俺の持っている銃を見て、飛びついてきた。
「あっ!ねぇ、それなんていう銃?すっげぇ!見たことねぇ!」

「ああ…これは洞窟の敵が落とすようになった奴だな…」



彼は切り無く話し続けた。
「い〜なぁ!俺もいつか見つけてやる!俺ね、いつかレアアイテム全部集めてやるんだw」








ふと気がつくと、部屋には再び俺一人しかいなくなっていた。

誰もいない空間に向かって、俺は独り言を言った。





「…もう武器はいらね〜よ。」












ふと外をみると、もう空が明るくなっていた。




























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この小説、公式BBSに載せてみたら、あっという間に削除されました;
扱ってる題材が題材だったからかもしれませんがなw;

とりあえず、GC版の発売の前に、どうしても載せておきたかったのですが・・・
なんか微妙に切なかったり。w

最後に、随分と複雑な構成で分かりにくい文だったと思いますが、最後までよんでいただき、ありがとうございました。


微妙にこっそりと復活 PSO小説家(仮) Shin



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